二十一 鶸
二十一 鶸
触れた唇が離れたから、そうっと目を開けたら目の前に…カッコイイ人がいた。
『えっ!?誰っ!?』
焦ったけど、すぐに分かった。桃だっ!大きくなった桃が呆然とこっちを見てる。
「…マジで?…やべー…」
桃は呆けたように言って、口元を押さえた。
「桃っ!大きくなってるよ!」
僕は言った。
「すごいね!遂に青年期になったんだね!おめでとう!」
そしたら、桃が微笑んで言った。
「お前もな。」
「えっ…!?」
慌てて見た自身の手が大きくなっていた。着物は…こっちもそのまま大きくなっていた。
「これが…霊力が安定するってこと?」
「そうかもな…。」
そう言うと、桃は首から下げてた何かを取り出した。紐を解く。
「鶸。手ぇ出して。」
「?…はい。」
いつもおやつを貰う時みたいに、両手をお皿にして出したら「違う」とひっくり返された。そんで、左手の薬指に「これ、お揃い」って言って指輪をはめてくれた。誂えたみたいにぴったりだった。その細い輪の上部にポツンと見覚えのある小さい三角がはまってた。
「こ、これ…!僕の砂金粒だよねっ!?」
「そうだよ。これなら、失くさずにいっつも持ち歩けるだろ?」
「うんっ!!」
嬉しいっ!桃が「お日様の欠片」って言ってくれたお揃いの砂金粒。キラキラで綺麗だけど、失くすのが怖くていっつも大事にしまっては、そっと取り出して眺めてた。それが…こんな風になるなんて!
「桃、すごーい!ありがとっ!僕、桃、大好き!!」
いつもみたいに両手をぐっと握って言ったら、桃がへたりと座り込んだ。
「よ、良かった…。」
「だ、大丈夫?」
慌てて、桃に寄り添う。
「「こんなのヤダ。元に戻して」って言われたら、どうしようと思ってた…。あと、すげー久し振りにお前に「桃、大好き」って言ってもらえて…すげー安心した…。」
「あ…。」
そう言えば、言ったの久し振りかも…。桃、気にしてたんだ…。それってやっぱり、僕の事が好きだったから?
「えへへ…。」
「なんだよ、急に笑ったりして…。」
「だって…。僕が桃を好きだと桃、嬉しいんだと思ったら、嬉しくなっちゃって…。ね、桃のは?桃のもあるんでしょ?見せて。」
「うん。これ。」
そう言うと、桃はそれを自身の右手の薬指にはめた。
「なんで右なの?」
「だって…」
そう言うと、桃は僕の左手をぎゅっとした。こつんと指輪同士が当たる。
「お揃いを身に着けてたら、離れててもこうやって、手を繋いでるみたいじゃん?そしたら、どこにいたって、お前安心できるだろ?」
「………。」
僕が、いつも出掛ける前に「ぎゅってして」って言ってたから…?そう思ったら、すっごく嬉しくなった。
「うん!桃、大好きっ!」
そう言って、抱き着いた。
「おわっ!?」
桃があわあわしてる。ふふっ、変なの。さっきは桃の方から抱き着いてきたのにさ。
「あ、その…。鶸…。今は…ちょっと…緊急時だから…」
そう言われて、はしゃいでいた自分を恥じた。
「あ、ご、ごめんなさい…。」
パッと離れる。
「いや…、ごめん…。正直、ヒッジョーに嬉しいんだが、ヒッジョーに困るんだわ…。」
なんかごにょごにょ言ってから、ゴホンと咳払いして正座してこっちに向き直った。でも、なんかもぞもぞしてる。つられて僕も正座した。
「鶸、あのな。例の話あるだろ?」
「?」
「ほら、俺の弓矢で穴を封じるってヤツ。」
「うん。」
「あの作戦を行うのに、子供のままじゃ参加させられない、って蘇芳様に言われてここまで来たんだ。で、俺達、無事に一緒に大人になれた。」
「うん。」
「だから、作戦会議が終わる前に一緒に行こう!」
「うん!」
桃が僕の左手をぎゅっと握って立ち上がる。
「行くぞ!」
そう言ってから、「あ!」と言って、こっちに向き直った。
「鶸。さ、さっきしたヤツな…、アレ、俺以外の奴とは絶対にしちゃ駄目だぞ?」
「…抱き着いた事?」
「そ、それもだけどっ!その…、く、唇くっつけただろ?」
「うん…。」
「あ、アレはな…、大好きって気持ちを確かめる為にする行為なんだからな?」
「うん、分かった。桃としかしない。」
僕がそう言ったら、桃はほっとした顔をした。
「せ、世界が落ち着いたら…、さっきの続きしような。約束だぞ。」
そう言うから、指切りした。
「よっしゃー!」
桃は大喜びでそう言うと、両手で顔をバシン!と叩いた。
「行くぞ、鶸!」
そう言って、窓の方に歩いていく。僕は翼があるからいいけど、桃は玄関から出るんじゃないの?…と思ってたら、桃が三階から「おりゃー!」と飛び降りたから吃驚した。
「も、桃…っ!?」
怪我したんじゃ…と慌てて地面に降りたら、桃、笑ってた。
「全然へーき!俺、今ならなんでも出来そうな気がする!」
そう言って、一目散に六省に向かって走り出す。僕も負けないように飛んでったよ。




