英雄『プローベル パラフィー子爵』!
おはようございます。
◇16年前
「ワイバーンが来たぞー!!」
「ワイバーンだ 早く避難しろ」
「ワイバーンなんだぞ 何処に避難するんだよ」
「ああ、、 終わりだ、、」
王都中に ワイバーンの到来をしらせて 避難を促す声や 諦めの声が飛び交う。それもその筈!
今まで 世界中 何処を探しても『竜族』を倒した『人族』は ただの1人として存在しない。人族は 空を飛べた者すらいない。この世界に於いて 竜族とは圧倒的な強者なのである。
竜族が 来訪した場合『去るのを待つ』。。これしか手が無い。
だが 王国軍の誰かが 声を上げる。
「皆 心配するな。英雄『プローベル パラフィー子爵』がおられる!」
「パラフィー子爵なら ワイバーンと戦える!」
「おおーー!!パラフィー子爵!」
「パラフィー子爵!!」
「パラフィー子爵! 頼みます」
「パラフィー!! パラフィー!! パラフィー!!」
王都西端の砦の最上部に パラフィー子爵が現れて 手を振る。
英雄の出現に 王国軍も西砦付近の王都の民達も 大きな期待を寄せて 大歓声を上げる。
『プローベル パラフィー子爵』
彼は 『人族では1体の従魔獣としか 契約出来ない為 1種類の魔法しか行使出来無い』とされて来た常識を 人族で初めて覆して 2種類の従魔獣との契約を成功させ 2種類の魔法を行使する事が出来た。実直で真面目な性格であり努力や鍛錬を怠らない彼は 火と風の魔法を極めて 火の最上級魔法であり 周囲を焼き尽くす『ファイヤーメア』 風の最上級魔法であり 人為ハリケーンと言われる『ウインドメア』を行使する事が出来た。更に加えて 火と風の2種類の魔法を同時に行使する『混合魔法』なる魔法を提唱 完成させた。ファイヤーメアをウインドメアで上空に飛ばす事で ワイバーンや竜などに対しての攻撃を可能とした『ファインドメア』である。プローベル パラフィー子爵はこの国始まって以来の天才であり 稀有な才能の持ち主であった。
周囲の者からも『天才』『人族史上最強の男』などともてはやされていた。
実際 彼は人族史上最強の男で 間違い無いのである。だが もてはやされた影響で 驕りが生じていた。
その為 パラフィー子爵自身も『自信』があり ワイバーンとの戦闘を 常に心待ちにしていた。
『ついに ワイバーンが来たか。ようやく 私の力を竜族に試せる時が来た。人族が竜族を倒せる事を証明してやる』
ついに 人族が竜族を倒す。そんな興奮と高揚感が パラフィー子爵を占めていく。
呪神エバーンスゾンを頂点として 竜族は全てがエバーンスゾンの眷属であり 神竜 空竜 水竜 土竜などが存在。ワイバーンは竜族の中では 小型で弱者の部類である。
竜族は エバーンスゾンの眷属である為 到来は決まって タビーン火山のある王都の西からであった。
「今こそ! 人族がワイバーンを討伐する時が来たのだ! 人族が竜に怯えて暮らす時代は終わったのだ!」
パラフィー子爵が 皆に告げる。
「おーー! おーー!」
王国軍の士気が上がる。
ワイバーンが 砦に近づいて来る。
パラフィー子爵は 大型の火のウルフ種 大型の風の鹿種を呼び出す。
パラフィー子爵の左右に 従魔獣が現れる。
そこへ 砦の上空に到達したワイバーンが 砦に向けて火球を吐き出す。
パラフィーは ウルフ種と鹿種と思念を共有化して ワイバーンに目掛けて混合魔法『ファインドメア』を撃ち出す。
「バァーーン」
ワイバーンの火球と ファインドメアがぶつかる。火球は相殺されて 周囲に火の粉が散る。
「ワイバーンの火球を防いだぞ! す、凄い!」
「あのワイバーンを、、」
「流石は パラフィー子爵! 人族史上最強の男!」
大歓声が上がる。士気も期待も最高潮である。
続いて パラフィー子爵は ファインドメアをもう一発撃ち出す。
「ゴォー」との轟音と共に ワイバーンに命中する。ワイバーンから火煙が上がる。
