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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
クレナで生活する
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第171話―神刀・斬鬼―

 取りあえず、ジゲンとシロウの目的が果たされたということで、俺達は店を出ようとした。だが、店の主人に止められる。


「そこのアンタ、待ちな」


 振り返ると、主人は俺を指さしている。ジゲンでもシロウでもなく俺に用事があるようだ。主人は俺のことをジロジロと見ていた。


「何だよ。何か用か?」

「アンタも、この刀、抜いていけよ」


 主人がそう言うと、それは良いと喜ぶジゲンとシロウ。主人は、持ってきたもう一本の刀を手にし、俺に差し出してきた。


「何故、俺が? 俺にはすでにこの無間がある。刀には困っていない」


 主人に無間を見せながらそう言ったが、主人はまっすぐと俺を見ていた。


「いや、先ほどから、鑑定スキルを使ってアンタを見ていたんだが、なかなか面白い者のようだからな。試しに、というわけだ」


 主人は無理やり、俺に零の刀を持たせた。なるほど、この世界にはあまりいない、迷い人である俺が抜いたら、どうなるのか。さらに言えば、十二星天と同じくEXスキルを持つ俺の力というのを、主人は知りたいようだ。

 俺のことを知るために、刀を抜かせるというのはまた、初めてだな。ただまあ、正直、先ほどのシロウを見ると、俺も少し自分の力というのは気になる。やってみようかと思い、柄を握った。


「……では、抜くぞ?」


 俺の問いかけに皆、うずうずするように頷く。そこまで楽しみにされてはやりづらいと思いながらも、俺は刀を抜いた。


「……ッ! なんだ!?」


 俺が持つ零の刀は、鞘から抜かれた瞬間、強く輝きだす。そして、白い波動と、黒い波動を周囲から集め、なおも輝きを強くさせていく。呆気にとられる皆の前で、強い光を放つ零の刀。それはだんだんと弱まっていき、光は収まった。


 俺は刀に目を向ける。別段、何か変わった様子は無かった。シロウの時のような装飾も無い。見た目は普通の刀だった。


 ……だが、伝わってくる力は想像以上にデカいものだ。店中の武具が震えるほどの波動をまき散らしている。ジゲンもシロウも、店の主人も冷や汗をかきながら、俺の刀を見ていた。

握っている俺でさえも、少し気圧されるような刀だった。俺は出来上がった、俺自身の刀ともいえるものを台に置こうとする。


 しかし、力を入れていないにも関わらず、台が切れてしまい、刀を置くことが出来なかった……なるほど、切れ味は良いみたいだな。


 取りあえず、鞘に納めた状態で、鑑定スキルを使い、皆で、俺の刀を調べてみた。


 ……


神刀「斬鬼」

零の刀。

それ以外の正体不明。


……


 ……シロウの時よりも開いた口がふさがらない。皆も同様だ。この際、何で、前の世界での俺の名前がそのまま、刀の銘になっているのだということは突っ込まない。

 冷静になろう……つまり、今の俺同様、よく分からないというわけだな、この刀も。どんな効果を持ち、どういった力を発揮するのか分からない。

ただ、伝わってくる力は相当なもので、ひとごろしを発動させたときの無間と互角か、それ以上の力を感じる。神刀とも出ているし、強力なものというのは間違いない。

正体が謎という点では、危険極まりないのだがな。


 俺が頭を抱えていると、皆も冷静になっていったのか、ふう~、と息を吐く。


「……とんでもねえ刀が出来たな。俺の時とはえらい違いだぜ……」

「……ああ。お前の時同様、俺自身が一番驚いている」


 最初にポツリと呟いたシロウの言葉に、そう答えた。シロウの時もすごかったが、衝撃の度合いは、こちらの方が大きい。シロウの用事でここに来たのに、俺の刀が全部持っていったと考えると、流石に申し訳なくなる。


