第172話―ダイアンが元気になる―
その後、辺りはだんだんと暗くなり、帰路につく。シロウは別れ際まで、ジゲンに刀の礼を言っていた。
「本当にありがとうな、爺さん。少しだけ自信がついたよ」
「ほっほっほ、礼はもういい。明日からもよろしく頼むぞ、シロウ殿」
ジゲンの言葉に、おう、と頷き、シロウは俺達と別れた。
俺とジゲンはそのまま家に帰る。屋敷に入ると、たまとアザミが出迎えてくれた。
「あ、おじいちゃん、遅かったね~」
「ふむ、すまぬの。途中でムソウ殿と合流しての」
そう言って、たまの頭を優しく撫でるジゲン。たまは嬉しそうに、ニコッと笑った。その光景を見ながら、俺とアザミは笑っている。
その後、ジゲンはたまに手を引かれて、自室へと向かう。俺も自分の部屋に行き、荷物を置いて、長着に着替えた。そのまま居間へと向かう。
中ではすでに帰っていたコモンと今日は家で休んでいた冒険者たちが談笑していた。ふむ、俺以外の奴らはまだ帰ってきていないようだ。まあ、前回もこんな感じだったし、気長に待つことにしよう。
「あ、ムソウさん。おかえりなさい」
「おっと……おかえりっす、頭領」
俺に気付いたコモンが、声をかけてくると、そばに居た冒険者がこちらを振り向き、頭を下げる。見ると、ダイアンだった。
しばらく見ない間に元気になったらしい。俺はダイアンの所に行った。
「元気になったみてえだな。聞いたぜ。大活躍だったらしいじゃねえか」
「いやあ、面目ねえっす。今日まで迷惑かけちまって……」
「それは気にすんなって。それよりも、お前に確認したいことがあるんだが……」
と、ダイアンが元気になったら聞こうと思っていたことを聞いてみる。
まず一つ、獣人かどうかの確認だ。狂気スキルを持っていることだし、十中八九そうなのだろうと思っていると、やはり、魔人であるという。母親の方は人間だが、父親はグリフォンという上級の魔物で、大鷲と獅子が合わさったような魔物だという。
ミサキの契約獣であるぴよちゃんと似たようなものかとコモンに確認したが、少し違うとのこと。ぴよちゃんなど、オピニンクスと呼ばれる個体は、グリフォンの王、つまり上位個体であるという。違いと言えば、グリフォンは魔法を使うことが出来ない。せいぜい爪で引っ掻いたり、牙で攻撃するだけだということらしい。
だから、ダイアンでも、何とかその血を制御することは出来たみたいだ。
「仮に俺の親がオピニンクスだったら、俺は未だに狂気スキルを使いこなすことは出来ないっすね」
「そんなに違うのか?」
「そうっすね……グリフォンが百体集まって、オピニンクス一体と同等ってところっすね」
へえ、通常個体と、上位個体の間にはそれくらいの差があるのか。まあ、ぴよちゃんは災害級の魔物だったしな。それだけあっても不思議ではないか。
そして、もう一つ気になったのは、今日までそんなに疲労がたまっていたのかということだ。ハクビの場合は、あいつの場合、使いこなせていないが、暴走しても少し寝たら回復するくらいだからな。
それに比べて、ダイアンは今日までかかった。何が違うんだろうと思っていると、ダイアンは口を開く。
「ハクビって奴がどうなのかは知らねえが、俺の場合は、グリフォンの力を使う時は、肉体そのものを変えるんすよ。
その分、体にかかる負担が大きくなるというわけっすね。翼ももちろん、自前ということになるし、脚も、俺自身の脚の骨が伸びたり、太くなったりして、鳥の脚になるっす。結構しんどいっすよ……」
思った以上に痛々しいな。確かにハクビの場合は体毛が少し伸び、爪と牙が鋭くなったくらいで、そこまでの変化はない。見えないところであるのかも知れないが、骨が変形し、背中から飛び出る翼を持つ、ダイアンの方が、苦労は圧倒的に上だろう。
さらに、ダイアンはその翼で鳥のように本当に空を飛んでいるらしい。俺のように、気で出来た翼を使い、付近の気を操作して飛ぶのとはわけが違う。本当にコイツへの評価がドンドンと上がっていった。
