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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
マシロを旅立つ
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第110話―レイカに付き合う―

 レイカと会って、雑貨屋を目指している途中、腹が減ったなと思い、飯屋に入った。店の中は昼時ということもあり、がやがやしている。席は空いているかと不安になったが、一つだけ空いていたので、二人でそこに座り、昼飯を食っている。

 その際に、こないだの宴会のお礼、良い戦いを見た、等、店に居た奴らや、店の奴らが俺に気付き、頭を下げながら色々机に置いていった。食い切れるかなと思ったが、レイカとリンネは目を輝かせている。……多分、大丈夫だろう。

 さて、レイカは焼いた魚と、野菜をおいしそうに食べている。俺はハムラというこの世界の麺料理を食べている。

 食感的にはうどんに近いな。リンネには焼き魚と肉を与えている。今回も勢いよく食べている所為か、やはり、口の周りを汚しながら食べるので、時々口の周りを拭ってやる。


「誰も取らねえから落ち着いて食えって」

「キュウ!」


 リンネは俺が口の周りを拭いてやると、頷いた。ふと見ると、レイカの口周りも汚れていた。俺は手ぬぐいをレイカに向ける。


「ほら、お前も……」

「ひとりでできますう~!」


 そう言って、レイカは口の周りを拭った。


「ミサキちゃんから聞いていたけど、本当におじちゃんってお父さんみたいだね」

「そうか? 意識したことはないが……。そういや、お前の親ってのは居るのか?」

「うん! 居るよ~。私の故郷のゴルド領のエルフの集落でお母さんと一緒に家に住んでるの」


 レイカは嬉しそうに、両親のことを教えてくれた。なんでもゴルド領というところには、レイカ達のようなエルフとギリアンのようなドワーフという種族が多く居るらしい。その中のエルフの集落がレイカの故郷で、両親は現在そこで狩人をしながら生計を立てているという。それでレイカの得物は狩猟武器のようなものばかりなのか。

 しかし、レイカの両親か……果たして何歳なのだろう。


 そして、エルフもドワーフと同じく、手先が器用だが、両種族で違うのは、エルフは力が弱いという。だが、繊細な作業をするのはエルフの方が上らしく、ゴルド領の特産品として、彼らが作った装飾品などがあり、多くの貴族や領主に好まれているという。これは一回見ておきたいな。俺は意外とそういうのは好きだ。


「なかなか、面白そうなところだな。ゴルドも一度は行ってみたいものだ」

「おじちゃんも冒険者らしくなってきたね!」


 レイカはそう言いながら、飯を食い続ける。そうだよな、俺、冒険者だよな。正直、旅は好きだ。自分の見たこともないようなものを見たり、聞いたり、食べたりするのは年齢関係なく、心が躍るものだ。クレナに行ってトウショウの祠に行った後などは、そういったところを巡ってみるのも悪くはないかも知れない。

 その為にも、まずは地図だ。俺とレイカは飯を食い終わった後、レイカの言う、雑貨屋に向けて歩いていった。


 その後、雑貨屋に着くと、レイカは服やら食器など、旅先で使うものを眺め始めた。俺は店員に地図はどこか、と聞いて、商品棚に向かう。棚には結構な量の地図がある。各領の詳細なものから、世界地図まである。

 これだけあると、どれを買って良いか困るな。マシロからクレナまでの簡単なやつでいいんだが、ちょうど、それらしいものは見つからない。クレナまでの詳細な地図を大量に買うか、この際世界地図を買って、ある程度の方角と道は歩きながら考えるか悩んでいる。


 そうやって、商品棚を眺めていると、突然声をかけられる。


「なあ、アンタ……」

「……ん?」


 声のした方を見ると、外套を羽織り、大きな鞄を背負った俺よりもだいぶ年上くらいの男が俺を見ていた。結構な体格だ。ロウガンよりも少し大きいくらいか。だが、表情は優し気である。帽子を深くかぶっているが、長い白髪から時折見える目は穏やかなものだ。


