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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
“死神斬鬼”を語る
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第104話 ムソウの過去―そして今に至る―

 大陸統一から二年後、俺は39歳になっていた。相変わらず、大陸を旅しながら、傭兵稼業を続けている。タカナリの頼みで各領主の所へ行き、主に山賊退治や、玄李の残党を討つことが多い。

 玄李の残党は意外と多い。あの時、投降してきた「夜」の奴らのうち、俺達の元へと来た奴ら以外の者などがほとんどだ。

 ちなみに、あの時捕らえてそのままだったサクモ達の処理は言ったように、戦争後各集落に任せた。その後、どうなったかは……まあ、予想通りだ。

 玄李の王達についても、タカナリの即位式から半年後くらいに、民たちの衆目の前で処刑された。実際に、その場に居たわけではないから分からないが、玄李の王からは、最後まで、民たちへの謝罪も何もなかったという。

 出てきたのは、この大陸全ての人間に対する怨嗟、怒り、罵詈雑言……。死ぬその瞬間まで、偉そうにしていたらしいのだが、それも、集まった民たちの怒り、嘆き、恨みの声にかき消されていったという。……行かなくて良かったなあと、本気で感じた。


 さて、俺の元で共に闘ってきた元・「夜」の奴らについては、一応、タカナリや、エイキ達に減刑するように、と嘆願したが、本人たちがそれを蹴った。今なお、投獄されている者も多い。一度だけ会いに行ったが、ちゃんと罪を償っていきたいと俺に言ってきたので、俺も奴らの思いを承認した。中には、極刑を与えられている奴らも多い。

 少し寂しい気もするが、ソイツによって死んでいった奴らも居るということを忘れてはいけない。私情を殺し、俺は、奴らから去っていった。


 傭兵稼業の方は、いつも一人というわけではない。偶に、かつての仲間たちと協力して戦うこともあった。国の重要機関の責任者が俺と共に前線で闘ってもいいのか? と聞くと、ツバキが、護ってくれるんでしょ? と言ってきたので、渋々従うことにしている。

 ただ、例の俺が嵌められた砦の一戦以来、ハルマサは俺と闘うことはなくなった。ツバキ曰く、ハルマサがすごく怖がったということと、他の皆が、ハルマサが居るとザンキに危害が及ぶ、という進言をタカナリにしたからだ、と説明してくれた。

 ほとぼりが冷めるまでは、そっとしておこうという話で、この一件はまとまった。


 エイキやゴウキとは一緒に闘うということは無いが、時々会いに行ってる。というのも、暇になったらアキラの鷹を俺に飛ばしてきては、茶を飲んだり、碁を打ったり、戦争後に出来なかった手合わせをしてくれと頼んでくるからである。

 ちなみに、武器を手にした場合、俺とエイキでは僅差で俺の方が、勝ち星が多いが、ゴウキには全勝している。ただ、碁はエイキに全敗、格闘術は若干ゴウキの方が上ということもあり、どれも決着をつけるため、二人の要望には喜んで応えている。


 タカナリ達には依頼を達成するたび、報酬を貰いに王都に行くのでかなりな頻度で会っている。皆変わらず、それぞれの職務を全うしているようだ。

 中でも、仕事の関係上大陸内を移動することが多いトウヤとはよく行動を共にしている。主に俺が護衛をするのだが、その際に鎧や無間の修繕などを頼むと、トウヤは普段こういうこと出来ないので、楽しいです、と嬉しそうにやってくれる。

 皆をまとめる立場にあるからなあ。ちょっとした気晴らしにでもなってくれればうれしい。


 ……ちなみに、この二年で、トウヤは自分の補佐をしてくれているという女と夫婦になった。祝言には行けなかったが、代わりにトウヤが、俺の拠点にしている村……つまりアイツの故郷に来て、俺達は驚きつつもトウヤを祝ってやった。


