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頭の中で思いつく限りの罵詈雑言を並べながら、
『俺って結構語彙が貧弱』なんて思い始めていた時だった。
「特にアイツだ。許せないのは」
ボソリと呟く間宮藍太郎の、小さな肩が震えている。
「……アイツ?」
これはひょっとして……。
こちらから聞かずとも勝手に語ってくれるのでは?
アイツって絶対アイツでしょ。
「日向黒だよ。緑くん」
やっぱり。
「あんなにも恵まれた造形で有りながら、銀髪だなんて。しかもそれで完成されているだなんて。私は、わたしはっ……」
「ん? えっ?」
完成されてる?
不自然なーって怒ってるんじゃなく?
まぁ確かに、日向黒には銀髪がめちゃくちゃ似合っている。
緑に染めちゃったら赤い瞳とのバランスで、ちょっとクリスマス感出ちゃいそうな気もする。
意外と複雑な心境なの、か?
いやいやいや、騙されるな。
所詮は髪だ。
敵対の理由が髪の色ってこと?
ホントに?そんなくだらな……。
「アイツの存在は私のアイデンティティを崩壊させ兼ねない。あ、あと、単純にあの図体で私を子供扱いしてくるのが非常にムカつく」
く、くだらねぇ!
後半ただの愚痴じゃねぇか。
どっちかと言うとそっちが本音だろ。
「そう思うだろう? 緑くん」
「……そ、そのとおりですー」
言えない。
マジでくだらない、なんて、口が裂けても言えない。
委員長。
あっさりと分かりましたよ。分かりたくないけど。
要するに、緑色への歪んだ愛情と正常な美的感覚の狭間で葛藤してるって事でしょ。
あと、普通に私怨だ。