「何だ?」


 俺がその男を眺めていると、すっと商品棚を指さす。


「地図が欲しいのか?」

「ああ。これから、旅に出るからな。ただ、これだけあるとどれを買っていいものかと悩んでしまうが……」


 そう言うと、男はジッと俺を見てきた。何だろうな、と思っていると、男は何やら懐から紙を取り出した。そして、いくつか質問をしてくる。


「アンタ、旅が好きなのか?」

「旅か? ああ、好きだぞ。やはりこの歳になっても見たこともないものを見るとワクワクするからな」

「ふむ……では、もしもアンタがこの世界を回りつくした、見たこともないものを見尽くした後はどうする?」


 男の質問に首を傾げる。おかしなことを聞くもんだな、と思った。だが、なかなか難しい。そんなこと考えたこともなかった。俺は素直に自分の考えを男に言った。


「そうなったら……次は仲間や家族と回りたいな。素晴らしいものとか独り占めすると、妻が怒りそうなものだからな。……まあ、家族はもう亡くしてしまったが……。

 それに、今だって世界は変化を続けている。前見たものはもう無くなっているかもしれないし、代わりに前見なかったものが、あるかもしれない。そういった変化を楽しむのも良いかも知れないな」


 俺がそう言うと、男はしばらく考えを巡らせ、そうか、と頷き、手にしていた紙を俺に差し出してきた。


「これで良ければやるぞ」


 男に渡された紙を見ると、そこには世界全体の地図が描かれている。だが、紙に普通に描いたものではないみたいだ。文字や、絵が浮かんでいるように見える。


「何だ、これは?」


 地図は地図だが、世界地図はすでに売っているものだ。ありがたいのだが、わざわざ貰うものでもないなあと思っていると、男はフッと笑みを浮かべながら口を開く。


「それは、魔法によって描かれた魔法の地図だ。今は世界地図だが、見たい箇所を指で触ると、そこの部分だけの詳細な地図が浮かび上がる。

 そうだな……マシロはこの辺りか」


 男はそう言って、地図のある部分を指でつついた。すると、絵柄が変わり、マシロの街の地図が紙に描かれていく。俺は目を見開き、肩の上のリンネもその地図を凝視している。


「うおっ! すげえな。これは便利だ!」


 地図はもう一度触ってみると、世界地図に戻った。そして、クレナと書かれた場所をつついてみる。

 すると、今度はその辺りの詳細な地図が浮かんだ。さらに紙をなぞると、映し出されている地図が動いている。あ、これは良いな。これなら迷うことなく行けそうだ。何度かいろんなことを試しているうちに、男が口を開いた。


