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22 ディートゲイルの申し出!

 俺はディートゲイルの提案に、すぐには返答することが出来なかった。


 確かに女王からも信頼され、また一地方の領主という地位もあるディートゲイルに手を貸せば、多くの見返りも期待できる。

 俺だけでは手に入れることが出来ない、俺やエイラを狙っている黒幕とやらに関する情報もだ。


 だが、ディートゲイルは明らかに意図して先ほどの手配書、しかもエイラものを俺に見せている気がする。

 そうすればエイラを思って俺が提案を蹴らないだろうという魂胆が見え見えなのだ。


 しかし、ディートゲイルの提案のに乗ることが今の最前の選択であろうことも分かっているからこそ、こいつにまんまと乗せられているようで腹が立つ……。


 それに黒幕とやらを見つけ出す手伝いをしたとすると、俺の正体がバレるリスクも高くなるのではないか?

 はぁ、でも知らないふりをしていてもエイラや皆を危険に晒す可能性も……。


 俺は自分でも無自覚の内にエイラやルルミア、ルナの存在が自分の中で大きくなっていることに薄々気が付いてきており、ディートゲイルの提案に頭を掻きながらようやく答えるのだった。


 「……くそ、あんた最初からこのつもりだったな?? エイラの手配書を見せたのも、俺を仲間に引き込むためだろ???」


 「はて、何の事かな??」


 俺の言葉に、ディートゲイルは小さく笑みを浮かべた。


 うわぁ、凄い腹立つ顔……!!

 お前が黒幕だったら、絶対その顔を踏みつけてやるからな……。


 「はぁ……、分かったよ。確かに狙われ続けるなら、その相手そのものを潰した方が早いかもしれない。その提案、乗ってやるよ」


 「おぉぉ、タイチ殿であればそう言ってくれると思っていたぞ!! お主が仲間になってくれるというのであれば、これほど心強いことは無い!!」


 「ただし!! 条件がある!!!」


 バンッ!! 俺は喜びの声を上げたディートゲイルを横目に、自分の膝を大きく叩き笑みを浮かべた。

 ディートゲイルも馬鹿ではない。俺が何か交換条件を持ち出してくるとは考えていたため、すぐに表情を戻し俺の目を見返すのだった。

 

 「うむ、何なりと言ってくれ。全て応えられるとは限らないが、出来る限り善処してみよう」


 「いや、そう身構えなくても大丈夫だ。俺の旅の目的は、エイラから聞いているよな??」


 「ああ、もちろんだ」


 ディートゲイルは俺達に救出されギュースト市まで戻ってくる間、エイラとよく話をしていた。

 そのため、エイラの過去、そして俺達の旅の目的を把握していたのである。


 「俺はエイラを元々住んでいた場所に返してやるために旅をしている。だが、エイラが暮らしていた妖精族エルフの里、その正確な位置はエイラにも分からないんだ」


 「なるほど……」


 ディートゲイルはそう呟くと、俺の隣に座っているエイラへと視線を移した。

 エイラもディートゲイルの視線を受け、小さく頷き答える。


 「私は里の外には出たことがありませんでした。ただ、ここよりは寒かったので北の方ではないかと予想はしているのですが……。何しろ、奴隷商に捕えられてからは殆ど外の景色も見れないような荷車に入れられていたので……」


 「そうであったか……」


 「あ、でももう気にしていませんと?? そのおかげと言ってはおかしいですが、こうしてタイチ様と会うことが出来たのですから!!」


 「……ハハハハハッ、エイラ殿は逞しいな!!」


 エイラは自分の話で悲しげな眼をするディートゲイルに対し、笑顔を作り俺の腕にしがみつき答えて見せる。

 ディートゲイルもそんなエイラの姿に笑いながら答えると、しばらく考え込んだ後俺へと答えるのだった。


 「……つまり、エイラ殿の故郷の場所、その情報を調べることが条件ということか??」


 「ああ、まぁそう言うことだな」

 

 「ふむ……。フレーゲル、どうだ?? エイラ殿の故郷に関する情報を集められそうか??」


 ディートゲイルは隣に控えているフレーゲルへと視線を移し尋ねる。

 フレーゲルはその言葉にも、いつものように表情を崩さず淡々と答え始めた。


 「はい。確かに王国内の妖精族エルフの里となるとその殆どが隠里と呼ばれる物ですので容易には見つからないとは思います。ただ、北ということですと我が王国の北方にある妖精族エルフの国に尋ねれば何か情報を引き出せるかもしれません。まぁタダでとはいきませんでしょうが……」


 妖精族エルフの王国……。そんなものもこの世界にはあるのか。

 そう言えば、俺ってこの世界の事は殆ど知らないよな……。

 この際だ、ディートゲイルに尋ねてみるか。


 俺はフレーゲルの言葉に顎を触りながら考え込むディートゲイルに、この世界に関する情報を今更ながら尋ねてみることにした。


 「なあ、ディートゲイル」


 「……ん? 何かなタイチ殿」


 「話を聞いていると妖精族エルフの王国だとか言っているけど、この世界には他にも国があるのか??」


 「……ハハハハハッ、もちろんだろう?? 何を言っているのだタイチ殿……、まさか知らないのか??」


 コクッ。俺の言葉を初めは冗談と思い笑っていたディートゲイルだが、俺の真剣な顔に上殿ではないことに気が付いたのかすぐにフレーゲルに巨大な一枚の紙を持ってこさせると、ソファーの間の机にその紙を広げた。


 そこには巨大な一つの大陸の絵が描かれており、その大陸を区切るようにいくつもの線が引かれている。

 その中でもひと際大きな2つの国の内、ディートゲイルは大陸西側にある国を指差した。


 「ここが我らの国、ヴィリーハルト王国。そしてこのギュースト市は王国西部にある。ほらここだ」


 ディートゲイルが指差す王国の西のはずれ、そこには確かにギュースト市と書かれている街があった。

 

 なるほど、ここはまだ王国と言っても辺境もいいとこなんだな……。

 それにギュースト市の南にはミストール遺跡も描かれている。はぁ、何だか帰りたくなってきた……。

 いやいや、今ホームシックになってる場合か!! 

