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誰かの思惑に巻き込まれた話(異世界転移編)  作者: 近江守
第1章 異世界に飛ばされて
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エピローグ

 入学の日が差し迫り、準備も一段落したということで、アイザックは領地へと戻っていった。

 カントとアイリスは、今日から学園の寮での生活となる。


「カントの分も含めて、やっと入学の準備ができたわね。カントが観光する時間が無くなってしまったけど、それは入学してからにしましょう」


 これから王都に住むのである。

 行こうと思えば、いつでも行ける。


「そうだな。俺は、ようやくこの世界での生活に目処が立って一安心だよ」


「そういえば、今まで聞いたことが無かったけど、カントは元の世界に帰りたいと思っているの?向こうの世界にも家族がいたんでしょう?」


「肉親は妹だけだったよ。体が不自由だったから、多少気がかりだけど、しっかりしている子だから、あまり心配はしてないな。急いで帰ろうとは思っていないよ。帰る方法もわからないし」


「そう。まずはしっかり勉強して魔法を使いこなせるようにならないとね」


「帰る方法があるか検討するのはもっと先のことだろうな。このままでも、戻っても、どちらでも俺はなんとかやっていくさ」


「これからは、私たちは同級生ね。良き仲間であり、良き好敵手ライバルとなれるようお互い頑張りましょう」


「ああ、よろしくな!」



  ※  ※  ※  ※  



 自領への帰路の途中、アイザックは、揺れる馬車の中で自分の失敗を一人痛感していた。

 それは、カントに巡礼用の衣を着せたことである。

 黒髪という珍しい見た目に、よく漂白された真新しい衣を着せたことで、カントが、聖典に描かれた天使のイメージにダブって見える。

 そんな信者が非常に多かったのである。

 このため、カントと王城を訪れたあの日、城内で多くの人々がカントの姿を目撃し、天使が王城に現れたという噂がまことしやかに流れた。

 さらに、謁見の間の人払いをしたという異例な行為も、噂を助長させることにつながった。


 王国は、神の怒りを買うようなことをしてしまったのではないか。

 近々、王都で天変地異が起きるのではないか。

 様々な憶測が囁かれた。

 既に、この噂に反応して物価に動きがみられるらしい。


 また、教会のとある一派は、既にこの話を都合よく取り入れようと画策しているようである。

 カントの力が、誰かの権力のためだけに利用されてはならない。

 アイザックは、そう考えている。

 聖典の中でも、過去の人物は、旅人――拡大解釈すれば異世界人――に優しくするよう、後世の我々にアドバイスを贈ってくれている。

 異世界人であるカントが、この世界でも気持ちよく生活していけるようにすることは、この世界の人間の責務であるのだ。

 その上で、カントがこの世界に恩恵をもたらしてくれるのであれば、それほど都合の良いことはない。

 今回の短い旅を経て、アイザックは改めてそれを確認したのであった。


 アイザックはポケットから取り出したバッジを眺める。

 それは、名士の称号を示すものであった。

 実はカントを王城まで連れてきたという功績で、新たに王から授与されていたのであった。

 一つ減る予定だった自分の称号は、なぜか今も変わっていない。

 

 「大丈夫か?この国は」


 アイザックは、一人呟いたのであった。


次回から本編は新章突入ですが、

【新編聖典】を追加投降します。


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