「しかし、何とも、ムソウ殿らしい刀じゃの……」

「そりゃ、まあ、俺が抜いた零の刀だからな。否定は出来んが……。

俺はこんなに危険なのか?」

「それは、まあ……何とも……」


 ジゲンは俺の刀を見ながら、黙っていく。なるほど。ジゲンに取って俺はよく分からないけど、取りあえず、危険だと、そう見られていたか。気を付けよう……。


「それにしても、試しにと渡した最後の一本が神刀に化けるとはな……親父も浮かばれるだろうよ……」

「あ? 親父? 最後? 何のことだ?」


 店の主人は笑っているような、困っているような顔をして呟く。どういうことだと、聞く俺や、ジゲン、シロウの言葉に頷き、改めて店の主人は自己紹介する。


「ここにあった零の刀はそいつで最後の一本だ。亡き父カイケンが、遺したものだったが、最後に良いもんが見れて良かったぜ」


 店の主人はニカっと笑って、そう言った。どうやら、こいつはカイケンの息子らしい。少し前に死んだカイケンの遺言で、気に入った奴が居たら、零の刀を渡せと言われ、大事にとっていたという。

その最後の二本のうち、一本はシロウに、もう一本は俺にということで、つきものが落ちた気分だと、更に笑った。


 流石にジゲンもこの話は知らなかったみたいで、大層驚いている。息子が居たのは知っていたらしいが、よもやこいつとは思わなかったらしい。

 カイケンが死んだ後、店を継いだのは良いが、すぐ後に天宝館が出来てしまい、客足が来ることはなく、そのまま寂れていったとのことだ。一応、置いてあるのはカイケンの作った武具なのだが、性能は零の刀同様に、一癖も二癖もあるらしく、来たとしても売れることは無いだろうと、そのまま放置して、この状況になったという。

 一応は、カイケンに、鍛冶職人としてのイロハを教わったらしく、今は、下街の金物の修理などをして生計を立てているらしい。

 まあ、この男のことはもう、どうでも良い。ニカっと笑っている主人の前で、俺は出来上がった刀を見ていた。


 異様な刀というのはわかるが、それ以外にも、何か懐かしいような、優しいような柔らかい雰囲気を持っている気がする。はたから見た俺って、こんな感じなのかなと苦笑いした。


「……で、その刀、どうする? 何なら、うちの店に置こうか? それとも天宝館に売るか? 神刀だし、結構な金になると思うぜ?」


 刀を見ていると、店の主人は笑いながら、そう言ってきた。すでに無間を持っているので、それも良いなとは思った。ただ、これを他の誰かが使うのか……この危険な刀を。

それは何となく、やばいような気がする。やはり、この刀は俺が持っていた方が良いよなと思い、首を横に振った。


「……いや、貰っていくよ。いくらだ?」

「金は良い。さっきの兄ちゃんと同じく良いものが見れたからな。持ってけ」


 にこやかに笑う主人に頷き、刀を異界の袋に収めた。だが、せっかくだから、腰に差せば、というシロウの言葉に頷き、無間を異界の袋に収め、この刀を腰に差した。使うことは無いだろうが、今後は無間を天宝館に預けたり、狭い場所で無間が使えないときはこの刀を使おう。そう思いながら、ジゲンとシロウと店を後にした。


 店を出ると、辺りは夕焼けに包まれている。シロウは良い刀が手に入ったとジゲンに何度も頭を下げていた。ジゲンは気にするなと言うが、シロウは色々と礼を言いながら、ジゲンと歩いて行く。

 その後ろで、俺は刀を見ながら思案を続ける。どういった力を持つのだろうか、と。試そうにも、どんなものか分からない以上は、シロウなどと手合わせするのもためらってしまう。シロウもあの刀の試し斬りをしたいとのことだが、俺がそう言うと、納得して諦めてくれた。


 その後、ふと思いついたことがあったので、二人を呼び止める。


「なあ、二人とも、少し良いか?」

「む? 何じゃ、ムソウ殿」

「あそこでだったら、俺の刀もシロウの刀も試すことが出来るよな?」


 そう言って、河川敷を指さす。広く、周りには何もないし、誰も居ない。ここでだったら迷惑は掛からないだろうと思い、提案してみた。


「お、そうだな。じゃあ、やるか!」


 シロウはそう言って、我先にと、河辺へ駆け下りていった。まったく、子供みたいだなと、俺とジゲンは笑い、シロウの後に続いた。


 そして、取りあえず、シロウから先に試し斬りを行うという話になった。俺も、ジロウの技というのが楽しみだからな。ジゲンもそれを確かめたいと言って、シロウを見る。シロウは照れながら、自信の刀を抜いた。


