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68 君のご主人
「君のご主人、なかなかステキな人じゃないか」
「あらそうかしら」
ケイコはちょっと笑って答えた。
「見かけはいけてるし」
「ほんとに?」
「ああ、それに仕事もできるって聞いたけど」
「そうなんだ。わたし、会社でのことはあまり知らなくて」
「いや、課長が言ってたよ。何をさせても早く、正確だってね」
「ふーん」
「それにあいつ、すごく優しいだろ。だから職場のみんなに好かれてるんだ」
「へえー」
ケイコは意外だという顔をした。
会社ではそうかもしれない。しかし、家ではずいぶんルーズで、優しさだってごく普通である。
「ただあいつな、ひとつだけ……」
「なあに、どうしたの?」
「いや、君にはちょっと話しづらいんだけど」
「遠慮しないで話したらいいわ」
「じゃあ話すけど、昼飯、社員食堂でみんなと食べるんだけど、あいつ、いつも一番安い素ウドンばかり食べてるんだよ」
「そう、知らなかったわ」
「たぶんだけど、あまり小遣いをもらってないんじゃないかと……」
「ふーん」
「いや、やっぱり話さなかった方が良かったな」
「ねえ、はっきり言ったら」
「何を?」
「お小遣いが少ないんで、もっとちょうだいって。それに何よ。さっきから自分のこと、君のご主人って」




