129 縁の下の住人
今朝のことだ。
庭の池の鯉一匹が腹を見せて浮いていた。
それは五十センチほどもある大きな錦鯉で、夜間に何ものかに襲われたのか、その腹は内臓を喰われてぽっかり穴が空いていた。
私は無残な姿になった鯉を池から拾い上げ、腹の傷口を念入りに観察してみた。
すると傷口の部分が、鋭利な刃物で切り取られたようになっていた。そうしたことから襲ったものは、カラスなど鳥の類いものではなく、猫かイタチのような鋭い歯を持つ小動物だと思われた。
池には鯉と金魚がまだ十匹ほどいる。
その犯人は味を占めている。
次の獲物を狙って、再びここへやってくるにちがいない。
その日の夜。
私は犯人の正体を確かめるべく、池に面した縁に寝転んで隠れ、それがやってくるのを待った。そして姿を見せたら懲らしめてやろうと、竹ボウキをそばに置いていた。
どれほどの時間が経っただろうか。
カツカツ……。
木の棒で石を叩くような音が聞こえてきた。
私は耳をそばだて、その音の出どころを注意深くさぐった。
音は私のいる下あたりでしていた。
犯人は縁の下に潜んでいたのだ。
カツカツ……。
その音は移動する音とは明らかに違い、硬いものどうしを打ち合わせる音だ。
おそらく上下の歯を打ち合わせて鳴らしているのだろう。
カツカツ……。
歯を打ち合わせる音が大きくなった。
もう縁の先にいる。
じきに縁から出てくる。
そいつが姿を見せたらひと思いに叩いてやろうと、私は竹ボウキを手に、そっと起き上がって縁の先に立った。
そいつが顔を縁の下から出した。
私は縁の上からそれを一気に叩こうとしたが、竹ボウキを振り下ろす手が一瞬にして固まった。
それは猫でもイタチでもなかった。
それどころか生きているものではなかった。
人の髑髏だったのである。
カツカツ……。
髑髏が真っ暗な眼孔をこちらに向け、私を威嚇するように歯を打ち鳴らした。




