84 ポチの散歩
我が家には二匹の愛犬がいる。
ポチとマリで、二匹はとても仲の良い夫婦である。
ポチは十四歳、犬としてはかなりのじいさん。
マリは十二歳であるが、これまた老犬の部類といえよう。
ここひと月ほど。
ポチはマリがいっしょだと、日課にしている散歩に出たがらなくなった。
――ポチ、歩くの遅いからな。
年齢からくる足の衰えのせいで、マリについて歩くのがつらいのであろう。今朝もかたくなに、ポチは犬小屋から出ることを拒んだ。
――しかたないな。
先にポチだけを散歩させ、そのあとマリを連れていくことにした。
いつもの土手の上の散歩コース。
娘さんが白い小型犬を散歩させていた。ひと月ほど前からときたま出会う犬だ。
ポチがさかんにシッポをふる。それからリードを強く引いた。
――コイツ、もしかしたら?
犬のシッポは正直なのだ。
案の定、ポチはオレを引っぱって白い犬に近づいていく。
――どこにこんな元気が?
足の衰えがウソかのように、ポチは白い犬のまわりをグルグルまわり、愛想を振りまく。相手がイヤそうにしているにもかかわらず……。
「すみません」
オレは白い犬からポチを引き離した。
「元気のいいワンちゃんですね。おいくつですか?」
娘さんが笑顔で聞いてきた。
「十四歳のじいさんです」
「まあ!」
娘さんの顔から笑みが引いた。
「そちらは?」
「まだ三歳になったばかりで」
あわてて犬を抱き上げ、娘さんはそそくさと離れていった。
ポチが残念そうに見送っている。
――この色ボケじじいめ!
それにしても、老いてもヨメに気をつかわねばならぬとはな。
マリといっしょに散歩をしたがらない、ポチの気持ち――本当の理由がわかった。




