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俺、CO₂悪者説を信じてたら地球詰んでたんだが?第七部  作者: マスター


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第55話 電気は減った。会議はまだ終われない

第七部第54話では、建物の電気を見直すため、所有者、管理会社、現場の担当者が同じ机についた。


使っていない部屋の運転を、一部の時間だけ変更してみる。


暑さや雨から人を守る集会室は、その役割を残す。


そして、電気の使用量だけでなく、利用者の声や現場の負担も確かめる。


関係者は試行の条件を整え、結果を持ち寄る日を決めた。


そして今回、その報告が届く。


建物全体の電力使用量は、以前より少なくなっていた。


ところが、報告書の最後には一つだけ、気になる空欄が残っていた。


追加でかかった作業時間――未集計。

「減っています」


管理会社の担当者が、机に資料を置いた。


建物全体の電力使用量を示す数字は、比較した期間より小さくなっていた。


「おおっ!」


俺は思わず身を乗り出した。


だが、すぐに口を閉じる。


「……いや、待てよ」


『どうした?』


AIが聞く。


「これ、全部今回の見直しの効果なのか?」


担当者は首を横に振った。


「そこまでは言えません。天候や利用人数も違いますから」


「だよなあ……」


『配送の件で学習したようだな』


「喜ぶ前に確認する主人公へと成長したわけだ」


『自分で言うな』


「たまには褒めろよ」


施設管理者が、別の資料を差し出した。


「暑さから避難できる集会室は、これまでどおり利用できました。利用者からの意見も記録しています」


「おっ、それはよかった」


電気の使用量は減っている。


人を守る場所も残せた。


まずまずの結果じゃないか。


そう思って資料をめくった俺は、最後の欄で手を止めた。


追加でかかった作業時間:未集計


「……ん?」


もう一度見る。


やっぱり空欄だ。


「ここ、何で空いてるんだ?」


施設管理者の表情が、少し曇った。

第1節 数字の外で、誰かが歩いていた

「実は、運転を変更する前に、部屋が空いているか確認していたんです」


施設管理者が答えた。


「確認って、毎回?」


「はい。予定が急に変わることもありますから」


話を聞くと、思っていた以上に細かな仕事が増えていた。


部屋が使われていないか確認する。


運転変更を関係者へ知らせる。


予定外の利用者がいれば説明する。


作業が終われば記録を残す。


一つひとつは、数分で済むこともある。


けれど、それが何度も重なっていた。


「それ、結構な手間じゃないか?」


「いえ、残業にはしていませんので……」


その言葉に、俺は顔を上げた。


「ちょっと待って。残業してないなら、その仕事はいつやってたんですか?」


「ほかの仕事の合間に、少しずつ……」


『合間の時間も、労働時間だ』


AIが静かに言った。


会議室が、しんと静まり返った。


俺は資料を見直す。


電気の数字は減っている。


けれど、その裏で管理者が何度も建物の中を歩き回り、確認と連絡を繰り返していた。


「……電気代の節約分だけ見てたら、気づかなかったな」


『作業時間が増えれば、ほかの仕事に使える時間が減る可能性もある』


「つまり、残業代が増えてないから負担もゼロ、とは言えないわけか」


『そのとおりだ』


施設管理者が申し訳なさそうに言った。


「私が、もう少し効率よくできればよかったんですが……」


「いや、そこじゃないだろ」


俺は思わず口を挟んだ。


「新しい仕事が増えたのに、必要な時間を最初から数えてなかった。問題はそっちじゃないか?」


管理者は、少し驚いたように俺を見た。


省エネルギーのために始めた取り組み。


それが、誰かの見えない仕事を増やしていた。


電気が減った。


だから成功。


そんな単純な話ではなかった。

第2節 節約を、無言の追加業務にしない

「作業が増えたのであれば、そこも含めて見直しましょう」


