60 第六回夏祭り息止め大会
とある町内。
今年も夏祭りに合わせて、「第六回夏祭り息止め大会」が開催されることになった。
優勝者には前五回と同様、ビール三カ月分の賞品が贈呈される。
第一回大会では息をしていない者が、第二回大会では口と鼻のない者が、第三回大会ではエラ呼吸をする者が、第四回大会では洗面器の水を飲み干す者が、第五回大会では洗面器の水で溺れる者が参加していたことから、今年は回覧板であらかじめ、「息をしていない者、口と鼻のない者、エラ呼吸をする者、洗面器の水を飲む者、洗面器の水で溺れる者の参加は認められません」と、新たなルールを作って周知をしていた。
そのほかは昨年までとまったく同じ。
会場内のテーブルには水が満タンに入った洗面器が十個並べられ、老若男女十名の強者たちがそれぞれの洗面器の前に立ち、集まった観客たちは今年は誰が勝つのかと興味津々に見ている。
「それではこれより、第六回夏祭り息止め大会を始めます」
町内会長がルールを簡単に説明してから、ピーッと開始の笛を吹き鳴らした。
参加者十人がいっせいに洗面器に顔を突っ込んだ。
一分経過。
半分以上の者が顔を上げていた。
二分が経過。
息が続かず顔を上げた者が九人となった。
最後の一名が決まったので、町内会長がその者の耳元に向かって勝利を告げた。
「優勝ですよ」
最後まで残っていた者が洗面器から顔をゆっくりと上げた。
「わっ!」
町内会長がその者を見て驚きの声をあげた。
その者には頭がなかったのである。
よく見れば洗面器の中に頭が残っている。
と、そこへ老婆が駆け寄ってきた。
「あんた、頭を忘れてるじゃないか!」
老婆は洗面器に残った頭をつかむと、顔がない者の首の上に乗せてやった。
白髪のおじいさんだった。
「ほんとボケちまってから」
老婆が尻を叩く。
おじいさんは嬉しそうにヘラヘラと笑った。
大会終了後。
町内会長からルール改正の発表があった。
「これまでのルールに加え、来年からは顔を置き忘れる者の参加は不可にします」
次回は第七回夏祭り息止め大会です。




