40 王女の裏の顔??
新しく「裏切られの最強将軍! ~嵌められ処刑されたのだが、魔法特性オールSの体に転生したので奴らへの復讐を目指します!~」を始めました!
良ければ読んで頂けると嬉しいです!
「彼女が、ミリュリーネ第三王女……」
俺は目の前に現れた女性の姿を見つめながら小さく呟いた。
年は20前後と言うところか……?
以前ディートゲイルから黒幕の可能性があると聞かされていたせいでどれだけ悪人面をしているのかと思っていたけど、正反対の印象を受ける容姿だな……。
銀の髪に、緑の瞳。そしてスラリと伸びた手足。身に着けている白い洋服が彼女の美しさをより際立させている。
でもディートゲイルとエリザのあの狼狽ぶり……、一体どういう訳なんだ??
「……タイチ様!! 王女様ですよ?? 早く頭を下げないと!!」
「あ、ああ、そうですよね……」
執務室内にいた全ての者がミリュリーネに頭を下げる中、一人だけ彼女を見つめる俺の姿に側にいたエイラは慌てて俺のマントを掴み頭を下げるように促す。
そのことで俺もようやく頭を下げるのだった。
危ない危ない……。
相手は王族、こういう時に引きこもりの世間知らずが発揮されてしまうんだよなぁ……。
「ミリュリーネ様。到着はもう少し後のはずでは?? どうしてこれほど早くお着きになられたのでしょうか??」
しばらくして先頭でミリュリーネに頭を下げていたディートゲイルがゆっくりと頭を上げ立ち上がると、目の前の彼女へ尋ねる。
「そうだったかしら? うーん、あんまり覚えていなかったからちょっと早く着いちゃったのかしら。ごめんね、ディートゲイル?」
「い、いや! そう言うことでしたら問題はありません。ようこそこのような僻地までおいで下さいました」
「フフフフ、そうかしこまらなくてもいいのに。あっ! エリザ!! あなたもいたのね!!」
「そ、そうなのミリュリーネ様! まだ調査が残っていて……」
「ふーん……。そう言えばお母様からこんなものを預かってきたの。エリザに会うことがあれば渡すようにって!」
ミリュリーネはエリザの元まで進むと、後ろに続く全身銀の鎧に身を包んだ兵士から1枚の書状を受け取り、それをエリザに手渡した。
その書状を受け取ったエリザは一度息を飲むが、目の前のミリュリーネの口元が緩んでいることに気が付くとその表情は益々悪くなっていく。
……ミリュリーネ様め、偶然会ったような口ぶりだったけど本当は私がここにいることを知っていたのね!
しかもこの人が嬉しそうな顔をしているとなると、書状の内容、いや送り主ももしかすると……!
ボシュッ!!!
恐る恐る書状を開いたエリザの予想は的中した。
女王の紋章が描かれた書状は開かれると同時に宙に舞い上がり煙を上げると、次の瞬間にはその場に半透明の男性が立っていたのだ。
その若いながらも威厳のある佇まいを見せる黒髪の男性は、エリザの目を見つめるや否や割れんばかりの声で彼女を叱責し始める。
「団長!! あなたはいつまで陛下の護衛任務を放棄するのだ!! 陛下はお前に甘いが、私はそうはいかんからな!!!」
「ご、ごめんなさい!! でも聞いてブルーネガ? 私は陛下に頼まれたこの地で起きている調査を……」
「それなら既に解決したと先日戻ったホーゲンから報告を受けている。」
ちっ! あの筋肉バカ、余計なことまで言うんじゃないわよ!!
「で、でもまだ全て解決したわけじゃないのよ? ほら、バレリーも何とか言ってよ!!」
エリザは側にいたバレリーに視線を移すと、ブルーネガに見えない角度で彼女に目配せをする。
だがそんなことはお構いないかのようにバレリーは淡々とブルーネガに報告を始めるのだった。
「副団長。団長は王都に帰りたくないのです。この街なら陛下もあなたもいない。つまり任務を忘れ遊びまわることが出来ますから」
「ちょ、ちょっとバレリー!? 何を言って……」
「私も同じように何度も王都に戻るように進言はしているのですが、団長は私の言うことには聞く耳を持たず……、ウッ、ウッ……」
こ、こいつ!! あなたが泣く所なんて始めて見たわよ??
……あっ!! ブルーネガに見えないように顔を覆っているけどこの子笑ってる……。
「ブ、ブルーネガ? 私の話も聞いて……??」
エリザはウソ泣きを続けるバレリーからブルーネガへと視線を戻すが、彼の表情を見るとその表情は真っ青になっていった。
しかしそこでやり取りを聞いていたミリュリーネが大きく笑い声を上げる。
「アハハハハッ!! エ、エリザもブルーネガには敵わないのね!! 本当におかしくてお腹が痛い……」
「はぁ……。全くお前には竜騎士近衛団の団長としての自覚をもっと持ってほしいものだ。ミリュリーネ様、今回は書状を届けて頂き感謝いたします」
「ヒィ、ヒィ……、い、いいのよ。お陰で面白いものも、み、見れたしね!」
「……団長、今回だけは特別にもう少しだけ時間をやる。十分羽を伸ばしたら帰ってこい! そしたらこれまで以上に働いてもらうぞ!!」
「わ、分かったわ!! 約束する!!!」
「……フッ、まったくこのような時だけ子供の様な表情をしやがって。」
そう言うとブルーネガはエリザの嬉しそうな顔に小さく笑みを浮かべた後、その姿は足元からゆっくりと消えていったのだった。
あれは魔通信を映像化したようなものか……。
恐らくあの書状に仕掛けがあるんだろうけど、まだまだ俺の知らない魔法があるもんなんだな。
ブルーネガの許しを受け興奮するエリザを横目に俺は床に置かれている書状を手に取った。
そして誰にも見つからないように習得者を発動、瞬時に模倣で作り出した書状を再び床の上に戻した。
なるほどな、この書状自体が魔具の一種で魔通信を移しだせるのか。
でもこれだと送信用の魔具も必要になるな……。今度ディートゲイルに王都へ連れて行ってもらってその送信用魔具を見れるか頼んでみるか?