建物の所有者が、資料を閉じた。


管理会社の担当者もうなずく。


「毎回同じ確認をする必要があるのか、整理したいですね」


すると、学校の先生が手を挙げた。


「集会室の利用予定なら、学校側で変更が分かった時点で知らせられますよ」


商店会の人も続ける。


「雨の日の開室予定も、こちらの連絡係から共有できます」


俺は二人を見た。


「つまり、管理者が全部調べに行かなくても、利用する側から情報を送れるってことか」


「そうですね」


施設管理者がうなずいた。


「ただ、連絡が来なかったからといって、誰もいないと判断するのは危険です」


俺は指を鳴らした。


「そこ、大事だな」


『予定がないことと、利用者がいないことは同じではない』


「第53話でも引っかかったところだしな。同じ失敗は繰り返したくない」


そこで関係者は、予定が分かっている利用と、突然の利用があり得る時間帯を分けて考えることにした。


事前に共有できる予定は、利用する側が知らせる。


急な利用が想定される場所では、安全を確認する仕組みを残す。


そして、必要な確認作業は、担当者の正式な業務として時間を確保する。


「確認そのものをなくすんじゃなくて、無駄な重複を減らすわけか」


『そうだ。安全に必要な作業まで省けば、本末転倒になる』


「省エネのために人が倒れたら、何やってるか分からないもんな」


少しだけ笑いが起きた。


施設管理者も、ようやく表情を緩めた。


「これなら、無理なく続けられるかもしれません」


俺はうなずいた。


「電気を減らすために、誰かの仕事を見えなくしちゃ駄目なんだな」

第3節 成功報告を、持ち帰りすぎない

「この結果、ほかの建物にも紹介したいですね」


所有者が言った。


「運転時間を同じように短くすれば、ほかでも効果が期待できるのでは?」


「それは――」


俺が口を開きかけた、そのときだった。


「少し待ってください」


施設管理者が声を上げた。


全員の視線が集まる。


「ほかの建物にも、予約なしで利用できる部屋があるかもしれません。設備の種類も、人の使い方も違います」


「確かに……」


「うちと同じ時間に止めてしまうと、困る人が出る可能性があります」


俺は思わず笑った。


「何だ、もう分かってるじゃないですか」


「え?」


「最初は、誰もいないと思ってた時間に人が来てたでしょう。でも今は、ほかの建物にも同じことが起きるかもしれないって気づいてる」


施設管理者は少し照れくさそうに笑った。


『経験が、次の判断に反映されている』


AIが言う。


「そうそう。俺が毎回止めなくてもよくなったわけだ」


『もっとも、お前自身も何度か止められているがな』


「余計なこと言うな」


会議室に笑い声が広がった。


所有者は資料の表紙を見直した。


「では、『運転時間を短縮した成功事例』という書き方は、やめたほうがよさそうですね」


「そうですね」


施設管理者が答える。


「何を確認して、どう判断したのかも一緒に伝えたいです」


新しい表題が書かれた。


『建物の利用状況と作業負担を確認した、省エネルギー運用の試行記録』


そこには、四つの内容を残すことにした。


電力使用量の変化。


維持した利用者の居場所。


増えた確認・連絡作業。


そして、まだ解決していない問題。


俺は、その資料を眺めた。


「成功したところだけ切り取ったら、次の建物で同じ失敗をするかもしれないもんな」


『条件が異なれば、結果も異なる』


「それに、今回は使用量が減った理由も、まだ全部は分かってない」


『そのとおりだ。天候や利用条件の影響を考慮した評価が必要だ』


誰かの成功例を、そのまま別の場所へ持っていく。


簡単そうに見えるけれど、危ういことでもある。


同じ設備でも、使う人が違えば結果は変わる。


同じ町でも、建物ごとに事情が違う。


だったら、渡すべきなのは、決まった答えだけじゃない。


どう考え、何を確かめたのかという過程そのものだ。

第4節 電気の先に、まだ見ていない世界がある

会議の終わり。


空欄だった「追加でかかった作業時間」の欄には、集計を担当する人と、確認する日付が書き込まれた。


