27 バジリスクとの攻防!
ズゥン……。ズゥン……。
俺達の元へと巨大な地響きが近づいてくるにつれ、周囲の遺跡は震え、中には崩れ始めるものまであった。
そして目の前の巨大な壁を突き破り、ついにバジリスクがその姿を現したのだった。
「これが……、バジリスク……」
「グオォォォォォォ!!!!」
俺は目の前に現れた巨大な化け物姿に、小さく息をのんだ。
そこには中世の伝説上の竜、まさにその姿に近い生き物が人一人なら容易に飲み込めるであろう程の口を大きく開き、森中を震わす雄たけびを上げていた。
その背に翼は無いが、地面を掴む4本の脚は全てに鋭く伸びる爪があり、またその表皮は見るからに硬そうである。
そしてその口から時折漏れる紫色の液体が地面に落ちると、その部分は煙を上げ溶け始めていくことからその液体は強力な毒であることが見て取れた。
「おいおいおいおい!! こんな化け物に勝てるわけがないだろ?! おいポスカ! 逃げるぞ!!」
「……今回ばかりはお前に賛成だ! おいっ、あんたらも早く逃げるんだ!!」
ポスカはファンネルの言葉に頷くと、すぐに後方へと走り出した。
だが俺を始めルナ、ルルミア、そしてエイラまでもが動かずバジリスクと対峙しているのを確認し、足を止め4人に声を荒げる。
だがその言葉を受けても4人は動こうとはしなかった。
「私達は大丈夫。だって元々こいつを倒す依頼を受けていたんだから」
「依頼って……。おい考え直せ!! こんな奴に勝てるわけないだろう?? 金級、いや銀級の冒険者に頼んだ方がいい!!」
ジャキッ……。しかしルルミアはポスカの言葉に、退避するどころか笑みを浮かべ腰の剣を抜き、あろうことかバジリスクへと進み始める。
まじかよ……。バジリスクって言うとLv.40を優に超える化け物なんだぞ??
いや、あのバジリスクは恐らくLv.50を超えている……。なのにどうして向かっていけるんだ?!
「あんたらは後ろに下がってろ。ここは俺達が何とかする」
「いやだけどよ旦那! まじであれはやばいって! なっ? ここは一旦逃げよう! 運よく俺は煙玉を持ってるんだ。これを使えばしばらくは目くらましが出来るからさ!」
俺の言葉に、ファンネルは腰のポーチから黒色の拳大程の玉を取り出し、それを俺に手渡してきた。
煙玉……。魔道具の一種か。こんなものまでこの世界にはあるんだな。
……これは使えるかもしれないな。
「煙玉か……。なあ、これ貰ってもいいかな?」
「へっ? いやそれは構わないが……。まさか旦那、あの化け物と戦う気なのか?」
フッ……。ファンネルは俺の心内を察し、慌てたように声を上げる。
だが俺は笑みを浮かべるとそんなファンネルを横目に、ルルミア、エイラ、ルナを自分の元へと集めるのだった。
「皆、集まってくれ! 俺は今回お前達の手伝いはするけど、奴の止めは刺さない」
「えっ?? 一体どういうことですか??」
俺の言葉にエイラが声を上げるが、すぐにルルミアが小さく頷き口を開いた。
「……私達のレベルを上げるためですね??」
「流石はルルミア。 あれだけのモンスターはこの辺りでは中々お目にかかれないからな。 ここでお前達3人のレベルを上げる踏み台になってもらおうかと……」
「なるほど。確かにこれからディートゲイルの言っていた黒幕と対決する可能性があるならレベルは上げるのに越したことは無いです。この間の様な無様な姿はもう晒したくありませんし」
俺とルルミアの会話を聞いていたルナは、先日のラティウスとの一件を思い出しその小さな拳を固く握った。
その後、エイラも俺の言葉が理解出来たのかしばらく俺の目を見つめた後、小さく頷く。
ズドンッ!!! だがその瞬間、こちらの様子を窺っていたバジリスクが突如再び雄叫びを上げるや否や、とてつもない勢いで突撃を開始したのだった。
「グォォォォォォ!!!!」
「クソッ! ちょっとは空気を読めよこのトカゲ野郎! あぁ、もう!! 皆、準備はいいか?!」
「もちろんです!! 私の剣技で真っ二つにしてやります!」
「わ、私も行けます!!」
「ルルミア、エイラ。私の足を引っ張ると承知しないからな??」
『こっちの台詞です!!』
ハハハハッ、2人とも気後れはしていないみたいだな!
