13 嬉しくない再会。
総合100pt突破できました!
ありがとうございます!!
「今日はありがとうございました、ミミさん!」
「いえいえ。私もエイラさんと街を回れて楽しかったよ!!」
エイラは街の中を一通り回ったことに満足した表情を浮かべ、隣を歩くミミに笑いながら頭を下げた。
そんなエイラの姿にミミも嬉しそうに答えるのだった。
「でもエイラさん、これ本当に貰ってよかったの?? 無駄使いしたって怒られない??」
「大丈夫ですよ。タイチ様はそんな事では怒らないと思います。それにお世話になっているんですから、そのお礼ですよ!」
ミミは腰まである自分の髪を一つにまとめている髪飾りを見つめながらエイラに尋ねた。
これは、ギュースト市内の案内を買って出てくれたミミへのお礼としてエイラが商店で見つけて送ったものである。
「……なら、遠慮なく頂きます。それじゃあそろそろ宿に戻りましょうか? 多分タイチさんも戻ってきている頃でしょうし。それも喜んでくれるといいわね」
「そうですね! はぁ……、何だか緊張してきました!!」
ギュゥ……。ミミはエイラの腕の中の紙袋を指差しながら笑みを浮かべる。
エイラもそんなミミの言葉に、俺へのプレゼントが入ったその紙袋を抱える腕に少し力が入るのだった。
タイチ様、喜んでくれるかな……。
あまり高い物は買えなかったけど、喜んでもらえるといいな……。
フフフッ……。 ミミは頬を赤らめながら俺へのプレゼントを見つめるエイラの姿に再び笑みを浮かべると、目の前に見えてきた中央宿へと歩みを進めていった。
しばらくして2人が中央宿へ到着すると、宿の周辺を警備していた男がミミに声をかけてくる。
「おう、ミミ! 帰ってきたのか??」
「ええ。ブルームさんもいつもご苦労様! あ、もうタイチさん達は戻ってきてるの??」
「タイチ……。あぁ、あの兄ちゃんならさっき戻ってたぜ! 何やら上機嫌だったからな、良いことでもあったんじゃねえか??」
ハハハッ! ブルームはミミにそう答えると、その肩に一度手を置き、再び周囲の警備のためその場を離れていく。
そっか、ならタイチさん達上手くいったんだ!
あのロンロンと取引を上手く運ぶなんて、中々のものね……。
「あの、ミミさん?? どうしましたか??」
「……あ、いや何でもないわよ? さぁ、それじゃあ中に入りましょう! タイチさん達も戻ってるみたいだし!!」
「そうですね!!」
エイラは俺達が取引を上手く運んだことに口に手を当て考えこむミミの姿に、顔を傾けながら話しかける。
ミミはそんなエイラに笑みを浮かべながら答えると、その手を握り目の前の扉を開き中央宿の中へと入ってくのだった。
「あちゃ~……、これはお父さん1人じゃしんどかったかなぁ……。ごめんエイラさん、私お父さんの手伝いに戻るね? 後でタイチさんがどんな反応だったか教えてね?」
2人が宿へと戻ると、その中は昨日とは打って変わり多くの冒険者や商人、それに街の住人達が酒や食事をとっている。
そんな騒がしい宿の中で、カウンターの奥にいる父親が慌ただしく動き回っているのを確認したミミはエイラに笑みを浮かべると急ぎその場を離れていった。
「……もう、ミミさんったら。それじゃあ、私も部屋に戻ってこれをタイチ様に……」
ドンッ!! しかし、ミミが宿の奥へと消えていったのを見送ったエイラが二階にある部屋へと進もうとした瞬間、エイラは目の前に立っていた人影にぶつかり尻もちをつく。
痛たたたた……。
あっ! 早く謝らないと!!
エイラは痛むお尻を押さえながらも急ぎ立ち上がると、勢いよく頭を下げ、ぶつかった人影に謝罪した。
「ご、ごめんなさい!!」
「痛てぇな、おい! どこ見てんだ……、ってお前、なんでここにいるんだ??」
……えっ???
この声……、まさか……。
その言葉に、エイラは下げていた頭を恐る恐る上げると、そこには忘れようにも忘れることが出来ない男、自分を奴隷として買い遺跡に置き去りにしたあの冒険者の顔があり、笑みを浮かべながらこちらを見つめていたのだった。
─エイラが戻る少し前。─
「それにしてお前、何でエイラと一緒にいないんだ……。一応護衛のつもりで付いて行かせたんだぞ??」
宿のカウンターにある席に座る俺は、隣で猫らしくなくカップに入ったミルクを飲むルナにため息を付きながら話しかける。
ルナとは反対側に座るルルミアは、そんな俺の姿に笑みを浮かべているのであった。
「いやぁー! 街の中に綺麗な猫がいまして、それに見とれているといつの間にか……」
こいつ、もう完璧猫だな……。
他の猫に見とれるってお前……。
ハハハハッ!! ルナは申し訳なさそうに俺に答えるが、その後大きく笑い声を上げながら、さらにカップのミルクを口に運んでいく。
「ガハハハハ! 兄ちゃん、お前さんの連れは面白いな! こんな猫は初めて見たぜ!!」
中央宿の親父は、次々と入る注文を捌きつつ、とてつもない速さで料理を進めながらもカウンターに座る俺に話しかけてきた。
あれだけの料理を一人でこなすとは、この宿が繁盛している理由が分かる気がする。
「……まぁ、いいけどさ。親父の娘のミミさんも一緒にいるし大丈夫だろうし……」
「そうだな、あいつがいれば大丈夫だろう。それにしても、兄ちゃん。ロンロンを手玉にとったそうだな? 商人の間ではもうちょっとした有名人らしいぞ??」
「……そうなのか? でもあれは俺じゃなくてこのルルミアが……、ぐふっ!!」
な、何するんだルルミア!!