「気に入ってくれたみたいだな」

「ああ。こんな便利なものがあったとはな。ここの商品棚の地図を全部買うのと同じ意味だからな。……だが、これは、高いんじゃねえのか?」


 値段のことを心配し、聞いてみた。何せ、そこの商品棚のものを全部買うとなると、相当なものだからな。まあ、俺は買えなくはないが、やはり気になる。

 すると、男は手を俺の前に出して、首を横にふった。


「金はいい。見たところ、お前さんもいい歳だろう。だが、次の旅に向ける思いは、少年のようにも見える。俺はそんなお前さんが気に入った。その地図はくれてやる」


 男はそう言って、笑った。何と言うか、気前が良いというか、お人よしというか、気持ちのいい爺さんのようだな……。

 だが、良いものを貰って何もしないというのはやはり元・傭兵としては我慢が出来ないな。


「わかった。だが、その代わりに困ったことがあったら言ってくれ。この地図を貰った恩として、必ず俺が助けてやる」


 俺がそう言うと、男は目を見開き、ゆっくりと口を開く。


「驚いたな……助けてやるという言葉は久しぶりに聞いた……」


 どこかで聞いたことがあるような言葉を放ちながら、俺をじっくりと見た後に、ぽつりと呟く。


「なるほど……そういうことか……」

「ん? 何だ?」

「……あ、いや、なんでもない。……うむ、そうだな。では何かあったらお前さんを頼るとするとしよう」

「ああ。俺は冒険者ムソウだ。よろしくな」


 俺がそう言うと、男は頷き、去っていった。俺とリンネは男に手を振る。


 本当にいいものを貰ったと思い、嬉しくなったが、何も買わないでこの雑貨屋を出るのも気が引けたので、次に装飾品が並ぶ箇所に向かう。


 そこにはレイカが居て、俺と目が合うとニコッと笑って駆け寄ってきた。


「あ、おじちゃん! 地図はもう良いの?」

「ああ。良いものを貰った」

「貰った? ……ま、いっか。それでここには何しに?」


 不思議そうな顔をするレイカに取りあえず事情を説明した。レイカは、俺に分かったと頷いて、ニコニコとしている。


「おじちゃんって見た目に似合わず、そういうことも考えるんだね。私だったら、そのままお店を出るけど」

「中に入ったのに何も買わないというのはどうもな……」


 俺はそう言って、商品棚を見渡す。何かいいものは無いかと探してみるが、やはり女性向けのモノが多いな。指輪や、首飾りなどは男が付けるにはどうかな、というものばかりだ。そうやって悩んでいると、レイカが棚の一部を指差して、俺の服を引っ張った。


「ねえ、おじちゃん、こういうのは?」


 レイカが差したところを見ると、何かの毛や羽根が使われたものが、棚に下がっている。なんだこれは、と尋ねると、髪に結ぶ飾り物らしい。

 冒険者たちが狩った魔物の素材によって出来たそれは、身に着けると、何らかの付与効果のようなものもついているみたいだ。そう言えば、俺も前は、アキラがトウガの毛で作ったという髪飾りをしていたな。

 似たようなものかと思い、並んでいる商品を眺めた。すると、レイカが、あ! と言って、その中の一つを手に取った。


「これとか良いと思うよ!」

「これはどんな魔物だ?」

「えっと、ベヒモスの毛で作ってるみたい。後はデーモンかな。……多分、おじちゃんやミサキちゃんが討伐したものじゃないかな」


 そう言って、レイカはその髪飾りを俺に渡してくる。ふむ、素材となった魔物を聞くと確かに俺達のものみたいだな。……実際は俺だけだがな、と思いつつ、それを着けてみた。


 ……あ、良いなこれ。付与効果には、魔法耐性と、身体能力向上というのがついているみたいだ。まあ、それは良いとして、自分で言うのも変だが、俺に似合っている気がする。


「これはいいな。選んでくれてありがとう、レイカ」

「うん! おじちゃん、似合っているよ!」


 なるほど。この世界の流行とかはよくわからないが、二百年生きているレイカが「似合っている」と言うのなら、これはおかしくないのだろう。

 そう思い、俺は髪飾りを買って、雑貨屋を後にした。


 今、俺が身に着けているものは、ベヒモスのたてがみで作った外套に着物、それに、今買った髪飾り、それと合わせて無間か。段々とこっちの世界に染まっていく自分がおかしくなり、笑っていた。


 レイカが、一人笑っている俺を不思議そうに見てくるので、慌ててごまかし、次は何をしようかと、街を歩いている。すると、


「あ、暇ならさ、一緒にやりたいことがあるんだけど」


 と、レイカは俺の腕を掴んで走っていく。そんなに慌てなくても、仲間の頼みくらい聞いてやるとは思いつつ、俺はレイカについていった。


 ◇◇◇


 レイカが連れてきた場所は、以前騎士団の奴らと訓練をした広場だった。何をするんだろうと思っていたが、それで大体予想はついた。レイカは広場の中心の方に俺を引っ張っていき、俺の前に立つ。