「すげえな、お前。痛みに耐えて強くなったり、仲間を助けるためにその力を使うと言った気骨を見せたり。なんで浮浪者なんかやってたんだよ」
「あ……いやあ……・それはな……」
俺の質問にダイアンは気まずそうな顔をする。さらにはそばにいたコモンがピクッと反応し、ダイアンの方を見た。
「ひょっとして、ダイアンさんもですか?」
「……はい……まあ、そうっすね……」
コモンの言葉にダイアンは頷く。どうやらコモンには思い当たる節があるようなので聞いてみた。
「何のことなんだ? コモン」
「はい。あの……ムソウさんは魔物族の繁殖力が凄いというのは理解されてますか?」
「ん? ああ。魔龍なんてのも居るしな。それにオークやゴブリンの依頼の多くはそういった被害が出ているからというのは聞いたことあるが」
「ええ。魔物族というのはそんな感じで、他種族と交わり、種を残すことが多いのです。
……そして、獣人などの魔人族の人たちはそんな魔物族の血を引いています……つまり……」
……あ、なるほど。コモンの言いたいことが分かった。そして、ダイアンが浮浪者になった理由も分かった。ちらっとダイアンを見ると、申し訳なさそうな顔をして、頷く。
「いやまあ、何と言うか、俺にもそう言った時期があったんすよ。で、花街行って、女抱いたら、はまっちまって、金無くなって……」
いわゆる動物の発情期のようなものだったらしい。妓楼に行って、店中の女を抱いたら、金もなくなり、当時の仲間たちにも見捨てられ、浮浪者に落ちていったという。
コイツらしいなとは思いつつ、原因はコイツの中の魔物の血の所為だと思うようにしよう。ダイアン自身の欲望でそうなったとしたら、がっかりするところだからな。
「……まあ、何と言うか、取りあえずは、自分の力を制御するように頑張れよ。出来なかったときは俺が叩ッ斬るからな」
「……ウス」
俺なりに励ますと、ダイアンはうつむき、力なく頷いた。このやり方はまずかったかとコモンを見ると、苦笑いして頷く。
その後は、ダイアンに依頼に出ている奴らのことを説明した。屋敷内で冒険者たちの統率を担っているのはダイアンだからな。一応報告しておく。誰が、どの依頼に行ったかを説明すると、問題ないだろうとのことだった。
そして、しばらくすると、女中の一人が、飯の支度が整ったと報せに来る。居間で休んでいたものたちは、食事の間へと移動した。
今日の飯も肉料理が中心だ。元気になったダイアンにもっと力を付けて欲しいというアザミとたまが用意したものである。ダイアンが席に着くと、アザミが酒を注いでいた。
「約束でしょ? 元気になったら、酌してあげるって」
「お、おう。ありがとな」
というやり取りをしているのが聞こえる。やはり、この二人はお似合いだなと皆で笑った。
そして、飯にありつく。黄金牛を香辛料と共に焼いただけの肉。それだけなのに、口の中に入れた途端に疲れが取れていく感覚がある。思えば今日は朝から、依頼に取り組み、ギルドではケリスに絡まれたりと、余計な体力を使ったな。俺も意外と疲れていたようだと実感しながらも、肉を頬張っていく。
ダイアンの方も、嬉しそうに飯を食べていた。肉を頬張り、野菜を頬張り、酒を呑み、その辺りに居た冒険者たちと楽しそうに食事を続けている。
すると、一人の冒険者が赤ら顔で、ダイアンに近づいていく。それは、ダイアンと共にハーピィの討伐に出た、リアだった。リアも笑いながら口を開く。
「けど、もうダイアンも悪い女には引っかからないよね~。ハーピィの誘惑に耐えたわけだし」
そう言って、リアは自身の盃をダイアンに近づける。ダイアンは、おう! と頷きリアと乾杯した。
「ッたりめえだろ! そんじょそこらの女にゃ、俺はなびかねえぜ!」
ダイアンは胸を張ってそう言った。足を刺さなきゃ危なかったというのに、威勢がいいなと俺も笑う。すると、アザミら女中たちが口を開く。
「ということは、ダイアンさんがなびけば、私たちもそこらの女よりも美しいってことよね~! がんばろ、皆」
「ええ。サキュバス種の誘惑にも屈しなかったのですからね。ダイアンさんが振り向けば、自信が出ますわ」
