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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
クレナで生活する
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第125話―魔獣の大山で魔物たちを斬る―

 翌朝、目が覚めると、たまが居なかった。どこに行ったんだろうと思っていると、下から料理を作る音が聞こえてくる。朝早いのに大したもんだと思い、俺は着替えようと、着物に手を伸ばした。

 だが、やはり昨日の夕方に干したものはそう簡単には乾かないようで、すこし湿っている。


「はあ、仕方ない。今日はもう一着の着物で行くか。……外套は……必要ないか。このまま乾かしておこう」


 俺は異界の袋から、もう一着の着物を手に取り着替え、荷物を持って下へと降りていく。そこでは、たまがせっせと朝飯の用意をしていた。


「おはよう、たま」


 声をかけると、パッとこちらを振り向くたま。


「あ、おはよう! おじちゃん! ……もう行くの?」


 振り向きざまに少し寂しそうな顔をするたまに思わず笑った。


「いや、朝飯は食うよ。ただ、料理を上に運ぶのはしんどかろう。ここで食うから、心配すんな」


 そう言うと、うん! と返事をして、料理を準備を進めていく。あ、そう言えば、朝はジゲンは来ないのか? あの爺さん、普段は何してんだろうか……。

 今日帰った時にでも聞いてみるかな。そう思いながら、今日倒す予定の魔物の資料に目を通す。


 ……


 破山大猿

 魔獣の大山に潜む巨大な魔猿。縄張り意識が強く、自らの領域に足を踏み入れる者には容赦しない。多くの大猿型の魔物を従えている。大山の生態系が変わり、付近に被害が及ばないよう、迅速な対応が求められる。


 オーク

 直立した猪型の魔物。オウガにも引けをとらない強力な筋力を持つ。さらに、オウガよりも知性があり、しばしば、付近の人族の女性が襲われるという事件が発生している。

 最上位個体のオークロードと呼ばれる個体が居る可能性がこれまでの調査で判明している。これ以上の被害が出ないためにも迅速な対応が求められる。


 リザードマン

 直立したオオトカゲ型の魔物。硬い鱗に加え、鎧をまとっているので注意。魔獣の大山のふもとにある湿地帯に潜み、獲物を狙う。付近の動物や魚類を大量に捕食し、近くの村々では食糧不足に陥っているとの報告が相次いでいる。確実に殲滅を要求する。

 群れの中に、水魔龍型の魔物の目撃情報が報告されているので要注意。


 ゴブリン

 武装した悪魔のような魔物。魔獣の大山にある洞窟で一勢力を築いている。集団の中には様々な亜種が居て、普通のゴブリンの統率を行っている。中には魔法を使うマジックゴブリン、さらには、最上位個体ゴブリンロードの目撃情報が確認されている。早急に対処せよ。


 ……


 ……ふむ。結局はどれも急いだほうが良いってことか。前に倒したことのある魔物はこの中ではゴブリンくらいか。後は知らないが、アイツらが集団になっただけで超級の依頼かと疑問に思っていたのだが、オウガのような亜種や、上位の個体も居るということで、難易度の高い依頼になったというわけか。

 デーモンの時と同じだな。となると、一匹一匹は大したことないかも知れない。何とかなりそうだな。

 問題はやはり破山大猿の方か。まあ、昨日倒した噴滅龍と同じ災害級ということならば、こちらも何とかなるかも知れないな。

 だが、こいつに当たるということは並行して、こいつの配下の大猿たちも相手にしないといけないってことだ。少々予定通りとはいきそうにないかな。

 だが、昨日約束したことだし、夕方くらいにはここに着いとかないとな……。今日は少し、本気でことに当たろっと……。


 俺はそう思い、資料を異界の袋に収めた。すると、ちょうどたまが料理を作り終えて、俺の方に持ってくる。


「おまたせ~! いっぱい食べてね!」


 そう言ってたまは卓の上に料理を並べていく。俺はたまに礼を言って、飯を食い始めた。……朝から、美味い飯が食えて幸せだ。何だろうな。何で、こんなに小さな女の子が、サヤよりも美味い料理を作れるのだろうか……。