「よ~し……行くぜッ! 十字斬波ッッッ!」


 シロウは刀を右斜めに振り、返す刀で、更に左斜めに振り上げた。すると、×状の斬波が空へと向かい、浮かんでいた雲を四つに切り分ける。この技は見たことがある。サネマサや、ロウガン、ナズナもやっていた。

だが、それは二本の刀を一度に振って撃つ方法だ。シロウの場合は素早く、×状に刀を振ることで、それが出来るようだ。


 大したもんだなと感心していると、更に気を溜めて、シロウは刀を振る。


「奥義・六道斬波ッッッ!!!」


 シロウの刀から、一振りで六つの斬波が放出された。あれは、刀に気を溜める際に、全体に一つの気を纏わせるのではなく、小さく刻みながら気を溜めることで出来るようだ。だが、その分威力は出ないのか、斬波は雲に届くことなく、途中で消えた。

 少し残念そうにするシロウだったが、あれも難しそうだなと思う。あんな、細かいこと、俺に出来るかなあ……。

 まあいい。先ほどの技が上手くいかなかったのか、シロウは若干悔しそうにするも、今度は川に視線をやって、刀を鞘に納めた。ツバキたちも良くやる、抜刀術の構えだ。


 フッと、脱力したかと思うと、シロウは素早く刀に手をかける。


「奥義・瞬華終刀!」


 どんな技なのか、期待して見ていた俺だったが、シロウは刀に手をかけた途端、動かなくなる。何をしているのだろうと思っていると、横でジゲンが目を見開き、呟いた。


「……大したものじゃ」


 ……いや、何がだよ。シロウの何に対して、賞賛を送ったのか分からない。首を傾げて、シロウを見ていると、シロウはスッと立ち、俺の方に歩いてきた。


「ふぅ~……まあ、こんなところだな」


 シロウはニカっと笑い、汗を拭いている。あれ? こんなに汗掻いていたっけ? まあ、いい。

こいつも何に納得しているのか知らないが、満足げに歩いてきた。


「で、どうだったよ!?」

「ふむ。見事なものじゃった」


 シロウの問いかけに、ジゲンはニコリと笑って褒めた。シロウは嬉しそうにしている。俺は未だに首を傾げていた。


「……いや、最後のは何だ?」

「ん? やはり、オッサンには酷評か……」

「いや、酷評も何も、最後の技は何だと聞いているのだ」


 他は良かったのだが、最後だけは意味不明だったので、そう言ったが、何故だかシロウの表情は明るくなっていく。またしても、何でだよと思っていると、ジゲンに肩を叩かれる。


「そろそろじゃ、ムソウ殿……」

「あ? 何が――」


 ジゲンの言葉に返そうとすると、突如、川の方から大きな音が聞こえてきた。振り返ると、先ほどシロウが立っていた辺りの水が大きな波を立てているようだった。何か、大きなものが降ってきたかのように、大波を起こし、川が荒立っている。

 呆気にとられ、呆然としていると、ジゲンが口を開く。


「これが、奥義・瞬華終刀。凄まじい速さで抜刀を行い、相手に認識されない速さで敵を斬りつける技じゃ」


 隣で、シロウが、よく知ってんな~と感心している。俺はジゲンの言葉を頭の中で反芻していた。

つまり、刀に手を置いて、ぼさっと立っていたように見えたあの瞬間、シロウは全身の力を抜き、俺にも認識できない速さで、まず、刀を抜き、川の水面を斬り、そして、納刀したということだ。だから、終わったときにあんなに汗をかいていたのか……。

しかし、全く分からなかった。もし、これが闘いだったらと思うと、俺も流石にぞっとするな。何せ、自然のものである川も切れたことに気付かず、そのまま普通に流れていたんだからな。何とも凄い男である。

