23 新たな決意を心に抱いて・・。
この話で、一応一章の終わりと考えてます!
あと、10万字書けたので、これからは投稿の間を少し開けるかもしれません(>_<)
これからも読んでいただけると嬉しいです!
俺は何とか習得者の事をごまかすことに成功すると、再びディートゲイルとの会談を続けた。
俺の条件に、ディートゲイルは得るものの方が多いと判断したのだろう。
しばらく考えた後、笑みを浮かべながら答えるのだった。
「……よし、タイチ殿! エイラ殿の故郷を探すという条件、喜んで引き受けよう! フレーゲル、お主も頼むぞ」
「承知いたしました。では早速各地におります私の部下達に探らせることに致しましょう」
フレーゲルはディートゲイルの言葉にいつも通り表情を変えずに答える。
ディートゲイルはその言葉に満足した表情を浮かべた後、思い出しように俺へと向き直ると懐から袋を取り出し目の前の机の上に置くのだった。
俺には袋が置かれた時に聞こえた金属音でその中身が何かは容易に想像できた。
「これは……?」
「なぁに、これまでの謝礼だ。元々、この街に到着したら謝礼を渡す契約であったであろう? それに蒼龍の団討伐の賞金も上乗せしておいたのだ」
それは分かっていけど、この重さ……。いくら何でも多すぎる気がするが……。
……ッ!!! 何だよこのお金は!!
俺はディートゲイルの言葉を受け机の上に置かれている袋の中身を見て驚愕した。
何とそこには金貨が100枚近くあったのだ。
これには隣から中身を覗いたエイラとルルミアも言葉が出てこない様子だった。
「凄い……。私こんな大金見たことありません……」
「エイラさん、わ、私も……」
「ハハハハハッ!! 蒼龍の団にはかなりの賞金がかけられていたからな! 公式には私が蒼龍の団を討伐したことにしてはいるが、実際に倒したのはタイチ殿だ。この金貨はお主が受け取るべきだろう!」
なるほど……、確かに王国中を荒らしてたならそれ位の賞金がかけられていても不思議ではないのか。
ただそれでも今まで野放しにされていたのは、黒幕とかいう奴の力が働いていたからかもしれないな……。
俺はしばらく考えたあと、袋を自分のマントの中に収めた。
「そう言うことなら遠慮なく貰っておくよ。金はあって困ることは無いからな」
まぁ、これも引きニート時代に嫌と言うほど味わったことだし……。
「うむ! それでよい。そうだ! それとあともう一つ、タイチ殿に提案があるのだが……」
そう言うと、ディートゲイルは再び懐から何かを取り出しそれを机の上に広げる。
置かれた一枚の紙に俺が目を通すと、そこには冒険者という文字が書かれていた。
どうやらディートゲイルは俺を冒険者になるよう勧めているようである。
「……冒険者??」
「うむ。タイチ殿、お主冒険者になる気はないか?? 冒険者になり、階級が上がれば街に入る際の関税免除を始め様々な恩恵を受けることが出来る。しかもそれだけではないぞ!? 最上級の冒険者になれば王国の重要機密を知る権利も与えられるのだ! エイラ殿の故郷の情報も得る確率がさらに上がるかも知れぬ。どうであろう?」
どうであろうって言われてもなぁ……。確かに冒険者になれば俺達の正体を隠すにはいい隠れ蓑になるかもしれないが……。
俺が答えあぐねていると、隣のエイラとルルミアが突然声を上げた。
しかも2人の言葉を聞いていくと、どうやらエイラもルルミアも冒険者になることに前向きなようだった。
「……私でも冒険者になれますか?! 私、もっともっと力を付けて、タイチ様のお役に立ちたいんです!!」
「私もエイラさんに同感です! 私の今の力では敵わない敵が多すぎる……。これ以上タイチ様の足手まといはごめんです! 冒険者になれば手っ取り早くレベルを上げることも可能です。ですから……」
「うむ!! 冒険者は王国にとっても必要な存在! なりたいものを拒むことはせんよ!!」
おいおいおい……。何勝手に話を進めてるんだ!
……、エイラさん? そんな目で俺を見ないで!!
ルルミアさんもやめてくれ!!
俺は冒険者になることには前向きではなかったが、ディートゲイルの言葉を受けた両隣の2人の刺すような、いや、まるで捨て犬が連れ帰ってくれと言わんばかりの視線に耐え切ることが出来ず、とうとう頭を縦に振ってしまうのだった。
「……分かったよ。冒険者になればいいんだろ?」
『やったぁぁぁぁ!!』
「ハハハハハハッ、それでこそタイチ殿だ! 冒険者組合には私から推薦状を書いておこう! はじめは白級の冒険者からになるだろうが、タイチ殿の事だ。すぐに階級が上がるであろう!」
俺が頭を抱えながら冒険者になることを承知すると、エイラとルルミアは同時に声を上げ、ディートゲイルはいつものように大きく笑い声を上げた。
ただフレーゲルだけは俺の気持ちが分かるのか、どこか同情の目をこちらへと浮かべている。
(タイチ殿、そのお気持ちよく分かります)
(フレーゲルさん……、あんたも苦労してるんだな!)
