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桃始笑 ~和色男子。~  作者: 島津 光樹
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十四 桃

     十四 桃


「ひぃふぅみぃ…」

 何度も数え直した。今月で無事真朱が提示した分のお金が貯まった事を確認する。それから、鶸から預かって来た砂金をそっと自分のと一緒の小箱にしまった。

「よっしゃ!」

 それから、紙に絵を描いた。平らで細くて丸い輪っかの真ん中に一粒の砂金をくっつける。

「こんなもんだろ。」

 想像上ではいい感じだが、実際に作ってみない事には分からない。


 翌朝。警邏に出掛ける鶸を見送った。

「気を付けて行って来いよ。」

「うん!僕、頑張るね!」

 そう言って、俺の手をぎゅっと握って飛び立った。飛び去る鶸を見送る時、いつも少し淋しい気持ちになる。鶸はどこまでも飛んで行けるけど、俺っちは陸続きの所しか行けないから、置いていかれる気分になるんだ。いつか、鶸が俺っちの手の届かない所に行ってしまったらどうしよう…。不安になるから、鶸を繋ぎとめる何かが欲しかった。だから、お揃いの指輪を作ろうと思ったんだ。

「さーてと。」

 就業前に真朱の所に相談に行く。

「おはよ。目標額が貯まったから、例の件よろしく。」

「はいよ~。制作と往復時間を考えると三泊四日の休みを取るのが望ましいけど、とれそうなん?」

「山鳩様に相談してみる。お前は大丈夫なの?」

「オレはいつでも大丈夫~。」

「分かった。」

 そんな訳で山鳩様にまとまった休みが欲しいと伝える。こっちが拍子抜けする位、あっさり了承された。

「明日からいいぞ。どのみち、鶸がいない時のお前はイマイチ精彩に欠けるからな。ポカされる位なら、休んでてもらってた方が気が楽だ。」

「うっ!…そ、それは…申し訳ございませんでした…。」

「…なんだぁ?しおらしいな。お前にはいつもみたいに元気溌剌でいてもらわんと、こっちの調子が狂うわ…。ま、入省して以来、長い休みも取った事ないんだから、たまには構わんさ。どこに行くか知らんが、気を付けて行って来いよ。」