……まぁ、無理だろうな、ハハハハ。
「タイチ殿、何をしているのだ??」
「あ、いや何でもない。初めて見る魔法だったからな、どういう仕組みなのか少し気になっただけだ」
「そうか。これは王家やごく一部の貴族達が使用する魔通信用の魔具だ。まぁ竜騎士近衛団副団長のブルーネガは魔具造りに長けていると聞くし、これも自作であろう」
へぇ……、それはいいことを聞いたな。そのブルーネガという男、ぜひ会ってみたいな。
「ねぇ、ディートゲイル。この人は誰なの??」
側に来たディートゲイルの言葉に俺が考え込んでいると、エリザをからかうのに飽きたのかミリュリーネも側まで近づきディートゲイルの顔を覗き込むように尋ねて来た。
「これは紹介が遅れました。この方は鉄級、いや先日のバジリスク討伐で一階級上がって今は銅級の冒険者のタイチ殿です」
「へぇ!! あなたがタイチなのね!! タイチの噂は王都まで届いているわよ? 昇級記録を破っているってね!!」
「ハハハハッ、そうでしたか! それなら話が早くて助かります! タイチ殿には陛下より受けた任務の手伝いをしてもらっておりまして、ミリュリーネ様にも知っていて頂こうと思い今日はここにお呼びしたのです」
「ふーん、そうなんだ。じゃあ、これからよろしくねタイチ!」
ミリュリーネはディートゲイルの言葉でその隣にいる俺へと視線を移すと、その深い緑の瞳で見つめながら右手を差し出した。
この王女、本当に信用できるのか??
ディートゲイルの態度から黒幕の可能性は本当に限りなく0に近いのは確かなんだろうけど……。
「よろしくお願いします、ミリュリーネ王女」
「ええ、よろしくね!」
俺は彼女を完全に信用したわけではないが、ディートゲイルの顔を立て差し出されたミリュリーネの手を掴み小さく頭を下げる。
だがその姿に、側で様子を見ていたエイラとルルミアは2人して驚きの声を上げたのだった。
「う、嘘……。あのタイチ様が敬語を使ってる……」
「え、ええ。私も驚いたわ。あのタイチ様が人を敬うなんて……」
あ、あのなぁ!! 俺だってずっと引きこもりだったわけじゃないんだ!
社会人もしてたし、敬語だってちゃんと使えるわい!
まぁ、この世界に来てからは300年間使うことがなかったんだけど……。
「ハハハハッ、タイチ殿もエイラ殿たちには敵わないということか!」
「あれはタイチの仲間なの? ……ふーん、そう言うことなら別に敬語じゃなくてもいいわよ? 私はそう言うことは気にしないし」
「……そうか? ならそうさせてもらうとするよ」
ふぅ……、まぁ実際久しぶりの敬語で変な感じがしてたしその方が助かるな。
俺は笑い声を上げるディートゲイルを睨みつけた後、目の前のミリュリーネの言葉を受け入れ小さく息を吐く。
それよりこの王女。もっと何かあるのかと思ったが、案外普通の女性という感じだ……。
でもそれならどうしてディートゲイルもエリザもあれほど怯えていたんだろうか??
「おい、ディートゲイル。少しいいか??」
「なにかな、タイチ殿??」
俺はルルミア達と話始めたミリュリーネの隙を突き、ディートゲイルと少しその場を離れた。
「あのミリュリーネ王女だけど、別に変な感じはしないが何か問題でもあるのか??」
「う、うむ……。皆最初はあの美しい外見と明るい性格に騙されるのだが、実は……」
「実は……、何かしら?」
「ふぇぇぇぇ!!」
真剣な面持ちで俺に答えようとしたディートゲイルだが、いつの間にか2人の間にいたミリュリーネの姿に気が付くと今まで聞いたことも無い奇声を発しその場に腰を抜かす。
だがミリュリーネはそんなディートゲイルに笑みを浮かべながら距離を詰めていった。
「あなた、まさかタイチに変な事を言おうとしたんじゃないでしょうね??」
「め、滅相もない! ミリュリーネ様の素晴らしさをお教えしようと……」
「ふーん……。ゴホンッ、えっと? ディートゲイルは確か深夜に隠れてお菓子を浴びるように食べている、かぁ……」
「な、何故そのことを!! それは誰も知らないはずなのに!!!」
ミリュリーネはどこからか取り出した分厚い本の中を見つめながら更にディートゲイルに笑みを浮かべる。
秘密をばらされたディートゲイルの顔はみるみる紅潮していくが、ミリュリーネは他のページを開き更に口を開こうとした。
……あぁ、なんとなく分かったわ。
この人はあれだ、うん。いわゆる人を苛めるのが好きな「S」と呼ばれる人種だ。
多分あの本にはディートゲイルを始めエリザやバレリーの聞かれたくないことが書かれているんだろう。
だって2人ともあの本が出てから全く動かなくなったんだもん。
俺は冷や汗を流し硬直するエリザとバレリーの姿を見つめた後、なおも恥ずかしい裏話を暴露され耳を塞ぐしかないディートゲイルを憐れむように見つめた。
だが後日、この本に俺の恥ずかしい事も記載されミリュリーネに暴露される羽目になるのだが、そのことに俺はまだ気づいていない……。