俺達は言葉は交わさずともどこか通じるものがあり、心の中でお互いに硬い握手を交わすのだった。
そんな事とは知らない他の3人は、既に冒険者になることに舞い上がっていたが徐々に落ち着きを取り戻して行く。
そして不意にエイラがずっと気になっていたことを俺に尋ねるのだった。
「……タイチ様。そう言えばどうして私を助け出すときはあのような姿になっていたのですか? 私最初誰だか本当に分からなかったんですよ??」
「……ん、ああ。あれは別に俺が変身したくてなったわけじゃなくて……」
……そうだ、あの力。確かアンデッドスキルと言ってな。
あの力の事をきちんと知っておかないと、これからまた暴走しないとも限らない。
「……なぁディートゲイル。あんたアンデッドスキルって知ってるか??」
「ハハハッ、なんだ突然に? ……アンデッドスキルか。 ふむ、聞いたことがないな……」
エイラの言葉を受け突然尋ねてきた俺に、ディートゲイルは始めいつものように笑いながら答えたが、俺の表情が真剣なのを見ると顎に手を当て考え込む。
ただディートゲイルはもその言葉に聞き覚えはないのだろう。考えはするが答えることは出来なかった。
しかし、しばらくの沈黙の後フレーゲルが口を開いた。
「タイチ殿、それはもしや種族スキルではありませんか??」
「種族スキル?? それはどういうものなんだ??」
「はい。種族スキルとは各種族ごとにその効果が異なる特殊スキルの事です。アンデッドであれば、確か飢え。生者に対する怒り、捕食衝動が強まり、なおかつ捕食すればするほどその力が高まっていくものであったはずです」
フレーゲルの言葉に、俺は納得し小さく頷いた。
そうだ! あの時はエイラが連れ去れたことで頭の中がいっぱいになって、気づいたら怒りと飢えに身体が満たされていた。
あの高揚感、思い出すとまたあの姿に戻ってしまいそうだ……。
ギュゥ……。俺はアンデッドスキルが発動したときの事を思い出し、拳を強く握りしめる。
「その通りだ……。俺はあの時、確かに蒼龍の団の奴らをただの食料としか思っていなかったかもしれない……。これじゃあまるで他のアンデッドと同じじゃないか……」
「タイチ様……」
エイラは俺の手に自分の手を添える。
俺が悲しげな眼を浮かべたため、何とか慰めようとしての事だろう。その行為で俺は少し救われた気がした。
エイラは俺の表情が少し和らいだことを確認すると、フレーゲルへと口を開いた。
「そのアンデッドスキル、制御する方法はないのですか??」
「……そればかりは自身で力を制御する力を身に着けるしかありません。ただ、種族スキルは誰でも発動できるわけではない。その力に耐えうるだけのレベル、そして引き金となる感情が必要なのです。アンデッドスキルが発動するには恐らく怒りが深く関係しているのかと……。つまり……」
つまり、引き金となる怒りをコントロールすれば不必要に発動することは無いということか……。
俺はフレーゲルの言葉を受け小さく息を吐くと、エイラの手にもう片方の手を重ねた。
そして心配そうにこちらを見つめるエイラに答えるのだった。
「はぁ、まあどうにかなるだろう。そんな顔をするなエイラ。俺はアンデッド、しかもLv.300の化け物だぞ?? この力も、すぐに使いこなして見せるさ!」
「……はい!!」
「ハハハハハッ! これは頼もしい限りだ。のお、ルルミア殿?」
「……そうですね。でもタイチ様?? あまりエイラさんばかり手を握っているのは不公平だと思います!!」
ルルミアはディートゲイルには笑みを浮かべ答えたが、俺へと視線を移すと頬を膨らませすぐに顔を背けた。
エイラもその言葉で顔を真っ赤にさせると、すぐに俺の両手から手を抜きルルミアの威厳を直すためソファーをぐるりと回っていく。
ハハハハッ、まったく……。ルルミアは相変わらずだな。
……でもこういうのもいいもんだな。俺は数百年間ずっと1人でいた。
1人でも大丈夫だったし、寂しくもないと思っていた。
でももしあの時エイラに会っていなかったら、こうしてみんなと笑い合うことも出来なかったんだろうなぁ……。
エイラ、ルルミア、ルナ……。それに宿の親父やミミさん、あとおまけでディートゲイル。
この世界に来たときは、どうなることかと思ったがこうしてみると案外悪くないかもしれないな。
フッ……。 ルルミアに謝るエイラ、それを宥めようとするディートゲイル。
そんなどこにでもありそうな光景に、俺は見えないように小さく笑みを浮かべると、この光景を守りたいという久しく感じることのなかった思いが次第に強まっていくのを感じていたのであった。
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