「ハイ!」


 そんな訳で翌日、早速真朱と出掛ける事になった。簡単な荷物を背負ってたら、向こうから黒毛の馬に乗った真朱が来た。

「おはよ~、桃。さぁ、乗って~。」

「え?」

 吃驚してる俺っちの腕を引っ張って、自身の前に座らせる。視線が一気に高くなる。

「う、馬で行くの?」

「そだよ~。歩いていくのは遠いからね~。宿場ごとに乗り換えて、時短すっから!落ちないように、しっかり掴まってね~。」

 ニカッと笑うと、「ハイヨー!」と馬に鞭を入れた。馬が一気に走り出す。

「う、うわっ!」

 馬に乗るのは初めてだ。緊張して体がガッチガチで、馬が走る度に体が揺れて落っこちそうになる。

「アハハッ!桃、キンチョーしすぎ!それじゃ、馬も困るよ~!もっと力抜いて~。馬は賢いから、オレ達を落としたりしないって!」

「ほ、ほんとか?」

 パカパカ走る馬の背中で問いかける。

「そーそー。オレを、って言うか~、馬を信じて~。」

「わ、分かった…。」

 …怖くない、怖くない…。自分に言い聞かせてゆっくり息を吐いて腰を下ろす。俺っちがそっと乗った事で、馬も走りやすくなったのか、走りが変わった。あまり揺れない。

「ほ、ホントだ…。馬、すげー!」

「だろ~!こいつらはすんごい頭いいんだぜ!下手したら、桃以上かもね~。」

 うははと真朱が笑う。言い返せない自分が悔しい。でも、いつもみる風景よりずっと目線の高い風景が新鮮だったから、いいんだ。

 結構走って、最初の宿場町に着いた。馬から降りた。少しケツが痛い。擦ってたら、真朱が言った。

「ほら、桃。さっきまでお世話になったコにこれあげといて~。オレ、ちょっと商談してくっから!」

 俺っちに人参を渡すと、手をひらひらさせて向こうに歩いて行った。俺っちの手にある人参を見て、馬が前脚を勢いよく地面に打ちつける。

「そんな催促しなくても、ちゃんとやるって。ほい!俺っち達を乗せてくれてありがと。」

 人参を鼻先に持っていったら、ガジガジ齧った。こうして見ると、黒目で可愛い。

「お前、良く見ると可愛いんだな。な、撫でてもいい?」

 動物に話し掛けても無駄かもしれないが、さっき真朱は馬は賢いって言ってた。もしかしたら、俺っちの言葉が分かるかも?と思って話し掛ける。すると、言葉を理解したのか、頭を垂れた。今の俺っちが撫でやすい位置に耳が来る。

「す、す、すげー!!お前、本っ当に頭いいんだな!」

 なんだか嬉しくなって、夢中で耳と鬣を撫でてたら真朱が帰ってきた。

「およ?随分仲良くなって…。」

「真朱!馬すげー!コイツ、俺っちの言う事分かったんだぞ!マジで俺っちより頭いいかも!」

 コーフンして喋る俺っちを見て真朱が笑った。

「仲良くなって何より~。じゃ、帰路もこのコに頼も~。さ、次のコに乗ってどんどん行くよ~。今日中に里に着きたいからね~!」

 そう言うと、さっきまでの黒毛とは違う栗毛の馬にまたがる。

「ほい、乗って。」

「お、おう!」

 真朱の前に乗って、次を目指した。途中で馬を乗り替えながら、なんとか日暮れ前に真朱がいた里についた。もくもくと煙が上がっている。里中から熱気を感じる。

「さ~て、降りた降りた~。」

 俺っちが降りると馬の手綱をひいて、馬小屋に繋ぐ。水とエサを与えて、首筋をバンバン叩いた。

「お疲れ様~。今日から暫くゆっくりしてて~。」

 俺っちも真似して首筋を叩いて礼を言ってから、そっと耳を撫でた。汗でびっしょりだった。

「頑張って走ってくれてありがとな。」

「さ~て、里の連中はどうしってかな~?」

 スタスタ歩く真朱について行く。どんどん行って、大きな建物の戸を開けた。瞬間、むわっと熱波が襲って来た。

「お疲れさ~ん!オレだよ~!」

「ををっ!真朱!久しぶりじゃねーか!」

「でっかくなったなぁ!」

 ねじり鉢巻きをした人達が声を返す。

「例のブツ、ど~?」

「いけたぞ!今回は完璧だ!」

「流石は真朱だ!かなり扱いやすくなった!」

「そ~?そりゃ良かった。」

 ニカッと笑う。

「やっぱ、オレ天才じゃね?」

「何、当たり前の事言ってんだ!この里でお前以上の頭脳はいねぇ!」

「そうだぞ、真朱!とりあえず、腹減ってねぇか?飯にすんべ!」

「おう!」

 そんな訳で、真朱の里の人達と夕餉を囲む。向こうから、カタカタ来たからくりがお茶をいれてくれた。一体、どんな仕組みになっているんだろう?

「あ、コイツが言ってた桃~。」

「ちっせーな!お前が前代未聞の二人の片割れか!」

 もう入省してから何年も経ってるのに、まだそう言われているのか、と吃驚する。

「ハイ。お世話になります。」

「おう。そんなかしこまらねーでいーぞ!真朱がからくり以外を連れて里帰りするなんて、こっちが吃驚だ!」

 ウハハと笑う。

「そうそう…。真朱がここに来た時は、同じ少年期の子がいなくてな~。ずっと俺達大人とからくりに囲まれて育って、コイツがどうなるか心配だったんだが、人間の友達が出来たなら何よりだ。」

