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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
クレナで生活する
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第138話―ギルドに報告に行く―

 今日はギルドに依頼達成の報告に向かった。たまとジゲンは朝飯を食うと自警団の奴らと共に、俺の屋敷へと向かうことになっていた。


「じゃあ、おじちゃん、行ってくるね!」

「おう。綺麗にしておいてくれよ!」


 俺の屋敷で働くことにやる気満々のたまの頭を撫でてやる。


「それで、ムソウ殿。帰りはいつごろになるのかの?」

「ああ。ギルドに行った後はツバキとリンネの様子を見に行くからな。少し遅くなるかも知れない」

「ということは妓楼に行くのか……遊びすぎるなよ」

「しねえって! まあ、そういうことだから、飯はその辺で食べるよ」


 ジゲンが要らない忠告をして、ニコッと笑った。たまは俺に手料理を食べさせることが出来なくて残念、という顔をするが、今日だけだ、と言うとニコリと笑った。

 その後、二人は屋敷へと向かった。


 俺は一応、ギリアンから貰った着物のうち、比較的綺麗なものを着て、ギルドへと向かう。相変わらず、花街に入る時、闘宴会の奴らが絡んできたが、金を渡すと、グダグダ言いながらも、すんなり入れてくれた。扱いやすくて助かる……。


 そして、花街を歩いていく。朝早いということもあって、立ち並ぶ妓楼の前で禿たちがせっせと掃除をしている。流石に人通りも少ないので、余計なことが無くて助かるな。


 高天ヶ原の前も同様。張見世には流石に誰もいないが、一人の禿が入り口の掃除をしていた。人は居るようだが、開いてはいないらしい。当たり前か、朝だもんな。

 ふむ……ツバキたちの様子を見るのはやはり後で良いな、と思い、その場を後にする。


 その後、花街を抜けて、上街へと続く門の所まで来た。門番はショウブの所の奴らだ。俺は近づき、声をかける。


「よう、上街に行きてえんだが」

「ん? ……あ! あんたはあの時の!」


 門番は俺の姿を確認すると、声を上げる。こないだギルドを出た時に絡んできたショウブ一家の奴らの一人のようだ。俺だと確認すると、怯えた表情になっていく。あの日、ここで花街を抜ける際の注意点を教えてくれた奴とは別の人間らしい。俺は一つため息をつき、口を開く。


「そんなに怯えんな。何もしねえよ。いいから早くしてくれ……」


 俺はギルドの腕輪を出し、情報を映し出す。慌てた男はそれを見て、声を上げる。


「あ、アンタがショウブ嬢から聞いたムソウ!? 噴滅龍を倒したっていう……どうりで……確認はいいっす! どうぞ!」


 男はそう言って、門を開けた。どれだけ怯えてんだ、と思いながらも男に礼を言って、門をくぐる。

 そして、そのまま、まっすぐギルドへと向かった。天宝館へは……後で良いや。ひとまず、アヤメに報告しないとな……。


 だが、ギルドに着くと、いきなり、入り口の所でアヤメが出迎えてくれた。アヤメはニカっと笑い、俺に近づいてくる。


「よ、よう! ムソウ、待っていたぜ」

「ああ。心配かけたな」


 そう言うと、してねえよ! と言って、更に笑うアヤメ。少しはしろと思ったが、まあいい。

 ふと腰の方を見ると、前にコモンの所で見せてもらった、アヤメの本来の得物を差していた。調整とやらは終わったらしい。これならいつでも闘えるな、と思い安堵した。


「で、何でお前がここに?」

「ん? あ、ああ。依頼達成の報告に来たんだろうが、素材をここで預かるわけにもいかん。このまま天宝館に向かおうと思って、ま、待っていたんだ」


 ほう、伝令魔法はちゃんと届いていたみたいだな。確かにここで素材を渡すよりは、直接ヴァルナの待つ天宝館に向かってそこで渡した方が査定もすんなりだからな。

 俺は、分かったと頷き、どこか様子がおかしいアヤメと共に天宝館に向かった。


「何かさっきから落ち着きが無いように見えるが……」

「き、気のせいだ! 行くぞ!」


 うむ、やはりおかしい。気にはなったが、正直どうでも良いと思いながら、俺とアヤメは天宝館に向かう。

 だが、俺達が向かったのは受付がある大きな建物ではなく、少し外れたところにあった、大きな倉庫のような場所だった。そこに着くと、コモンとヴァルナ、それに、ここの職員数人が俺を待っていた。