 そんなことを思いながら、美味いと言うと、たまはニコッと笑って自らも飯を食っていく。そして、俺に話しかけてきた。


「今日はいつ帰るの?」

「昨晩も言ったように、夕方には帰ろうと思ってる。……あ、着物、まだ乾いていないからそのまま干していても良いか?」

「うん! 大丈夫だよ~。あ、あとね、今日もおじいちゃん来るけど、良いかな?」

「ああ、もちろんだ。晩飯が楽しみだな」

「やった~! ありがと! ムソウおじちゃん!」


 たまはその場で両手を上げてて喜んでいる。俺はその姿を見ながら、朝からたっぷりと癒されていた。


 その後、飯を食い終えて、俺は宿を出ていく。後ろからいってらっしゃいと言うたまに手を振り、俺は街を歩いていった。

 すると、前から近づいてくる人影に気付く。明らかに人相が悪い。……何だろう。男たちはなにやらニヤニヤしながら街を歩いていった。


 少し気になったが、クレナだしな、と思い、特に気に留めず、街の門へと歩いていった。お、昨日の門番が居る。俺は門番に近づき声をかける。


「よう、朝からお疲れさん」

「ん?……おお、冒険者のムソウだったか? 朝からまた依頼か? ……今度は一体どんな大物を倒すんだ?」


 門番は何か期待するように聞いてきた。俺は普通に、答える。


「今日は破山大猿に、オーク、リザードマン、ゴブリンの殲滅をしに行ってくる。今日もここに帰るから、待っててくれよ」


 そう言うと、門番は目を見開き、汗をかき始めた。


「そ、そうか……気を付けていくんだぞ」


 門番はそう言って、俺を門の外に出した。俺は頭を下げて街の外へと出ていく。するとチラッと先ほどの門番たちの話し声が聞こえて来た。


「おい、あの噴滅龍を倒したって男、今日は何を倒すって?」

「破山大猿だってよ……」

「ハハハッ、昨日は噴滅龍で今日は破山大猿か! 大したもんだな!」

「う~ん……やはりただの頭のいかれたほら吹きなのか? でも確かに腕輪には……」

「どうにかして改ざんしたんじゃないのか? 噴滅龍を単騎なんてあり得ねえよ。

 大方、討伐に行ったものの仲間に全滅されてショックでああなったんだろう。ほっとこうぜ」

「……だな。討伐の報せも来ないし……。だいいち、破山大猿が居る魔獣の大山まで行って討伐してまたここに帰るなんて不可能だしな……。

 少しだけ信じた俺が馬鹿だった。こりゃ厳戒態勢、まだまだ続きそうだな……にしても……かわいそうな奴だよな……」

「ああ。仲間を喪ったことが信じられず、今もここ、クレナで普通に冒険者をやってるって思いこんでんだからな……」


 などと、聞こえて来た。やかましい、と、門番たちに突っ込みたくなったが、面倒と思って辞めた。まあ、伝令魔法も送ったし、今日明日には討伐成功の報せがこの辺りにも届くだろう。それを楽しみにしとけよ……門番共。


 さて、街から少し離れ、昨日のように神人化し、空へと飛び立つ。そして、魔獣の大山に向かった。


 ◇◇◇


 日が中天に差し掛かったころ、魔獣の大山が見えてきた。行ったことも無いのになぜわかるか……。見たら分かる。

 あんなに禍々しい山はねえよ。何故か山全体が黒い霧に覆われていて、周りはジメっとしている。ついでに、変な異臭もする。恐らく毒なんだろうがな、俺には関係ない。

 さらには神人化しているから、恐らく大丈夫だ。


 というか、俺が近づいていくと、俺の通ったところが綺麗になっていくのを感じる。ああ、これが本当の浄化か。納得。


 さて、山に近づいていくと、下の方からパシャパシャと音が聞こえてくる。何だろうと下を見ると、水の上を多くの何かが歩いている。もしかして、と思い近づくと、そいつらは手にしていた槍を俺に向けて投げ出してきた。


