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21 俺の賞金、金貨500枚!

 「まだラティウスの行方が掴めないのか?! 第一、ラティウスはこの国に騒乱を巻き起こそうとしている者へつながる唯一の存在だというのにどうして易々と逃がしてしまったんだ!! あれほど警護は厚くしておけと言ったはずだぞ!!」

 

 「も、申し訳ありません!!」

 

 バンッ!! 執務室で目の前の兵士から報告を受けたディートゲイルは机の上に勢いよく拳を振り下ろした。


 ディートゲイルは蒼龍の団壊滅の混乱、事後処理により兵士の大部分を割かれたのは否めないがそれでも十分すぎるほどの兵員をラティウス護衛に回していた。


 にもかかわらず、いとも簡単にラティウスが行方をくらませたことに対する苛つきを兵士にぶつけるしかなかったのである。

  

 「……すまない、つい声を荒げてしまった」


 「いえ……、お疲れの所にこのような報告しか上がってこないのでは無理もありません」


 「……すまない。ふぅ……、それで? ラティウスを牢から抜け出させた者は分かったのか??」


 兵士はディートゲイルが落ち着きを取り戻し、目の前の机に置かれているグラスに口を付けた後手元の報告書を見つめながら言葉を続けていった。


 「はい。どうやら護衛の兵の数名が拉致され、魔法でその者達に成りすましていた者がいたようです。護衛の兵士には手練れの者達を付けていましたが、全員一撃で意識を失わされていたところから、敵はかなりの腕を持ってるかと……」


 なるほど……。護衛の兵士達はLv.30以上の者達を選んだつもりだったが、その者達でも全く歯が立たない相手だったということか……。

 クソッ、私はまだ蒼龍の団を操っていた者の力を見誤っていたのかもしれん……。


 「そうか……。護衛の兵達にはゆっくりと養生するように伝えてくれ」


 「はっ!! 了解いたしました!!」


 コンコンッ……。 ディートゲイルが一通り報告を受け終えた瞬間、執務室の扉がノックされフレーゲルが俺達を連れ現れた。

 報告をしていた兵士もフレーゲルが来たことに気が付くと、報告書をまとめディートゲイルに敬礼を行う。


 「では私はこの辺りで失礼いたします!!」


 「うむ、ご苦労であった。引き続きラティウスに関する報告が上がり次第、私に知らせてくれ」


 「はっ!!!」


 兵士は頭を下げると執務室に入ってきていた俺達にも敬礼を行い、部屋を後にすると扉をゆっくりと占めていった。

 扉が閉まったのを確認したフレーゲルは、ディートゲイルへと口を開く。


 「ディートゲイル様、タイチ殿をお連れ致しました」


 「おぉ、タイチ殿!!! ようやく目が覚めたか!! 随分と心配致したぞ!!!」


 「うっ……。あ、ああ、心配かけてしまったみたいで……」


 ガシッ!! ディートゲイルはフレーゲルと共に入ってきたのが俺だと分かると椅子から立ち上がり俺の元まで進んだかと思うと、勢いよく俺の体を抱きしめ歓迎した。

 

 おっさんに抱きしめられても嬉しくないんだけどな……。

 まぁ、今回はディートゲイルにも心配かけたみたいだし、我慢するか。

 

 ガハハハハッ!! ディートゲイルはしばらく俺の体を抱きしめると、大きく笑いながら離れ、部屋の中央に置かれているソファーに腰かけるよう促した。

 俺達はそれに甘えソファーに腰かけると、対面のソファーにディートゲイルが腰かけ、その隣にフレーゲルが控えるように移動した。


 「しかしタイチ殿。まさかお主がアンデッドだったとはな。初めて会った時から只者ではないとは思ってはいたが、流石に驚いたぞ!!」


 「お、おい! あまり大声で喋るなよ!! 他の人にバレたら面倒なことになるだろ?!」


 「ご心配には及びませんタイチ殿。この部屋が我々だけになった瞬間から執務室に防音魔法を施しておりますので」

 

 「ハハハハッ、流石はフレーゲルだ!! 相変わらず仕事が早いの!!」


 「はぁ……、あなたの下で長く働けばこうもなります。いつも機密情報であろうと大声で話してしまわれるのですから……。少しは用心というものを覚えていただかなければ困りますぞ?!」


 「も、申し訳ない……」


 フレーゲルはため息を付きながらも表情をあまり変えずディートゲイルに正論を言ってのけ、ディートゲイルも珍しく気落ちしたような表情を浮かべた。

 

 こいつが領主をやってられるのも、このフレーゲルという人のお陰だな……。

 見かけに通り優秀そうだ。ナイス眼鏡!!


