51 透視薬
ある研究室。
「やったぞ!」
博士は歓喜のあまり叫んでいた。
目は閉じたままなのに、まぶたを通してまわりの景色が見える。今まさに長年の研究が実り、ついに透視薬の開発に成功したのだ。
薬の効果は一分ほど続いた。
この透視薬。
目薬のようにわずか数滴を目にさすだけで、使った者のまぶたさえ透けて見えるという、まるで魔法のような薬だった。
使用目的は若い女の裸をのぞき見ること。今は効果が一分ほどしか続かないが、これからの研究で持続時間を長くしていけばいい。
「うひひひ……」
博士はポケットに透視薬をしのばせ、若い娘が多くいる街中に意気揚々と向かった。
そのファーストフード店は、学校帰りの女子高校生らでにぎわっていた。
博士は店の片隅のテーブルに陣取った。
――うひひひ……。
さっそく透視薬をポケットから取り出し、博士はさりげないようすで目にさした。
目を閉じて女子高生の方に向く。
なんとも便利な薬だ。どんなに食い入るように見ても、博士の目は閉じられているのだから、いやらしい目で見ていることには気づかれない。
薬が効いてきた。
博士のまぶたを通して、動いている女子高生らの姿が見える。
――うん?
顔がない。
手がない。
足がない。
女子高生らは制服と靴ばかりになっていた。