「余計なお世話~。」

 真朱が酒を飲んで口を尖らせる。

「オレが桃の面倒見てやってんだよな~?今回もそう~。」

「そうなのか?」

「面倒をみるってよか、体のいい実験台に使われてます…」

 そう言うと、皆が笑った。

「わっかる~!」

「コイツはそういう奴だ!」

「でもよ、頭はいい!」

「そう!商才もある!」

「即ち…」

 次を里の皆が口を揃えて言った。

「「「天才!」」」

「お前ら…。そんなにオレを褒めてもナンもね~からな~。」 

「ばぁか!こちとら既に十分、お前さんからもらってっから安心しろ!特に今回の発明は表彰モンだ!」

「そうそう!あれなら、かなり細かい細工もできらぁ!」

「そっか~。それは良かった。必要は発明の母、って言うからねぇ~。人様の意見を聞くの超大事~。今回は桃のおかげ~。」

 そう言って大きく伸びをすると、「オレ、やる事あるから~」と言って、向こうに行ってしまった。一人取り残された俺っちはどうすれば…。

「おい、桃さんよ。そしたら、風呂に入って寝るといい。長旅疲れたろ。こっちの部屋を使ってくれ。」

 お言葉に甘えて風呂を浴び、与えられた一室でぐっすり寝た。


「おはよ~!桃、準備はいいか~?」

 気持ち良く寝てた所を起こされた。

「うはよ、真朱。すげー良く寝た…。」

 まだ頭がぼーっとする。

「朝風呂入ってきなよ~。サッパリするよ~。」

「朝から風呂って贅沢だな…。」

「そ~?ここでは常に火を起こしてるから、それを有効利用した結果、一日中風呂に入れるんだわ~。」

「…なるほど…。」

 お言葉に甘えて、風呂に入る。スッキリ目覚めた。着替えて出て行くと、昨日の大部屋に真朱がいた。

「ほい!握り飯食ったら、作業場に行くよ~。」

 投げられた握り飯を受け止める。

「うん。いただきます。」

 頬張ってたら、昨日のからくりが来て、お茶をいれてくれた。不思議だ。

「ど~なってんの、これ?」

「秘密♪」

 片目を瞑って、楽しそうに言う。


 鼻歌を歌いながら歩く真朱に連れられて作業場に行く。熱波がすごい。

「ほら~。先ずは作業工程をしっかり見て~。」

「お、おう!」

 小さな器に入れられた地金を熱して溶かして、混ぜて、型に入れてから取り出して、叩いて叩いてを繰り返す。

「あんなに叩くの?」

「そ~。しっかり締めないと駄目だから。」

「け、結構やる事多いんだな…。」

 自分で作ってみたいと言ったものの、目の前の作業工程をずっと見ていて不安になってきた。果たして、俺っちに出来るだろうか…。

「でしょ~!そんな桃にはコレ!」

 そう言うと、真朱は懐から油紙に包んだ何かを取り出した。

「何それ?」

「素人でも簡単に金細工が出来るようにしたオレの発明品!名付けて金粘土!」

「金…粘土?」

「そ!」

 そう言うと、包みを開いた。

「ほれ、触ってみ。」

「うん…。」

 金属は硬いと思っていたのに柔らかい。

「…なにこれ!?どーなってんの!?」

「ふっふっふ~!桃から自分で作ってみたいって言われた時から考えてたんだよね~。トーシローがいきなり金細工作るのは大変だからさ~。金の粉末を結合剤と合わせて加工してみたんだ~。何度も調合比率を変えて完成したのがコレってワケよ!」

「真朱…。お前ってやっぱすげー!ホントに天才だな!」

 心の底から感嘆した。真朱が笑って言った。

「ま~ね~。これで、あン時からかった罪滅ぼしは終了ね~。」

 そして、腕まくりをすると言った。

「そいじゃ、早速作るとすっか~!」

「おう!よろしく頼むぜ、真朱!」


 それから、真朱に教わりながらその金粘土を細く伸ばして、型に入れて厚みを均一にした。「それから指の大きさの輪っかにする」と言われて困った。だって、鶸の指の太さが分からない…。

