59 第五回夏祭り息止め大会
とある町内。
今年も夏祭りに合わせて、「第五回夏祭り息止め大会」が開催されることになった。
優勝者には前四回と同様、ビール三カ月分の賞品が贈呈される。
第一回大会では息をしていない死者が、第二回大会では口と鼻のない者が、第三回大会ではエラ呼吸をする者が、第四回大会では洗面器の水を飲む者が参加していたことから、今年はあらかじめ回覧板で、「息をしていない者、口と鼻のない者、エラ呼吸をする者、洗面器の水を飲む者の参加は認められません」と、新たなルールを作って周知をしていた。
そのほかは昨年までとまったく同じ。
会場内のテーブルには、水が満タンに入った洗面器が十個並べられ、老若男女十名の強者たちがそれぞれの洗面器の前に立ち、集まった観客たちは、今年は誰が勝つのかと興味津々に見ている。
「それではこれより、第五回夏祭り息止め大会を始めます」
町内会長がルールを簡単に説明してから、ピーッと開始の笛を吹き鳴らした。
参加者十人が、いっせいに洗面器に顔を突っ込んだ。
一分経過。
半分以上の者が顔を上げていた。
二分が経過。
息が続かず、顔を上げた者が九人となった。
最後の一名が決まったので、町内会長がその者の耳元に向かって勝利を告げた。
「優勝ですよ」
その声が聞こえないのか、その者は洗面器に顔を突っ込んだままである。
「あなたが優勝ですよ」
町内会長が肩を叩いて教えた。
するとその者の体がグラリと揺れて、そのまま床に崩れ落ちていった。
口から泡を吹いて白目をむいてる。
「わっ!」
町内会長が男を見て、驚きの声をあげた。
その者の意識はなく、大会途中に洗面器の水で溺れたものと思われた。
大会終了後。
町内会長からルール改正の発表があった。
「これまでのルールに加え、来年からは洗面器の水で溺れる者の参加は不可にします」
次回は第六回夏祭り息止め大会です。