それじゃあ、やるとしますか!!
バッ!! 先頭の俺は笑みを浮かべると、身体強化の魔法を発動、一気にバジリスクの元まで移動した。
そして両手に創造で剣を作り出すと、なんとその剣でバジリスクの巨体を受け止め突進を止めたのだった。
これにはその様子を眺めていたファンネル、ポスカの2人も驚きのあまり、開いた口が塞がらない。
ただ当の本人である俺は、剣を持つ両手の痺れに苦悶の表情を浮かべるのだった。
「痛ってぇぇぇ……。ハハハッ、この身体だとこういう痛みや痺れも懐かしくて何か嬉しくなるな。」
ガンッ!! 俺はバジリスクの動きが完全に止まった瞬間、両手の剣で一気にその巨体を後方へと弾いた。
その衝撃でバジリスクは体が浮き上がると、後ろ脚2本だけで立っている状態になってしまった。
しかしその姿に、俺は小さく笑みを浮かべる。
よし、やっぱりだ!! こういうモンスターは大抵腹は鱗に覆われていないもの。相場がそう決まっているからな!
予想通り、柔らかそうなお腹が無防備だぜ!!
だがバジリスクも弱点を晒して平気なわけがない。すぐに意識を取り戻すと視線を俺へと戻しその巨体を地面に下ろしたのだった。
「まぁ、そう簡単にはいかないよな」
「グォォォォォォ!!!」
ズゥゥゥゥン……。辺りはバジリスクの巨体が元の状態に戻った衝撃でまるで地震が起きたかのような揺れに襲われる。
しかしその揺れもすぐ収まり、バジリスクは再び俺へと突撃を開始した。
「それじゃあ、少し試してみるか……、よっと!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
俺は、バジリスクの巨体を空高く跳躍し回避する。
だがそのことで俺の後ろで腰を抜かしていたファンネルとポスカがその突撃をもろに喰らい、2人は命からがらその場から離れていくのだった。
あははは……、あの2人の事忘れてた……。
っと、今はバジリスクを優先だ。この煙玉、これで奴の視界を0にする!
それにはもっと数が必要だけど、そのスキルを使うことが出来るなら……。
(スキル 習得者が発動しました。)
俺はファンネルから受け取った煙玉を手に持つと、習得者を発動。煙玉を取り込むことに成功した。
「よし、やっぱりこういうものも取り込むことが出来るのか! あとは……」
(模倣が選択されました。)
ヴゥゥゥゥゥン。俺は視界浮かび上がった多くの魔法書の中から煙玉を見つけ出しそれを選択。
そして模倣によって、いくつもの煙玉を生み出すことに成功したのだった。
よし!!! 思った通りだ!!!
創造では剣や服など単純な物しか作れない。
習得者、このスキル思った以上に使い方次第で色々なことに使えそうだ。
まぁ、これがあの声の奴のアドバイスってのが気に入らないけど……。
(全く、この世界に来てずいぶん経つというのに、まだ習得者を使いこなせていないのかい?)
俺は謎の声のその言葉思い出し、いつものようにイラつくがすぐに地上のバジリスクへと視線を移した。
そして、エイラ、ルルミア、ルナへと声を上げる。
「皆!! 俺の合図で一斉にバジリスクの腹に攻撃をしてくれ!!」
「えっ……。でもタイチ様!! お腹と言ってもバジリスクがああ動き回っていては……」
「大丈夫だエイラ!! それとこれから視界が恐らく0になる! 皆、バジリスクの姿は魔力探知で追ってくれ!!」
魔力探知……。よく分からないけど、多分タイチ様には考えがあるはず。
私達はタイチ様を信じて動くだけ!!
