67 朝ご飯がおいしい
鈴木さんは七十歳、長く勤めた会社を定年退職して十年ほどが過ぎました。
三年ほど前に妻をガンで亡くし、今は息子家族と一緒に住んでいます。家事が何一つできない鈴木さんを心配して、息子が最近になって引っ越してきてくれたのです。
早寝早起き。
散歩は毎日しています。
食事は一日三度しっかり食べています。
鈴木さん。
今朝も元気に目を覚ましました。
この日の朝。
鈴木さんがキッチンに顔を出すと、小学生の孫が朝食をとっていました。
最近は朝食を食べずに学校へ行く子供が多いと聞いています。その点、我が家の孫は感心です。
「おはよう」
「おじいちゃん、おはよう」
孫が笑顔を見せます。
「パパはもう会社に行ったんだな」
「うん」
鈴木さんは自分も朝ごはんを食べようと思いました。
嫁の姿がありません。
「ママはどこだ?」
「ゴミを出しに行ったよ」
「そうか」
嫁がいないとならば、自分でご飯や味噌汁をよそうしかありません。
鈴木さんは自分の茶碗にご飯と味噌汁をつぎ、そしてお茶の用意をしました。
孫と並んで食べます。
今日も朝ご飯がおいしいと思います。
元気な証拠です。
それにです。
自分がしっかり食べることが孫のお手本となると思うと、鈴木さんはすこぶる嬉しくなりました。
朝食を食べ終わった孫が、ランドセルを背負って玄関に向かいました。
玄関で声がします。
「ママ、あのね」
「なあに?」
「おじいちゃんったらね、ボクが食べる前にも食べたのに、朝ご飯また食べてるよ」




