ワイバーンが来た!
全員で外に出て来た。外はもう真っ暗になっている。私は周囲を警戒したが どうやら人の気配は無い。
『夜も遅い。ここから歩いて逃げるには、、でも元気のない子も居る。。うーん。。あ! あれだ!』
私は 私達を連れて来た時に使ったであろう馬車を見付けた。その中でも1番大きな馬車を選ぶ。
「よし これでどうだ」
私は 馬車の馬に繋ぐ部分と車両の軸を へし折って外す。目の前に大きな箱が出来る。
「さぁ コレに乗ってちょうだい。ちょっと狭いかもしれないけど、、ここより安全な場所に早く逃げよう!」
「さぁ、みんな一緒に逃げましょう」 シュリーちゃんが言う。
皆んなは お互いに支え合いながら 箱の中に乗り込んでいく。ちょっと狭いけど、、ぎゅうぎゅうだけど 何とか全員乗り込んだ。
「この子もお願いね」
私は 抱いていたぐったりした女の子を箱に乗せる。
「ライス達 お願い」
ライス達が集まってきて ジーヴァウォールを形成しながら 箱を覆っていく。ジーヴァウォールは 防御と体温を保つ効果がある。
私は 箱をゆっくりと優しく持ち上げる。少し重たく感じたけど 全然余裕! そして 箱を持ったまま空中へ浮上する。
「ひ、人が空を?」
「えっ!? 飛んでる?」
「えっ! 空に浮いてるの」
「ル、ルナマリアさま。。?」
シェリーちゃんも含めて皆んなが驚いている。
「で、出来たら内緒かなぁ、、」
私は 止むを得ず力なく答える。皆んな 私が怖かったのか?助けてもらったからか?わからないけど、、ブンブンと首を縦に振って頷く。
「では行きますよー」
私は 皆んなを乗せた箱を持ったまま空中を移動する。どこだかわからないので しばらく闇雲に飛んでみる。
『馬車で数時間の移動だったから おそらく王都からそんなに離れてないはず』
「あった!」
しばらく円を描くようにぐるぐる飛んでいると 王宮の屋根が見えた。私はそちら方向に向かって飛んでいく。
『どこに持っていったら安全なんだろう?? えーい! もう。うだうだ考えるのはやめだ!』
「やけくそーー!」
私は 箱ごと王宮の近衛騎士団の訓練所と思しき場所に降りてやる。
「き、来ましたーー! 敵襲ーー」
見張りに立っていた騎士らしき人が大きな声を出す。
『私はもう決意を固めたんだ。この子達を絶対に守る。近衛騎士だろうが何だろうが 全員蹴散らしてやるんだから!』
だが 一向に私達には攻撃してくる気配が無い。
その時!何かのプレッシャーを感じた。急に心の『ザラつき』を感じる。
『なんだ? 何かの気配を感じるというのか? なんだ?』
『来る!』
なぜだかわからないが 来る事だけはわかる。
『ワイバーンだな』
「えっ? ワイバーン?」
『あぁ ワイバーンだ』
上空に大きな飛翔体が見えた。かなり巨大な身体が空中を旋回している。
だんだん王宮も騒がしくなって来た様子。大きな声が飛び交っている。
「ワイバーンだぞ!近衛騎士団 迎撃だ!」
「急に。王宮上空に現れたぞ!」
「弓隊! 弓を」
「魔法を 早く!」
王国軍が王宮の西の砦で交戦している。従魔獣を召喚して 火の魔法 風の魔法。また弓矢などで攻撃をしていく。
しかし ワイバーンの高度が高すぎて攻撃は全く届く様子が無い。それどころか ワイバーンが火球を吐き出すと 王国軍も盾などで 対応している様だが 火球が直撃して 被害が出ている様だ。治癒魔法で怪我の治療をしている。
やはり 人族は竜族に太刀打ち出来無い様である。
『竜族は 全てエバーンスゾンの眷属だ。お前に挨拶に来たんだろう』
「って事は 私は エバーンスゾン様に力を示さないといけないんだね」
『そうなるな』
私は 再度空中へ浮上する。
「えっ? う、浮いてる、、人が空中を、、」
「ひ、人が空を飛んでいる、、」
「一体?」
「だ、誰だ?」
近衛騎士達が騒ぎ出す。
私は ライス達を集めて ジーヴァソードを形成しつつ 空中でワイバーンと向き合う。
