29 闇妖精族(ダークエルフ)との遭遇!
俺達の目の前に現れた妖精族達は、不可視の魔法で姿を隠していた妖精族が目の前まで進んでくると頭を上げ、立ち上がった。
この妖精族の男性は初老と思える外見をしていることから、彼らのリーダー格であることが見て取れる。
彼は、後ろの妖精族達に周囲の警戒をするように命じた後、再び俺へと視線を戻し口を開いた。
「私の名はシャナ・ルクリル。闇妖精族の長をしている。この度は仲間が失礼をしたな」
闇妖精族……。そう言われれば外見は金髪に少し尖った耳と妖精族の特徴を持っているが肌が若干茶色く見える。
「いや、それはお互い様だ。さっきあんたの部下が言っていたこの場所が聖域ということが本当なら、俺達が最初に勝手へこの場所に足を踏み入れた訳だしな」
「ふむ。そう言うことならば、今回は手打ちといたそう」
俺の言葉にシャナは少し考えこんだ後笑みを浮かべ答えた。
だが、その表情もすぐに元の険しいものになり再度俺達に尋ねてくる。
「それで君達は何者だ? バジリスクを倒してくれたことには感謝するが、ここは我らの聖域。そう簡単に入られては困るのだ。特にそこの2人。お前達はずっと遺跡の中で金目の物を探していたであろう??」
「な、なんでそのことを知って……、はっ!!!」
「ほら見ろ、だから祟りがあるかもしれないし、俺は止めとけって言ったんだ! さっさと盗ったもん出して謝れポスカ!!」
シャナから指を差されたポスカは、手に持っていた黄金の欠片を背後に隠しながらつい口を滑らせてしまったことに動揺している。
更に、どうやら本当にこの遺跡で財宝を探していたらしく、ファンネルは自分が発した言葉に口を押え動かないポスカへと詰め寄ると、そのマントの中に隠してあった宝石類を奪い取り地面へと投げ捨てていくのだった。
「はぁ、はぁ……。こ、これで最後だな??」
「ああ、もう持ってねぇよ!! くそ、せっかく見つけたのによ!!」
「お前なぁ! はぁ……、あんたシャナさんって言ったな? 今回の俺の連れがしたこと、これで許してはくれないだろうか? もう2度とこの遺跡のものには触れさせない! だからこの通りだ!!」
「……いいだろう。今回だけはお前に免じて許してやる」
シャナはバジリスクの毒液でエイラが命の危機にあった時、ファンネルが躊躇なく彼女を守ろうと飛び出したことを知っていた。
そのためファンネルという男には少なからず好意的な感情を抱いていたためポスカの行いを許したのだ。
バッ!! ファンネルの方も、シャナの言葉にポスカの頭を掴むと自分と同じように頭を下げさせる。
その行為にポスカも納得はしていない様子ながらも、渋々シャナへと頭を下げたるのだった。
「……話が逸れてしまったな。ではお主達が何者なのかを聞かせてくれるかな?」
ファンネル達が頭を下げた姿を見つめていたシャナは、一瞬笑みを浮かべると再び俺へと視線を戻し尋ねる。
「いや、大丈夫だ。……俺達は冒険者だ。今回はルルムの森に現れたバジリスクを討伐するためにこの遺跡に来てしまっただけ、だからあんた達の聖域に争うと思ってきた訳じゃ……」
……あれ、待てよ? こいつポスカが財宝を探していたことを知っていたんだよな??
それに初めて現れた時も不可視を使用して俺とエイラの会話を聞いていたような口ぶりだったし……。
ニヤッ……。 俺が何かに気づいたことを察したシャナは表情を和らげ笑みを浮かべた。
「ハハハハハッ。お主は正直者だな!! 分かった、お主の言葉は信用することにしよう!!」
……くそ、やっぱりこいつ最初から俺達の事を監視してたんだな??