「よしっ!……おじちゃん、私がこれから何したいか分かる?」

「何となくな。……良いぜ、かかってきな」


 レイカの問いにそう答えると、レイカはうん!と言って、俺から距離をとった。そして、武器を構える。レイカの得物は小刀みたいだな。それを逆手に持ち、姿勢を低くしていた。ほう、ギルドの試験の時は離れたところから攻撃するだけだったが、今回は接近戦でもするのか?そう思い、俺も無間を抜いて、構える。


 しばらく俺達は見つめ合う。すると、少し離れた所から、リンネが鳴いた。


「キュウッ!」


 それと同時に、レイカは俺に突っ込んでくる。そして、持っている小刀に炎を纏わせた。


「炎斬ッ!」

「っと……」


 レイカはそのまま斬りかかってくるが、俺はそれを無間で受け止める。攻撃を受けると、武器にまとわりついていた炎は消えた。なるほど、魔法を武器に纏わせているのか。確かに攻撃力自体は上がるな。だが、受けられた時に消えるのが難点か。そう思っていると、レイカは武器を持っていない方の手を俺に向けて、魔法を撃とうとしてくる。


「火球!」

「おわっと!」


 俺は慌ててレイカから離れ、魔法を躱す。お返しとばかりに剛掌波を放ったが、レイカは身を翻し、俺の攻撃を躱し、距離をとった。


「やる~! 当たるって思ったのになあ~」


 レイカは楽しそうにそう言って喜んでいる。いや、実際危なかったな。レイカの武器に纏わりついていた炎は消えたんじゃなくて、消したんだろう。魔法の多重行使は熟練の魔法使いにしかできないって聞いたからな。なかなか上手い攻撃の仕方だと、つい感心してしまう。


「やるじゃねえか。じゃ、次はこちらから行くぞ!」


 俺は飛び出して、無間を振り上げる。すると、レイカはニヤッと笑って、異界の袋から外套のようなものを取り出し、それを羽織った。すると、だんだんレイカの姿が消えていく。


「あ!? ……っと」


 もう少しで攻撃が届きそうというところでレイカの姿は完全に消え、俺の攻撃は空ぶってしまった。

 ああ、そういや、迷彩トカゲの皮という不可視状態になれるものを持っていたな。それを使ったというわけか。試験の時とは違って、今回は完全に見えなくなっている。

 俺はいったん下がり、広場の中心へと移動した。しかし、レイカもよくわかっているな。いつもの調子だと、俺に話しかけそうなものだが、一言も喋らない。

 恐らく、あの道具は見えなくはなるが、音を消すことは出来ないはずだ。調子に乗って俺に話しかけてくれることを期待していたが、駄目だな。そう思い、身を屈め、地面に手を置いた。


 ……


 ……


 ……タッタッタッタ……


 ……お? レイカは俺の周りを走り回っているな……ん? 止まった。


 と、ここで、俺の背後からヒュッと風を切る音が聞こえる。


「そこか!」


 俺は振り向き、背後から飛んできていたクナイのようなものを指で挟み、受け止めると、すぐさま、飛んできた方向に向けて思いっきり投げた。すると、


「わあ~!」


 と、声がして、俺の前方でトスンッと足音よりも大きな音が聞こえる。距離はそこまで離れていない。十歩ほど歩くと届きそうだ。俺はその音のした方向に飛び出し、足跡と……これは尻だな。尻の跡がついているところに無間を向ける。


「このまま斬っても良いか?」


 俺がそう言うと、観念したのかレイカはバッと外套を脱ぎ捨てた。すると、怯える目で俺を見ながら手を上げている。


「ま、まいりましたあ~」


 それを聞いて、俺は無間をしまい、レイカを立たせた。レイカは尻についた泥を落としながら、


「はあ~あ……結構追い詰めたと思ったのに~……」


 と、悔しがっていた。


「そんなに落ち込むなって。実際結構追い詰められたぞ」


 落ち込んでいるレイカにそう言ってやると、レイカは元気を取り戻していき、大きく胸を張っていた。俺はそんなレイカを撫でてやった。またしてもレイカは喜んでいる。

 すると、リンネが駆け寄ってきて、レイカの肩に上り、闘いを労うように、レイカの頬をポンポンと叩く。更にレイカは嬉しそうな顔をして、リンネの頭を撫でた。


「エヘヘ~……ありがと~」


 ミサキに修行をつけてもらっているレイカだが、外套や、武器に魔力を込めるやり方などは、ウィズに教えて貰っているらしい。魔道具を使いこなすことで、戦闘面での活躍の場を広げるというのは、流石だなあと思った。力の弱い者でも、いっぱしの戦い方が出来るというのはこの世界ならではだな。


