第109話―旅の準備をする―
俺がマシロの街に着くころには日は沈み、辺りはすっかり暗くなっていた。人通りも少ない。家々に灯りが付き、家族の笑い声が聞こえてくる。
漂ってくる美味しそうな匂いを嗅いでいると、俺とリンネの腹が鳴り、リンネは肩の上でしょぼんとした。……早くギルドに行こう。
少し早足気味で、ギルドへと戻った。案の定すでに業務は終わっているみたいだ。受付の所には誰も居ない。仕方ない。達成の報告は明日にしよう。
しかし、困ったな。これだと今日も泊まれるのか分からない。マリーじゃなくても一人いれば良いのだが……。こんなことなら、朝に一言、言っておくんだったと後悔しながら、辺りを見渡した。
すると、ロウガンとリンスが、食堂で飯を食っているのを見つけた。しめた、と思い、近づき声をかける。
「よお」
「ん? おお、ムソウか! なんだ? 今帰って来たのか?」
「ああ。採集依頼がここまで辛いとは思わなかったよ」
「何かあったのですか?」
「いや、あの山に行ったんだが、吹雪に遭ってな。しばらくそれをやり過ごしていた」
「そうだったか……山の天候は変わりやすいというからな。まあ、無事で何よりだ。とりあえず座れよ」
ロウガンはそう言って、自身の横の椅子を引いて、俺に手招きする。俺は礼を言って、椅子に座った。
そして、俺も店員に飯を頼んだ。料理が来ると、俺とリンネは思いっきりがっついた。今日一日、ほとんど何も食べていなかったし、吹雪で体は疲れていたし、な。
「あ、リンネ! それは俺の肉だぞ!」
「キュウ~~~!!!」
偶に俺とリンネでデカい肉の取り合いがあると、横に居たロウガンが、その肉を半分に切り、仲良く分けろ、と俺達を見て呆れていたりもした。
その後、ひとしきり、飯を食ったあと、俺は盃に入れられた、わいんを口に運ぶ。
「ぷはあっ! あ~、食った、食った」
「キュ~」
俺とリンネは運ばれてきた料理を平らげ、満足げに腹をさする。リンネはその後果実を切り分けたものを食べ始めた。果汁が口の周りについていくたび、俺は手ぬぐいでそれを拭いてやる。そんなことをていると、ロウガンが話しかけてきた。
「すごい食欲だったな。そんなに苦労したか」
「ある意味、今までの依頼で一番きつかったな」
「ハハハッ! やはりムソウでも自然には敵わないか……で、依頼はどうだったんだ?」
「ああ、それ自体は何とかなった。しかも氷冷鉱塊だ。報酬上乗せだったな?」
「ほう……魔鉱塊を持ってくるとはな。上手く鉱脈でも掘り当てたか?」
「あ、いや。アイスゴーレムってのがいてな。仲良くなって貰ったんだ」
今日の依頼の出来事を報告していくと、ロウガンは不思議そうな顔をした。
「ん? アイスゴーレムがあの山にか……聞いたことないが、最近現れたのか?」
「そうなのか? 俺は知らないが、そこまで気性の荒いという雰囲気は無かったし、むしろ優しい性格だったな。氷冷鉱石も貰ったし、討伐はやめてくれよな」
アイスゴーレムに関しては、少なくとも害は無いと思っている。リンネのことも撫でていたし、攻撃してきたことも気にしていないようだったしな。そっとしておくのが一番良いと言うと、ロウガンは頷いた。
「ああ。話を聞く限りじゃ、人畜無害そうだからな。まあ、大丈夫だろ」
よし、取りあえず、アイスゴーレムに関しては何とかなるだろう。こちらとしても、無用な殺し合いは避けたいからな。とりあえず、この一件は、もういい。
「でよ、ロウガン」
「ん? 何だ?」
「今日って、ギルドの部屋開いているか?」
「ん? 泊まるかどうかマリーに言っていなかったのか?」
「ああ、すまない」
「まったく……おい、リンスどうだ?」
ロウガンはそう言って、リンスに視線を移す。リンスは、お待ちくださいと言って、席を立った。
そして、マリーたちがいつもいる受付の所まで行くと、何か帳簿のようなものを見ながら戻ってきた。
「え~……と、本日は……はい、大丈夫です。まだ、空き部屋がありますね」