コクッ……。俺の言葉を受け、エイラは近くにいたルルミア、ルナへと視線を移しす。
2人も俺の言葉を聞いていたため、その視線にすぐ頷き返すと3人は言われた通り魔力探知を発動。目の前のバジリスクの魔力を捕捉した。
よし、あとはあのバジリスクの腹を無防備な状態にする。そうすれば止めはあの3人でも十分可能だ!
「……ふぅ、行くぞ!! 中級魔法 風精霊の宴!」
ブォォォォ!! 俺は小さく息を吐き地上のバジリスクへと右手を向け魔法を発動。
すると、バジリスクを取り囲むように風が発生。その風の中にいる小さな妖精の様なものは笑い声を上げながらバジリスクの周りを旋回し始め、バジリスクの巨体は彼らが作り出した突風に包み込まれると、俺を飛び越え一気に空高くに舞い上がった。
「グォォォォォォ!!」
「よし! 皆、少し離れてろ!! 中級魔法 重力!!」
ドォォォン!!!!
バジリスクが十分の高さまで舞い上がったのを確認した俺はその巨体を包んでいた風魔法を解除し、新たな魔法を発動。すると次の瞬間にはとてつもない重力がバジリスクにのしかかった。
そしてそのまま一気に地上へと急降下し、地面に衝突。辺りは激しい揺れと衝撃波に襲われる。
だがそれでもバジリスクは仰向けになりながらピンピンとしていたのだった。
砂煙が晴れその姿を見た俺もこれには多少の驚きを隠せない。
「へぇぇ……、そうか硬い外皮と鱗で体を守ったんだな。 でもどうやらダメージはあるみたいだ」
俺はバジリスクの後ろ脚に視線を向ける。
バジリスクの後ろ脚は墜落の衝撃から守れきれなかったのか潰れてしまっており、バジリスクはそのせいもあってか体を起こすことが出来ないようだった。
俺はこのチャンスに、地上にいる3人へ声を上げる。
「今がチャンスだ!! 一斉にバジリスクの腹に攻撃を集中しろ!」
『はい!!!』
バッ!! 容姿を伺っていたエイラ、ルルミア、ルナの3人は、俺のその言葉と同時に動き出す。
だがそれを察知したバジリスクも動かない体ではなく、自らの頭を3人へと向けその口から毒液を無数に発射。そのため遺跡は、毒液によっていたるところが溶解し始める。
エイラ達も懸命に毒液を避けていくが、バジリスクも攻撃を止めないため近づくことが出来ないようだった。
しかし次の瞬間、バジリスクの周りにいくつもの煙玉が投げ込まれ、それが一斉に爆発。
バジリスクは自身を包み込む煙で3人の姿を見失ってしまったのだった。
これは、もしやタイチ様が??
よし、このチャンスを逃すわけにはいかない!!!
「よしルルミア、一気に行くぞ!! エイラはそこから遠距離魔法で攻撃するんだ!!」
『了解!!!』
これをチャンスと見たルナは、隣のルルミアと共に煙の中にあるバジリスクへと一気に移動。それに続きエイラも光魔法で弓を出現させると前方の魔力反応に照準を合わせた。
そしてバジリスクへと到達したルナとルルミアがその頭上に飛びあがり攻撃態勢に入ったのと同時に光の矢をバジリスクへと放った。
「三連続太陽の矢(トリプレット・サンシャインアロー)!!!」
「剣技 十字斬撃!!」
「炎爪!!」
「グォォォォォォォ!!!!!」
ブシュッ!!!!!!!
3人の攻撃は同時にバジリスクの腹部へと命中。バジリスクはとてつもない断末魔を上げながらついに力尽きその巨大な頭を地面へと落とすのだった。
しばらくして煙が晴れ、俺が地上に降り立つと、そこにはルナとルルミアがバジリスクの巨体の上から俺へと手を振っている姿がある。
だが俺はそこにはいるはずのもう1人の姿が見当たらないことに気が付いた。
「よくやった……、あれ? エイラは???」
「あっ、エイラさんならあそこに……」
ルルミアは俺にそう答えると、自分の後方を指差す。
俺もその指先の方向に急いで視線を移した。だがその場所からは煙が立ち上がり、さらには何かが溶ける音が辺りに響き渡っていたのだった。
それは3人の攻撃を受けたバジリスクが最後の抵抗として吐き出した毒液だったのである。
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