「さて……稽古をする前に、幾つか聞きてえことがあるんだが」

「うん! なんでも聞いて?」


 レイカはそう言って、俺の目を見てくる。俺は戦闘中に気になったことを聞いてみた。ここからは、俺に出来るやり方で、レイカを強くしていこう……。


 まず、最初にレイカがやった武器への魔法付与。レイカによると、それ自体は意外と簡単らしい。体内の魔力を体外に排出する通常の魔法の感覚で武器に流し込むようにすると出来るらしい。

 だが、武器に纏わせた魔法をそれぞれの武器の特性に合わせて射出するのは難しいという。武器の特性や能力に合わせて魔法の調整をしないといけないからな。


「……で、それが出来るのが魔法戦士ってわけなの」

「なるほど。単に武器に魔法を与えるだけじゃダメなんだな」


 レイカの言葉に納得した。以前ウィズたちから聞いた魔法と武術を組み合わせて闘う者達である、魔法戦士の闘い方というのは先ほどのレイカがやってみせたものかと思ったが、少し違うみたいだ。まあ、今のレイカが出来るのなら、もっと多くの人間が魔法戦士になっているものな……。


 俺が一人納得していると、レイカがちょいちょいっと俺の着物を引っ張った。


「ねえ、おじちゃん」

「ん? なんだ?」

「私に新しい技を教えてくれない?」


 レイカは懇願するように俺を覗きこむ。何でもこれから旅に出るのは良いが、やはり決定打となる強力な技を未だに習得できていないという。試験の際にロウガンが言ったように自分ではまだ、下級の相手くらいしか倒せないという。


 俺はわかった、と頷いた。元より、そのつもりだからな。俺が頷くと、レイカはやったーと言ってぴょんぴょん跳ねている。


 さっそく伝授、と行きたいところだが、こいつの能力がよくわからない。なので、レイカを鑑定してみた。


 ……


 名前:レイカ

 年齢:223

 出身:不明(現段階では視れない)

 職業:冒険者、魔法使い

 種族:エルフ

 所持武器:エルフの狩猟具、迷彩トカゲの外套

 スキル:鑑定、調合、心眼、砲術、隠蔽

 技:不明(現段階では視れない)


 ……うん。出身と技は未だに見られないか。だが、これだけ分かれば良い。一応、分からないものは聞いておく。


 スキルは大体理解していたが、隠蔽はわからない。聞いてみると、どうやら気配を隠すものらしい。主に索敵や、潜入などに役立つという。極めれば迷彩トカゲの外套が無くても存在自体を隠すことが出来るようになるという。

 見ることも、聞くことも、嗅ぐことも出来なくなるとレイカは言うが、特にこのスキルは新技には要らないか。そう思い、レイカにどんな魔法が使えるか聞いてみた。


 今の所、レイカが使える魔法は、火と風のものらしい。どちらも下級の魔法くらいしか使えないという。そもそも魔法には適正属性というのがあり、得手不得手が一人一人違うという。

 練習すれば、他の魔法も使えるようになるらしいが、不得手なものはいくら練習しても駄目らしい。ミサキだけが、全ての属性、魔法に適性があるので、アイツはいろんな魔法を駆使することが出来るという。……反対に、俺に関しては全ての魔法に適正無しだ。やはり、そこは羨ましいと思っている。