「う~…。そこまで考えて無かった…。」

 落ち込む俺っちに真朱が言う。

「桃も鶸もも少ししたら大きくなる筈だから、大きめに作りゃ~いいじゃん!大は小を兼ねる!オレが思うに、桃の指は骨ばってるからオレより少し太め、鶸ちゃんはオレより細めで丁度いいんじゃね?」

「そ、そうか…?真朱がそう言うなら…。」

 そんな訳で、真朱の指の太さを糸で測らせてもらった。そんで思いついた。

「真朱。ちょっと厠に行きたいんだけど、どこ?」

「あ~…。そこの戸を出た裏手にある~。」

「分かった!ちょっと行って来る!待っててな!」

 糸を持ったまま、厠に行った。誰も入って来ないように、鍵をかけてから大きくなる。急いで右の薬指の太さを測った。真朱が言った通りだった。確認して元に戻る。

「お待たせ。」

「お~。」

「俺っちはこん位で~、多分、鶸がこれ位…。」

 その太さの棒を見付けて巻き付ける。繋ぎ目を丁寧にくっつける。

「ほ~い…。そこまで出来たら、いったん乾燥させるよ~。」

「おう…。なんだろ…。気を張ってたからか、大した事してないのにすげー疲れた…。」

 溜め息をついて言ったら笑われた。

「最初に見せたやり方よりは、ずっと楽っしょ!」

「…確かに!」

「ま。一旦、休憩にしよ~。」

 真朱に連れられて、今度は良く分からない地下室に連れて行かれる。ひんやりしてて気持ちいい。

「何、ここ?」

「氷室。」

 そう言うと真朱はおがくずの中から何かを取り出し、持ってた金槌で一部を崩す。そして残りを元に戻すと地上に戻った。

「よしっ。じゃ~、桃、いってみよ~!」

 さっきの物体を何かのからくりに入れると、俺に持ち手を持たせる。

「え?何?どーすんの、これ?」

「この取っ手をひたすら回して~。」

「わ、分かった!」

 回すとジョリジョリ何かが削れている手ごたえがある。面白いから勢いよくやった。

「お~!流石、桃!早い早い~!」

 真朱が手を叩いて喜んでる。

「もう、いいよ~。」

 言われて手を離す。

「よいしょ。」

 真朱がからくりの戸を開けて何かを取り出し、器に盛った。そしてそれを渡してくる。

「ほい。作業場熱かったっしょ?かき氷食べな~。」

 そう言って、雪みたいな物に何かをかけてくれた。

「い、いただきます…。」

 おそるおそる口にして吃驚した。

「何これっ!?冷たくてうまっ!」

「でっしょ~♪熱くなった体を冷やすのにもってこい!コレ、絶対売れると思うんだけど~、肝心の氷を上手く貯蔵管理出来ないから店じゃ出せないと思うんだ~。」

「こんなに美味いのに勿体ないな~…」

「うん。そのうち、皆が食べられるようになるといい…。それにかける糖蜜の味も代えたらきっと滅茶苦茶売れると思うのにな~。」

「だな!あんみつみたいに、餡子のせても美味いと思う!」

「あ~、餡子…。有りだね…。」

「後さ~。俺っちのいた里だと収穫期に採れ過ぎた桃を甘露煮にしてたんだけど、それをのせても良くね?」

「有りだわ…。その甘露煮の汁をそのまま使ってもいいかもね…。」

 そう言うと、早速帳面に書きつけていた。


 一休みしてから、続きの作業を行う。繋ぎ目を綺麗に加工して、はめた時に痛くないよう、丁寧に角を無くした。最後に懐紙から出した砂金をそっとそれぞれにくっつけた。

「何それ?ゴミ?」

 真朱の心無い言葉に傷つく。

「ちげーし!砂金だし!」

「あぁ!持って歩きたかったやつか!」

 最初に言った事を思い出したように真朱が言った。

「成程~、この為に指輪作りたかったワケか~。じゃあ、失敗出来ないね!やり直す時に溶かしたら混ざっちゃうもんね!」

