多様性
「里長、一つ聞きたいことがあるのですが」
「何じゃ?」
「ウルアは、この村に現れるモンスターに手を焼いていると言っていました。この様子を見ると、俺にはそうは思えないのですが」
数ヶ月前、魔剣を狙って鬼が王城や学園を襲撃するという事件があったことは、カントの記憶に新しい。
鬼たちが魔剣を盗もうとしたきっかけは、この集落に魔法攻撃しか効果がない魔物が現れ、対応に困ったためだと、以前戦ったウルアは言っていた。
しかし、実際のところはどうだろう。
鬼のもつ剛腕であれば、このゴーレムは素手でも倒せるほどの脆さであり、魔法を使うことなく倒せてしまっている。
「実はゴーレムにも種類があってのう。確かに土でできた奴だけを見れば弱いんじゃが……。これだけ沢山いれば他のも混じっておるじゃろう。ほれ、よく見てみい」
殆どのゴーレムが凍って動けない中、動いているゴーレムがあった。
「あいつは石でできているゴーレムじゃな。ストーンゴーレムとでも呼べばよいかの」
ストーンゴーレムは、土でできたものよりも一回り大きい。
そのためか、土のゴーレムよりも強そうに見えた。
(そういえば姫もそんなのがいるようなことを言っていた気がするな)
「動いているということは、魔法が効かなかったのか。あいつは強いんですか?」
「岩でできていて硬いから、土の奴よりは厄介じゃな。しかし我らにかかればそれほどでもない。凍らなかったのは土よりも水分が少ないからじゃろう」
それを示すかのように、鬼の一人がストーンゴーレムに正拳突きを打ち込むと胴体に穴が開き、そのまま崩れ落ちた。
普通の人間にはできない戦法である。
里長の言うとおり、ストーンゴーレムを倒すのに苦労しているようには見えなかった。
「それから水でできた奴もおる。あれは殴っても体を突き抜けてしまうから割と厄介じゃな。お主のように凍らせてしまえば楽勝じゃが」
ゴーレムにも種類がいくつかあり、タイプによっては鬼との相性が悪いものもある。
どうやらそういうことらしい。
「この根源を何とかしようとはしなかったんですか?」
原因が近くの洞窟にあるとはっきりしているのだから、そこを何とかしようと考えるのが普通だ。
「当然それも考えた。じゃが、あそこに近づくほど我々の苦手な種類が頻繁に出てくるようになるんじゃ。特にこの里には魔法の力に秀でた者はいなくてな」
(だから魔剣を盗もうとしたわけか)
ようやく話が見えてきた。
鬼たちが対処できないのであれば、カントたちが何とかするほかないだろう。
「くそっ!逃げろー!!」
入口で戦っていた鬼のうち、力の弱そうな者たちが一部こちらに逃げ出してきた。
「どうしたのじゃ?!」
そのうちの一人に里長が問いかける。
「おばば!透明な奴が出やがった!」
「なんじゃと?何故こんなところにまで!急いで子供たちを村の奥へ」
余裕を見せていた里長の様子が急に変わった。
「透明な奴?」
「入口の近くをよく見るのじゃ」
村の入口付近には、これまでに破壊されたゴーレムたちの残骸である土や石などが小さな山を作っていた。
その山を一際機敏な動きを見せる何かが駆け下りてきた。
他のゴーレムがノロノロとしか動かないことと比べれば、性能が段違いであることは明白だ。
「ガラス、いや水晶か」
そのゴーレムの体は透き通っており、後ろの景色が歪んだ形となって透けて見えていた。