「あ、ムソウさん。ご無事で何よりです」


 コモンは俺と目が合うと、労ってくれた。


「まあな、ギリアンの装備のお陰だ」


 チラッとヴァルナを見ると、満足げな顔になっている。本当に分かりやすい奴め、と思いながら、俺達は笑った。

 しかし、なぜコモンが居るのか、と聞くと、噴滅龍、破山大猿、そして、シンムの里で手に入れることが出来た壊蛇の鱗を見に来たと言った。

 溶岩にも耐える噴滅龍の素材と、天災級魔獣、壊蛇の素材は流石に、コモンぐらいしか加工ができないとのことらしい。

 だが、それは建前で、災害級の魔獣たちの素材に興味を持ったコモンがどうしても見てみたいと言って、ここに来たという。まあ、俺としてはここの館長であり、“鍛冶神”のコモンが居るなら安心だなと思っているのでそのあたりは問題ないと思った。


「……さて、依頼については伝令魔法で達成ということはわかっている。報酬はもちろん渡す。

 だが、それに加えて魔物たちの死骸がどれくらいあるのかというのは確認しておかないといけない。それによって査定売却金が変ってくるからな。よって、俺の立ち合いの元、ここで素材の受け渡し、ということだ」


 ああ、なるほど、アヤメが居るのはそういった理由か。今回に関しては自分でもわかっている。依頼の報酬及び、素材の売却金は莫大なものだ。

 流石に支部長であるアヤメ自身が確認しないといけないか。俺はアヤメの言葉に頷いた。


「分かった。じゃあ、早速出すけどよ、噴滅龍やレッドワイバーンなどもあるが大丈夫か?」

「それは問題ないです。火炎鉱石に使う魔法をかけてありますので、地面が溶ける心配はないですよ」


 何となく心配だったことをさらりと大丈夫です、と言うコモン。そして、早く出してくださいと輝いた目で俺を見ていた。

 こういう、こいつの子供っぽいところは何となく、ボロボロの無間を預けた時のトウヤに似ていて、懐かしい気持ちになる。


 俺は少し笑って、異界の袋の中の素材を並べていった。


 ――


 噴滅龍の死骸 

 破山大猿の死骸

 壊蛇の鱗 一部分

 レッドワイバーンの死骸 発熱器官含める

 雷獣の死骸

 魚雷龍の死骸

 百足龍の死骸の一部


 剛力猿の死骸 98体

 ゴブリンの死骸 123体 うち、ゴブリンロード1体、マジックゴブリン13体

 オークの死骸 102体 うち、ジェネラルオーク3体、オークロード1体

 スライムの死骸 347体 うち、ビッグスライム2体、ヒュージスライム4体、スタースライム1体

 大鎌カマキリの死骸 325体

 オウガの死骸 257体 うち、オウガジェネラル10体、オウガロード1体

 リザードマンの死骸245体


 巨大蜘蛛の糸


 ――


「……っと、これで全部だな」


 異界の袋に収めた魔物たちの死骸を出し終え、ついでに、と拾った蜘蛛の糸を出し終えた後、一息つく。こうしてみると多いな。倉庫の中がいっぱいだ。

 噴滅龍、破山大猿、ムカデの死骸がデカいからな。余計に場所を取る。デカいスライム共は死んだらしぼんでいるからそうでもないが、それでも倉庫がいっぱいになるくらいに死骸が並んでいた。

