42 ギュースト市攻防戦 Ⅰ
最近は休みの日は新作ばかりで、こちらの更新が出来ていませんでした(;・∀・)
申し訳ありませんm(__)m
「ウオォォォォ!!」
ギュースト市へと進攻を開始した蜥蜴人族。
その大軍が発する唸り声はギュースト市を守る兵士達を一気に飲み込み、彼らの士気を低下させる。
「や、やっぱり無理だ……。あんな奴らに勝てるわけがない!」
「その通りだ! ただでさえ蜥蜴人族は人間よりも遥かに強い、その上俺達は数も敵より少ないじゃないか! これで戦えって方がどうかしている」
俺の周りにいた兵士達にも動揺は伝わり、口々に似たような言葉を発しその身体は無意識なのだろうが徐々に街へと後ずさりを始めた。
まぁ、無理もないか……。
蜥蜴人族の力は人間の3倍近いという。
彼ら普通の兵士が怖がるのも責めることは出来ないだろう……。
「……まぁ、例外の奴らもいるみたいだけどな」
俺は兵士達とは違う、それぞれが違った防具を身に着けている集団へと視線を移す。
そこには迫ってくる蜥蜴人族の大軍に、今にも飛びかからんばかりに興奮している者達がいた。
そう、それこそこの戦いに召集された冒険者達なのだ。
「おぉぉぉぉ、お前ら行くぞ!!」
「よっしゃぁぁ!! あいつらを全員倒して報酬をがっぽり頂くぜ!!」
「へっ、お前らには負けねぇからな!!」
この戦いでは冒険者には多額の報奨金がディートゲイルから出るらしい。
そのため、それを目当てとした冒険者がギュースト市のみならず周辺の街からも集まり、その数は100人を超えている。
彼らは怯える兵士達を横目に、再度雄たけびを上げると城門から飛び出し蜥蜴人族へと果敢に攻めていく。
その姿は、先ほどまで怯えていた兵士達にも火をつけたのか、彼らの背中を見つめる守備兵達の目からは怯えが徐々に消えていったのだ。
「くそっ、お前ら冒険者に遅れを取ったなんてバーナー卿の配下として笑いものになるぞ!」
「そうだ、俺達はあの戦鬼 ディートゲイル・バーナーの兵士だ。あんな蜥蜴野郎に負けるか!」
「冒険者に続けぇぇ!!」
オォォォォ!!
兵士達は蜥蜴人族達と刃を交える冒険者の姿に剣を抜き雄たけびを上げる。
そして次々と城門を飛び出し戦場へと駆けていったのだった。
戦場では城壁を守る300の兵による弓や遠距離魔法での攻撃、そして街の外で戦う700の兵と100人以上の冒険者が倍以上の蜥蜴人族の大軍を何とか押しとどめる。
その光景に俺の隣にいるエイラとルルミアは言葉を失っているようだった。
「す、すごい……。あれだけの数の蜥蜴人族を相手に互角に戦っているなんて……」
「そ、そうねエイラさん。私も何か役に立ちたいけど……」
エイラもルルミアも、今すぐにでも戦場へと助けに行きたいと言った様子だな……。
確かに兵士も冒険者もよく戦っている。
いや、十分すぎるくらいだ……。だがそれが何か違和感を覚えずにはいられない。
これが人間を遥かに超える身体能力を持つ蜥蜴人族の全力なのか?
まだ何か隠している気がするが……。
「タイチ殿、ここにいたか」
「ディートゲイルか。ああ、この城門の上なら戦場が見渡せるからな」
「ハハハッ、そうか。それで? タイチ殿の目にはこの戦い、どう映る?」
「俺は冒険者だ。戦いの事は分からないけど、敵の動きは少し不自然に感じるな……。あんたにあらかじめ聞いていた蜥蜴人族の力なら、もっと攻め込まれてもいいはずだと思うが……」
ディートゲイルは俺の考えと同じ考えなのか、何度も頷き戦場へと視線を戻した。
流石はタイチ殿、それは私も同意見だ。
蜥蜴人族は明らかに本気で攻めていない……。
まるで何かを待っているような感じがするが……。
「……だが、敵が本気ではない今は好機とも言える。タイチ殿、私はこれより戦場へ向かい、一気にこの戦いに終止符を付けるつもりだ」
「そうか、あんたは俺よりも戦いをよく知っているからな。そう言うなら止めはしないさ」
「ハハッ、お気遣い感謝するタイチ殿。では私はこれにて! 後の事はフレーゲルに任せる故、何か用があるときは彼に相談してくれ!」
ディートゲイルの背後には、いつもの正装とは違い鎧を身にまとうフレーゲルが俺の視線に気づき頭を下げる。
その後ディートゲイルは俺の右肩に一度手を置いた後、数名の護衛と思われる兵士を連れ城壁から城門前に集まっている兵士達の元へと向かっていった。
どうやらディートゲイルは街には最低限の兵だけを残し、この機に一気に敵へと攻め込む気らしい。
それが分かっている兵士達の表情も、これまでとは違いどこか覚悟を決めているような顔つきだった。
「いいか!! これより我らも戦場へと向かい、この街を奪おうとする敵を討つ! この街は我らの家、そして家族の家。奴らにこの街に来たことを後悔させよ! 命を懸けて街を守るのだ!!」
『おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』
「開門!!!」
ディートゲイルの言葉にその後ろに控える200名ほどの兵士達は、一斉に雄たけびを上げる。
それは開戦と同時に聞こえた蜥蜴人族の雄叫びに引けを取らないほどのものであり、彼らは城門が開くディートゲイルに続き次々と戦場へと駆けだした。
その戦いぶりはまさに戦鬼の名に恥じないもの。
ディートゲイルは身体強化魔法で兵士達よりも遥かに早く戦場へ到達、目にも止まらない速さで敵を切り伏せていったのだ。
「私はこの街の領主、ディートゲイル・バーナー! これより先には一歩も行かせん!!」
「バ、バ―ナーだと?! お前があの戦鬼と名高いディートゲイル・バーナーか!」
「ぐっ……。戦鬼がどうした! 俺達は蜥蜴人族、人間如きに臆する訳がない!!」
ディートゲイルの名に恐れを見せる蜥蜴人族が多い中、それでも果敢に攻撃を試みる10体程の蜥蜴人族が武器を手にディートゲイルへと飛びかかる。
しかし彼らの決死の攻撃もディートゲイルに到達することはない。
ディートゲイルはたったの一振り、そう剣を一振りしかしなかった。
だがその攻撃でディートゲイルの周りを取り囲んでいた蜥蜴人族は体から血を噴き出しその場へと崩れ落ちる。
「剣技 一の太刀。私の間合いに入ったのがお前達の失敗だったな」
おぉぉぉぉぉぉ!!