「おっと……」


 俺は槍を躱し、そいつらに近づいていく。やはり、それは直立したオオトカゲのような魔物で、武装している。リザードマンって奴だな。俺は無間を構え、スキルを発動させた。


 ―すべてをきるもの発動―


 視界に入る全てのリザードマンの体に切れ目が見える。俺は無間を振るい、そいつらを斬っていった。リザードマンは水の上を走りながら俺に襲い掛かってくる。これでは下に降りる訳にもいかないし、あまりに近づくと水の中から引きずり込もうとしてくる。

 面倒だなと思い、飛びながら無間を振るい、向かって来るリザードマンを倒していく。そして、近くの者をあらかた倒すと、気配を探り、潜んでいるリザードマンを感知してはそこに近づき、倒していく。

 奥義を使って一網打尽にしたいところだが、資料によると、魔龍を使役しているとある。ギリギリまで倒していき、そいつをおびき寄せようと考えている。そうやって俺は一体ずつ確実に倒したり、気を使ってリザードマンを着実に減らしていく。


 ただ、このやり方だと疲れが酷い。ピクシーたちからの首飾りや、ベヒモスの鬣でできた髪飾りのお陰か、少しの力でもなんとかなっているが、流石に飛びながら長時間闘うのは慣れていないからな。

 ……まあ、そういうことなら、慣れれば良いんだがな。俺は一息つくと、無間を構えなおし、上空からの攻撃をするにはどうすればいいのか、など考えながら闘うことにした。歳だからな。楽にするにはどうすればいいのか、とか考えないと……。


 さて、そうやって体力を温存しながら闘っていき、リザードマンの足元の水場がどんどん赤くなっていく頃、近くでボコボコと音が聞こえてくる。音のする方を見ると、水上が泡だっている。

 来たか! と思い、そこらに居たリザードマンに斬波をぶつけ、一蹴する。そして、空に飛び立ち、泡が出ている方向に無間を構える。


 すると、そこから、大きく口を開けた、魚と龍が合わさったような奴が現れた。そいつは俺に向かって来る。俺はそいつが水の中から出た途端、突っ込んで行き、縦にぶった斬った。


 魔龍は縦に半分に斬られて、バシャアッ! と倒れ、水場を赤く染めていく。俺は恐れをなし、後ずさるリザードマンを見据え、無間を向ける。


「奥義・飛刃撃」


 無間から俺の視界に居る全てのリザードマンの切れ目の数だけの刃が無間から飛び出していく。刃は全てのリザードマンを斬っていく。ついでに今回の攻撃には天界の波動が纏われている。

 刃が飛ぶたびに辺りの空気が浄化されていく。ついでに赤く染まっていた水も段々と透明になっていく。

 そして、リザードマンを蹂躙しつくした刃は無間に戻っていく。……これ、どうしよう。もうリザードマンいないのに、振らないと刃達(?)が出て行こうと、うずうずしている感じになるからな……。

 今回はそれなりの数があるし。まあ、いいやと思い、取りあえず空に向けて、無間を振り上げた。無間から刃の奔流が飛びだし、辺りの空気を浄化しつつ、山の頂上の方に行き、瘴気に覆われていた山が良く見えるようにしつくしたあと、攻撃は消えていった。

 ……ああ、ああなるのか。少し、攻撃がもったいないような感じがしたが、綺麗になったな。うん、良いことだ。……もう深くは気にするまい。


 さてと、取りあえずリザードマンは殲滅できたので、昨日と同じように光葬針を出し、武者の形にして、死体を集めた。

 そして、それと共に魔龍の死骸も入れる。そういや、コイツ、何て名前なのだろうか……。気にはなったが、リザードマンを倒すのに意外と時間が経ってしまった。

 急いで、山に入ろうと思い、その場を後にした。


 山の様子は空から見ていた禍々しい感じとは打って変わって、澄んだ空気が辺りを駆け巡っている。……俺のお陰だがな。もう大丈夫だろうと思い神人化を解いた。うん、大丈夫だ。

