閑話 【新編聖典】聖人カント、ナスタリアに立つ
カント達が生きた時代にあった教会から新たに興されたナスタリア教。
ナスタリア教の教典はこれまでの「聖典」に「新編教典」と呼ばれる部分が追加され、後世において、多くの信者が日々通読していた。
◆―――――――◆―――――――◆―――――――◆
〔聖人カント、ナスタリアに立つ〕
ナスタリアのトルンスタントという地に、アイリスという名の領主の娘がいた。
アイリスは伴の者を引き連れ、領内を出歩いていると、白い衣を着た者に出会った。
「あなたは誰か」とアイリスが尋ねると、その者は答えた。
「私は、かの地よりある方の命を受けてこの地を訪れた者。
この先に行くとの海岸に少年が倒れている。
彼は将来偉大な者になるお方。
あなたが助けてやるのです」
アイリスは、言われたとおり先に足を進めると、神々しい光が天から降りてくるのが見えた。
その場所には、少年が倒れていた。
少年の名前はカントといった。
これがカントとアイリスの出会いである。
アイリスが自宅にカントを連れていくと、
「見知らぬ者を家に入れるな」と父親は言った。
「古き教えを守る者たちも、旅人には優しくせよと言っています。
どうか彼にもパンと寝床をお与えください」とアイリスは懇願した。
「古き教えを守る者たちは、働かぬ者にはパンを与えるなとも言っている」と父親は反論した。
カントはそれを聞くと部屋の窓を開け、聖なる言葉を唱えた。
すると、辺りは眩い光に包まれて、暴風が窓の外の木々を倒していった。
これが後の、エン・ナスタルまで続く、トルンスタント大街道である。
カントは、この仕事によりその日のパンと寝床を得た。
カントは、自らが作った道を歩き、ナスタリアの都へと向かった。
その足がタイタニアの街の土を踏んだ時、カントは邪悪な気配を感じた。
おりしも王女エリザが、都より攫われ、その地にいたのである。
カントが街の路地裏を覗くと、悪魔とエリザの姿があった。
「邪悪な者よ、滅びよ」とカントが聖なる言葉を唱えると、悪魔は跡形もなく消し飛んだ。
これがカントとエリザの出会いである。
カントは白い衣を身に纏い、エリザに導かれてナスタリア王の前に現れた。
王はカントの正体に気付き、その場にひれ伏した。
「まことに、あなたは偉大な者となるお方。
然る地位のもと、どうかこの地にいらしてください」
「私は、この口と、この足を僅かに使ったに過ぎない。
これに見合わぬ地位は得られない。
私は、あなたの娘の騎士となり、この地にとどまることにしよう」
こうして、カントはナスタリアの地を守ることになった。
明日も短いネタのみの投降です。
次回本編 新章「プロローグ」




