生きる意味-必要とされること-
内部もトンネルと同じ、見慣れない黒もしくは、灰色の金属で出来ている。天井にはクリーム色の照明で等間隔で照らされている。中はそれなりに広く、冒険者ギルドと同程度のフロア面積がある。面積に余裕があるためか部屋が複数ある。右端に上下に昇り降り出来る階段がある。
どこに向かえばよいか・・・部屋を全部調べるしかないか。そんなことを考えていると天井から声が聞こえてくる。
「最上階まで上がってくるがいい」
無愛想な女性の声が天井の格子状になってる箇所から聞こえてきた。何かこの地域固有の魔法を使ったものだろうか。
他に何かないか待つが続きはない。
ダコタさんに目配せすると、コクリと頷くダコタさん。
「かしこまりました。上がらせていただきます」
恭しくお辞儀をしながら返答するダコタさん。
階段には 俺、ダコタさん、イリア、ウルフ、オウルの順番で登ってゆく。
黙々と昇り続ける───最上階、8階に到着する。
扉を開けるとコの字の机と長椅子だけがある殺風景な部屋だった。
机の上には長方形の箱のようなものが置いてある。
長椅子に白銀の長髪が印象的な高身長の女性が座っていた。薄着の上にカーディガンを羽織っている。
何と言うか不機嫌というか、無気力というか、疲れがにじみ出ている。彼女が雪の女王か?想像していたのとちょっと違う。
そんなことを考えている内に、ダコタさんが前に出てお辞儀する。
「雪の女王様、お久しぶりです」
「ん?私のことか?───ははっ、小人族は大げさだな」
クックックと笑いを押し殺している。
「正式に名前を伺ったことはありませんからね。───私のこと覚えておりますか?以前、雪男に襲われた時に助けられたものです」
「ん・・・、───あぁ、あの時の子供か。目的の品は見つかったか?」
「はい、見つかりました。お陰様で母は助かりました」
「今度は何だ?ここに来るなんて珍しい。何かあったのか?人間までいるではないか」
ふーん、元々ダコタさんは雪の女王と面識あったわけか。
雪の女王はチラリとこちらに視線を送ってきたので軽く会釈しておく。
「彼らは道中の護衛です。雪男が怖いですからね。───今回お伺いさせていただいた目的は最近の天候不順について何か心当たりございませんでしょうか?原因について皆目見当がつかず、雪の女王様でしたら何かご存知ないかと思い伺いさせていただきました」
「ああ、その件か」
「何かご存知でしょうか!?」
ダコタさんが藁にもすがる思いで食いつく。
「まあな。───1つ確認したい。天候が安定しないと小人族困るということだな?」
「勿論です。今まで我々が生きてこれたのは北の地で漁業を営むことが出来たからです。天候不順が続いては漁を行えず飢え死にするものが出るかも知れません。我々にとっては死活問題です」
雪の女王が、机の上に置いてあった箱を指で叩き始める。『カチカチ、カチカチ、タンッ。カチカチ・・・』
5分程そんなことを繰り返す雪の女王を黙って俺達は見守る。何かをしてくれているのは間違えないのだが、何をしているのかさっぱり分からない。それこそ文化が違う。
「終わったぞ。これでじきに天候は安定するはずだ」
「ありがとうございます!」
「お願いを叶えてやったんだ。見返りを要求させてもらおうか」
「な、何でございましょう」
ダコタさんが身構える。他人事じゃないので俺とイリアも耳をそばだてる。
「定期的に村と周辺で異常がないか報告しに来い」
「伺いたいのは山々ですが外の雪男達はどうすればよいのでしょうか・・・。今回はアークさん達がいたから伺うことが出来ましたが、我々が単独で塔に伺うのは困難です」
恐る恐る意見するダコタさん。個人的には出来ないことを安請け合いしない所は好感を持てる。
「だったらこれを持っていけ」
雪の女王が机の引き出しをゴソゴソと漁ると首飾りを放り投げてくる。ダコタさんがキャッチする。
「首にかけておけばあいつらは寄ってこない」
「あ、ありがとうございます。定期的にお伺いさせていただきます」
「ああ」
トントン拍子で話が展開に戸惑いを隠しきれないダコタさん。
何となくだが、ダコタさんなら良好な関係を築けるのではないだろうか。この殺風景すぎる部屋。もしかしたら潤いを求めていたのかも知れない。ただの憶測だからとやかく言うつもりはないが。奇妙な関係が長続きすることを祈った。