 熱を持った噴滅龍、レッドワイバーンの所為で、倉庫内が若干熱くなる。

 にしても、こんなに倒したんだな。前に百人斬りが出来なくて、ツバキたちを起こったのが本当に馬鹿みたいだ、と苦笑いする。総計千はくだらないな。

 回収できなかったムカデガラスも居たことだし、依頼には無かった魔物たちも居たし、もっと倒しているんだよなあ。奴らが弱いのか、俺が強いのか……。


「さて、以上だ」


 素材を並べ終えて、皆の所に戻る。すると、アヤメとヴァルナは目を見開いてこちらを見ていた。周りに居た天宝館の職員共も、作業を辞めて、こちらを凝視している。


「……やはり伝令魔法と実際見るのとでは違うな」

「どうしろってんだ、これ……」


 アヤメとヴァルナは何やら頭を抱えている。おいおい、ギリアンの時は、よくやった!とか良い素材だ! とか言って褒めてくれたってのに、少し傷つくじゃねえか。

 周りの職員たちも、素材に近づいては、どう加工すれば……とか言いながら頭を捻っている。

 俺が呆れていると、すました顔のコモンが近づいてきた。


「予想はしていましたが、ミサキさんの言うように、ムソウさんは“規格外”ですね。これほどの質と量の素材は十二星天以外ではあまり無いですよ」

「ほう、そうなのか。だが、お前はさして驚いている様には見えんが……」

「十二星天の皆さんのおかげで慣れていますから……」


 ああ、なるほど。コモンは昔からサネマサ達が狩った素材を扱っているからな。これだけの量を見ても落ち着けるらしい。そもそも、このでかい倉庫はほとんどそいつらが持ち込む用のものらしく、十二星天以外でここに持ってきたのは、俺が初めてだそうだ。それなら他の職員やアヤメたちが頭を抱える理由もわかるな。


「しかし、頼んだとおり、本当に噴滅龍と破山大猿の素材、さらには壊蛇の鱗まで……。流石ですね」

「ああ。うまいこと加工してくれよ」

「ええ、もちろんです。特に噴滅龍と壊蛇の素材は、僕にしか加工できないですからね……」


 この二つの素材はやはり、生半可な温度の炎ではどうすることもできない。それらを超越する温度の炎を作り出せるコモンのスキルでしか加工は不可能と言う。コモンの言葉に、分かった、と頷き、俺は付けていた鎧と、小手をコモンに差し出した。


「じゃあ、素材の中からいくつか見繕って鎧の修繕を頼む。

 それから、ヴァルナにはギリアンの小手の強化と、出来れば修復を頼みたい。刀を持つ部分の皮が少し擦れてきたんでな……」

「……ん? ああ、ギリアンの小手か。元はオウガの皮だったな。この中だと……破山大猿が使えるかな……わかった、やってみる」


 ヴァルナは小手を受け取りながら、素材を見て、そう言った。ギリアンの作ったものはやはり、ヴァルナに任せるのが良いだろう。

 そして、コモンは鎧を調べながら、驚いた目をしていた。


「へえ……この鎧も細かく作られていますね……魔物の素材の方はこないだ見たからわかっていましたが、下地になっている鎧もよく見るとムソウさんの体に合わせて動きやすいようにできていますね……」

「ああ、前の世界の仲間が作ってくれたんだ。だが、この世界に来てワイバーンと闘って、少し不安になってな。素材を上から重ねるようにした。大事なものだからな、捨てたくない」


 トウヤが作り、皆が俺の誕生日祝いでくれたものだからな。腕輪もあり、これも無くしたくない。そう言うと、コモンはしばらく黙り込み、コクっと頷いた。


「分かりました。とりあえず、今ある素材で最高のものを作ってみましょう。当然ですが、査定売却額から引かせてもらいますが、構いませんか?」

「ああ、問題ない。金と命なら、俺は命を取るからな」


 更に言えば、引かれると言っても、これらの素材の総額に比べると、はした金だろう。何の問題はない。口には出さず、そう思っていた。


 その後しばらくして、コモンたち天宝館の職員たちは素材の数や状態を確認する。ここである程度の数字と、総額を計算し、査定売却金を用意するということらしい。

 俺とアヤメは奴らの作業を見ながら、しばらく談笑していた。


「にしても、本当にやり切るとはな。伝令魔法が届いて、各地に報告しても誰も信じようとしなかったから焦ったぜ……」

「ああ、シンムの騎士、エンライ殿からもその話は聞いたな。あと温泉街の門番たちにも疑われた。……そういや、その件で方々を説得してくれたんだよな。感謝する」


 依頼について、俺の活躍を信じなかった、他の奴ら、果ては王都などに対して、アヤメは説得を続けたという。そのおかげで、報酬が俺に届く手はずになったとエンライから聞いた。俺はアヤメに頭を下げる。


「いや、気にすんなって。……これ以上お前に怒られたくないからな……」

「……ん? 何の話だ?」


 アヤメの一言に、思わず聞き返す。アヤメはしまった、と言う顔をして、手で口を覆った。俺に怒られる? 何のことだ? こいつ、俺に何かしたっけか?


