34 竜騎士近衛団!
前回からずっと出したかったエリザを出せたので、何故か嬉しいぺロロンぺです(笑)
シュゥゥゥゥ……。
俺と謎の少女が再度衝突した場所は、衝撃波と共に舞い上がった砂煙で一瞬で覆われてしまった。
そのためエイラ達も2人がどうなったのか確認することが出来ない。
ただエイラは、このようになる寸前にルルミアが放った言葉を思い出し、目の前にいるルルミアに口を開き尋ねた。
「あの、ルルミアさん?? さっき言ってた彼らは…、というのはどういうことですか? あの人たちの正体を知ってるということですか??」
エイラの言葉に、ルルミアは後ろの彼女に振り返らずに答え始める。
「そ、そうね……。私もさっき気が付いたんだけど、後ろの2人のマントの紋章が分かる?」
「は、はい。大きな鷲が翼を広げている紋章…、でもあれが何かは私には……」
あれ? ちょっと待って?? 大きな鷲の紋章に、竜。それに黒鎧の兵士ってまさか……!!
だが、しばらく兵士達の紋章を見つめていたエイラが彼らの正体に気が付き声を上げようとした瞬間、2人の会話を聞いていたハシュナが小さく呟いた。
「……女王直属の竜騎士近衛団ってことね」
ルルミアはハシュナのその言葉に無言で頷く。
でもどうしてこんな所に王国兵最強とも呼ばれる竜騎士が??
もしかしてタイチ様の正体がバレた?? それで女王自らその討伐に……。
カランッ……。
だがルルミアの心配をよそに、その場を覆っていた砂煙が晴れ始め2人の姿が見え始めると、そこには右目のマスクを剥されたため、露になった右目部分を右手で隠すようにしている俺と、彼の首元に剣を当てている少女の姿があったのだった。
「タイチ様!!」
「こっちに来るなエイラ!!」
俺は自分の姿を見たエイラがこちらに駆けだそうとしているのに気が付き、左手を彼女に向けその行動を制止した。
エイラを始めルルミア、ハシュナも俺のその行為を見ると足を止め、俺達の戦いの行方を見守ることしかできなくなっってしまった。
「ふぅ、少しはやるようだけどここまでのようね? さぁ、その手を退けてもらえるかしら?」
俺の喉元に剣を当てる少女は笑みを浮かべ尋ねる。
くっ……! こいつなんて強さだ。
俺の肉体は死者の反逆で力が制限されているとはいえ、レベルで言ったら60~70くらいはあるはずだ。
それに魔法だって中級魔法までは使える。
その俺をいとも簡単に追い詰めるなんて…。しかもこいつ最初は本気じゃなかったな……。
だけどこれ以上はエイラ達も危害が及ぶかもしれない。
ツゥゥゥ……。
俺は首元に伝わる僅かな痛みを感じると、観念したように右手をゆっくりと外し始めた。
目の前の少女はその姿に始めは余裕の笑みを浮かべていたが、露わになった俺の右目部分を目の当たりにし徐々にその表情が強張っていく。
それもそのはず、俺の右目は縦に真っすぐ切り傷の入り閉じてはいるが、紛れもなく人間の顔そのものだったのだから。
「えっ……。一体どういう…、えっ?!」
「全く、この目が見られたくなくてマスクで隠していたというのに。」
「…分かったわ、それは幻覚ね??? 危うく騙されるところだったわ!! ……あれ、感触がある」
プニ、プニ……。
少女は俺の右目近くに何度も触れるが、そこに感じたのは人の肌と同じ弾力。
そのことで少女の顔色は益々悪くなっていくと、遂にはその目に涙を浮かべ始めてしまうのだった。
「ご、ごめんなさいぃぃぃぃ!!!」
少女は俺とエイラ達、それと後ろにいた2人の兵士に囲まれる中、正座をし泣きながら俺に謝ってきた。
その身体は一段と小さく見え、事情を知らない者がその光景を見ればどちらが悪いのかを誤解していたことだろう。
「はぁ、それで? あんた達は一体何者なんだ??」
俺はマスクを装着しなおし、少女の後ろにいる2人に尋ねた。
その問いに、端正な顔立ちに青い瞳、腰までありそうな黒い髪を持ちスラリとした体に鎧を装着している女性の兵士が答える。
「私達は女王陛下直属の部隊、竜騎士近衛団だ。今回はこちら、いや団長の勘違とはいえ貴公には迷惑をかけ申し訳なかった。」
「ごめんなさいぃぃ!!」
少女は相変わらず泣きながら、後ろの女性の後に続き頭を下げる。
その姿に、俺は若干引きかけるがすぐに女性が放った言葉が引っかかった。
「いや、別にそれはいいんだが……、ってあれ? 団長??」
「ええ。そこで小さくなって泣いているのが我らの団長 エリザ・キュートだ。そして私がバレリー・スコット」
「俺がホーゲン・ジークだ。よろしくな!」
バレリーに続き、隣にいる彼女の頭一つ分は大きな体を持つ筋骨隆々の金髪の男性が笑みを浮かべ口を開いた。
へぇぇ……、この小さい子供が団長なのか。
まぁ実際に戦ったからその強さは身をもって味わってはいるけどさ。それでも信じられないな…。
俺は後ろの2人の言葉を聞くと、目の前でおとなしく正座を続けているエリザと同じ目線になるよう膝を付いた。
「あんた達が何者なのかは分かった。でもどうして俺を襲ってきたんだ? その手配書のアンデッドの姿と俺じゃ姿が全く違うだろ??」
まぁ俺なんですけどね、その手配書のアンデッド!