リンスの言葉に、わかった、とうなずき、取りあえず、俺は部屋を確保できた。これで、安心だな。そう思いながら、俺は酒を呑んでいる。
ロウガンが未だに昨晩ミサキとどうだったか、を聞いてきたので、もういいやと思い、本当のことを話してやった。紛らわしい言い方をしたこっちも悪いと思って頭を下げると、ロウガンとリンスは頭を抱えながら、本当に良かった、と何度も言っていた。
そうしていると、ロウガンは思い出したように俺に口を開く。
「あ、そう言えばムソウ。ミサキ様は明後日にはここを出るらしいが、お前はいつここを旅立つつもりだ?」
「ああ、ミサキが旅立つ次の日って考えていたから、明々後日ってことになるな。……急か?」
「いや、確かそんな話だったからな。こちらは大丈夫だ。で、その時にミサキ様から聞いたんだが、伝令魔法の魔道具が欲しいんだってな」
「ん?ああ……そう言えば、言うのを忘れていたな……」
「まあ、ここ最近色々あったからな。で、話を戻すんだが、その魔道具は俺から用意しておくから、朝言ったように、明日の夕方、俺の所に来た時に渡す」
「そうか。助かる。にしても、明日の話って?」
「来れば、分かる。悪い話じゃないから楽しみにしとけ」
ロウガンはそう言って、笑っていた。少し不思議に思ったが、悪い話ではないなら、良いやと思い、それ以上はロウガンにも尋ねなかった。
その後、飯を食い終えた俺達は別れて、俺はギルドの部屋へと向かった。
そして、身体を拭く。背中などはリンネが、器用に前足を使って拭いてくれている。ありがたいな、と思い、次にリンネの毛づくろいをしてやった。リンネは気持ちよさそうに笑っている。
そして、しばらくリンネと遊んだ後、一緒に布団にくるまった。疲れていたので、その日は、目を瞑った途端に一気に眠気が襲ってきて、俺達はすぐに寝息を立てた……。
◇◇◇
翌朝、目が覚めると、顔を洗い着替えて、最初にエリーの所へと向かった。採集した氷冷鉱塊を査定に出すためだ。もう何度もこの作業をしているのに、妙に懐かしい気になってくるのが、不思議だ。
まあ、ここ最近は呪いの一件が続き、ギルドも昨日から改めて通常の業務を行っているからな。ちゃんと報酬を貰えるか若干心配だったが、取りあえず、と思い、査定の受付へと向かう
「よお」
「あ、ムソウさん。おはようございます!」
エリーはいつも通り、元気よく俺に頭を下げる。何かこのやり取りも久しぶりだな、と思いつつ氷冷鉱塊をエリーの前に出した。
「査定を頼む。一応、魔鉱塊ってやつだ」
「あ、本当ですね。分かりました。少々、お待ちください……」
エリーはそう言って、奥へと入っていった。魔鉱塊という部分を強調して伝えると、エリーはクスっと笑う。若干、恥ずかしくなった。
すると、すぐにこちらへ戻ってきた。ふむ……いつもと違って速いな。まあ、出したものは氷冷鉱塊一つだからな。査定にはそんなに時間はかからないか。
「はい、お待たせいたしました。確かに、氷冷鉱塊ですね。ではこちらが、査定票です」
そう言って、エリーは査定表を俺に渡す。……む、このやり取りも何か久しぶりな気がするな。まあ、いい。俺は査定票を受け取り、エリーの頭を撫でた。
「ありがとう、エリー。お前もいつも通りで嬉しいよ」
「エヘヘ……ありがとうございます」
エリーは嬉しそうに顔を赤らめながら、そう呟いた。その後、エリーと別れ、マリーの元へと向かう。
「よ、おはよう」
「あ、ムソウさん、おはようございます。昨日の依頼の件ですね?」
「ああ。これが、査定票だ」
「はい、確かに……っと……はい……よし……。
はい! 依頼達成確認いたしました。今回は氷冷鉱石の採集依頼でしたが、ムソウさんの採集したのは氷冷鉱塊ということで、こちら、報酬の銀貨500枚になります」
マリーはそう言って、銀貨の入った袋を俺の前に出した。俺はそれを受け取り、異界の袋に入れる。ふむ、きちんと入っているみたいだな。安心した。
「ありがとう、マリーさん。報酬が貰えるか心配だったが、杞憂だったみたいだ」
「ええ、元々こちらの依頼は前払いで受け付けておりましたので、大丈夫です。……今日もこの後、別の依頼をされますか?」