 まあ、もっと驚いたのは、アキラとエイキ、ナツメとゴウキが夫婦になったことだ。

 ナツメの方は三か月もの間ゴウキに頭を下げられ観念したという。大丈夫なのか? それ、と聞くと、


「まあ、体が丈夫なので新薬の実験に……」


 と、笑顔で言ってきた。えぇ……と思い、横に居たゴウキを見ると、任せとけ! と胸を張って言ってきたので、何も言えず、ただただ、二人を祝福した。


 アキラの方は、活発な自分とは反対にいつも落ち着いて仕事をしているエイキに惚れ込んでしまい、エイキが俺に鷹を飛ばすためにアキラの所に訪れるのをずっと楽しみにしていたという。一方、エイキも天真爛漫なアキラのことが気に入り、その後、婚約に至ったという。

 正直、この二人は割と俺の知る限り一番の常識人なので、特に心配はなかったが、実は密かにアキラのことを想っていた男が居る。

 玄李侵攻の際に俺達と共に闘ったタツイエだ。後で会いに行くと、そのことを打ち明けられ、夜通し、泣きながら酒を呑むタツイエを俺とツバキで慰めた。


 ちなみに、ツバキはハルマサと夫婦になった。これに関しては、かつての仲間たちがどんどん夫婦になっていくのを見たハルマサが落ち込んで、それを見たツバキが、かわいそうだと思った、と語っていた。

 皆、ツバキは俺とくっつくもんだと思っていたらしいが、ツバキが、


「ザンキの隣は……サヤ一人」


 と言って、皆を黙らせたという。二人の祝言には参加させられた。ツバキの親代わりという役割だった。ちなみにハルマサの親代わりはタカナリだった。タカナリと、何で俺達が、と嘆いていたが、意外にも幸せそうな二人を見て、その考えは捨て、お互いに二人を祝った。

 現在ではツバキの尻に敷かれるハルマサの目撃情報が王都各地で後を絶たないという。ナツメ曰く、ツバキがハルマサと結婚したのは、多分、他にも理由があるとのこと。皆で、その理由を予想するのが楽しかった。


 さて、皆が幸せになっていく様を見ながら俺とタカナリは酒を呑んでいた。タカナリは結婚しないのか、と聞くと、もう歳だから考えてないときっぱり言った。その際に、


「もう、はっきり言おう! 儂はエンヤのことを好いておった! 今でも愛している!」


 と、本当にはっきりと言われた。まあ、予想通りだったからそれは良いんだがな……。にしても叶わぬ恋をしていた者がタツイエ以外にも居たんだな、と思い、俺は可笑しくなり、その後も二人でエンヤの彫像を前にして、色々と語り合った。


 ◇◇◇


 さて、そうやって過ごしていたある日、タカナリとエイキから一つの依頼が届く。何でも、エイキの受け持つ地域に居る一人の領主からの依頼で、その領で暗躍する山賊の一団を倒してほしいという依頼だった。

 へえ、エイキのとこで山賊討伐の依頼は珍しいな。安備、興那では多いが、と思って、よく話を聞くと、その領の領主というのが、あまり出来た人間ではなかったという。統治に関しても部下にやらせてばかりで、本人は普段から遊んでいるというような状態らしい。

 となると、山賊というのは、不満がたまった領民じゃないのか、という調査をしてくれという依頼だった。仮に暴徒と化していても、殺さず、出来るだけ捕らえてくれというものである。なんとなく面倒くさいな、と思ったが、俺はひとまず、その領に向かう。


 そして、領内の街を目指し、ある草原を進んでいくと、山賊の一団を発見した。一団は大勢で街を目指している。あれか、と思い、その一団の前に立った。


「止まれ! てめえら!」


 俺が前に出てそう言うと、山賊たちは武器を構え始めた。


「どけ! 貴様!」


 山賊たちは俺に斬りかかってくる。俺は無間を振るい、そいつらの武器を落としつつ、死神の鬼迫をぶつけ、動きを止まらせる。


「う゛……な、なんだ!?」

「止まれって……俺は闘鬼神のザンキ。タカナリとエイキの依頼でここに来た」


 俺は闘鬼神の旗を掲げ、山賊たちに見せる。山賊たちは目を見開き、後ずさっていく。と、ここで一人の男が前に出てきた。他よりも良い身なりだ。こいつが頭か? 