パラフィー子爵は 続けて2発ファインドメアを撃つ。合計3発命中 ワイバーンから 更に火煙が上がる。
「おおーー!! ついに人族がワイバーンを倒したぞ!!」
「おおーー!!」
「パラフィー! パラフィー!」
また 大歓声が上がる。皆が パラフィー子爵本人が ワイバーンの討伐を確信した。
だが、、ワイバーンは一向に墜落して来ない。
「??」
「どうなっているのだ、、??」
しばらくして ワイバーンを覆っていた火煙が霧散していく。。
すると! そこには無傷でほぼノーダメージのワイバーンが 口から火球を出す姿が見えた。
2種類の混合魔法の行使でも ワイバーンを退ける事は叶わなかったのである。
「に、逃げろーー」
「防御陣形だーー!!」
「た、、退避ーーー!」
王国軍は ワイバーン討伐を確信していた為 防御が成されていなかった。無防備である。
そこに着弾する火球。
「ぐぁーー。うぐ」
「熱いーー」
「ぐはぁ、、、」
王国軍が居た西の砦は 火の海となり 燃え盛る。 ワイバーンの機嫌を損ねたのか、、何発も何発も火球を撃ち込んでくる。結果 王国軍 周囲の民達は甚大な被害を受け 死傷者も多数である。
ワイバーンは砦を壊滅させた後 更に王都に侵攻 最終的には王都をも火の海にして 飛び去って行ったのである。
「何が 英雄だよ」
「どこが 天才なんだ」
「誰だよ 人族史上最強の男とか 言ってたの」
「何にも出来無い役立たずだよ」
「王都が 焼け野原になったのも 多数死傷者が出たのも 全部あいつのせいだよ」
本来なら 人族が竜族を討伐した事など一度も無く ワイバーンが到来してしまった時点で この様な惨状は 止む得ない天災の様な物である。
しかし 王都の平民達は パラフィー子爵への期待が大き過ぎた反動で 手のひら返しである。
パラフィー子爵への罵倒 蔑み 嫌がらせ。それだけにとどまらず 王国軍が壊滅したのも 王都が焼けたのも 王都民が多数死傷したのも 全てパラフィー子爵の責任であると騒ぎ立てたのである。
こうなると世論は パラフィー子爵批判が大多数を占め パラフィー子爵を擁護する声は全く無く 罰する事を要求する事態にまで発展した。
世論を重く受け止めざる得ない状況となってしまった王家は プローベル パラフィー子爵に対して 王国軍を扇動 王都民を惑わせた罪を問い 貴族籍剥奪の上 領地を没収。パラフィー子爵家はお取り潰しとしたのである。
プローベル パラフィーは パラフィー子爵家の領地明け渡しまでの僅かな期間 2つの事柄に没頭し研究を続けた。
1つ目は 王国民に対する呪詛である。
自身を『英雄』へと祭り上げた王家と 蔑み馬鹿にした国民に対する逆恨みである。
「王家の落ち度で多くの死傷者が出た事を 全ての責任をこの私に押し付けて パラフィー子爵家を取り潰すとは!何もかも王家のせいだ!王国民も同罪だ!特に平民共め! 絶対に許さん。命ある物の『闇呪を司るエバーンスゾンの呪詛を 何としても王国民共に味合わせてやる!」
2つ目は 竜と対等に戦える人族の創造である。
その第一歩として 人族と従魔獣との完全なる融合を日々 自分の身体を使って研究していた。
「従魔獣は現世の存在では無い。魂 精神世界の存在。現世に存在する身体とは融合出来無い。だから飛翔も無理なんだ。どうしたら、、現世での肉体を棄てる事は『死』を意味する。人族は生きたまま 精神世界の存在になるのは 無理なのか、、」
『『従魔獣契約』だけでは ただ単に従魔獣と魔法を共有化して魔法を行使出来るだけだ。それではいつまで経っても 人族は竜族には勝てない。何とか 従魔獣を魂の中に取り込み融合すれば 従魔獣の様な身体的能力を手に入れ 魔法も従魔獣に頼らずに行使出来る人族が 創造出来るのでは」
この2つの研究は 最終的に成功したのか 可否については不明である。
なぜなら プローベル パラフィーは 領地明け渡しの際 死亡が確認されたからである。




