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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
“死神斬鬼”を語る
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第102話 ムソウの過去―“狂神”を斬る―

「オラアッ!」

「フンッ!」


 俺とメッキはお互いに武器を振り下ろし、刀を合わせる。やっぱり、力が強いな。今までの雑魚共とは比較にならないくらい……というか、俺の人生で一番の敵だと感じる。


 そのまま、何度か打ち合い、鍔迫り合いになる。


「ほう、流石は“死神”……と言ったところか……簡単には死なねえな……」

「あ? ここまで来て、そう簡単にくたばってたまるか」


 俺達は言葉を交わすが、お互い力を緩める気はない。だが、ここでメッキが刀を持っていない方の手を振り上げ、俺の腹を打ってくる。


「ぐっ!」


 先ほど傷を負ったあたりだ。強烈な痛みが走り、俺の力が一瞬緩むとともに、メッキは刀を振り抜いた。それにより、後ずさった俺にメッキは追撃を仕掛けようと間合いを詰めようとするが、俺はそこから跳躍し、メッキの顔面に回し蹴りを叩きこんだ。


「ラアッ!」

「クッ!」


 メッキはそのまま顔を抑えながら吹っ飛んでいく。そして、顔を抑えながら睨みつけているところに俺は突き技を繰り出す。メッキはそれを刀の腹で受け止め、後退したかと思うと、すぐに飛び出し、俺とまた打ち合ってきた。


 力が強いだけじゃない。とっさの体術や、でかい体格の割に身のこなしも軽やかで、何ともやりづらい相手だ。だが、ここまで来て斬られるわけにもいかない。俺も応戦していく。


「最高だ、ザンキ……殺し合いはこうでねえとな……やはりテメエも俺と同じだな……」


 メッキは刀を振るいながら笑っていた。俺と同じく闘いを楽しむような性分か?

 ……いや、違う。こいつは闘いを楽しんでいるんじゃない……。

 俺は一際力を込めて、メッキに無間を打ち込む。

 メッキはそれに対応し、自らの前に刀を出して対応するが、俺の一撃は強く、そのままよろめいたところに、俺は再度刀を振ってメッキを後退させた。そして、無間を向ける。


「ふざけんな……テメエはただ、人殺しを楽しんでいるだけだ……一緒にすんじゃねえ!」


 俺はメッキを強く睨みつける。そう、こいつは闘いを楽しんでいるんじゃない。ただ、殺すことを楽しんでいる。そんな奴と一緒にされるのはとてつもなく腹が立った。

 メッキは俺の言葉を聞き、その場で笑い始める。とても不愉快な笑いだ。


「何がおかしい……」

「クックック……そりゃ可笑しいさ。“死神”と呼ばれる男が闘いの本質に気付いていないんだからな……」


 闘いの本質? 何を言ってんだ、コイツ……。


「……あ?」

「闘うことは相手を葬り、殺すこと……それ以外の何物でもない!」


 チッ……やっぱりそうだ。コイツは相手を殺す、斬りたいから斬るというだけの考えしか持っていない奴だ。自分の欲求さえ満たせれば、それで良いと考えている。


「何のために敵を殺すかってのが重要なんだよ! ただただ、殺戮を繰り返すだけのてめえと俺を一緒にすんじゃねえッ!」


 俺はそんなメッキと自分が一緒されるのが嫌だった。コイツはただの危ない奴だ。生かしておくわけにはいかないと、斬りかかった。メッキはそれを受け止め、鍔迫り合いになる。


「何のために殺すか……だと? じゃあ、テメエは何のために今……俺と……いや、この国と闘っているんだ?」

「……テメエらに殺された家族と仲間の……弔いのためだ!」


 俺は力を入れ、無間を振り抜くと同時にメッキを吹っ飛ばす。

 だが、メッキも俺の腹に蹴りを叩きこんできた。またしても傷が痛み、血がぽたぽたと流れ、俺はその場にうずくまる。

 メッキは俺を見下ろしながら、高笑いを上げた。


「ハッ! 家族? 仲間? こいつは想像以上に甘い奴だったみたいだな! 

 そんなものが居るからテメエは弱いんだよ! 闘争では常に相手を屠る、いたぶり、斬り、殺すことだけを考えろ!!!