 俺は心の中でフレーゲルに賛辞を贈った後、落ち込むディートゲイルへと尋ねた。

 

 「それで? 今日は一体何の用なんだ?? あんたがただ見舞いのためだけに右腕を送ってきた訳じゃないんだろ??」


 「……流石はタイチ殿、話が早いな」


 ディートゲイルは俺の言葉にいつものように不敵な笑みを浮かべ両膝に肘をつき、顔の前で手を組むと俺に答えて始める。


 「実は昨日、王都よりこんなものが王国全土に送られてきたのだ。フレーゲル、あれを」


 「かしこまりました」


 フレーゲルはそう言うと、あらかじめ用意していた腕の中の資料の中から2枚の紙を取り出し俺へと手渡した。


 それを受け取った俺は、そこに書かれていることに言葉を失い、その紙を俺の手から抜き取ったエイラとルルミアも驚きの声を上げるのだった。


 「謎のアンデッド?!?! しかも捕まえた者には金貨500枚、討伐した者には金貨200枚って……」


 「これって、タイチ様があの洞窟で変化された姿では?!」


 「……」


 俺はエイラとルルミアの言葉にただ頷くことしかできなかった。

 エイラの言う通り、紙に文言と共に描かれていたのは俺が変化したあのアンデッドの姿だったらである。


 クソッ……。心配していたことがついに現実に……!!

 しかも金貨500枚ってなんだよ! それだけありゃ働かなくても食っていけるじゃないか……。

 はぁ……、俺もお尋ね者かぁ。だから遺跡を出るのは嫌だったんだよ……。


 ガクッ……。分かりやすく肩を落とす俺に、ディートゲイルは笑いながら声をかける。


 「ハハハハッ、タイチ殿! そう肩を落とさずとも大丈夫だ。この姿でしか手配されていないとなれば、今のタイチ殿の姿とこのアンデッドの姿はまだ結びついていないということ。正体さえ現さなければバレることは無いであろう」


 そ、そうか!! 死者の反逆はフーゼル村の死者召喚者ネクロマンサーでも見破れなかったんだ!

 ふぅ、焦って損した……。よく考えればディートゲイルの言う通りじゃないか……。


 「……あれ? もしかしてまだ何かあるのか?」


 しかし安堵したのも束の間、俺が顔を上げるとディートゲイルからは笑みが消え真剣な面持ちでこちらを見つめていた。

 そして俺にもう1枚の紙を見るように促すのだった。


 「……安心している所申し訳ないのだがタイチ殿、問題は次の紙なのだ」


 「次の紙?? 他に何が書かれてるっていうんだ……」


 ッ!!! 俺達がフレーゲルから手渡されたもう1枚の紙に目を通すと、俺が口を開くより先にエイラが驚きの声を上げるのだった。

 それもそのはず、そこには俺と同様な文言と共にエイラと思われる美しい金髪の妖精族エルフの後姿と横顔が描かれていたのである。


 「なんで??? 何で私に懸賞金が……。それもタイチ様よりも額が多いなんて……」


 金貨700枚……。一体これはどういうことだ??

 しかもエイラだけは討伐という文字はない。あくまで捕えた場合のみということか。


 「タイチ様が手配されるのはその力から理解できるが、どうしてエイラさんまで……。それも捕えた場合だけ……」

 

 ルルミアも俺と同じことを思っているのだろう。そこまで口にするとエイラに聞かれてはマズいと思ったのか口を閉ざすのだった。

 そんな俺達にディートゲイルは再び話を続けていった。


 「恐らくこれは蒼龍の団、その背後で暗躍している者の仕業だと思われる」


 「暗躍だって?? ディートゲイル、お前他に何を知っているんだ?? ここまで話したんだ、もうすべてを俺達にも教えろ。」


 「……うむ、今日はそのつもりだ。フレーゲル、タイチ殿達に説明を」


 「了解いたしました」


 フレーゲルはディートゲイルの言葉に頭を下げると、これまでに掴んでいる情報を離し始めるのだった。


 この王国には国家の転覆を計っている者達がいること。その黒幕が蒼龍の団を使い各地で略奪などを行ってること。

 そして、その黒幕というのがブルトバ候、ミリリューネ第三王女、キリル将軍という国家の重要人物の誰かかということを。

 

 これらをフレーゲルから聞き終えた俺は、流石に驚きを隠せなかった。


 「……つまり、エイラはその黒幕から理由は分からないが狙われているということか」


 「恐らくは……。私は女王陛下より内々にその黒幕の正体を探るため動いていた。ここは辺境の地だ、王都よりはまだ情報が洩れる心配はないと考えての事だろう。そして先の3人まで絞り込めたということだ」


 なるほど……。ディートゲイルが蒼龍の団をあれだけ追っていたのはそう言う理由からなのか……。

 しかも王国中に俺とエイラの手配書を配ることが出来る、つまり今の時点で国を動かすことが出来るほどの相手が黒幕ということか。


 あれ……? ちょっと待てよ……。


 そこで俺はようやくディートゲイルがどうしてこのような重要な話を命の恩人とは言え俺のような部外者に話したのか、その理由に気が付くのだった。

 俺のその表情から、ディートゲイルも俺が自身の意図に気が付いたことを察したのだろう。

 畳みかけるように話を再開した。


 「ディートゲイル、あんたもしかして……」


 「うむ。タイチ殿が考えていることは恐らく正しい」


 いやいや、ちょっと待て……。


 「タイチ殿!! そこで相談なのだが」


 「ま、待て……」


 「この国に巣くう病巣、その除去に手を貸していただきたい!!!」


 やっぱりか~~!!


 こうして俺はまたしても、いやこれまで以上に面倒なことに巻き込まれ始めるのだった。

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