女の戦い
本日6話目の投稿です
「メルリス様、今度の休日は私のお茶会に参加されませんか?」
「いえいえ、是非私が主催するお茶会に」
授業終わりに談話室に訪れたら、複数の女子生徒に囲まれた。
長期休暇中に意欲的に各家との繋がりを強めようと活動をしていたからか、それともその前からの学園での地道な活動が実を結んだのか……最近この手の誘いがまた増えたような気がする。
自分と同じ世代の面々との親交を深めることは重要なので、ありがたい申し出だ。
私は角が立たないようにそれぞれに返事をして、独り席に着く。
「メルリス様、御機嫌よう。こちらの席、よろしいでしょうか?」
「あら……フーラル様、御機嫌よう。勿論ですわ」
ドランバルド伯爵の子息であるダン様の婚約者であるフーラル様に、私は前の席を勧めた。
「そういえば、メルリス様。先日、カルディナ伯爵家でのお茶会にてそれは美しいルビーのネックレスをされていたのだとか。一体どちらでお求めになられたのか、皆さま大変興味津々なようですよ?」
「まあ……そんな。皆さまの印象に残るなんて、大変喜ばしいですわ」
「勿論、私もその一人。もし宜しければ、どなたが作成されたのかお教えいただけませんでしょうか?」
「ふふふ……フーラル様までお気にされるとは。勿論、製作者の名誉もございますからお答えさせていただきますわ。ただし、フーラル様。お教えするのは、リンメル公国の来訪が終わってから……どうやら私が大量に注文し過ぎたみたいで、慌ただしくしているようですから。その代わり公式行事が終わった後、一番にフーラル様にお教え致しますわ」
「それであれば、仕方ないですわね。その代わり、必ず一番にですわよ。メルリス様が公式行事で身につけられるとなると、恐らく更に多くの方々からの問い合わせが殺到するでしょうから」
「まあ……そうなんですの?」
「ええ。私は、確信しておりますわ。……現にメルリス様が身につけられた宝飾品や衣装を取り扱うお店は大盛況なんですのよ。メルリス様、有名なお店の方々と懇意にされているだけでなく、新しいお店やデザイナーの発掘が素晴らしいんですもの。今では皆、メルリス様がどのようなものを身につけられるのか興味津々なんですよ?」
「過分なお褒めの言葉、恐縮ですわ。とはいえ……確かに、約束しましたわ。フーラル様に一番にご紹介させていただくことを」
「ふふふ……楽しみだわ」
それから暫く二人で会話を楽しんでいると、急に一瞬、周りが静かになった。
「御機嫌よう、メルリス様」
「エルリア様、ご無沙汰しておりますわね」
渦中の人物であるマエリア侯爵家の娘・エルリア様が、目の前に現れた。
彼女の後ろには、彼女の取り巻きという表現の方が正しそうな友人が数名並んでいた。
「ええと、失礼ですがそちらの方は?」
言葉遣いは丁寧だったけれども、フラール様に向ける視線は決して有効的なそれではない。
その視線に少し苛立ったものの、表に出さずに殊更意識をしてニコリと微笑んだ。
「フラール様ですわ。アドラム男爵家のご息女の」
「へえ……左様ですか」
質問してきた割には、興味のなさそうな反応。
普通紹介されたら挨拶をするなり、会話を広げたりするのが礼儀だと思うのだけど。
まるでフラール様を相手にしていないかのような、態度だ。
「ちなみに、フラール様はドランバルド伯爵家のご子息であるダン様と婚約が決まっております」
「あら! そうなの! それはとても羨ましいわね」
試しに言ってみたら、態度がコロリと豹変した。
……非常に、分かり易い。
「そういえば、メルリス様。婚約者といえば、今度の王国主催のパーティにはルイ様とご参加されるのですか?」
「ええ、勿論そのつもりですわ」
「まあ、羨ましい。私なんて、まだ婚約者が決まっていないですから……家族の同伴ですわ。どこかに良い殿方はいらっしゃらないかしら?」
……白々しい言葉に、思わず笑い出しそうになるのを堪える。
どうやら彼女……もしくは、マエリア侯爵に随分と買ってもらえたようだ。
私が社交界で一定の発言力を有する、と。
それ故に、彼女がエドガーの婚約者として相応しいと吹聴して欲しいとうことだろう。
私がそうすることによって、強力な他家への牽制になるだろうと。
「あら……私の力などなくとも、エルリア様ならすぐに良い殿方と婚約されるかと思いますわ」
勿論この件については関わらないと決めているので、私は笑ってそう言うに留める。
「それは残念ですわね」
それ以上エルリア様も食い下がることなく、その場を離れて行った。
残された私は、話を中断した非礼をフラール様に詫びた後、再び流行の服飾について話を楽しんだのだった。