そう言われて、少し悩む。先ほど、依頼票を確認してみたが、ほとんど昨日と変わりなかった。
昨日は、散々悩んで、クレナに行く前にと言うことで、初めての採集依頼に向かったので、今日もどの依頼にするか散々悩むはずだ。なので、別の用事を済ませることにした。
「いや、俺も明後日にはマシロを出るからな。ちょっと準備をしたりする。で、夕方にはロウガンの話とやらがあるから、またその頃に来るよ」
「分かりました。ところで、お泊りの予約、今しておきますか?」
お、マリーの方から聞いてくれるとはありがたい。無論、俺は頷いた。
「そうだな。じゃあ、頼むよ」
「かしこまりました。そのようにしておきます。では、ムソウさん、お気をつけて」
俺はマリーに頷き、ギルドを出た。
さて、ギルドを出た後は、露店が並ぶ区域に入り、長旅の準備をする。干し肉や、干し魚、調味料などの食糧などは多めだ。リンネも居るからな。旅先で調達できなかったことを考えると、多めに買っておいた方が良いだろう。一応、異界の袋があるから、干したものではなくても良いのだが、こちらの方が、すぐに食えると思い、大量の干し肉を買っていく。
その後は武器屋に寄った。クナイや、手投げ弾などはあるかなと思って、来てみると、意外と物は揃っていた。そこではクナイ数本と鉤縄、それから、麻痺爆弾という、炸裂したら、辺りにしびれ効果がある粉末をまき散らすものと、小規模な爆発を起こす炸裂弾(小)、強烈な光で相手の視力を一時的に奪う閃光弾というものを、それぞれいくつか買っておいた。
武器屋を出て、他に何か要るかなと町中を歩いていると、ある店が目についた。まあ、店というか、その店の前に掲げてあった、看板なんだが……。
「冒険者様限定! 旅用民家大安売り! 金貨10枚から」
……旅用の民家ってなんだよ……少し気になってみたので、覗いてみる。すると、一人暮らしにはちょうど良さそうな大きさの家から、大豪邸のような大きな屋敷のようなもの、それとは反対に、小屋のような粗末なものなど、様々な建物……が、描かれた紙が、店の中にびっしりと貼られていて、下には値段が書かれている。
……正直、今の持ち金は約金貨340枚。大豪邸までとはいかないが、それなりに大きな家が買えるくらいの金を持っている。この世界の金銭感覚にはまだ慣れていないが、結構な額を持っているんだと改めて実感した。
さて、どうやらここでは、建物そのものは売らず、契約だけするといった場所らしい。ただ、いかんせん意味が分からないので、店員に尋ねてみる。
「なあ、アンタ……」
「はい……って、あ! 冒険者のムソウさんですか!?」
俺が声をかけた奴は、俺を見るなり声を裏返して驚いていた。俺が頷くと、握手を求めてきた。
「いやあ~、呪いの事件を解決させた手腕、お見事です!」
そう言って、手を差し出されるも、俺はそれを拒む。普段なら握手ぐらいしてやるが、呪いの一件があってから、疑り深くなってしまっていた。
だが、俺には状態異常完全耐性のスキルがあるからいいか、と思い、店員の握手に応じた。
「ああ、ありがとう。ちょっと、聞きてえことがあるんだが……」
「はい、何なりと!」
そう言って、店員は俺の顔を嬉々として見てきた。……一瞬で商売人の顔になりやがったな、こいつ。急に大声を出すものだから、リンネが肩から、懐に入っていく。
まあ、いい。俺は取りあえず、この店がどういうものか尋ねてみた。
ここは、ミサキが持っていたように、持ち運びができる簡易的な住居を主に取り扱っているそうだ。ものが大きくて、重くても異界の袋を持つ冒険者には関係ない。冒険者はこういったところで、住居を買い、旅先での休息や、野宿に使うという。
また、ミサキのように、各都市に自分の土地を持つことで、今のように拠点を移しながらの冒険者稼業が出来る、と店員は語る。意外とそういう冒険者は多く、そういった者達を相手に、土地を貸す奴らも居るみたいだ。
ちなみに、どう見ても冒険には向かなそうな、あの豪邸も、そうか? と聞くと、店員は首を横に振った。