 その凄い男は、期待のまなざしで俺を見てきた。俺は素直に思ったことをシロウに告げる。


「すげえな。大したものだ。最初の斬波もそうだし、最後の技に関しては俺も全く気付かなかったな」

「おお! オッサンに褒められると嬉しいものだな」


 そう言って、シロウはニカっと笑う。そして、自身の刀を確認した。どこも、傷がついていないことを確認すると、満足げに鞘に納めた。

 やはりあの速さで刀を抜いたり斬ったりしていると、普通の刀じゃもたないという。さらに言えば、最初の六つ飛び出す斬波にも耐えきれず、気を区切りながら溜めることさえできないらしい。

刀もひとまず無事だということで、本当にいい刀だとシロウは笑った。


「で、これらが、ジロウの技なのか?」

「ああ。もっとも、親父のはまだ、上の域までいっているがな」


 シロウに寄れば、雲まで届かなかった、六道斬波という技でも、ジロウがすると、雲を七つに分けることが出来たらしいし、最後の瞬華終刀でも、鞘から抜いて、何度か斬った後に納刀するということも出来たという。

 シロウが身に着けているのは、あくまでこれの基本的なことだけらしい。


「まあ、すぐに追いついて見せるけどな」


 シロウはニカっと笑って、そう言った。すると、ジゲンが微笑みながら、


「シロウ殿なら出来るじゃろうの」


 と、優しく言った。俺も、そう思っている。まだ、こいつは若いからな。先の道は長い。すぐさま、技をものにして、もっともっと強くなるんだろうなと、シロウに期待していた。


 さて、次は俺の番だ。と言っても、何をすれば良いのか分からない。取りあえずそばにある大岩の前に立ち、刀を構えた。


「何する気だ?」

「いや、試し斬りだからな。斬ろうと思って……」

「む? ムソウ殿は岩を斬ることが出来るのか?」

「まあ、無間ならな。もっとも、斬るというよりは砕くと言った方が良いかも知れないが……」


 無間の圧倒的な破壊力は主に、その重みによるものと、無間自体の頑強さによるものが、大きい。固いものなどは斬るというよりは叩きつけて砕いていると言った方が正解だ。無間ならではだな。

 ただ、この刀はどうだろうか。一応、伝わってくる力の感覚だと、行けそうな気がする。果たして、こいつは斬れるのか、それとも今まで通り、砕くのか……。俺は刀を上段から、振り下ろした。


「ん? おおっと……」


 俺が振り下ろした刀の刃は、まるで吸い込まれるように、岩に入っていく。包丁で、豆腐を切るような感覚で、大岩が斬れてしまった。辺りに破片などは飛んでおらず、斬ったということが分かった。断面を見てみると、滑らかな平らだ。

 店に居た時にも思ったが、どれだけ切れ味あるんだよ……若干使うのが怖くなってくる。


「すげえな……」

「う、む……」


 流石のシロウも、ジゲンも目を丸くして、岩の切り口を見ている。ただまあ、神刀というくらいだから、これくらいは、とジゲンは口にした。俺もシロウも切れ味に関してはそれで、納得して、次に進む。


 今度は斬波を撃ってみる。前にアヤメと話したときのことを思い出した。斬波は己の気を刀の気と合わせて撃つ技で、刀が弱いと、思ったほど威力が出ない。その時手にした、アヤメの祭儀用の刀ではうまいこと、技が出来なかった。

 今回はどうだろうか、と一応、空に向けて斬波を放つ。


「大斬波ッッッ! ……うおっとッッッ!」


 刀から飛び出た斬波は、いつもよりだいぶ大きいものだ。だが、薄く凄い速さで、雲へと向かい、スパンと浮かんでいる雲を斬った。岩の時と同様、雲の切り口も真っすぐである。

何となく、ツバキの持つ薄刃刀を思い出す。あれは鋭すぎて、魔法や、気の攻撃ならばすり抜けてしまうからな。この刀も似たようなものなら使いづらいと考えているが、あれよりも、若干太いような気がするから問題ないと思う。斬波に関しては無間よりも強くなっていることは確認できた。