 俺は散策でもするように山を登っていく。流石に人の通れるような道は無い。リンネでも居ればな、と思いながらも、道なき道を歩いていった。


 しばらく歩き続けると、何やら雄たけびと、金属と金属がぶつかるようなカキンッ! といったような音が遠くから聞こえてくる。

 何だろうと思い、その音のする方へ近づき、茂みに隠れて様子をうかがった。


 すると、俺の目の前で、直立した大きな猪型の魔物の集団と、以前見かけたゴブリンの集団が武器をとって闘っている。鑑定眼を使うと、猪型の魔物はオークで間違いないようだ。

 双方、他よりも豪華な鎧をまとっている、他の個体よりも大き個体もいる。あれが、上位個体ってやつだな。

 しかし、俺の目的の奴らが争っているとは好都合だ。うまくいけば漁夫の利ってやつも狙えそうだな。恐らく縄張り争いってところか?

 山の環境が変わったことで殺気立ったってところか。思わぬところで効果が出たな。え~っと……現状はオークの方が優勢か? 体格と力の差が圧倒的だ。オーク一体にゴブリン三匹くらいが固まってようやく倒しているという状況だ。

 ……おっと、ゴブリン側に魔法使いが着るような、ローブを着たゴブリンが出てきたな。

 ……あ、魔法を使った。ミニデーモンがやっていたように集団で魔法を使い、オークを蹂躙し始めた。あれがマジックゴブリンって奴だな。これで、形勢は……っと、オークの中から一際デカい個体がゴブリンたちに突っ込んでいってる。

 ゴブリンは必死に攻撃しているが、纏っている防具はそれを通さないみたいだ。近づいてきたゴブリンを蹴散らし、マジックゴブリンに近づいていくデカい個体。あれが、オークロードか? それかジェネラルか……。マジックゴブリンに、デカい鉈を振り上げるオーク、あわやマジックゴブリンがやられていくかと思いきや、後方からこれまた、他のゴブリンよりも豪華な武具を身に纏ったゴブリンが飛びだし、刀で、それを受け止める。

 態勢を崩すデカいオークだったが、すぐに立て直し、そのゴブリンと闘い始めた。結局、マジックゴブリンを倒すことが出来ず、戦況はオークの劣勢となっていった。


 意外と、こうやって眺めるのも楽しいな。そんなことを思っていると、恐らく向こうからは見えないはずなのに、一匹のオークと目が合った気がした。そいつはジッとこちらを見たかと思うと、大きな斧を振り上げながら、こちらに一直線に向かって来る。

 ……あ、猪型らしく鼻が利くのか? 今更気づいた。楽しかったが傍観するのは終わりだ。俺は飛び出し、そのオークに向かって無間を振るう。オークは縦に裂けてその場にドチャっと倒れた。

 すると、闘っていた両種族が闘いを止めて、こちらを見てきた。そして、俺に気付くや、両軍合わせて俺に攻撃仕掛けて来る。マジックゴブリンなんかは、後方から魔法を撃ってくる。俺はそれを斬り、魔物の軍勢に身を投じていく……。だが、


 バキバキバキバキッッッ!!!