 そんなだから、テメエは全てを奪われたのさ!!! テメエは俺と同じ奪う側の人間だろうが!!!」

「あ゛?」


 俺は立ち上がると同時に、その場から跳躍し、メッキに斬りかかっていく。


 ―死神の鬼迫―


「ッ!!!」


 俺のありったけの殺意を受けたメッキは一瞬目を見開くが、すぐさま刀を構え応戦しだす。


 ……はっきりと分かった。コイツ等は……玄李は、自分の欲求を満たすためだけに、サヤを……カンナを……俺の護りたかったものを奪っていった。コイツ等には護るものなんてない。

 ……俺にはあった。絶対に護ってやると誓った家族が……仲間達が……。それを私欲の為だけに奪っていったコイツ等が許せなかった。


「ただただ、殺戮を繰り返すだけのテメエは今ここで、俺が叩っ斬ってやるッ!!!」


 俺は無間で連撃を放っていく。メッキは先ほどまでとは違って、俺を睨みつけながらそれらに対応していく。


「勿体ねえ……勿体ねえな! ザンキ! それほどまでの殺気を放っておきながら自分と俺は違うと抜かしやがるか!!!」


 刀を合わせながら、メッキは俺にそう言ってくる。俺はそんなメッキに無間で攻撃しながら口を開いた。


「家族を喪い、仲間を喪い、親を喪い、親友を喪い、家も国を失った俺に、また新しく出来た仲間たち。

 ……そいつらを護るために“狂神”を斬れってんならな……俺は喜んで本物の“死神”になってやらあッッッ!!!」


 その後も俺達は打ち合っていく。メッキの力も、早さももうだいぶ慣れた。最初は少し戸惑ったが、もう何の問題はない。無間を振るいながら、メッキの攻撃をいなし、隙を作っては体のあちこちを斬っていく。


 大した痛手は負わせていないみたいだが、メッキの体のあちこちに傷を負わせることは出来た。段々とメッキの表情は苦痛に歪んできている。


「チッ……調子に乗るなよ、クソがああああッッッ!!!!」


 メッキは一際大きく力を込めて俺に斬りかかってきた。俺はそれを躱しつつ、いったん下がる。すると、メッキは懐から数本の小瓶を取り出した。例の「狂神剤」だな……。メッキはその小瓶から薬をがぶがぶと飲み始める。常人なら一本で理性を外され、肉体を超強化する薬。それを何本も一気に服用している。


「グゥッッッ……ガアアアアア~~~ッッッ!!!!」


 メッキが雄たけびを上げると、もともとデカかった体はますます大きくなり、そこらの民家よりも大きくなっていく。そして、手足は大木よりも太く、大きく肥大化し、全身に血管が浮き出て、強く脈打っている。

 メッキはそのまま屋敷の屋根の方に手を向ける。すると、屋敷の方から轟音と共に巨大な薙刀を取り出し、俺に向けてきた。


 俺はメッキの変貌に慌てたり、怯えて、逃げだしたりする仲間たちを尻目に、ただただ目の前の敵を睨みつけていた。ここからは、一層気合を入れないと駄目かも知れない。俺は無間を握る手に力を込める。


 ―……ここからは、一緒に闘ってくれ……―


 らしくない神頼みのようなものをしていると、メッキはそのまま俺に薙刀を向ける。


「コノ圧倒的ナ力ヲ以ッテ、大陸ヲ血ノ海ニ沈メテクレル!!! 最初ハテメエダ! “死神”ィィィィッッッ!!!」


 メッキはそのまま薙刀を俺に振り下ろしてくる。薙刀は地面にぶつかり、大轟音と共に辺りを破壊した。その衝撃で吹っ飛んでいく仲間たちの声が聞こえる。ツバキが俺の名前を叫んでいるのが聞こえた。