「凄まじい斬波じゃの。あんな切り口は初めて見たわい……」

「……ああ。だがあれだと、面白いことが出来るかも……」


 そう言って、シロウは俺に耳元でコソコソと頼みごとをする。


「……あ? 何の意味があるんだよ」


 シロウの頼みごとが少しくだらなく思い、呆れた。すると、シロウは途端に真面目な顔になる。


「いや。連続であんなのを撃てるかどうかという確認にもなるだろ?」


 ……ああ、なるほど。確かにそれは知っておきたいな。これからも殲滅依頼はするのだろうし、「無尽」という奥義もある。あれは連続で斬波を撃つ技だからな。その確認はしておかないと。

 俺はシロウの頼みに頷き、天へと向かい、三度刀を振った。


「大・斬・波ッッッ!!!」


 刀を振る度に、斬波は放出される。連撃もいけるみたいだ。そして、俺自身にも影響はない。これなら大丈夫だな。

 さて、飛んでいく斬波は、先ほど斬った雲の片方に行き、切り口の反対側と、それに対して垂直に雲を斬った。空には真四角の雲が浮かんだ。それを見て、シロウは子供のようにはしゃぎだす。


「うお!? 本当に出来ちまった! あんなの見たことねえよ!」


 ああ、俺も見たことが無い。周りが真っすぐで、直角の頂点がある白い四角いものが空に浮かんでいるという光景は何とも奇妙で面白いものだった。


 さて、他にやることは無いかなと考え、EXスキルを使うとどうなるかと思い、スキルを発動させる。


 ―すべてをきるもの発動―


 俺の視界のあちこちに切れ目が現れる。ただ、先ほど楽に岩を斬ることが出来たので、これに関しては特に試す必要もないなと思い、スキルを解除させようとした。


 だが、ふと川の方を見てみると、空間に大きな赤い切れ目が見える。


「何だ? これ……」


 おもむろにそれを斬ってみた。


 すると、斬ったところが裂け、流れる川の水はその中に吸い込まれるように流れていく。よく見ると、斬ったところで景色がゆがんでいる……というかずれている。


 どうやら空間そのものを斬ってしまったみたいだ。呆気にとられる俺とシロウ。すると、おもむろに、ジゲンがその「裂け目」に向かって、石を投げた。石は裂け目に当たると、スパンと真っ二つになって、川へと落ちる。


「ふむ。ムソウ殿が斬ったところというのは、空間そのものが斬れており、そこに触れると、何でも切れてしまうみたいじゃの……」

「な、何落ち着いてんだよ、爺さん」

「まあ、ムソウ殿じゃからの。斬るということを極めればこういうことくらい出来るのではとは思っておったよ」


 俺やシロウが慌てているというのに、ジゲンは取り乱すことなく、そんなことを言っている。一応、無間に持ち替えて、辺りを見てみた。すると、そう言った空間の切れ目は見当たらない。どうやら、この刀を持ったときのみ、現れるようだ。

 これ、大丈夫だよな……とシロウと顔を見合わせながら、空間の裂け目を眺めていると、しばらくして、裂け目は閉じて、景色がもとに戻った。裂け目があった辺りに石を投げてみたが、何事もないのを確認し、安堵する。


 どうやら、この空間を斬るというものがこの刀の主な力の一つのようだ。切れ味が良すぎるというのも大変だと頭を掻く。

そして、いまいち、これの使い道が分からない。せいぜい向かってくる敵に罠を張るという意味で使えるかなということくらいだ。そうなる前に敵を倒し、なるべくこの技は使わないようにした方が良いかも。危ないからな……。


 さて、一通り、新しい刀の確認は終わった。俺は納刀し、シロウとジゲンの方に歩み寄る。


「これで、試し斬りは終わりだな。……何とも、使いづらいような刀を手に入れた気分だ」

「オッサンはそうかも知れんが、俺の方は満足だな!」

「うむ。まあ、使いづらいということは、ムソウ殿自体、自分が分からないほど、強いということにしておこうかの」


 刀を見ながら頭を抱えていると、良い刀を手に入れて喜ぶシロウと、なぜかこの結果は分かっていたという顔をして、ニコリと笑うジゲンが目に入る。俺もあまり深くは考えず、貰った刀を大事にしていこうと思った。


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