 突如、周りの木が折られていく音が聞こえる。俺達は動きを止めて音のする方を見た。すると、そこらに居たオークたちよりもはるかにデカい猿のような魔物が大量の猿型の魔物を引き連れて俺達の闘いに割って入ってくる。

 ひょっとして、と思い鑑定スキルを発動させた。


 ……


 破山大猿

 太古から生きている、全ての猿型の魔物の始祖とされている。縄張り意識が強く、足を踏み入れた者には、赤子だろうと容赦しない。常に大量の剛力猿を連れている


 剛力猿

 力が強い猿型の魔物。大岩でも一掴みで持ち上げることが出来る。最も大きく重い岩を持ち上げた者が群れの長となる


 ……


 ……なるほど。つまりこの状況はゴブリンとオークの争いに乗じて、俺と同じようにこの山の覇権をとるため、破山大猿が戦に介入したというわけか。

 一人で納得し、辺りを見渡す。人族は俺一人だからな。周りは……魔物だらけだ。数は三軍合わせて……千近く居そうだな。剛力猿は武具こそ身に着けていないものの、数が圧倒的に多い。ゴブリン、オークの両軍を足しても足りそうにないな。


 さて、どうしようか、と考えていると、破山大猿が雄たけびを上げる。


「グオオオオオッッッ!!!」


 そして、胸を強く何度もたたいている。猿っていうよりは猩々だな。音を聞いた剛力猿は猛り、ゴブリン、オークは委縮している。

 そして、剛力猿たちによって倒されていく。ああ、あの行動は威嚇か何かだったみたいだな。

 そんなことを考えていると、何十匹かの剛力猿が俺の方目掛けて向かって来る。俺は無間を振り上げ、その一団を見据えた。


「連撃大斬波ッッッ!!!」


 無間を何度も振り下ろし、何発かの斬波を飛ばす。猿たちの一団は俺の攻撃に成すすべもなく斬られていく。その様子を目を見開いて、破山大猿は見ていた。

 すると、俺に視線を移したかと思うと、一直線にこちらに向かって来る。ふむ……部下がやられて黙ってるほど非情ではないか。魔物にしてはいい心構えだなと思い、俺は無間を下段に構え、大猿に向かって行く。


「ガアアアアッッッ!!!」

「オラアアアッッッ!!!」


 大猿は俺に向かって大きな拳を上から振り下ろしてくる。俺は無間を振り上げて対応、ついでに斬波を纏わせた。

 すると、拳を受け止めると同時に斬波が放出され、大猿の片腕を斬り落とした。


「ギギャアアアアッッッ!!!」


 切り口を手で押さえながら雄たけびを上げる大猿。俺は高く跳躍し、そのまま大猿の首を刎ねた。断末魔の叫びは途中で途切れ、ドサッと大きな首が地面に転がる。

 そして、ぐらりと胴体が傾き、大きな音を立てて、倒れた。


 俺は血を払い、辺りを見渡す。すると、先ほどまで争っていた魔物たちが動きを止めて三軍ともこちらを怯える目で見ている。俺が魔物の方に向き返すと、魔物たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。……う~ん、逃がしてやりたいが、クレナの領民のことを思うと、こいつらを逃すわけにもいかないな、と思い取りあえず動きを止める。


 ―死神の鬼迫―


 俺の殺意を受けた魔物たちはぴくッと動きを止めて、こちらを振り向き、ガクガクと震え出した。今回は火山でやった時と比べて楽だ。何せ目に映る奴ら全員に殺意を向ければいいって考えだからな。そして、辺りを見渡し、技を発動させる。


「奥義・飛刃撃」


 俺の無間から視界に映る、全ての敵の全ての切れ目の数だけ、刃が飛び出てくる。

 そして、辺りに居た敵を蹂躙した。デカいオークもゴブリンも、マジックゴブリンも、豪華な武具を身に着けたゴブリンも、全員斬られていく。

 その後。全てを斬りつくした刃が一斉に俺の方に帰ってくる。……どうしろってんだ、これ。刃はうずうずしているかのように無間に纏わりついている。仕方なく、再び空に向けて無間を振るった。