などと、ダイアンを篭絡しようと躍起になる女中たち。意外とモテるんだなとも思うが、どこか遊んでいるような雰囲気だ。ダイアンも、そんな女中たちに対し、
「どこからでもかかってきなさ~い!」
とか言っている。病み上がりの割に元気がいいなあ。頼むから、屋敷の中で変なことをするなよと俺は念じた。
そんなダイアンとは裏腹に、他の冒険者の男たちは恨めしそうにダイアンを見ている。屋敷の女たちが、揃ってダイアンを狙っているとなると、皆はやはり悔しいようだ。何か、仇敵を見るような目で、大笑いするダイアンを見ながら飯を食っている。そんな光景を見ながら、ジゲンが呟く。
「ほっほっほ、既に多くの美人に囲まれ、ダイアン殿はもう、花街に行かなくても良いな」
ジゲンがそう言うと、ダイアンはハッとし、男たちはニヤッと笑う。ダイアンは慌てて、ジゲンに物申した。
「ちょ、ちょっと待てって! それとこれとでは話が違うぜ、爺さん!」
酔いも醒めたのか、先ほどの威勢はどこに行ったのかというような必死な顔で、ジゲンに詰め寄るダイアン。冒険者たちはジゲンを支持し、先ほどと真逆の表情となり、満足げに飯を食っている。何となく面白い光景だったので、俺も加わることにした。
「いや、爺さんの言うとおりだな。あと四か月という約束だったが、それも必要なさそうだ。花街にダイアンが行かないとなれば、俺も安心できるしな」
「お、おい! 頭領までそんなこと言うんすか!?」
俺の言葉にダイアンは必死になって取り繕うとする。冒険者たちからは、俺やジゲンに、もっと言ってやれとか、良いぞお~と言った賞賛の声が上がっている。すると、ここでダイアンが折れた。
「ちっ、まあ、いいや。俺にはアザミたちが居るもんな」
そう言って、ダイアンは女中たちの方を見る。女中たちはまだ遊び半分なのか、クスクスと笑いながら、ダイアンに手を振る。ダイアンは安心したようにニヤ~っと笑った。ダイアンの方は本気で女たちに期待しているようだ。冒険者たちはまたも、ダイアンを睨む。……一応、釘をさしておく。
「一つ言っておくが、当初の約束通り、家の中で変なことするなよ。やったら、本当に未来永劫花街で遊ぶことは禁止する。
……で、これは連帯責任として、全員にそれを課すからな」
俺の言葉に、サーっと表情を青くするダイアン、それと男の冒険者たち。そんなに花街に行きたいのかと俺は少し呆れてしまった。
まあ、これは最初から決めていたことだ。やるなら、外でだ。屋敷の中で変なことをやって、たまに影響が出たら嫌だからな。そのことを分かっている女中たちは、納得しているので、この状況になると、俺の言葉にコクっと頷く。
女中達だけでなく、リアをはじめとする女の冒険者たちも、たまの情操教育については納得しているようで、そういったことはしないし、させないという意志で俺の言葉に頷いた。
一方、男の冒険者はダイアンをギロッと睨む。
「お前……変な事したら追い出すからな」
「されても、だ。有無を言わさず、外へ放り出すぞ!」
などと、うっぷんを晴らすかのように、ダイアンを糾弾する。流石に多勢に無勢だし、今までのやり取りから自分がいかに調子に乗っていたのか悟ったダイアンはシュンと小さくなり、静かに皆の言葉に頷いた。
だが、ダイアンは席に戻る際に、俺にとって聞き捨てならない言葉をつぶやく。
「……頭領だって、毎日高天ヶ原で遊んでるくせに……」
ダイアンの言葉にピクッと反応する。コイツ……言うことにかいてそれは無いだろう。俺の場合は、こいつらと目的が少し違う。言い返してやろうと口を開こうとすると、なんとジゲンとコモンが弁護してくれた。
「ムソウ殿の場合はツバキ殿やリンネちゃんと遊ぶためじゃ。忙しい中で仲間と会うというのは大切なことじゃぞ」
「ええ。そもそもの目的が違います。それに、ムソウさんは、ダイアンさんや皆さんと違ってそういった誘惑にも耐える強靭な精神を持っていますからね。そこは見習うべきところだと思いますよ」