 そして、土煙が晴れるとともに、メッキは薙刀の先を見て目を見開く。


 俺がメッキの攻撃を正面から受け止め、ただただ、メッキを睨んでいたからだ。


「テ、テメエ!!!」

「効かねえよッッッ!!!」


 俺は薙刀を弾き、そのまま柄を駆け上り、メッキの肩口を思いっきり斬った。ズシャッと音がして切り裂かれたメッキの肩から大量の血が噴き出る。

 俺はそれを一身に浴びながらもそこから跳躍し、メッキの顔面を斬りつける。


「グアッ!!!」


 メッキの顔の右側に縦に一本の線が入り、右目はつぶれたみたいだ。俺はそのまま、屋敷の屋根に飛び乗る。


「殺すためだけに人間辞めたテメエなんぞに負けてたまるか!!!」

「コノヤロウガアアアァァァッッッ!!!」


 メッキは顔を抑えながら、屋敷に居る俺めがけて右手だけで薙刀をめちゃくちゃに振り回してきた。俺はそれを避けていくが、その度に足場となっている屋敷は崩れていく。

 中に居るのだろうか、玄李の王はもう、駄目だろうな。周りも見えず、俺を殺すためだけに力を振るうメッキ。やはり、コイツ等に護るものなんてない。


「コノ……チョコマカト!!!」

「なら正面からぶつかってやる!!!」


 俺は崩れ続ける屋敷の屋根から跳躍し、メッキの腹を思いっきり斬った。肩口から大きく斜めに赤い線が刻まれ、そこから血が噴き出るのを見届け、俺は着地する。


「グウウウゥゥゥ!!! ……テメエェェェ!!!」


 全身血だらけになったメッキは、残った片目で俺を睨みながら、唸りの声を上げる。……頃合いだな……。


 俺は無間を構え、メッキに向けた。


「これで、終わりだ……長きに渡る俺とテメエら玄李との因縁の決着だ!!!」


 俺はほとんど瓦礫の山となっている屋敷の残っていた屋根に飛び乗り、そこから大きく跳躍し、無間を振り上げた。


「サセルカ!!! ザンキィィィッッッ!!!」


 メッキは薙刀を俺に向けて突き刺そうとしてくるが、俺は薙刀に強い一撃を加え、叩っ斬る。バキンッと大きな音を立てて砕ける薙刀を見て、なおも強い殺気に満ちた目で俺を睨んでくるメッキに、俺も死神の鬼迫を放ちながら突っ込んでいく。

 そして、無間を振るっていった。


「ウオオオ~~~ッッッ!!!」


 最初に破壊された薙刀を持つ右腕を切り落とし、そのまま左腕の方に飛び、左腕も斬る。そして、落ちながら両足を斬り、俺は着地する。


「ギッッッ! ガアアアアア~~~ッッッ!!!!」


 メッキは雄たけびを上げながら大きな音を立てて、その場に倒れた。俺が斬った両手足からは血が濁流のように噴き出ていく。俺はメッキの顔の前に立ち、無間を向けた。


 メッキは苦しそうに俺を見ていたが段々と嫌な笑みを顔に浮かべる。


「クククッ……ソラ見ロ……ヤハリテメエモ、俺ト同ジダ……俺ヲ斬リ、殺スコトニ喜ビヲ感ジテイル……」

「違うっつってんだろ……」

「何ガ違ウンダ?……泣クホド嬉シインジャネエノカ?」


 いつの間にか、俺の目から涙が流れていた。涙は俺の頬についた血と混じり、赤い水滴となって俺の足元に落ちていく。


「ようやくだ……ようやく、サヤの……カンナの……皆の弔いが出来るんだ……ようやく終わる……」

「ドコマデモ家族ダノ仲間ダノ……ヤハリオ前ハ甘イナ……」

「甘くて結構……そんな俺ごときにテメエは負けたんだ……」

「クククッ……マダ勝負ハツイテネエ……地獄ノ底デテメエヲ待ッテテヤル……ソノ時ハ俺ガ……テメエヲ葬ッテヤルカラナ……」

「上等だ……その時は……再び俺が……テメエを無に帰してやる……」


 俺はそう言って無間を振り上げた。メッキは挑発するように俺を見続け、大きな声で大笑いを始める。


「……」


 俺は無間を振り下ろし、メッキの首を斬り落とした。メッキの笑い声は首を落としてもしばらくは止まらなかったが、段々と静かになっていた。


 そして、噴き出ていた血も勢いがなくなり、全て収まった頃、そこらに転がっていた骨と皮を見て、“狂神”の死を確認した。

 皆の方に目を向けると、凶暴化した敵も、それらと闘っているゴウキも、エイキも、皆、目を見開きこちらを見ていた。

 ハルマサとツバキは何か泣きそうな目で俺を見ている。俺は二人に笑いかけ、天に向けて咆哮を上げる。


「ウオオオオオオオオオ~~~ッッッ!!!!」


 ありったけの殺意を込めた俺の叫びを聞いた敵はその場で泡を吹き気絶していった。俺の声は王都全域にまで響き渡り、各地から聞こえて来た闘争の音は止んでいく。そして、辺りは静寂に包まれていく……。


 立っているのが味方だけとなったのを確認し、俺は無間を天に掲げて、叫んだ。


「俺達の……勝ちだ!!!」


 俺がそう言うと、味方から歓声が上がり、ツバキたちは俺に駆け寄ってきた。皆、涙を流しながら、そばに居た奴らと抱き合ったり、握手をしたりしている。ツバキは俺が返り血だらけにも関わらず、抱きついてきた。

 横からハルマサとゴウキが肩を回してくる。その様子をエイキが少し離れたところから、肩をすくめながら見ていた。


 ふと、勝利を告げるアキラの鷹の嘶きが辺りに響き渡った。俺達は天を見上げ、闘いの勝利を実感している。


 ―終わったよ……皆……―


 俺は空を見ながら、サヤと、カンナと、闘鬼神の奴らのことを思いながら、涙を流していた……。


 ここ、伝わりますか?

 見方によれば、ザンキ(ムソウ)も、メッキもあまり変わらない感じに見えるんですよね……。


 メッキは、殺したいから殺す、ザンキは生きる為に殺すという分け方をしているのですが、どうも、結局は同じって感じに見えるので、書き分けが難しい所です。

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