サラマンダーーにらめっこー
「でっ、何かいい方法あるか?」
「アークが、決めなくていいの?」
「そりゃ勿論。餅は餅屋だろ。精霊のことは精霊使いのイリアの意見を聞ききたい」
「分かった」
いつもよりも目を大きく開き、目の色が普段と少し違う。笑い出さないようにぐっと堪える。そりゃそうだよな。期待されれば嬉しくなるしやる気は出るもんだ。
実際の所、精霊使いとしてのイリアに期待している。周囲の人を怪我させるのは論外だ。可能なら建物の破壊だって避けたい。サラマンダーを刺激して凶暴化させるような真似は避けたい。ただでさえ火の精霊は気性が激しいわけだから気を損ねたらどうなるか分かったもんじゃない。要するになるべく穏便に解決したいわけだ。
イリアは懐を漁ると赤い石を取り出す。
「エサで、釣る」
「いいじゃん。ナイスアイディアだ」
イリアの提示したアイディアは実際冴えていた。
取り出した赤い石は魔石だ。魔石は魔物の体内にある石だ。魔石自体がある種のエネルギー結晶体であり、そのまま着火すれば燃料として使うことも出来る。それ以外にも魔法行使する際の魔力源としても使用可能だ。良いこと尽くめのように思えるが、魔物や動物が誤飲して凶暴化する恐れがある。実利と被害を防ぐために冒険者ギルドで積極的に採取を推奨している。そしてここが肝心だが、精霊のような霊的存在の好物でもある。
魔石を手のひらに乗せて前に突き出すと今まで見向きもしなかったサラマンダーがこちらに視線を合わせてくる。暫くにらめっこが続きサラマンダーが根負けしたように一歩、また一歩とこちらに近づいてくる。
魔石で誘導して町の外へ逃がすつもりだろうか?それはそれで悪い方法ではない。そんなことを考えていたがイリアは動かない。
「そろそろ、動いた方がよくないか?」
「ん、大丈夫」
イリアはそのまましゃがみ込んでしまい少し焦る俺。イリアのことを信じていないわけじゃないが猛獣の前で無防備になってるのと変わらんぞ。
「大丈夫だから」
「本当に大丈夫なんだな?」
「うん、信じて」
「無理はするなよ」
イリアの意思を尊重する。俺よりもイリアの方が精霊の機微について聡いはずだ。それにチートスキルのお陰でいざとなったら介入出来るはずだ。頼むから危ないことだけはしないでくれよ。
ヤキモキしている俺をよそにサラマンダーはゆっくりと近づいてくる。イリアは姿勢を変えずに黙ってサラマンダーを見つめている。全く動じた様子はない。
残りの距離は3m。逃げるならここが限界地点だが動く気配が全くない。
15cm、30cm・・・ジリジリとサラマンダーは感情の見えない目で近づき、そして手元の魔石をパクっと食べる。
イリアは特に警戒心なくサラマンダーの頭を撫でると、嬉しそうに目を細めていた。
ここでやっと弛緩する俺。心臓に悪いから!