 にた~と笑うから、緊張した。

「だ、大丈夫だよな…?」

「ダイジョブ、ダイジョブ~!今の所、上手くいってる!」

「お、おう…。」

 やれるだけの事はやった。もう一度確認する。

「じゃ、それ焼こ~。」

 真朱に連れられ、火を扱ってる場所に行く。

「小さいから、これ使って。」

 小さい陶器みたいなのの上に目の細かい網を乗せ、落とさないように指輪を置く。蓋をしてじっくり焼いてる間、気が気じゃなかった。

「そんなにソワソワしても結果は変わんないよ~?」

 真朱はそう言うけど、祈りながら見守った分だけ、上手く行くような気がしたんだ。

 暫くしてから「もういいでしょ」と言うので、指輪を取り出す。冷ましてから、金属の棒に通して最後の調整をした。

「いい感じ~。今日はここまでで~、磨くのは明日にしよ~。」

「わ、分かった…。初めてにしては上手く出来てるよな?」

「上出来、上出来~♪ま、それもこれもオレが作った金粘土のおかげだけどね~♪」

「それに関しては、マジ真朱天才!ありがとな!」

「まぁね~。ホント、必要は発明の母~。これに関しては職人連中もかなり喜んでたし、こっちが桃に感謝だわ~。自分にとっては当たり前の工程を素人が出来るか?って考えた時に、初めて「あれ?これ難しくて無理じゃね?」って思えたからさ~。主観だけで生きてたら、一生気付かなかったよ~。こっちこそ、あんがとさん。」

「…お、おう?」

 俺っちが礼を言うのは分かるけど、真朱に言われるなんて思ってなかったから、なんだか調子が狂う。

 夕飯時、職人さん達も指輪を見て褒めてくれた。

「おう!初めてにしちゃ、なかなか上手い事出来てんじゃねーか!」

「明日、気合入れて磨きゃ~、ピッカピカになるな!」

「これよ~、お前さんは砂金粒くっつけってけど、ここを硅石にしたらもっといい物になるんじゃね?」

「それは売れそうだな!ちっと試行錯誤してみんべ!」

「もっと薄くして、対になる透かし彫りとかいれてみね~か?」

 顔を寄せ合って、話し出す。

「あ~あ…。これは、指輪流行っちゃうかもね~。どうする、桃?」

 酒を飲みながら真朱が言う。

「うん…。でも、いんじゃね?皆、好きな奴とお揃いを身に着けたいじゃん。」

「ふ~ん…。そんなもんかね~。ま、明日仕上げて帰って、無事に渡せるかどうかは桃次第だけどね。」

「うっ…!」

 そうなんだよなぁ…。砂金を借りる時に「ちゃんと返す」と言ったけど、俺っちが勝手に指輪にくっつけちゃったんだよなぁ…。「こんなのヤダ!元に戻して」とか言われたらどうしよう…。不安になった。

「何しけた面してんだよ~!鶸ちゃんならダイジョブでしょ!「桃大好き」っていっつも言ってんじゃん!」

「…そうだけど…。それとこれとは違うじゃん…。」

 不安になったが、慣れない作業で疲れていたので早々に眠りについた。


 翌朝目覚めて、今日も朝風呂をいただいてから、指輪を丁寧に研磨した。磨く度にお日様みたいに輝いて、凄くいい。気に入った。真朱にゴミ呼ばわりされたように、つるつるの局面にいびつな形の砂金がくっついているのは少し不格好かもしれないが、それも愛嬌と割り切った。


 そんな訳で、無事に指輪は完成し、それを失くさないように皮ひもに通して、首からぶら下げた。

「さ~て。そいじゃ、帰るとしますかね~。」

 真朱が伸びをして言う。

「おう!」

 行き同様、馬を乗り継いで六省に戻った。


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