おお……二人は俺が言いたいことを全部言ってくれた。ジゲンはともかく、コモンまでも俺の気持ちを代弁してくれるとは思わなかった。女装の一件から、こいつは俺で楽しんでいると思う節が多々あったからな。
だが、こないだツバキたちの所にコモンを連れて行ったのが功を奏したらしい。多少は俺が花街に行くということに理解を示したようだ。まあ、もっとも、以前からそれについては特に何も思っていなかったようだがな。
そんなコモンの言葉に、ダイアンはまだ疑いの目を向ける。
「でもよ、頭領だって本物のサキュバス相手だったり、もっと強い奴相手ならやばいんじゃないっすかね?」
「それも無いでしょうね。ムソウさんが今日取り組んだ依頼はそのサキュバスの討伐でしたから。サキュバスの死骸と共に、クインハーニィとクインハーピィの死骸も持ってこられましたし、ムソウさんを虜にする魔物なんていないと思いますよ」
ダイアンの言葉に、コモンは淡々と告げる。冒険者たちはいっせいに俺の方を向いてきた。そして、化け物を見るような目で俺を見てくる。流石の女たちも、信じられないという表情だ。
この視線は何度も味わっている。もう慣れてしまい、俺は一人、酒を呑んだ。コモンの言葉に、ダイアンも今度こそ、ガクッと俯き、頑張ろう……と呟いている。
女たちの方からは、諦めよう……という声が聞こえてくる。お前ら、俺に何する気だったんだよ……。
まあ、これでダイアンも女たちも、改めて屋敷の中で変なことをする気にはならんだろう。今日はコモンも味方してくれたし、言うことは無い。そう思いながら、飯を食っていると、コモンが思い出したように口を開いた。
「あ、花街と言えば、ムソウさん。少し、ご報告が」
「ん? 何だ?」
「例の、明後日の高天ヶ原での宴会、僕も参加することになりました」
「は? お前が? 何でまた……。
ケリスにとって、お前は目の上のたんこぶみたいな存在だろう?」
「ええ。僕も驚いたのですが、今日、急にケリス卿と、アヤメさんが天宝館にいらして、僕にも参加してくれと頼んできたのです」
コモンは困ったように、俺にそう言ってきた。天宝館の管理をめぐる問題で、ケリスはコモンに苦手意識を持っている。ケリスというより、闘宴会だがな。ケリスに取って、コモンは少し邪魔な存在であるはずだが、何で、また急に。
コモンも流石にどうしたら良いのか分からないとのことだったが、アヤメも頼んできたわけだし、断るわけにはいかなかったという。
「え、いくらアヤメの頼みでも断ればいいんじゃねえか? 実際お前の方が地位は上だろう?」
「それはそうなんですが、一応領主様ですからね。それに、アヤメさん曰く、万が一、ツバキさんに迷惑がかかるようなら、僕に護って欲しいと頼まれたものですから……」
ほう……アヤメめ、コモンにそんなことをお願いしてきたか。ケリスが何かの拍子でツバキに見惚れ、手を出そうとして来たときは、コモンにどうにかしてもらおうという腹らしい。
領主であるアヤメが手を出すわけにはいかないからな。ほとんど部外者で、表向きはアヤメにも、ケリスにも中立的なコモンなら何のことはないと踏んでいるようだ。
俺の方も、コモンは困っているようだが、そうしてくれると安心度が増してくる。コモンが宴会に参加すること自体には賛成だった。
だが、最後はやはりこいつが決めることだ。無理に参加させるとなると、俺の方の気が引ける。
「俺の方としては、そうしてくれるとありがたいが……お前の好きにしたらいい」
そう言うと、コモンはコクっと頷いた。そして、羽織に描かれている闘鬼神の紋章を俺に見せながら口を開く。
「かしこまりました。万一の際は、全て僕にお任せください」
「ああ。頼んだぞ、コモン」
コモンの言葉に俺は頷く。コモンは、自分は十二星天としてではなく、闘鬼神という俺の仲間の一員として、俺の頼みを受け入れてくれた。
だったら、俺はコモンを信じるだけだ。当日のことはこいつに任せておこう。