あれは、貸し出し用で、例えば夫婦で旅をするときや、大勢で旅行をするときに使われるものだという。好きな景色の元で、最上の空間で過ごすひと時を楽しんでもらっています、と店員は楽しそうに語る。
なるほど……例えば昨日のような山の上ともなると、建物を作ること自体が難しいからな。ある程度、平坦な土地を確保できれば、後は建物を出すだけという方法の方が良いか。
更に言えば、気付けば魔物が棲み付いたということになったら、大変だからな。普段は更地で、そういった時のみ、立派な宿が建つ場所にするという考えは案外、正しいのかも知れない。
店員に説明を受けながら、店内に飾られていた、住居を見てみる。正直、先ほど天幕を買ったから、もういいかな、と思っていたが、そう言われると、やはり気になってくるな。せっかくだから何か買おうかなと、一通り、見て回って気になるモノがあった。
それは住居と呼ぶには少し狭く、小さい。値段も金貨10枚と、この店の中では一番安いみたいだ。小屋だな、まるで……。そう思い、店員に確認してみた。
「なあ、これも住居か?」
「あ、いえ、そちらはいつでも露天風呂が楽しめる、簡易的なお風呂となっております。中には浴槽と脱衣所があり、火炎鉱石を持つ冒険者などはいつでもどこでもお風呂に入れて便利だと人気ですよ」
何!? そんな便利なものなのか、これは。
……俺は正直、風呂というものが大好きだ。出来ることなら、旅先でも入りたいが、温泉を探すのは一苦労だ。大概、山の奥にあるからな。しかし、これと火炎鉱石さえあれば……。
……よし。
「なあ……これ、欲しいんだが……」
俺は店員にそう言った。すると、店員は不思議そうな顔をする。
「え、よろしいのですか? ムソウ様ならば、住居を丸ごと買うことも出来ましょう?」
店員の言うように、俺はこの店の中だと、五~六人が使う家、ちょうどミサキが持っているくらいの大きさの家を十以上買えるくらいの金は持っている。だが、そこまで要らないし、前々から抱いていた思いもあり、首を横に振り、店員に口を開く。
「確かにそれも出来るが、それだと、なんと言うか、冒険という感じがしないのでな。それにさっき天幕を買った。正直、俺はそちらの方が慣れている。
……が、風呂は別だ。そういうのがあるのならば、買ってみたい」
俺がそう言うと、店員はわかりました、と頷き、俺を店の裏手に案内した。すると、先ほど絵で見ていた小屋のような建物がすでにあった。
中に入ると、履物を脱ぐ少しの空間、脱衣所、そして、浴場がある。広さはやはりそこまで大きくはないが、足は伸ばせるみたいだった。浴槽の下には薪をくべる空間もある。火炎鉱石が無くても、湯を沸かせるようになっている。
更に、なんと、この小屋は屋根を取り外すことが可能で、一瞬で露天風呂に出来るという。そりゃいいや、と思い、店員に目を移す。
「なかなか良いじゃないか。よし、それじゃあ、これを貰っていこう」
「かしこまりました、ムソウ様。ではこちらが、料金表と、説明書きです」
店員はそう言って、料金の明細表と、いくつかの書類を渡す。俺は店員に金を払い、小屋を異界の袋にしまった。
なかなか、良い買い物をした、と満足気に、店員と別れ、その店を後にする。俺が笑っていると、懐に居たリンネは不思議そうに俺を見上げる。俺はリンネの首筋をくすぐってやって、また街の中を歩いていった。
「……あ! ムソウのおじちゃんだあ~!」
ふと、俺を呼ぶ声が後ろから聞こえてきた。振り返ると、そこにはレイカがいる。
「よお、レイカ」
「こんにちは~」
レイカはタタタタッと俺に駆け寄ってきた。周りを見渡してみたが、レイカ一人のようだ。
「一人か?」
「うん! わたしたちって明日には出発するからね! 今のうちにお買い物しているの!おじちゃんは?」
「ああ、俺も明後日出ることにしたからな。買い物だ」
「じゃあさ、じゃあさ! 一緒に行こ!」