 すると、今までで恐らく最大級の威力であろう刃の奔流が無間から飛び出し、空へと向かって行き、凄まじい轟音と共に、霧散していった。


 こればかりは本当にもったいないことをしたと思っている。見たことはねえが、壊蛇って奴も今の一撃で倒せるんじゃないか、と心のどこかで思った。

 にしても、全てを斬った後に、追撃でもう一撃ってどんな理屈なんだよと、今更ながら思ってしまう。まあ、素材を残すという前提条件が無ければ、便利な技なんだがな……。


 そう思いながら頭を掻き、俺は神人化し、昨日と同じく光葬針で作り出した武者たちに魔物たちの死骸を集めてもらった。またしても予想より多いな。

 ちゃんとした数を数えるのは後でいいや、と思い、次々に死骸を異界の袋へ詰めていく。そして、最後に破山大猿を入れたあと、魔物たちの血で真っ赤になっていたそこらの地面を浄化する。


 よし、綺麗になったなと、一息つく。そして、異界の袋からアヤメから貰った討伐依頼の書類を取り出した。


「え~っと、今までで達成できたのは噴滅龍に、破山大猿、レッドワイバーン、オウガ、ゴブリン、オークの群れか……残るは半分か……」


 そう確認した後、残っている奴らの資料を見る。今日はまだ日も高いし、もう一つくらい依頼をこなそうと考えていた。どれにしようかと、資料と地図を広げ、悩んでいる。ちなみに一つはどうするか決めてある。

 俺がこの世界に来てワイバーンの次に倒した魔物、可愛くない奴、スライムの群れだ。

 これはギルドのあるトウショウの里からほど近い場所に群れを成しているようだ。帰りで良いだろう。

 さて……とどれにしようかな。ムカデカラスってやつと大鎌カマキリは同じようなところに居るみたいだ。ここからだと少し遠いな。これは無しだ。

 次に死骸軍。こいつは資料を見ても良くわからない点が多い。夜にしか姿を現さないみたいだしな。もう少し態勢を整えてから取り組もう。

 となると、残りは雷獣ってやつか。資料に目を通すと、


 ……


 雷獣

 雷を操るイタチのような魔獣。雷雲の力をその身に取り込み生きているため、雷雲が出ると存在に注意が必要。素材の毛皮は希少なものであり、今回の依頼は貴族からの要望である。なるべく傷が無いように討伐せよ


 ……


 と、書いてある。う~む……討伐依頼だが、実質採集依頼でもあるって訳か。傷がつかないようにってことは無間はが使えないってわけだな。

 面倒そうだ、早めに終わらせよう。とりあえず、今日はこの雷獣って奴を倒すと決めたが、あいにく今日は晴天だ。雷雲など見当たらない。困ったなあ……。


 取りあえず資料が指定している場所まで行き、付近を飛んでみるか。幸い、ここから近いみたいだし。


 俺はそう思い、魔獣の大山を飛び立ち、指定の場所に向かった。


 ◇◇◇


 さて、目的地に向かって飛び続けながらも、俺は周囲を見ている。……うん。今日は快晴だ。雷雲なんぞどこにもない。絶好の飛び日和だな! ……何だ、それ。


 まあ、良い……いや、良くねえけど。このまま行くと無駄骨になるな、とも思いながら空を飛んでいる。相変わらず下級の魔物には遭遇するが、構わず飛び続けている。地上を行った方が魔物との遭遇率は少ないだろうが、それだと、今日の夕方に宿に戻ることは出来ない。

 こんな時にリンネさえいればなあ、と何度も思うが、アイツは今、ツバキを護ってくれているんだ。贅沢言うのは辞めよう。


 そんなことを思いながらも、飛び続け、俺は目的の場所に到着する。それはクレナと、隣の領である、チャブラとの境にある山脈地帯だった。今日は山ばっかり行くなあ、と思いながら、取りあえず光葬針を武者の形にし、辺りに散らせる。

 噴滅龍の時に取りあえずやってみた方法だが、索敵にもこの技は使えるみたいだ。勝手に攻撃するのは勘弁してほしいがな。情報によると雷獣は文字通り雷を使って攻撃するらしい。

