第71話 露見
自分の言葉が宰相であるジョゼフを追い詰めていると思ったリントン公爵はさらにジョゼフを見据えた。
「貴殿は、第一王子派でも第二王子派でもないとずっと語っていたが、結局は第二王子側に昔から付いているのだろう?
そこの貴殿の息子も黒獅子と深い繋がりのようであるし、何より貴殿の娘をどちらからも求められているのにも関わらず黒獅子に嫁がせる事が第二王子派である一番の理由であるな。」
「……私は今もどちら側にも付いているつもりはありません。
この国に必要であるのか、害する存在ではないのかそこしか見ておりません。娘をジークフリード様の婚約者にした訳は娘の事を政治的理由で振り回し結婚を決めたくはない私的な理由であります。娘自身がジークフリード様を選んだからであり、ジークフリード様がどれだけ娘の事を大切に守ってくださるのか私に表示してくれたからであります。本音であれば、このような陰謀が溢れる王家になど嫁がせようとは思ってはおりませんでした。
まあ…このような事を言ってもリントン公爵は信じようとはしないのでありましょうが…
公爵…私からも貴殿に聞きたい事があります。」
「ふん…この期に及んで言い訳か?
何だ?」
「貴殿は、先程皇国に手を出したのはクリストファー殿下の手の者と仰有いましたね?そして、その手の者はジークフリード様が自ら首を跳ねたと?」
「それがどうした?何度でも言おう、殿下は直接皇国へは手を出してはいない。殿下の傍で仕えていた者が皇国の人間を襲っただけだ。そして、その者はこの場で殿下から命令されたとは言えない。黒獅子が全ての罪を殿下に被せる為に首を落とし皇国へ取り引き材料として差し出したのだからな。その証拠に殿下の元にはその傍仕えの遺髪とその者の剣が届けられ糾弾されたではないか?」
「………本当にそう思われているのですね?」
「何なんだ!?くどいぞ!!お前達が黒獅子の策略に加担している事はわかっているのだ!」
「………では、公爵…殿下の手の者が皇国の人間を襲ったと、何処から知りましたか?」
「そんな事は先程陛下が…」
「陛下は仰ってません。
クリストファー殿下が何度か皇国を挑発したとしかここにいる者には伝えておりません。殿下が直接手を下していない事は殿下が王宮を離れていない事からもわかるとは思いますが、それならば殿下の事を擁護するなら皇国と争いになるような事は殿下はしていないと言われず、何故手の者が単独で行ったと言われたのですか?
皇国側からこの案件の抗議も王宮には直接届いておりません。ここにいる皆は今初めて我が国が皇国側と関係が悪化していた事を知ったはずです。
我々が皆を欺き殿下を陥れようとしていると公爵は確信したのであれば、何処からその事を知ったのですか?しかも、その辺にいる破落戸に皇国の人間を襲わせたのではなく、何故殿下の傍に仕えていた者だとわかったのですか?殿下が直接手を下していない事しか知らないはずであれば、その辺にいる破落戸に金を握らせ襲ったとも考えられる。または賊の仕業であるとも考えられる。どんな相手が皇国を襲ったのかわからないのですから…
何処から知ったのですか?殿下の手の者だと公爵が思われた理由を教えてください。」
「………黒獅子と共に皇国へ取り引きに行った者達やトイトン辺境伯も知っているだろう…」
「トイトン辺境伯の元には確かに皇国から抗議はありましたが、トイトン辺境伯は事情が掴めず賊の仕業かもしれないから調査すると皇国へ答えております。
ジークフリード様と護衛として皇国へ行ったのは第二師団の数名ですが、その時皇国へ連れていった皇国へ手を出した者が殿下の手の者とは知らせておりません。
そして、皇国側の重役達の前でもクリストファー殿下が挑発を行ったとはジークフリード様は仰有いませんでした。それは、こちらの王太子が私欲の為に戦になりかねない事を行ったとわかれば、こちらの信用は落ちる事とクリストファー殿下の尊厳をジークフリード様は弟として守りたく浅はかにもその事は皇国の人間には伝えなかったのですよ。」
「何を…」