『今迄 訓練は行って来た。自身の身体の状況もなんとなくだが理解して把握している。だけど こんなに大きな生物との実戦は初めてだ。どこまで通用するの?』
私は 恐怖を全く感じていなかった。どの程度 自分の力が通用するのか? 正直試してみたいと感じていた。
下では 王国軍が騒いでいる。
「ひ、人が空を飛んでいる」「人が空を飛ぶなんて、、」「ワイバーンと向き合っているぞ」
『呪神エバーンスゾン様の前に立つ為にも 乗り越えないとね!』
「そなたが ルナマリアか? 我は神の眷属。我が主の命令により来た」
「何? なるほど 会話が可能なのですね。エバーンスゾン様の眷属さんでしょうか?」
ワイバーンが 話しかけて来た事に 私は少し驚いた。
「ほほう やはり 主よりお聞きしていたが そなた 我と会話が出来るのだな?」
「らしいです。そんなに会話が出来る事は 珍しいのでしょうか?」
「珍しい。なんて物ではないぞ! 神とその眷属と会話が出来るなぞ 人族では考えられん。では聞くが そなたらは 猿や豚と会話が出来るか?」
「いえ。無理ですね。確かに 会話は出来無いですね」『デジャプ!』
「そうだろう。会話とは対等に近しい者同士が行える行為。本来 我が主や我の様な 神とその眷属と会話が可能な存在は 神かその眷属 またはそれに準ずる存在」
「では 私はそういった存在なのでしょうか?」
「わからぬ だが会話が成り立っている時点で そうなのだろう」
「うーん? 自分では 正直よくわからないのですが、、」
「それより そなたを滅せよとの 我が主の命令」
そう言った瞬間 ワイバーンが火球を ぶつけて来た。ジーヴァソードにより乱切りに切る。
火球が 火の粉となり落下する。
『しまった! 火の粉が落ちちゃったーー』
下には 箱もある。王国軍が消火活動をして下さる。
ワイバーンは火球を 連続してどんどんぶつけてくる。今度はジーヴァウォールを展開して防ぐ。びくともしない。
『なるほど。この程度は どうも無いのね』
だが 今度も火球が分裂していく。王宮で民家が無いとはいえ 火の手が上がる。箱も気になる。近衛騎士達も迷惑だろう。
『このまま 受け続ける訳にもいかないかーー』
私は ワイバーンが火球を吐き出すのを 止めた瞬間 ジーヴァウォールを解除。最速でワイバーンとの間合いを詰めて 思いっ切り殴ってみる。正拳突きである。ワイバーンが大きく 後方に吹き飛ぶ。手は無傷である。
『なるほど。なるほど。ワイバーンにも通用するのか。こちらは無傷。痛くない』
ワイバーンは ぶるっと首を振って体勢を立て直す。
「なかなかの強者よ! 人族とは思えんな」
「私は わかりました。おそらく あなたより強い! 退いて下さいませんか?」
「もはや 会話に意味は成さぬ! 我が成すべき事は1つ!」
ワイバーンはそう言うと 翼で風を起こして 刃の様にしてぶつけて来た。火球も吐き出して来る。風の刃はかなりの速度だ。
私は ジーヴァソードを右手に 突発的に思い付いた盾『ジーヴァシールド』を左手に展開する。ソードで風の刃を相殺して シールドで火球を防ぐ。火の粉が落ちる。
そこに ワイバーンが物凄い速度で体当たりをして来た。ジーヴァシールドを前面に出して 体当たりを受ける。左手にかなりの衝撃が走って やや後方に押される。
だが ジーヴァシールドを破る程では無かった。私も吹き飛ばされていない。左手もジンジンするけど どうも無い!
『この程度!やれる!今度は こちらの番!』
反撃に出ようと思った時だった。ワイバーンは 今迄と比べ物にならない程の極大火球を吐き出そうとして 特大の火球を展開し始めた。
私は 直ぐにジーヴァソードとジーヴァシールドを合わせて 特大槍『特大ジーヴァスピア』に変化させる。槍を右手で力強く握り締める。
「おりゃーー! ジーヴァ一本槍ーー!!」
ジーヴァスピアを思いっ切り ワイバーンの極大火球目掛けて 投擲する。
それは 一瞬だった。槍は光速で 光が走った。ワイバーンは火球を吐き出す事無く 落ちたのである。