 えっと、ならこれがさっき2人が話していた妖精族エルフの国だな?? あまり交流がないのか詳しくは描かれていない。

 

 それよりも、もっと気になるのがこの王国東側に広がる国。名前は……、ハルディア連邦。


 「このハルディア連邦とはどういう国なんだ??」


 ……あれ?? 俺何か変な事聞いた??


 俺の言葉に、ディートゲイルとフレーゲルは途端に険しい表情になるがすぐにこのハルディア連邦という国の事を説明し始める。


 「その国はこの大陸を王国と二分する大国だ。我が王国とは80年前では血で血を洗う戦をしていた」


 なるほど、だから一瞬空気が張り詰めたのか……。


 「そ、そうだったのか」


 「……まぁ80年前に連邦の姫君が王国に嫁ぎ和平がなっている。それ以来戦争は起きていないのだがな! ただそうは言っても王国人の連邦に対する感情は決していいものではない。それゆえ交流は殆ど皆無なのだ」


 「でも、私の家族には連邦に渡った者が多くいますよ??」


 ディートゲイルの話を聞いていたルルミアが笑みを浮かべながら口を開いた。


 「ハハハハッ、確かに獣人を始めとする亜人には王国より連邦の方が住みよいだろうな! 王国でもここ50年ほどで亜人達への差別は少なくなっているが、王都などに行けば今でも少なからず存在している。それに引き換え連邦は多くの国家が集まって出来た国。その中には亜人を始め人間ではない者達の国も多くある。なので差別というものが存在していないからな」


 そうだったのか。ギュースト市ではルルミアに対して差別的な感情を持っている人はいないようだったがそれも連邦に近い土地柄もあるのかもしれないな。

 これから旅を続けるのなら、何かしらの対処法も考えないと……。


 ディートゲイルの見せてくれた地図には他にも大小多くの国が描かれており、俺はその地図に更に目を通していった。

 すると聞き覚えのある言葉が頭に響き渡り、目の前の地図が光に包まれ始める。


 あっ……!! まずい!!!


 しかし俺が慌てた時には既に遅く、目の前の地図は一瞬で消えてしまい、その光景にディートゲイルも開いた口が塞がらなかった。


 (スキル 習得者が発動。)


 や、やってしまった……。


 「これは一体……、タイチ殿、何をされた?!」


 「いや、これは……、その……」


 どうする? 習得者の事を話してしまうか??

 いや、ただでさえアンデッドってだけでも知られたくないのに、その上このスキルの事まで知られたら……。


 (やれやれ、お困りの様だね!)


 その時、俺の頭の中にいつぞやの声が響き渡った。


 ああ!! お前、これまでどうしてたんだ!!!

 俺がどれだけ苦労したと……。


 (まぁまぁ、そう怒らないでおくれよ。それよりもお困りの様だね??)


 あ、そうなんだよ! 習得者が発動して、皆に地図を習得する瞬間を見られてしまった。

 お前がくれた能力だろ? 何とかしてくれ!!


 (まったく、この世界に来てもうかなり経つのにまだ習得者も使いこなせていないのかい? いいかい? 習得者は取り入れた物を自分の知識、能力に出来るだけじゃない。取り出すことはもちろん、複製も可能なんだよ??)


 複製?? つまりさっきの地図をコピーできるってことか??


 (まぁ、そう言うことだね。早速やってみなよ! ってことで、この辺りで失礼いたします!)


 あっ、ちょっと待て!! お前にはまだまだ聞きたいことが……!!!


 しかしその言葉以降、誰も俺の言葉に反応することは無かった。

 

 くそっ、あいつ一体何者なんだ?? もっと大事な時に助けてくれよな……。

 いや、でも今はすぐに地図を元に戻さないと……!


 (習得者が発動。)


 俺が気を取り直し習得者を発動させると、視界にはいくつもの魔法書が浮かび上がる。

 その中から先ほど手に入れてしまった地図を見つけ出すと、俺はその地図を選択。するとその地図の下にはこれまで気が付かなかったが文字が浮かび上がっていたのだった。


 なるほど……。複製に破棄、それに融合……。

 魔法書本体を選択すると、魔法書そのものが現れたから、この文字を選択するとそこに書かれていることが起きるってことなのか? 

 破棄は分かるが融合ってなんだろう……。いや、今はそんなことはどうでもいい!

 すぐにこの複製というのを選択して……。


 (複製が選択されました。複製を開始します。)


 俺が地図の下に浮かび上がった複製という文字を選択すると、目の前の机に先ほどの全く変わらない地図が現れる。

 ディートゲイルはそのことにも理解できないようであった。


 「な、なんだ? 今度は急に現れたぞ?? タイチ殿、本当に何をしているのだ??」


 「ご、ごめん。うっかり空間魔法マジックボックスを発動させてしまって……」


 「何!? タイチ殿は空間魔法マジックボックスを使えるのか! ハハハハッ、これはまた驚いたわ!!」


 な、何とかごまかせたみたいだ……。


 俺は笑い声を上げるディートゲイルの姿に、人知れず胸を撫で下ろすのだった。

評価とブックマークをしていただけると死ぬほど喜びます笑

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