レイカは目を輝かせて、俺を見ていた。特に断る理由は無いので、その後はレイカと一緒に行動することにした。リンネは俺の懐レイカの肩へと飛び移り、頬をぺろぺろと舐めている。レイカはくすぐったそうに笑って、リンネの頭を撫でた。
「それで、これからどこへ行くの?」
「とりあえず、地図を買わねえとな。クレナがどこにあるのか、わからねえ」
「あ、だったらさ、この先にある雑貨屋に行ってみようよ! 地図くらいあるかも知れないよ?」
なるほど、それはいい考えだな。俺はレイカの案に乗り、ひとまず、雑貨屋を目指すことにした。
歩きながら、レイカと色々話した。それによると、明日の朝、ミサキはここを旅立つという。まず、レインに行き、呪いの一件のことを報告、その際に、ウィズの家族に会って、正式に弟子と認めたことなどや、今後のウィズの鍛え方などについて、話し合うという。
それが済んだら、ミサキのこちらの世界での故郷である、リヨク領というところに行って、何かするという。何の用事だ、と聞くと、レイカも分からないそうだ。
そして、それが終われば、いよいよ、オウキ領の白餓狼の群れ、つまり、ハクビの修行を行うということらしい。その間、ミサキはウィズとレイカの修行をつけるために、オウキに残り、修行の合間に四人で依頼をこなしながら生活していくとのことだ。
「大変そうだな……」
話を聞いて、そう言うと、レイカは首を横に振った。
「ううん! 大変そうなのは確かだけど、私達が選んだことだからね!それに、レインに行くのも楽しみだし!」
と、レイカは元気よくそう言った。レインというところはこの世界の中心で、色々なものが集まっている大都市らしい。
王城だけでなく、ギルドや騎士団の総本部、サネマサの開いた武王會館などはそこにある。その中で、レイカが行きたいところというのは、ミサキがこないだ言っていた、十二星天の一人、“獣皇”レオパルドという者が開いた、「魔獣宴」という場所だ。
そこにはこの世界の珍しい魔獣や多数の魔物が飼育されていて、一般にそれを見ることが出来るという。
また、各魔獣たちの研究もされており、魔獣宴には魔物たちの資料が膨大にあるという。
「へえ、それは面白そうなところだな」
「でしょ~? わたし、好きな魔物さんがいて、一度見たかったんだ~」
レイカは笑顔でそう言った。
「なんだ? その好きな魔物というのは」
「えっとね、天狼っていってね、天災級の魔物に指定されているんだけど。基本的に大人しくて、危害を加えることはないって魔物なんだ~」
ほう、そんなものでさえも、そこには居るのか。確か、本当かどうかわからない、俺の読んだ本によると、レオパルドは、EXスキルの力で、天災級の魔物を従わせているということだったが、あれが本当なら、その一体か? 俺も、若干興味はある。だが、何故レイカはそんな奴を、と思い、聞いてみた。
「何で、その天狼って奴が好きなんだ?」
「だってさ、天狼ってすっごくカッコいいらしいの! 見る人を虜にして、触れる者の心を癒して、声を聴く人を猛らせるって云われるくらいなんだ!
ど~しても、死ぬまでには見たいモノの一つだね!」
レイカは楽しそうに天狼のことを語る。正直、二百年も生きているこいつが、死ぬまでに一度は見たいと言っても、あまりピンとこないが、まあ、良いや。にしてもそんな奴がいるなら、俺も見てみたいな。武王會館のこともあり、いつかレインに行くのは確定だな。
「なるほど……俺も死ぬまでには一度レインに行かねえとな」
俺がそう言うと、レイカはニコっと笑った。
「おじちゃんならすぐに行けるかもよ?」
「あ? 何故だ?」
「何か、とんでもない問題を引き起こして、呼ばれる、とか!」
レイカはそう言って、俺の顔を見上げる。俺は、それは勘弁、と言いながら、レイカの頭を撫でた。レイカは、はじめてだ~と感激しながら嬉しそうに笑った。
俺はそんなレイカを眺めながら、歩いていた。
ここでは、ミサキ達一行と買い物をするという案もあったのですが、そういや、この2人の絡みはあまりないな、と思い、変更しました。おっさんと幼女って、画になりますよね・・・。