「なあ、何の話なんだ?」


 俺はアヤメに顔を近づけながら聞いた。アヤメは汗をかきだし、首を横に振る。


「い、いや、もういいじゃねえか。忘れてくれって――」

「何の……話なんだ?」


 ―死神の鬼迫―


 アヤメは、顔色を悪くして、黙る。ポツリとそれは辞めろと言われた。とりあえず、殺気を解くと、アヤメは、顔に手を当て、はあ~、とため息をついた。


「いや、ほら、ここに紹介状が必要だってことと、コモンのガキが居ること言わなかったじゃねえか……。最初の伝令魔法で覚悟しとけって言ってたじゃねえかよ……」


 アヤメは観念し、そう言った。……ああ、そういや言っていたな。すっかり忘れてた。あの時は直後だったからそれなりに思うことはあったが、ここ最近たまとジゲンのお陰で楽しいことばかりだったからな。

 すっかり失念していたし、思い出してももうどうでも良いことだと思った。


「何だ、そのことか。別にもう良いって。あの時コモンに会えなかったらどうするつもりだったんだろうと思って、俺も怒っていたが、こうして素材の査定も、装備の強化もあいつとヴァルナがやってくれることになったんだから、もう、いい」


 俺はアヤメのことを許してやった。色々裏で活躍してくれていたんだ。そのことはもう気にしない。


 ……だが、アヤメは手で顔を覆って俯いたまま、顔を上げない。何だろうと思うと、ポツリと呟く。


「実は……もう一つあるんだ……言ってなかったこと……」


 俺は顔を顰める。え……まだあるのかよ。しかもアヤメの落ち込み具合からするに今度こそやばいというような感じだ。

 内容によっては俺が怒るようなことらしい。俺はアヤメに聞いてみた。


「何のことだ?」


 すると、アヤメは意を決したようにゆっくりと顔を上げ、口を開く。


「この街の貴族で最も厄介そうな奴のことだ。花街を仕切っている闘宴会の親玉ってところだな……」


 アヤメは少し話しづらそうにそう言った。確かに興味のある話だが、怒るほどでもないな、と拍子抜けし、取りあえずどんな奴かを聞いた。


「どんな奴だ?」

「ああ。レインから来たというのは他の貴族と同じなんだが、自らの権力の大きさを誇示するように、バカでかい建物を建ててそこに何十と言う従者を連れて住んでいる。ほら、ギルドからも見えるだろう? 貴族街のあの建物のことだ」


 ああ、そういや、あるな。領主であるアヤメの屋敷と同じかそれよりもデカく感じる建物。何かの施設かと思ったが、貴族の家だったとは……。領主の家よりも大きな建物を作るとは、悪趣味な奴だな。


「んで、そいつは何と言うか、好色家でな。家の中に、従者よりも多くの女たちを妓楼から買ったりしてはべらせている」

「え、それは……なんと言うか……不安だな……」


 主にツバキが。一応は客を取らせていないらしいから、そういう心配はないが、不安にはなる。この街一番の貴族だからな。高天ヶ原にもよく行っていることだろうし。


「ああ。奴には大きな権力と、莫大な資金がある。それによって有無を言わさず女たちを引き入れているというのが、現状だ。

 まあ、一応は高天ヶ原の妓女たちは俺や、ナズナの努力で何とかなっているが、奴が本腰を上げたらきついな……」

「何者なんだよ、そいつ……」


 いくら王都からの貴族と言えども、領主に逆らうことは無い。権力で見れば、領主の方が上みたいだからな。だが、そいつはそれもお構いなしと言う感じだ。すごく気になる。すると、アヤメは、口を開く。


「神人だよ。百年戦争の折、人族と敵対した神族の末裔だ」

「神人!? 居るのか、実際に」


 驚く俺に、ああ、とアヤメは頷く。

 太古の昔、百年戦争において、その戦争のきっかけとなった神族から鬼族への侵攻。それにより大地は荒廃し、なすすべもない人族はただただ祈るだけだった。そんな人族の祈りにより、万物から精霊が出現、スキルや魔法を人族に与え、三つ巴の闘いが始まった。