それであえて本当の事を言うか俺を試したということか……。
「はぁ……、あんたいい性格してるな」
「フフフッ、お褒めの言葉と受け取っておこう。 では立ち話もなんだ、すぐに参ろうか」
「……参るって、どこに行くんだ??」
「付いてくれば分かる。それにお主には聞きたいこともあるのでな」
シャナはそう言うやいなや、振り返り口に指を当て森中に響き渡る指笛を吹いた。
すると警戒に当たっていた闇妖精族達が続々とシャナの周りに集結し始め、彼らが全て集まり終えると遺跡を後に森の中へと進み始めるのだった。
シャナの背を見つめていたルルミアは、気を取り戻すと俺の側まで進み耳元に口を近づけ尋ねた。
「タイチ様、いかがいたしますか? 彼らを信頼してもいいのでしょうか??」
「……少なくとも敵対の意思はないみたいだ。今は彼らに付いていってみるか」
「ですが、何故敵対の意思が無いと言い切れるのです? 私達を油断させているだけかも……」
「フフッ、俺でも気づかないほどの不可視だぞ? 彼にその気があれば皆とっくにやられてるよ」
「な、なるほど……」
確かにタイチ様はともかく見えない攻撃を受ければ私達なんてひとたまりもないでしょうね……。
ルルミアは俺の言葉に背に冷たい汗を感じるも、両頬を力いっぱい叩き再び気を取り戻すと、すぐにシャナの後に続き森の中へと進んでいく俺達の後を追い、ルルムの森へと向かい走っていくのだった。
俺達がシャナ達、闇妖精族の後に続きルルムの森の中を進み始めて20分程が経過していた。
森の中はさらに木々で覆われ、光もあまり差し込まない。辺りでは様々な生物の鳴き声が響き渡り、何者かがこちらを伺っている視線を感じることもあった。
エイラもそれを感じているのであろう。俺の隣まで進んでくるとマントの端を持ち、俺から離れようとはしなかった。
ただそれを見ていたルルミアの視線も痛いのだが……。
それにしてもどこまで進むつもりなんだ? もうかなり遺跡からも離れたと思うんだけど……。
「タイチ様、どうしました??」
おっと、俺の不安が表情に出てしまってたか。エイラはこういうのは鋭いからな。
「なんでもないよ。それよりもエイラ、聞くのを忘れてたけどレベルの方はどうだ?」
「あ、それでしたらLv.30に上がっていました! 一度に2もレベルが上がるなんて初めてです!!」
俺の言葉にエイラは目を輝かせて答えてきた。
レベルの事を思い出したことで、どうやら既に先ほどまでの不安など吹き飛んでしまっているようである。
すると俺達の会話を聞いていたルルミア、ルナも側まで近寄り会話に入ってきた。
「タイチ様! 私などはLv.49に上がっておりましたよ! もうすぐ50の大台です!!」
「わ、私もLv.36に上がってました! これで以前フーゼル村を襲った地獄狼なら倒せます!」
へぇ……!! ルナもルルミアも無事レベルが上がってたのか。
やっぱりあのバジリスクに止めを刺させたのは正解だったな。
レベル。この世界に存在する力を図る上で重要な数値。
レベルが上がれば腕力、知力、魔力も上がり、ある一定の数値を超えればスキルというものも習得することが出来る。
そのため冒険者や勇者、兵士、それに一般市民に至るまでレベルを上げることはごく日常で行われてい事である。
このレベルを上げるためには2種類の方法があり、
1、モンスター、盗賊などの犯罪者を倒し、経験値を獲得しレベルを上げる方法。
経験値は自分で確認することが出来るが、レベルが上がるにつれ必要な経験値も多くなる。
大多数の者がこの方法でレベルを上げる。
2、魔法を習得することで経験値を上げ、レベルを上げる方法。
魔法は習得が初級、中級、上級と上がるにつれ習得が困難になるが、その反面手に入れる経験値も高い。
高位の魔術師ほどレベルがやけに高いのはこのためだ。
俺は習得者というスキルのお陰で魔法書を読むだけで魔法を使うことが出来る。そのためミストール遺跡内にあった大量の魔法書しか読んでいない(暇つぶしにアンデッドを倒してはいたが……)のに高レベルなわけだ。
まぁそのお陰、いや、そのせいでLv.300という化け物になってしまったんだけど……。
「まじかよ! 嬢ちゃ、いやエイラさんってそんなにレベルが高いのか??」
しばらくして、俺達の会話を聞いていたファンネルは驚きのあまり声を震わしながらエイラに話しかけた。
「そ、そうですよ? でもこれもタイチ様と一緒にいたからこそと言いますか……」
「嘘だろ……、俺こんな12、3歳の子供に負けてるのか……。俺の人生って一体……」
「それは種族間の問題もあると思うのであまり気を落とさないで下さい、ファンネルさん!」
エイラは肩を落とすファンネルをガッツポーズを行い、笑みを浮かべながら励す。
それでもしばらくは落ち込んでいたファンネルを見かねて、俺達の周りを警戒しながら進んでいた闇妖精族の1人が声をかけてきた。
「あんた、レベルはいくつなんだ??」
「お、俺か? 俺はLv.28だけど……。言わせないでくれよ……」
「そうなのか! あんた見た所まだ20歳くらいだろ? それでLv.28は十分高い方だろ」
「確かにそうだけどさ……。そう言うあんたはどうなんだ……?」
ギクッ! 闇妖精族はファンネルの言葉にしまったという表情を浮かべるが、しばらくして申し訳なさそうに答える。
「……俺はLv.43、だ。」
「はぁ!? それでよく俺のレベルが高いとか言えるな!!」
「だって俺、125歳だもん」
「ふぁっ!!! え、それは何というか……、色々とすみません。」
ハハハハハッ!! ファンネルの何ともいえない表情に彼と部下の話を聞いていた先頭を歩くシャナは大きく笑い声を上げた。
それに続き周りの闇妖精族達も笑い声を上げたため、ファンネルは顔を真っ赤に染めるのだった。
しばらくして息を整えたシャナは、未だ恥ずかしそうにしているファンネルへと声をかけた。
「ま、まぁそう気を落とすな若者。我ら妖精族は生まれた時から魔力が高い。それに長命なのも合わさって高レベルな者が多いのだ」
「そ、そう言えばそんなことを教えてもらったことがある様な、無いような……」
「かくいう私も今年で1000歳を超える。っと、この話はここまでにしよう。 到着したぞ」
「……凄いなこれは」
ザァァァァァァ!!! その言葉で前方に視線を向けた俺がそう呟いたのも無理はない。その先には滝壺に数メートル幅で大量の水が流れ落ちており、水しぶきが大量に周囲に四散している場所が悠然と現れたのだ。
その光景にはエイラ、ルルミア、ルナはもちろん、先程まで恥ずかしさで顔を真っ赤に染めていたファンネルも驚愕の表情を浮かべていたのだった。
俺達のその表情に満足したシャナは後ろに振り返り滝へと手を向ける。
「では行こうか、我らの隠れ里へ」
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