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武家の嗜み  作者: 澪亜
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社交界の一幕

本日7話目の更新です

ついに、リンメル公国の公爵たちがタスメリア王国に来訪する日がやって来た。

国中が歓迎ムードに沸く中、王宮内は恐らくこれ以上ないほどの緊張感に包まれていることだろう。


貴族の子女が集まるこの学園も、流石にこの期間だけは特別に休暇となっていた。


私はマダム・クレジュールに製作を頼んだドレスに身を包み、ルイと共に会場へと向かう。

ベアトップの白地のドレスに、ヴァトープリーツのついた薄黄色の上着。


上着には細かな刺繍と共に宝石が縫い付けられ、また、上着とドレス双方に今まで見たことがない程編み目が細かいレースが縫い付けられているところが特徴。


スカートの膨らみは、着脱が簡単な布製のペチコートとクッションだ。

胸元には複雑に編まれた金属のレースに真珠がつけられたようなチョーカー。

そして同じく真珠のイヤリングに、幾重にも巻かれた真珠のブレッスレット。

これらアクセサリーは全てルイからのプレゼントだ。


同じく薄黄色のタイをつけたルイにエスコートされ、城内でも最も広いとされているホールに辿り着いた。

爵位が低い者から順に入るため、私とルイが入室する時には室内に出席者がほぼ集まっている状態だ。


ルイはまだ爵位は正式に継いでいないものの、既に次期公爵として爵位を継ぐことがロメル様によって決定されているためこのタイミングでの入室で問題ない。

天井から吊られた幾つもの豪奢なシャンデリアによって照らされている、美しく磨かれた木目の床。


等間隔に並べられた、大理石の柱。

美しさを競い合うかのような豪奢なドレスを身に纏う貴婦人たちと、柔らかな笑みを浮かべいつもよりも近寄り難い雰囲気が抑えている紳士たち。

何度この場面を見ようとも、圧巻と言える光景である。


ふいに、音楽が止まった。


「女王陛下ならびにエドガー王子、ご入室です」


一人の男の言葉に、皆が頭を下げる。

そうして部屋の奥、一段高い場所にアイリア様とエドガー様が現れた。

二人が椅子に腰かけたタイミングを見計らって、皆頭を上げた。


再び、先ほどアイリア様とエドガー様の入室を知らせた男に皆の注目が集まる。


「リンメル公国より、チェスター・クロウ公爵閣下がご入室です」


男の知らせに、皆が拍手で出迎える。

入ってきたのは、全体的にスラリとした印象の男性一人。


「同じくリンメル公国よりデニス・バスカル公爵閣下及びコリン・バスカル様がご入室です」


ガッシリとした体つきの、けれども鍛えたというより骨太な印象の男性だ。

その隣を歩く息子は、父親であるデニス様によく似た人物だ。


「ブルーノ・フィリング公爵閣下と奥方ケリー・フィリング様」


メガネをかけた理知的な男性と柔和な雰囲気の女性が現れた。


「カーティス・スリガー公爵閣下、マイルズ・スリガー様がご入室です」


……確かスリガー公爵家の子息は二人だった筈。マイルズは、次男。

長男のコーディスは来なかったのか……前情報としてルイに話を聞いていた際にスリガー公爵家の面々とは全員会っておきたいと思ったのだが。

ジッとスリガー公爵を観察する。

漆黒の黒髪から覗かせる鋭い目には、ゾクリと背筋を凍らせるような光が映っていた。


「モーリス・グリンドル公爵閣下及びリネット・グリンドル様がご入室です」


最後に入って来たのは、服の上からも分かるほどの筋肉隆々の男性。

その体つきだけでなく隙のない身のこなしを見るに、戦ったら強いであろうことは推察できる。

そんなモーリス様の横にいるからか、リネット様は細身の身体がより強調されて、まるで触れたら折れそうだと思った。


五人の公爵たちは、順にアイーリャ様やエドガー様と握手を交わしたい挨拶をしている。

一瞬その光景に、ルイは軽く息を吐いていた。

きっと、安心しているのだろう。……この日、この光景に辿り着いたことに。


やがて音楽が奏でられ始め、次々と男女のパートナーが中心で踊り始める。

私もまた、ルイと共に中心に移動して踊り始めた。


「……本当に、上手くなったな」


耳元で囁かれたその言葉に、思わず口の端が上がる。


「嬉しいですわ、ルイ」


そして一曲が終わったところで、ルイと別れた。


「ダンスを宜しいですか?」


差し出された手は、コリン・バスカル様のものだ。


「光栄ですわ、コリン様」


私はその手をとり、再び踊り出す。


「タスメリア王国は、美しい方々ばかりですね。……その中でも、貴女は特に美しい。貴国を訪れて良かったと思います」


「まあ、お上手ですわね。花の趣は国によって異なりますが、コリン様は我が国の花もお気に召していただいたようで」


私云々の話は流して、ひとまずタスメリア王国の女性が褒められたことに対して礼を言う。

隠そうとして、けれども隠しきれない欲のようなものが彼のその視線から感じ取れて、鳥肌が立った。

早く終わらないかな……と思いつつも、勿論笑顔は絶やさない。


ひたすら耐えて終わったところで、次のダンスの相手と踊る。

次は、マイルズ・スリガー様だ。

マイルズ様は興味なさそうに踊られていて、私と踊ったのも何となく礼を欠かない程度にダンスを踊っておこうという考えが透けて見える。

その方が、コリン様よりは良いけれども。


ふと、エドガー様の方を見る。

先ほど見たときにはエルリア様に捕まってエルリア様と、そして今はシャリアと踊っていた。


……て、シャリア!?


私は驚きを隠せず、マイルズ様に失礼にならない程度に気を遣いつつも、ついついシャリアの方をジッと見てしまう。


一体何故、エドガー様はシャリアにダンスを申し込んだのだろうか。

この公式の場で、それも政治的な繋がりが見えないシャリアに。


シャリアも少し困惑した表情をしていて、その向こう側では私が恐怖を感じるほどの鋭い目つきでエルリアが二人を睨んでいた。


マイルズ様とのダンスを終え、私は一旦場を失礼する。


そしてルイと合流し、挨拶回りを始めた。


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アイリア様→アイーシャ様では。
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