俺は白いファイルを開く。


青い字。


――建物全体の電力使用量が、比較期間より少なくなった。


――暑さから避難できる集会室の役割を維持できた。


――現場の追加作業を、正式な評価の対象に加えた。


赤い字。


――電力使用量の差には、天候や利用人数などの影響が含まれる。


――確認や連絡の手間が、担当者の見えない負担になっていた。


「……まだ、完全に成功とは言えないな」


俺はペンを置いた。


『そうだ。ただし、改善のために必要な情報は増えた』


「終わらせるためじゃなく、続けられる形にするための確認か」


『そのとおりだ』


俺は最後の一行を書いた。


――電気の数字が減っても、仕事を誰かの空き時間に押し込んだままなら、成功はまだ途中だ。


減ったものと、増えたもの。


数字と、人の負担。


両方を見て初めて、続けられる方法が見えてくる。


「よし。建物の件は、ここでいったん区切ろう」


『試行の評価は、引き続き必要だ』


「それは担当者に任せよう。俺たちが毎回ここで会議してても、地球の温暖化は止まらないだろ?」


『その認識は正しい』


俺は窓の外を見た。


町に並ぶ建物。


道路を走る車。


遠くに見える工場。


この町で使われる電気も、燃料も、外から運ばれてくる。


「なあ、AI」


『何だ?』


「俺たち、電気を減らすことばっかり考えてきたよな」


『電気の需要を減らすことは、重要な対策の一つだ』


「でも、どこで、どうやって作られてるかは、まだちゃんと見てない」


『発電方法や電源構成によって、温室効果ガスの排出量は異なる』


「それに、建物の電気だけじゃない。工場も車も、世界中でエネルギーを使ってる」


『化石燃料の採掘、輸送、燃焼まで含めた構造を考える必要がある』


俺は、机に並んだ資料を見下ろした。


配送の燃料。


建物の電力。


そして、人を守るための記録。


「……これ、全部つながってるんだよな」


『そうだ。ただし、同じ原因で動いているわけではない』


「どういうことだ?」


『電気の作り方、燃料の使い方、自然環境の変化。それぞれの仕組みが重なり合い、地球の気候に影響している』


俺は窓を開けた。


外から、生暖かい風が入り込んでくる。


「だったら、そろそろ町の外を見に行こうぜ」


『どこへ?』


「まずは、俺たちが使ってる電気が、どこから来るのか。その先だ」


『発電所か』


「そう。スイッチの向こうに、何があるのか見てみたい」


俺は資料を閉じ、立ち上がった。


町の中でできることは、まだたくさんある。


けれど、町の中だけを見ていても、分からないことがある。


地球を暖めている仕組みは、町の境界線で終わっていない。


次に向かう場所が、ようやく見えてきた。

第55話では、建物全体の電力使用量が比較期間より少なくなった結果と、その裏側で増えていた現場の仕事を描きました。


省エネルギーを進める際には、使用量の変化だけでなく、利用者の安全や快適性、運用に必要な作業負担も確認する必要があります。


また、比較期間の電力使用量が減っていても、そのすべてが運転見直しの成果とは限りません。天候、利用人数、設備の使い方などの違いを考慮した評価が必要です。


今回は、成功例をそのまま広げるのではなく、判断に必要な条件や未解決の問題も一緒に引き継ぐことを重視しました。


そして、建物の運用をめぐる一連の話には、ここで一区切りをつけます。


地球温暖化を抑えるためには、エネルギーをどれだけ使うかだけでなく、そのエネルギーをどのように生み出しているかを考える必要があります。


次回からは町の会議室を離れ、発電、化石燃料、エネルギー供給の仕組みへと視点を広げます。


さらにその先には、森林、土壌、水循環、海洋など、地球本来の自然循環との関係が待っています。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成:リアル(Perplexity)

校正・文体調整:G(ChatGPT)

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