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70/134

70 隣家の彼

 私は一人暮らし。

 三年ほど前、夫を突然の交通事故で亡くした。

 そのとき。

 私の新しい人生が始まった。


 私には、ずっと前から愛する人がいた。

 ところが彼には、私もよく知る美沙子という妻がいて、私は彼と一緒に暮らすことはかなわないが、彼は私のことを思って、我が家の隣に家を建てて住んでくれている。

 私は誰よりも彼を愛している。

 美沙子より愛している自信があった。

 それに何より、彼との付き合いは、私の方が彼女よりずっと長いのである。

――あの忌まわしい女と別れてくれたら、彼と一緒に暮らせるのに……。

 これまで何度そう思ったことか。


 私は毎日、塀越しに彼の姿を見るのを楽しみにしていた。

 顔を合わせたときは話すこともあった。

 美沙子がそれを見るとイヤがるというので、あまり長くは話せなかったが……。

 あんな女が彼と一緒に暮らしている。

 そう思うと私は我慢できなかった。

 とても耐えられなかった。

 それであらゆる機会に、私は美沙子に嫌がらせをしてきた。

 どうしても彼と別れさせたかったのだ。


 ある日の早朝。

 庭に出ると、塀の向こうに彼が一人で立っていた。

 私を待ってくれていたようだ。

「おはよう」

 私は嬉しくて声をかけた。

 彼が思い詰めた顔で私に近づいてくる。

 そして……。

 彼は私の耳元でささやいた。

「美沙子をいじめるのはよしてくれないか。お願いだよ、母さん」


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― 新着の感想 ―
[良い点] これもまた嫁姑の戦いなのか…… というか嫉妬に見えるって、凄いフィルターのかかりかたしてます。
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