 確か、こんな内容だったな、百年戦争。結果、人族と鬼族が神族を倒し、天界を封印、鬼族と不可侵条約を結び、人族はこの大地で長く生活するようになった、ということらしいが、その神族と人族の間に生まれたのが、神人だ。

 と言うことは、その貴族はその末裔と言うことになる。珍しい奴も居たもんだな……。


「……で、その神人の貴族は、レインにとっても扱いづらい存在だ。下手に手を出せばまた戦争のきっかけにもなりうるしな……

 だから、それなりの地位と金を与え、他の貴族に比べると、自由な行動が許されている。その弊害が、この街の現状ってわけだ。……俺にも口出しするくらいだからな。文句も言えない手前、参っている」


 アヤメはそう言って頭を抱えている。ちなみに、俺と会ったあの日、留守にしていたのはそいつに呼ばれていたかららしい。嫌味と共に、高天ヶ原の妓女を何時になったら売ってくれるのか、と言う催促を延々とされていたという。それが終わって俺と会ったのだから、その時に話せばよかったとアヤメは俺に謝罪するが、俺は他のことを考えている。


 いくら神人と言えども、王都がそこまで気を遣うというのは違和感があるな。元々神族は敗走軍、人界がへりくだる必要はない。対等な関係のはずだ。個人の力は上だろうが、今は十二星天も居る。ミサキが話していたシンジって奴のスキルがあれば、何とかなるだろうし、そのシンジも思わず怯えてしまうサネマサも居る。

 そして、サネマサと共に壊蛇と闘ったコモンも居ることだし。何でそこまで気を遣うんだろう……。


 まあ、何にせよ、面倒な相手と言うのは理解した。俺も神人化し、その力は主に邪悪なものを浄化する力だから、神というのは本来聖なるものと思っていたのだが、やはり、そこは人である以上、違うらしい。

 厄介な相手が近くに居た者だと俺も頭を抱える。そして、そいつは闘宴会を使って花街を管理している。花街に行って、事あるごとに闘宴会の奴らに絡まれると、今は死神の鬼迫で何とかなっているが、手を出したらこちらも手を出す、貴族といえど関係ないと思っていたが、本当に我慢しようと思った。

 ……まあ、殺気を向けるくらいは別に良いだろう……。


「……で、謝りたかったことというのはそれだったか」

「ああ。あのツバキッていう女騎士や、リンネって妖狐を高天ヶ原に置いておく以上は言わないとって思ってな……すまん!」


 アヤメはそう言って、頭を下げる。俺は一つため息をつき、アヤメを見た。確かにそいつのことを知っていれば、ツバキたちを花街に置くという選択肢はなかったな。俺が依頼をこなす間は、ツバキとリンネをシロウのところか、ショウブの所に預かってもらうということも出来たわけだ。貴族のことを言わなかったことに関してはちょっと怒っている。

 だが、そんな奴が街を荒し、アヤメが頭を抱えているということも理解できる。それにより、そこまでの怒りは感じていない。俺は拳をつくり、俺に下げているアヤメの頭をコツっと小突いた。


「……え?」


 不思議そうに顔を見上げるアヤメ。何となく間抜けな表情だ。


「これで折檻は終わりだ。次からは気を付けてくれよ。……ちなみに、もう言わないといけないことは無いよな?」


 俺が笑ってそう聞くと、アヤメはしばらくキョトンとしたが、パッと顔を上げて頷いた。ならいい、と言って、拳をアヤメから放すと、アヤメはニカっと笑う。


「許してくれんのか!? いい奴だな! お前」

「今のところは平穏に過ごしているからな。良しとするよ。それに向こうが関わってきたら、俺も神人化して、俺達は仲間だ! ってやっとけば何とかなるんじゃないか?」


 そう言うと、アヤメは、腹を抱えて笑い出す。まあ、冗談だがな。ただ、本当にやったら、その神人の貴族がどんな反応になるのかは気になる。そいつは人界でも数少ない神人ということに大きな自信と驕りを持っていそうだからな。

 自分以外にも神人が居ると知ったら、どんな風に思うのか、ワクワクするな……。悪い意味で……。


 似たもの夫婦という言葉があるが、サヤ……俺もお前に似て、悪戯をするというのがどれだけ面白いことなのか、わかって来たよ……。


 ふと、そんなことを思いながら、その後もアヤメと色々と話しながらコモンたちの作業を見ていた。 


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