 さて、下級の魔法と言ってもどんなのが使えるかを聞いてみると、レイカは色々見せてくれる。


「まず、よく見せる火球。次に、風魔法の一つ、旋風」

「それはどんな魔法だ?」

「えっとね、敵を風で包み込んで攻撃する感じかな……こうやって」


 そう言って、レイカは魔法を発動させた。すると、俺達の前にあった岩の周りにつむじ風が起き、小さな傷をいくつも岩につけていく。


「なるほど……ミサキが俺にやっていた魔法の初期段階というわけか」

「たぶん、そうだね。ミサキちゃんはこれに氷魔法とか、風の刃とかを混ぜてもっと強力なものにしていたけど」


 ああ、あの魔法も多重行使だったか。流石にそこまではレイカも出来ないな。だが、これは使えそうだ。


「よし、レイカ。良い技が思い浮かんだぞ」

「ほんと~!? どんなの!?」


 そう言って目を輝かせるレイカに、編み出した技を教えていく。


「まずは取りあえず、先ほどの旋風という魔法を発動させろ。で、風を作り出し、敵を閉じ込めたら、そこに大量のクナイを投げろ。お前は砲術スキルを持っている。投げれば必ず敵に当たるんだよな?

 なら、お前が放ったクナイは風でぶれながらも必ず敵に当たっていくというわけだ。四方八方から浴びるクナイの雨に敵はあっという間に倒されていくだろう」


 要は、俺がやっている竜巻に斬波を乗せる技のクナイ版だ。あれは良い技だからな。上手く使えば防御にもなるし、極めれば、魔物の大群でも一網打尽に出来る。今は力が無くても大丈夫だろう。


「わかった! ちょっとやってみるね! ……旋風!」


 レイカは俺の言葉に頷き、魔法を発動させる。先ほどの岩の周りを囲うようにつむじ風が発生する。レイカはそれめがけて懐から大量のクナイや、手裏剣を放つ。だが、それらは風に阻まれ、ぽとぽとと落ちていった。


「あれ~? 失敗しちゃった」

「ふむ……風が強すぎるのか?

 ……今度は先に武器を投げて、風を起こしてみろ」


 レイカは頷き、今度は先ほどとは逆の順番で技を放つ。すると、今度は上手くいった。クナイや手裏剣が岩に当たる寸前につむじ風がそれらを巻き上げる。

 そして、岩の周りでクナイや手裏剣が踊りながら、次々に岩に刺さっていった。ほう、レイカも二つまでなら魔法の多重行使は出来るのか。武器に魔法をつけて威力を上げるとともに風を起こすか。

 俺は武器に気を纏わせて強くしているが、レイカは気功スキルを持っていない。そこを魔力で補っているというところか。となれば、魔力を上げることで、クナイの威力も上げられるという可能性も出てくる。闘いでの幅があって羨ましい……。


 そうしているうちに風は止み、岩には無数の手裏剣やクナイが刺さっている。すると、武器が刺さっていたところから、岩にひびが入っていき、ガラガラと崩れた。それを見ながら、結構えげつない技を教えてしまったなと苦笑いした。


「やった! 出来た! 出来たよ! おじちゃん!」


 レイカは隣で嬉しそうに俺にそう言ってきた。俺はレイカの頭を撫でて褒めた。


「上出来だな。この技は練習すれば、ミサキのように大きな竜巻を起こしつつ、更に強力な武器に強力な魔法を纏わせることで、上級以上の魔物でも狩ることが出来るはずだ。頑張れよ!」

「うん! ありがと!」


 レイカはそう言って、俺に跳びついてきた。若干驚くが、気にせず、レイカの頭を撫でてやる。喜んでもらえて何よりだ。


 その後は夕暮れ近くまで、レイカとその技を特訓した。ある程度慣れてきたのをみて、レイカも、ミサキやハクビ、ウィズといった手練れの者達に引けを取らず、安全に旅が出来ることを感じていた。


ムソウが貰った地図は地図アプリを起動させているタブレット端末のようなものを想像してください

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