その後、俺達は飯を平らげ、冒険者たちは風呂に向かった。俺は女中たちの片づけを手伝う。少し用事があるからな。珍しく俺が手伝っているのをみると、たまもアザミたちも不思議そうにしていた。
あ、俺の用事にたまは関係ない。リアたちに任せ、たまを先に風呂に向かわせた。そして、食器を洗い、片付けを済ませると先ほど皆で飯を食っていた場所へ、女たちを集まらせる。
「何か用かしら、頭領」
「ああ、ちょっとな……」
俺は不思議そうな顔をする、女たちの前に、サキュバスの住処から持ってきた、黄金神薬の入った大瓶を取り出した。
金色に輝いている薬を見ながら黙り込む皆に、説明を始める。
「こいつは今日の依頼で持って帰った、ハーニィの蜜を精製したものに、俺の天界の波動を加えた薬だ。活力剤や回復薬の代わりになったり、呪いを解いたりできる。
……だが、もう一つ、驚くべき効能がある。それは梅毒を完全に治癒することが出来るようだ」
俺の説明に皆はハッとして、俺の顔を見てくる。まあ、そういう反応になるよな。そして、アザミがポツリと口を開く。
「治るの……ですか?」
「鑑定スキルの結果だ。嘘ではないだろう」
アザミの不安そうな顔に、笑ってそう言うと、女中たちの表情が明るくなっていく。そして、手を叩き喜び始めた。そんな女たちを見て、俺は一つだけ言っておきたいことを伝えた。
「こいつは薬だが、わずかに催淫の効果もあるみたいだ。先ほどの飯の最中の一件は、お前らは遊び半分だったというのは分かってる。
……だが、これを呑んでも、先ほども確認した約束を守ってくれるか?
……守れるというのなら、これをお前たちに渡そう」
飯の時のは遊びだったと思ってる。だが、こいつらも元は夜鷹だ。媚薬なんぞ飲ませたらこの後何をするか分からない。ダイアンと同じく、釘を刺す意味で聞いてみたが、アザミ他、女中たちは胸を張って、俺に答える。
「見くびってもらっては困りますわ。私達だって、頭領の部隊、闘鬼神の女中です。媚薬などに翻弄されませんわ!」
「アザミ姐さんの言う通りです! 媚薬なんかなくても、魅力的な女になれます!」
「そうよ。それに……私は、この体、本気で治したい。今は症状出てないけど、これからどうなるか分からないし……。
体を治して、ここで楽しく生きていたい!」
「お願いします! 頭領、そのお薬、ください!」
女たちは、口々に決意表明なり、本気で体を治癒させたいと訴えかけてくる。まあ、ここに住むことになってから、女たちにはよくしてもらってるし、毎晩美味い飯を作ってもらったり、屋敷の掃除や、たまの面倒も見てもらっている。
何より、アザミが言うように、こいつらだって、俺の闘鬼神の一員だ。
―仲間の体のことくらい、大切にしておかないといけないよな。まして、アイツと同じ女だし……―
俺は女たちに頷き、器に薬を入れていき、一人一人に渡した。
「皆の気持ちは分かった。……これからも頼むぞ!」
「「「「「ハイッ!」」」」」
俺がそう言うと、女たちは力強く頷き、黄金神薬を飲んだ。すると、女たちの体が輝く。回復薬を飲んだ時と同じ反応だな。光が収まると、女たちは自分の体を眺め、喜び合っている。
正直に言えば、治ったのかどうかまだ分からない。一応経過の観察だ。
媚薬の効果は見られないな。やはり、そこは元妓女というべきかな。アザミも、他の女たちと喜び合っている。嬉しそうで本当に良かった。やはり、“闘鬼神の女”は強くないとだめだな、と思いながら、皆の様子を見ていた。
その後は風呂に入り、自室へと戻った。そして、異界の袋から、今日手に入れた、「斬鬼」を取り出し、部屋に飾った。悪いが、無間があるからな。本当にこれは、無間が使えないときの予備の刀としておこう。それまでは、この屋敷の守り刀としておこうかな。
前の世界での俺の呼び名と同じ銘だし、ぴったりだと思ってる。それも何となく可笑しいなと思い、俺は布団をかぶった。さて、明日は何しようかな、久々に休もうかな……。
今日は魂の回廊に行けるかなと、色々考えているうちに、眠くなり、そのまま意識は落ちていった。




