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欠けた少年の帰る場所  作者: 羽衣月
冒険者
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変わった少年

それから、さらに半年が過ぎた。


再び冬が訪れていた。


辺境の森には雪が積もり。


吐く息は白い。


木々は静かに凍り付き、川辺には薄氷が張っている。


だが。


そんな森の中を、一人の少年が駆けていた。


雪を蹴る。


枝を飛び越える。


白い髪を揺らしながら、ジンは森を走っていた。


「……っ!」


以前とは違う。


もう杖は必要無かった。


左脚の痛みは残っている。


寒さが強い日は特に疼く。


だが。


走れる。


跳べる。


身体は、確実に戻り始めていた。


ジンは雪の中へ膝を付き、地面を覆う植物を掻き分ける。


「……あった」


冬季薬草。


寒冷地特有の薬効を持つ希少草だった。


その横には、小さな冬野菜も生えている。


ジンは手際よく採取していく。


そして。


右手を軽くかざした。


淡い魔力光。


術式が展開される。


次の瞬間。


採取した薬草と野菜が、ふっと消えた。


収納魔術。


グリムヴァルドに教わった生活魔術の一つ。


今ではかなり自然に扱えるようになっていた。


戦場の魔術とは違う。


生きる為の魔術。


その感覚にも、もう慣れてきていた。


森を風が抜ける。


ジンは小さく息を吐く。


あの少女も、相変わらず月に一度は薬を買いに来ていた。


咳止め。


痛み止め。


保存薬。


グリムヴァルドは文句を言いながら、毎回ちゃんと薬を渡している。


だが。


冬の間だけは来ない。


雪が深く、子供一人では危険だからだ。


その静かな冬の中で。


ジンは、また新しい魔術を教わっていた。


「集中を切らすな」


グリムヴァルドの声。


ジンは静かに魔力を練る。


左肩の断面。


そこへ魔力が集まり――


黒い腕が形成される。


ぬるり、と。


まるで影が固まるみたいに。


魔力義手。


失った左腕を補う為の術式だった。


だが。


その腕は、人間の腕とは程遠い。


黒く。


のっぺりとしていて。


生物とも魔術ともつかない異物感があった。


指は動く。


物も掴める。


だが。


誰が見ても、“普通ではない”。


ジン自身、それを理解していた。


だから。


普段は肩まで覆う長手袋を付けている。


更に左側は、なるべくマントで隠すようになっていた。


森の川辺。


水面へ映る自分を見る。


白髪。


顔の雷傷。


片腕。


そして、黒い異形の義手。


「……」


ジンはしばらく黙っていた。


もう。


第七砦の少年だった頃の姿は、どこにも残っていなかった。

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