俺がルルミアの事は話そうとすると、そのルルミアが俺の横腹に肘で殴りつけその話を制止した。
そして笑みを浮かべながら親父へと答えるのだった。
「そうなんです。タイチ様はこの街一、いえ、王国一の商人になれる才能があります!!」
「ガハハハハッ! 王国一とは大きく出たな嬢ちゃん! まぁそうなった時はこの店を贔屓してくれよ??」
おいおい、そんなこと言ったらまた俺への誤解が生まれるんじゃないのか??
はぁ……、全く……。
「……ただいま、お父さん! 私も今から手伝うね!! ……あっ、タイチさんここいいたんだ!」
俺がルルミアと親父の会話に頭を抱えていると、しばらくして俺達の後ろからミミが親父から料理を受け取り他の客へとその料理を配っていく。
しかし俺はそこであることに気が付き、ミミへと声をかけた。
「あれ? ミミさんだけか?? エイラは……。」
「あ、それならすぐそこにいるよ? えっと……、あ、エイラさん!! ……あれ、聞こえてないのかな」
ミミは入り口の方向へ声を上げ手を振るが、反応がないのか困った表情を浮かべその手を下ろした。
そんなミミの姿に俺やルルミアもその方向へ視線を向けると、そこには確かにエイラの姿があったが、その表情にはいつもの笑顔がな。いや、反対に恐怖の感情が見て取れた。
そのことはルルミアも感じ取ったのだろう。その表情は徐々に険しいものになっていく。
エイラ?? なんであんな顔を……。
いや、まさかあのエイラの前にいる男は……!!
「……しまった。あいつもこの街にいたのか!!」
エイラの前にいるの顔を思い出した俺は勢いよく立ち上がると、急いでエイラの元へと進んでいく。
その後ろからはルルミアとルナも続くが、3人が到着する前にその男はエイラの腕を掴み外へと出ていこうとしていた。
「は、離して!!」
「あぁ?? お前誰に口を聞いてんだ!! どうやって奴隷の腕輪を外したのかは知らないが、また付ければいい話だ」
い、いや!! また奴隷になるなんて!!
あんな生活に戻るなんて!!
タイチ様、助けて……!!!
エイラが声を上げたため、周りにいた客たちも静まり返りその様子を眺めている。
しかし、エイラの腕を掴む男はひと際大きな体を持っているためか、その行為を止めようとするものは誰一人いない。
そのためエイラは力の限り抵抗したが力で敵うはずもなく、あと少しで外へと連れ出されそうになった。
しかしまさにその瞬間、男の腕を俺が掴み、エイラの腕からその手を離したのだった。
「……なんだお前は!!」
「タ、タイチ様!!!」
ガシッ! エイラは目の前に現れた俺の姿を確認すると、涙を流しその身体にしがみつく。
「この子は俺の連れだ。勝手に連れて行くのは止めてもらえるか??」
「ハハハハッ! その奴隷が連れだと?? ふざけるな!! こいつは俺が奴隷商から買ったんだ!! こいつの所有権は俺にあるんだよ!!!」
こいつ……。そのことでエイラがどれだけ傷ついたと……。
ギリッ……。 俺は生まれて初めてと言ってもいいほどの怒りを目の前で笑みを浮かべる男に覚えるが、拳を握り何とかその感情を抑える。
しかし男が再びエイラの腕を掴もうとしたため、俺はとっさにその腕と男の首を掴み、一気にその身体を持ち上げた。
「な、何しやがるんだてめぇ!!」
「それ以上喋るな……。 このままその首を絞めてもいいんだぞ?? それにこの子が奴隷だという証拠でもあるのか?? あるなら今すぐその証拠を出してみろ。」
ルルミアの話だと、エイラは誘拐されて非合法に奴隷にされている。
ならこいつが正式な書類なりを持っている訳がない。
俺に身体を持ち上げられている男もそのことは分かっているのだろう。
男はその後何とか俺の手から逃れようと体を動かすが、俺の力に敵うはずもなく、ついに限界となり弱弱しい声で答えるのだった。
「わ、分かった!! そいつにはもう手を出さない! だ、だからこの手を離しくれ!!」
「嘘じゃないな??」
「あ、ああ! 約束する!!!」
ゴホゴホッ……! その言葉で俺が手を離すと、男は自慢に力なく倒れるが、息を切らしながらも何とか立ち上がり扉へと手をかける。
しかし俺達へと再び視線を向け、怒りに燃えるその眼で俺を睨みつけた。
「……お前の顔は覚えたぞ。 せいぜい残りの人生を楽しむんだな!」
バタンッ! 男はそう叫ぶと宿の外へと進み、勢いよくその扉を閉める。
するとしばらくの静寂の後、宿の中に他の客たちの歓声が上がっていった。
「おぉぉぉぉ!!! 兄ちゃん、カッコいいぞ!!」
「ああ! まったく俺もあんなことしてみてぇな!!」
「ハハハハッ! あの野郎、いつもデカい顔してたからな、いい気味だ!!」
……残りの人生って言われてもなぁ。
俺もう死んでるし、あまりピンとこないんだよな……。
「……タイチ様」
「もう大丈夫だぞ、エイラ」
俺は自分に向けられる歓声の中、自分の体にしがみつきこちらを見つめるエイラの頭に手を置くと、ゆっくり元いた席へと戻っていくのだった。
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