 男は前に出て来るや、口を開く。


「“無双の傭兵”が、俺達に何の用で?」

「だから、タカナリの依頼だって。お前らって、ここの元領民か?」

「ああ、そうだ。それがどうした?」


 やっぱりか……。なら少し面倒くさいかもな。俺は頭を抱えながら、男を説得する。


「いや、ここの領主の話は聞いている。仮にお前らが、ここの領主に不満がある者達というのなら、俺も手は出さない。領主のことをタカナリ達に報告して何とかしてもらう。お前たちは無罪放免だ……で、手を打ってくれねえか?」


 俺がそう言うと、山賊たちはどよめき、目の前の男は少し、悩んでいるようだ。すると、少し時間をくれ、と言い、仲間たちの輪に入っていった。おぉ……話してみるもんだな。意外と物分かりがよさそうだ。これなら大丈夫そうだ、と思いひとまず肩の力を抜いた。


 しばらくして、男は前に来る。そして、


「分かりました。貴方の言葉を信じます。ですから、私達との約束、必ず果たしてください」


 と言って、山賊たちは一斉に俺に礼をした。俺はそれに頷き、任せろと言おうとした。


 すると、何かが風を切る音が背後から聞こえた。パッと振り返ると、俺達目掛けて、多くの矢が飛んできている。俺はそれを廻旋刀で防いでいくが、防ぎきれなかった矢の雨は俺の背後の山賊たちに降り注いでいく。


「ギャッ!」

「ガッ!」


 矢をもろに受けた山賊たちはバタバタと倒れていった。


 何ごとかと思いよく見ると大勢の兵士があたりを取り囲んでいた。兵士たちは皆、俺の方を睨みつけている。


 すると、その中から大柄の男が前にでて、刀を俺に向けてきた。


「てめえが“死神斬鬼”だな!?」

「何者だ! てめえら! 領主の私兵か!?」

「あ? 何言ってんだ、てめえ! 俺達はメッキ様に仕えていた元・「夜」の人間だ! メッキ様の仇を討つため、力を蓄えていた!」


 男たちはそう言って、皆懐から何かを取り出す。あれは……「狂神剤」か! まだ、残っていたのか!

 クソッ……二年前の時点で全て廃棄していたと思っていたのに。ツバキの隠密機関に引っ掛からなかったってことは、どこかに潜んでいたってことか。


 ふと、後ろを見てみた。俺に約束してきたここの領民たちは皆、血を流し死んでいた。俺は歯を食いしばり、敵の軍勢を睨みつける。


「ココデ会ッタガナントヤラダ! ザンキ! テメエヲ殺シ、再ビ大陸ヲ俺達ノモノトシテヤラア!」


 薬で凶暴化した兵士たちは各々武器を構え、俺の方に突っ込んでくる。俺は無間を構え、敵の軍勢に向けて走っていった。……引くわけにはいかなかった。ここで引いたら、この領だけじゃなく、また大陸中で争いが起こる。


 ……俺が護りたいと思ったものがまた危険に晒されることになる。


 それだけは嫌だった。何としてでもここで、こいつらを殲滅しなければいけない。


 何より、アイツらは俺を信じてくれた奴らを目の前で殺した。


 ―死神の鬼迫―


「許さねえ!!! テメエら! 死ぬ覚悟は出来てんだろうな!?」


 俺は雄たけびを上げながら、無間を振り回していく。一人、また一人と敵を無間で斬っていく。

「狂神剤」を使っている以上こいつらの寿命はあとわずかだが、そんなことはどうでも良かった。俺は目の前で俺を信じてくれた奴らを殺していった、コイツらを自らの手で葬りたいと思った。


 なおも、無間を振り続け、敵を倒していく。最初は五百ほど居た敵も、残り五十人ほどになってきたころに、辺りが薄暗くなってきた。

 ふと、空を見上げると、太陽の一部分が欠けていた。


「……! 陽蝕かっ!?」


 俺はその光景を見て若干焦った。「陽蝕」とはこの地で何年かに一回、太陽が欠けていき、最終的には辺りが真っ暗になる現象のことである。

 夜の暗闇など比じゃないくらいに暗くなり、ほとんど何も見えなくなる。それ自体はすぐに収まるのだが、そうなってしまうと、闘い辛くなると思い、俺は先ほどよりも急いで敵を斬っていった。


 だが、あと少し、というところで、太陽が完全に無くなり、辺りは闇に包まれていく。


「イマダ!!! 思イ知ラセロ!!!」


 突如、敵方から声が聞こえる。声のする方を見ると、何か赤い火花のようなものが光っているのが見えた。爆薬か! 俺はそれを止めようと、光の方に走り出そうとしたが、何かに躓き、こけてしまう。


「クソッ! 敵の死体か!」


 俺は立ち上がり、光の方を見た。と、ここで光がだんだん小さくなっているのを確認した。導火線から本体に近づいてきた証拠だ。


 マズイッ! と思い、とっさに無間の腹で衝撃を防ごうとした。


 そして……


 ドオオオオオオン!!!