 ベヒモスみたいだな。何かあればけたたましい音がするだろう。それにいかに言っても超級の魔物だ。そう簡単には倒されないだろう。そう自分に言い聞かせながら、俺は山を進んでいく。


 ずんずんと山を登っていくが、それらしい気配はない。空を見上げると、先ほどまでと一緒、快晴だな……。雷の気配なんぞ毛ほども感じない。

 ひょっとしてだが、雷獣が超級になっている理由って、なかなか見つけにくいってことも起因しているんじゃないか? 毛皮の需要の割には、姿をそこまで見せないから苦労するとかあり得そうな話だな。


 一人でそんなことを思いながら歩いていると、腹が減ってくる。ちょうどいい木陰があったので、そこに座り、火を起こした。

 そして、異界の袋の中から旅の間に残っていた、バースト・ボアの肉を取り出す。それを尖った枝に差し、火に当てて焼き始めた。

 肉の焼けるいい匂いがしてくると、塩と黒胡椒をふりかけ、裏側を焼き始める。ああ……美味そうだな。酒でも持ってくるんだった。まあ、今回は果実水がある。これでも飲んで喉を潤すとしよう。

 さて、もうそろそろだな。そう思いながら肉を楽しみにしていると……


 バリバリバリバリバリッッッ!!!


 ……大きな音が聞こえてくる……おい……嘘だろ? なんでこんな時に。いや、多分気のせいだろう。そう思い、俺はもうすぐ焼けるだろう肉を見ていた。


 バリッッ!バリバリバリッッッ!


 ……うん。音がさっきより近い。

 そして、音のする方を見てみた。……光ってるな。しばらくすると、光った武者のような奴が、こちらにかけてくる。おお、上手く俺の所に誘導したみたいだな、うん。


 ……じゃねえよ! 何で俺が飯食おうとした瞬間に来てんだよ! ……って、そうか。俺がそうするように命じたんだった。アイツらは悪くないか、と生きていると言えばいいのかわからない、恐らく俺の力の一部に過ぎない奴らを何となく労わった。

 そして、光葬針の後からはすごい速さで近づいてくる小さな生き物がいた。鑑定眼を使うまでもない。見たままだ。けたたましい音と共に、木から木へと雷のように移動しながら鎧武者を追っている。

 俺はその魔獣、雷獣に向けてクナイを投げた。すると、雷獣はサッとそれを躱す。ムウ……速いな。どうにかして捕まえて、クナイで血抜きでもしないといけない。下手に無間で攻撃すると、大きな傷がつくからな。今回の依頼には向いていない。

 俺は目の前の光葬針と共に他に散った奴らも戻し、球の形にして、更に多く辺りに漂わせた。そして、それを雷獣に向けて一斉に向かわせる。

 雷獣は俺の攻撃を次々に躱していくが、しばらく飛んでいると、流石に疲れてきているようで、動きが鈍くなっていく。

 そして、木の枝に移り、肩で息をしだした隙を突き、クナイを雷獣に向けて投げた。


「ギャッ!!!」


 俺のクナイは正確に雷獣の頸動脈のあたりを捉え、そこから血が噴き出た。雷獣はしばらくもがき続けたかと思うと、パタッと動きを止めた。

 死んだみたいだな……うん。傷は一か所だけだ。大部分はきちんと残っている。問題ないな。俺はそれを異界の袋の中に入れた。よし、これで終わったな。


 そして、焚火の所に戻ってみる。……枝には何かの炭が刺さっている。俺は黙って、それを火の中に入れた。パチパチとそれが燃えていく様を見ていると、急に疲れが出てきた。


 今日はもう帰ろうと思い、そのままその山を後に飛び立つ。今から帰れば、夕方前にはたまの所に戻れるだろう。戻ったら少し休憩して、風呂入って、たまの作る美味い飯を食おう。

 そう思いながら、温泉街に向けて羽ばたいていった。

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