ディートゲイルの見事な太刀筋に、兵士達からは歓喜の声が上がる。
それとは対照的に、蜥蜴人族達の顔は恐怖へと支配されていくようだった。
「今だ、敵を一気にこの力追い出すのだ!!」
「よっしゃぁぁ!! 領主様に続けお前ら! 俺達冒険者の力を見せるんだ!!」
「くそ、冒険者なんかに遅れを取る訳にはいかん。我らもバ―ナー卿に続くんだ!!」
よし、これならいけるかもしれない!
この勢いのまま敵を……、あ、あれはなんだ!?
ディートゲイルの登場により退却を始める蜥蜴人族。それを追撃するディートゲイルに続き、冒険者と兵士がさらに進撃を続ける中、ディートゲイルは戦場に現れた影に気が付き後ろの兵士達に足を止めるよう命令を出す。
その光景に城門の上から戦況を眺め続けていた俺も目を凝らす。
そしてディートゲイルと同じく前方に見える丘、そこに現れたある異変に気がついたのだ。
それはこれまでの敵とは違う、大きな体を持つ生物。
俺は丘の上に現れたその見覚えのある生物に思わず声が漏れるのだった。
「あれは……、まさか……」
……バジリスクだと?? しかも1体だけじゃない!
少なくとも10体はいるじゃないか……。
くそ、奴らあれの到着を持っていたんだな!!
「……あれはバジリスクですか?!」
「ええ、そうよエイラさん。どうやら敵はバジリスクを手懐けているようね」
「そんな……。一体だけでも私とルルミアさん、それとルナ様が力を合わせてやっと止めを刺せたのに。それが10体以上いるなんて……」
エイラ、ルルミアもその姿に驚きを隠せないようだ。
しかしこうしている間にも戦場へと現れたバジリスクは、背に蜥蜴人族達を乗せ、ディートゲイル達へと迫る。
あれはディートゲイル1人じゃ無理だ!
兵士や冒険者もいるが蜥蜴人族を相手にしながらじゃ……。
「……こうなったら俺達も行くぞ! エイラ、ルルミア、昨日話した計画通り……」
「お待ちをタイチ殿! まだあなたが行くには早いですぞ!!」
どういうことだ……?
これ以上は流石に……。
俺達が戦場へと向かおうと足を動かした瞬間、側にいたフレーゲルが声を上げる。
俺も最初はその言葉に真意が分からず、彼の制止も構わず戦場へと向かおうとした。
だがしばらくして上空を見上げたフレーゲルを目にし、彼の言葉に意味を理解したのだ。
上空には何羽もの鳥が空を舞っている。
その中には鳥とは違う影が4体あり、それらが徐々に地上へと舞い降りてくると、その姿の気が付いた兵士達からはこの日一番の声が上がった。
俺もその姿に笑みを浮かべるしかないのだった。
「……全く、本当にこういう時だけタイミングが良すぎだろ」
まぁ、今回ばかりは素直に喜んでやるよ、馬鹿エリザ。
「アハハハハッ、あとは私達に任せなさい!! あんな竜もどき、一瞬で灰にしてやるわ!! さぁ行くわよ!!!」
『グォォォォォォォ!!』
戦場へと舞い降りた3匹の竜。
それらは火に雷、はたまた突風を口から吐き出し次々と蜥蜴人族を蹴散らせていく。
その中でも一番大きな体を持つ竜、その背に乗るエリザはこちらへと向かってくる一体のバジリスクに照準を合わせると、その思考を読み取った竜は口に炎を集め一気に放出。
一直線にバジリスクへと到達し、その胴に大きな穴を開けるたのだった。
「アハハハハッ、私達の力思い知ったかしら!」
「団長……、その攻撃は竜の魔力消費が大きいのでここぞって時に使うはずだったでしょ……。ほら団長の竜、もう息を切らしてますよ?」
「はっ、しまった! ついテンションが上がって……」
「全く、あなたって人は……」
エリザは隣まで竜を進めて来たバレリーの言葉に、みるみる顔色が悪くなっていく。
どうやら先ほどの攻撃は何度も使うことは出来ないらしい。
その事をエリザも思い出したのだろう。
バレリーが去った後も、彼女と竜は凍ったまましばらく動かなかったのだから……。
ともあれ、エリザ達竜騎士近衛団の到着で、この戦いは新たな局面へと突入した。