 爆薬はそのまま爆ぜて、幾つもの爆発音がそこらから響く。その衝撃波で俺は吹っ飛んでしまった。

 俺は宙に舞い、そのまま落ちていく。ああ、このままだと死ぬな……こういう時、何となく人って頭の中が冴えるって話を聞いたことがある。

 気付けば、俺もどこかすっきりした気持ちになっていた。


 ―クソッ……だが、全滅は出来たか……これで、皆の家族も大丈夫だな……なんと言うか……あっけねえ最期だな……―


 などと、思いながら目を閉じ、俺は落ちていった。


 ……


 ……


 ……


 ◇◇◇


 ドンッ!


「痛えッ!」


 吹っ飛ばされてしばらくして地面に叩きつけられ、背中に衝撃が走った。


 ……あれ、生きてんな。意外と高く上がらなかったのか?


 そう思い、目を開けてみる。ん? 眩しいな。さっきまで真っ暗だったのに。

 空を見上げると、太陽は煌々と輝いていた。あれ、おかしいな、と思ったが、取りあえず敵はどうなったか、と辺りを見てみる。


「あ? ……何だ!?」


 辺りは敵の死体も、領民たちの死体も転がってなどいなかった。というか、立っていたのは、俺がさっきまでいた草原などではなく、灼けた土が延々と続く荒野だった。


 え……何……さっきまでの間に、どこか別の場所に来たのか? 


 などと、あり得ないことを考えながら、俺は頭を抱えていた。大陸にこんな場所、あったけか、と考え込んでいる。


 すると突然、空の方から、何かが叫ぶような音が聞こえた。音のする方を見てみると、得体の知れない、デカい何かが飛んでいるのが見えた。

 トカゲ? に翼がついたような見た目の生き物が空を飛んでいる。俺が口を開けて、そいつを見ていると、目が合ったような気がした。


「……あれ? 何かこっち来てるなあ」


 そいつは、俺と目が合うなり、俺めがけて急降下してきた。そして、両足の爪を俺に向けてくる。


「うおっと!」


 ドシン! と音を立てて土煙を上げながら着陸し、そいつは雄たけびを上げた。


「グオオオオオオオオオ!」


 そして、鋭い爪を俺めがけて振り下ろしてくる。


「うおッ! あぶねえ!!!」


 どうやら、こいつは俺を食いたいみたいだ。俺は無間を抜き、そいつに向けて構えなおした。改めて、辺りを見て、目の前の“怪物”とも呼ぶべきものをみて実感する。


「……あれ? 俺、どこかへ来たんじゃなくて、どこか違う世界に来たんじゃねえか?」


 ……いや……あり得ないか、そんなこと。

 いや、でも現に……と思っていると、そいつは口から何かを吐き出す。それはすごく熱く、地面をえぐりながら俺の方に迫ってきた。俺は慌てて、無間を構えなおす。と、同時に確信した。


「いや! もう、絶対そうだ! こんな奴居たら大陸なんぞ、簡単に制覇できる! 間違いない!」


 俺はこの時初めて、何らかの形で違う世界に来たと実感していた。


「ったく……まずは状況の確認をしたいところだが……フンッ!」


 俺は無間を強く振って、そいつの攻撃を弾いた。


「とりあえず、それはこいつを倒してからだな!」


 目の前で雄たけびを上げている「トカゲ」に向かって俺は、無間を強く握り、駆けていった……。


これにて“死神斬鬼”の物語は終わりです。次回から冒険者ムソウの物語が再開します。

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― 新着の感想 ―
[一言] ほんとに申し訳ないのですが、長すぎてここまで飛ばしました。 ちょこちょこ出す過去話しんどいっす。
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