表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/132

45 ちか道

 およそ四十年ほど前のできごとです。

 当時、私はまだ小学生でした。


 その日。

 私はS村の友人の家に向かっていた。彼と遊ぶ約束をしていたのだ。

 途中、県道から山道の方へそれた。

 その道は山の中を抜けS村に通じており、古い時代からあったものである。ふもとをう回する県道にくらべ、起伏こそ多いが距離的にはかなり短い。

 歩いていくにはちか道だったのだ。

 ちか道は雑木林をぬうようにして続き、その中間あたりに古い神社があるのだが、その日は神社の前に見知らぬ少年が立っていた。

「この道って、一本道だよね」

 少年が聞いてきた。

「そうだよ」

 この道は何度も通っていたので、私は分かれ道のないことを知っていた。

「ありがとう」

 少年が笑顔になる。

 私は山道を先へと進み、少し進んだ曲がりかどで振り返ってみた。すると少年はまだ神社の前にいて、どちらへ進もうか迷っているようだった。

 私はS村に向かって歩いた。

 しばらく進み、山道がのぼり坂となったとき、私はおかしなことに気がついた。

 この坂道は神社の手前の道なのだ。

 やはり神社が見えてくる。

 私は神社の前で立ち止まった。

 道をまちがえたとは考えられない。ずっと一本道だったのだ。

 そのとき県道の方から、おじいさんが坂道をのぼってきた。

「この道って、一本道ですよね」

 私はおじいさんにたずねてみた。

「そうだよ」

「ありがとうございます」

 私がS村に行こうか、それとも引き返そうか迷っていると、おじいさんが少し先の曲がりかどで振り返った。が、すぐに木々のかげに隠れてしまう。

 私はS村に行くことをやめて帰ることにした。

 坂道を引き返していると、先ほどの少年が向こうからのぼってきた。

「この道、一本道じゃないみたいだよ」

 少年はそう言い残し、神社の方へ向かって坂道をのぼっていった。

 私は県道に向かって歩いた。

 山道はなだらかになり、やがて見覚えのあるのぼり坂となった。それからふたたび神社の手前の坂道があらわれ、またしても神社に着いた。

 今度はS村に向かって山道を進んだ。

 するとしばらく歩いたところで、ふたたびあのおじいさんと出合った。

 私は頭が混乱していたのだろう。そのときどんなやりとりをしたのか、まったく覚えていない。

 そのあとも山道をいく度となくまわり、そのたびに少年とおじいさんに出合った。そして日が暮れるころになって、ようやく県道へと出ていたのだった。


 今にして思えば……。

 あの日の、あのできごとは、いったい何であったのであろうか。

 たいそう不思議に思うのです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 少年が言った通り、その日だけは、一本道ではなかったのでしょうね。 夕方には家に帰れてよかったです。 不思議な体験をした分、何度もお宮参りをしたことで、 何かしらのご利益を授かっていたらいい…
[良い点] 一本道だから、迷いようがないのに、無限ループかメビウスの輪か。こういうホラー話しは怖いです。 [一言] もしかして、山の東西南北に坂道と神社があって、山を3人で一周してたりして。もしくは、…
[一言] 摩訶不思議な世界。もし、自分がこんな世界にはまってしまったら、涙目でぐるぐる歩き回るに違いありません! 息子たちが幼い頃、あるテーマパークで、兄弟だけでミラーハウスにはいりました。中はすべ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