88/134
88 メンデル博士の法則
メンデル博士は天才的な頭脳の持ち主。
その一方、天は二物を与えずのことわざどおり、見かけの容姿については最悪であった。
ある日のこと。
「博士、わたしと結婚してくださいませんか。博士の頭脳、わたしの美貌、ふたつがそろえば完璧で最高の子供が生まれますもの」
絶世の美女が博士に言い寄ってきた。
ただこの女、頭脳の方はからきしダメであった。
「遺伝とは、そんな単純なものではないんだよ。ワシの容姿と君の知能が遺伝したら、最低の子供が生まれることになるではないか」
博士は遺伝の法則を教えた。
頭脳と容姿の両方が最高になる確率は四分の一しかない。頭脳が最高で容姿が最低、頭脳が最低で容姿が最高、両方とも最低になる確率も、それぞれ四分の一あることを……。
「かまいませんわ。たとえ四分の一でも、わたしはそれにかけてみたいのです」
女はかたくなにひかない。
そしてついに……。
博士も女の熱意に根負けしてしまった。
二人の間に子供が恵まれた。
ただその子は、メンデル博士の遺伝の法則のいずれにも当てはまらなかった。
頭脳も容姿も中くらい、平平凡凡の子供に育ったのだった。