「グスッ、それはですね……」
エリザは俺の問いにしばらく無言を貫いた後、ゆっくりとその訳を話し始めた。
エリザが俺達を襲撃する3日前。
エリザ、バレリー、そしてホーゲンの3人はルルミアの故郷であるフーゼル村を訪ねていた。
これは近頃フーゼル村周辺の村々でアンデッドと思われるモンスターの数々に襲撃を受けているという報告が王都に上がっていたため、その調査をエリザ達が命じられたためである。
しかし実際の所は、王宮務めに飽きたエリザが女王にゴネたために竜騎士近衛団がその任に当たることになったのだが。
「……ということは、その仮面の冒険者が村を襲った敵を倒してくれたということね??」
「その通りです。その方はタイチ様と言いまして、我らの恩人なのです」
フーゼル村の村長 へスタは嬉しそうにバレリーへと俺の話を続けていく。
だがバレリーはへスタの話を淡々と手に持っている紙に記録し、それを終えると一礼をした後、後方にいたエリザの元へと進み始める。
その姿にへスタは少々不満げではあったが、相手は女王直属の竜騎士。下手な事をすれば処罰を受けるのではないかという懸念から、渋々村の中へと戻っていくのだった。
「それでどうだった? 何か分かったの、バレリー?」
「はい。色々と興味深いことが」
エリザの元に帰ってきたバレリーは、先ほど記した紙の内容をエリザへと報告していく。
地獄狼に空の死者(スカイ・アンデッド)と思われるモンスター。
どちらも並みの冒険者では歯が立たない化け物。それだけの力を持っている冒険者なのにその名を今初めて聞いた。
タイチ…、一体何者なのかしら??
「分かった、ありがとうバレリー。 ホーゲン、すぐにタイチという冒険者が誰なのか冒険者組合に問い合わせてくれる?」
「もうやってますぜ。少しお待ちください」
エリザの言葉を受けるより前に、ホーゲンは魔通信の水晶を使い王都にある冒険者組合に連絡。
そこから各支部へとタイチいう冒険者の詳細を送るように伝達してもらい、しばらくすると水晶から俺の者と思われる登録証が浮き上がってきた。
「えっと、そのタイチとかいう奴は一ヶ月程前から冒険者になった新参者のようですぜ。しかも鉄級冒険者への昇級最速記録を打ち立てているとか。今はギュースト市を拠点としているようです」
「一ヶ月前? ってことはこの村に来たときはまだ冒険者でもなかったってこと??」
「さぁ、登録証は大雑把な物ですからね。そこまで詳しくは分かりませんが、その可能性はあります」
「ふーん……」
ホーゲンの報告を聞いたエリザはしばらく考えこみ始める。
冒険者でもない存在。それにそのタイチという者が現れて来た方角は確か西方……。
その方角にあるのは古代遺跡のミストール遺跡に連邦くらい。
……ミストール遺跡、あそこは確かアンデッドの巣窟だったはず。 ちょっと待って、そう言えばギュースト市を治めているのは……。
「ねぇバレリー? 少し聞いてもいいかしら?」
「何でしょうか、団長?」
「確かギュースト市のディートゲイル・バーナーってこの前、王国中で指名手配されてた蒼龍の団を壊滅させたのよね?」
「ええ、確かそうだったと思います。リーダーのラティウス・ヘルベルグは牢から逃亡したようですが、それでも陛下はバーナー卿の行いに大層喜んでおられたとか。そう言えばそれも一ヶ月程前の事でしたね……」
そこでバレリーも何かに気が付いたような表情を浮かべた。
バレリーも気づいたようね。そう、これらの出来事は全てこのタイチという冒険者がいる場所で起きている。
これは偶然とは思えない。それに蒼龍の団が壊滅した直後に王国中にバラまかれたこの手配書。
恐らくブルトバ候あたりの仕業でしょうけど、これに描かれているアンデッドは右目がむき出しになっている。
そしてタイチという冒険者もマスクを右目に……。
エリザは、鎧の中から取り出したアンデッドの手配書を見つめると、小さく笑みを浮かべた。
「これは直接会って確かめるしかないわね……。バレリー、ホーゲン! これからすぐにギュースト市に向かうわよ」
「今からですか?! もう日も暮れていますし、いくら竜の速さがあるとはいえ到着は明日の朝になりますよ??」
「分かってるわよそれ位! でももう決めたの! そのタイチという冒険者は絶対このアンデッドに違いないわ! 何らかの魔法で正体を隠しているのでしょうけど、右目だけは隠せなかったと見えるわ。私がその正体を暴いてやるんだから! フフッ、フフフフフフ……」
「いや、確かに彼が訪れた場所で様々な事が起きてはいますが、いくら何でもそれは話が突拍子過ぎるのでは……」
ガシッ。エリザの言葉に声を上げようとしたバレリーの右肩にホーゲンがそっと手を置くと、彼は小さく首を左右に振った。
その行為に、バレリーは目の前のエリザに視線を戻すが、彼女の笑みを浮かべた表情をしばらく見つめた後ホーゲンの考えを理解し大きくため息を付いたのだった。
「はぁ…。あれはもうダメね、完全にスイッチ入ってるわ」
「……ああなっては陛下くらいしか団長を止められないからな。そのタイチという冒険者には悪いが疑いが晴れるまでは犠牲になってもらうしかないな。万が一その冒険者が殺されそうになったら、その時は俺達が止めればいい」
「何を他人事みたいに言ってるの! はぁ…、これはまた陛下にお叱りを受けることになりそうね……」
フフフッ…。2人はなおも不気味に笑い続けるエリザの姿に、同時にため息を付くと頭を抱えるのだった。
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