「殿下の傍に仕えている者が手を出したと知っているのは、私を含め、陛下、ヴィクター様、私の息子のレオン、グレゴール第二師団団長、ルーク・マーヴェス、ユーゴ・ワズワール、ジークフリード様とイーサン皇帝だけにございます。イーサン皇帝には内々でヴィクター様とジークフリード様、そして皇帝の三人だけでの話し合いの場でジークフリード様は真実を伝え、その事は皇帝からの書状からもわかります。
それ以外に殿下の傍に仕えている者が皇国へ手を下した事を知っているのは、その者を選んだ黒幕だけでありますよね?公爵…
それを、何故何もしていないと言われる殿下を擁護している公爵がお知りになっているのですか?」
リントン公爵の表情が悪くなっていく。
「…………っ!!」
「それから、その殿下の傍に仕えていた者を皇国へ連れていき首を落とすかどうかを皇国側にジークフリード様は委ねました。ジークフリード様が自ら首を跳ねてはおりません。そして、その者はまだ生きております。イーサン皇帝自らの預かりとして皇国側の牢獄に幽閉されておりイーサン皇帝が今回の件を水に流す代わりに出された要望が通ればその者をこちら側へ返して頂けるという恩情を頂いております。形だけその者の髪と剣を渡されただけにございます。」
「………っ…………」
「そして、公爵はアリア様の死をたかが愛妾一人の命と言われましたが、アリア様は愛妾ではありません。この国の法律に則って陛下が娶られた、歴としたお立場のある側妃であります。その身分は国王、王妃に次ぐご身分であり貴殿の公爵という身分よりも高いお方にございます。そのお方の命をたかがと言われるとは畏れ多い…
アリア様が殺害された事を公にしなかったのは王妃陛下をお守りする為でもあったのですよ。真実を掴めきれていない中、我々は早々に王妃陛下に疑惑は持っておりました。だが、否定したい気持ちもあり、だからこそこの事は公にしなかった。
そして、それからも続いたジークフリード様を狙う暗殺も子ども騙しのようなとは言い難い…この暗殺で何人もの臣下の命の犠牲があった。それを、ギリギリの所でジークフリード様はご自分で努力なされて切り抜けてこられました。そして、そんな臣下の者達を守る為に自ら臣下へ降下する事をお選びになられた。
歴とした身分の側妃であるアリア様のお子である王位継承権上位でもある第二王子の命を狙う暗殺は、たかがとは片付けられない程の重大な罪であり、自ら手を下さなくともそう命じる事も重大な罪であるのです。その事も内々で納めていた事であったのに、貴殿はこのような場でここにいる人間達に知らせてしまい、どう責任をとられるのですか?このような事になれば、もう内々で収めることは難しく公の場で王妃陛下を裁かねばならなくなってしまわれました。
どうするのですか?公爵…?」
ジョゼフの冷静な言葉の数々にリントン公爵は何も言葉を発する事すらも出来なくなっていった。
そんな公爵を黙って見ていたクリストファーが口を開く。
「お前程度の人間が宰相に敵うとは初めから思ってはいない。
宰相はこの国で一番冷酷であるのだからな、この国に害があるとわかればどんなに今まで親密にしていようとも慈悲などの欠片もなく切り捨てる。
公爵、お前は自分で自分の首をしめたんだ。自分で自分が母上や私の思惑に加担していた事を露見したのだよ。」
そして、クリストファーはジークフリードに目を向けた。
「ジーク…お前の意識が戻って嬉しいよ。」
ジークフリードはクリストファーの真意がわからずクリストファーを見据えた。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
そして、沢山の評価を頂き感謝しております!
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今回おじさん方の(フィーリアパパとカトレアパパの)言い合いで終わってしまい華がなかった…
腹黒さではリントン公爵は、宰相には敵わないでしょう。。。
リントン公爵がとっても小者感満載で…もっと悪どい感じにしたかったのですが…
もっと精進致します。




