表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
欠けた少年の帰る場所  作者: 羽衣月
冒険者
114/197

優男との戦闘、刹那

「これで終わりにします」


優男が、静かに細剣を構えた。


無駄の無い姿勢。


急所を確実に貫く構え。


ザインは、荒い呼吸のままそれを見ていた。


身体が動かない。


血が流れ過ぎている。


魔力も、もうほとんど残っていない。


それでも。


黒い瞳だけは、最後まで諦めていなかった。


優男が踏み込む。


鋭い一撃。


一直線。


喉を狙う、必殺の突き。


その瞬間。


「――終わらせねぇよ!!」


轟音。


横から、巨大な槍が叩き込まれた。


ギィィィンッ!!


火花。


細剣が強引に弾き飛ばされる。


優男の目が、初めて大きく見開かれた。


ヴァレルだった。


長槍を構え、ザインの前へ滑り込む。


馬耳が逆立っている。


完全に怒っていた。


「坊主に何してやがる」


低い声。


殺気。


先ほどまでの軽薄さが、一切無い。


直後。


雪道へ複数の影が降り立つ。


レヴィアナ。


シオン。


ルドヴィカ。


金級冒険者パーティが、追い付いていた。


レヴィアナの青い瞳が、血塗れのザインを見た瞬間。


表情が変わる。


「……っ」


静かな怒気。


空気が軋む。


シオンも息を呑んだ。


「ザインさん……!」


ルドヴィカは無言だった。


だが。


巨大斧を握る音が鳴る。


優男は、数歩下がった。


それでも笑みは崩れていない。


「……なるほど」


柔らかな声。


「金級が来ましたか」


ヴァレルは槍を回す。


「テメェが例の殺人鬼か?」


優男は答えない。


ただ。


穏やかに微笑むだけ。


その姿を見たレヴィアナの目が、静かに細まった。


「……気持ち悪い男ね」


次の瞬間。


無数の魔法陣が展開される。


空気が変わった。


今度は。


“金級パーティ全員”が相手だった。


「……なるほど」


優男は、楽しそうに笑っていた。


雪の夜。


金級冒険者達に囲まれてなお。


焦りが見えない。


「これは、少々分が悪い」


その瞬間。


レヴィアナの魔術が放たれる。


「燃えなさい!!」


轟ッ!!


炎熱魔術が裏路地を飲み込む。


同時。


シオンの矢が飛ぶ。


死角を潰すような精密射撃。


さらに。


ヴァレルが地面を砕きながら突撃した。


「逃がすかァッ!!」


長槍が唸る。


だが。


優男は、その全てを回避した。


炎を掠め。


矢を避け。


槍を流す。


異常な動き。


雪の中を滑るように動きながら、ケラケラと笑っている。


「ははっ……!」


「やはり金級を相手にするのは、少々骨が折れますねぇ……!」


レヴィアナの青い瞳が鋭く細まる。


「……気色悪い」


次の魔法陣を展開。


だが。


その時。


優男の視線が、後方のザインへ向いた。


血塗れ。


満身創痍。


それでもまだ睨んでいる白髪の少年。


優男は、穏やかに微笑んだ。


「それでは」


柔らかな声。


「また会いましょう」


その瞬間。


男が足元へ術式を展開した。


レヴィアナが即座に気付く。


「っ、違――」


轟ッ!!


爆発。


いや。


煙幕。


濃密な煙が、裏路地全体を一瞬で覆い尽くした。


視界が消える。


ヴァレルが舌打ちする。


「チッ!!」


シオンが周囲警戒。


ルドヴィカが斧を構える。


そして。


数秒後。


煙が晴れた頃には。


優男の姿は、完全に消えていた。


静かな雪だけが降っている。


ヴァレルが槍を握り締めたまま吐き捨てる。


「……逃げやがった」


レヴィアナは、険しい顔のまま周囲を見る。


シオンも表情が硬い。


だが。


次の瞬間。


ルドヴィカが低く言った。


「……先にザイン」


全員の視線が向く。


そこには。


雪の中、血塗れで座り込むザインが居た。


白い髪。


砕けた仮面。


消えた義手。


そして。


大量の血。


レヴィアナの顔色が変わる。


「……っ!」


ヴァレルが即座に駆け寄った。


「坊主!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