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俺、CO₂悪者説を信じてたら地球詰んでたんだが?第七部  作者: マスター


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第54話 スイッチの向こうに、契約書があった

第七部第53話では、建物の電気の使い方を見直した。


予約が入っていない時間でも、暑さや雨から人を守るために開放されている部屋がある。


一つの部屋の空調を止めても、別の部屋に人が集まり、かえって負担が増えることもある。


だから町は、電気の使用量だけでなく、建物全体の利用状況や、そこで過ごす人の安全も一緒に考えることにした。


ところが、施設管理者から思わぬ言葉が返ってきた。


「そこは、私の判断だけでは変えられません」


スイッチは、すぐ目の前にある。


なのに、自由に押せない。


第54話では、その理由を探るため、建物の管理契約を開く。

「ここを押せば、止まるんだよな?」


俺は、壁に取り付けられた操作盤を指さした。


施設管理者がうなずく。


「はい。操作すれば、設備は止まります」


「じゃあ、使っていない時間だけ――」


「ただし、その時間に止めてよいかどうかは、別の話なんです」


「……え?」


操作盤に伸ばしかけた指が、空中で止まった。


『スイッチは近いが、決定権は遠い』


AIが言った。


「何だよ、その哲学みたいな言い方は」


『設備を操作できることと、運転条件を変更する権限があることは違う』


「つまり、押せるけど押しちゃ駄目ってことか?」


『勝手に変更してはいけない場合がある』


「……省エネって、もっと簡単な話じゃなかったのか?」


施設管理者は苦笑しながら、机の上に分厚いファイルを置いた。


いつもの白いファイルではない。


表紙には、小さく「管理業務」と書かれている。


「まず、こちらを見ていただけますか」


「うわっ、分厚いな……」


どうやら今日は、電気のスイッチではなく、紙の束と格闘することになりそうだ。

第1節 守っていたのは、誰の予定か

「運転時間は、こちらで決められているんです」


施設管理者が契約書と、その付属資料を開いた。


建物の空調や照明について、基本的な運転時間が記載されている。


朝から夕方まで。


平日は原則として同じ時間帯。


運転条件を変更する場合は、所有者と管理会社の確認が必要。


俺は思わず首をかしげた。


「これ、いつ決めたんだ?」


「以前、ほとんどの部屋を日中ずっと使っていた頃だそうです」


「今は空いてる部屋も多いよな?」


「はい。利用状況は変わっています」


「じゃあ、何で運転時間は昔のままなんだ?」


管理者は少し困った顔をした。


「私たちの判断で勝手に変えると、必要なときに空調が使えず、利用者に迷惑をかける可能性がありますから」


俺は言葉に詰まった。


確かに、それはそうだ。


第53話でも、予約がないからといって、誰も使っていないわけではないと分かったばかりだった。


『管理者が改善を怠っていたとは限らない』


AIが補足する。


『定められた運転条件を守ることが、管理者の仕事でもある』


「なるほどな……。決まりを守っていたら、今の使い方と合わなくなってたわけか」


俺は前回の予定表を取り出した。


会議の予約。


雨の日の開室。


暑い日の休憩利用。


その隣に、古い運転条件の資料を並べる。


「同じ建物の話なのに、時間が全然合ってないな」


『利用方法は変わった。しかし、管理の仕組みが追いついていない』


「だったら、現場の人に『もっと節電しろ』って言うだけじゃ駄目だな」


スイッチの前にいる人だけでは、決められないことがある。


だったら、決められる人に話を聞くしかない。

第2節 会議に、もう一人呼ぶ

数日後。


建物の所有者と管理会社の担当者が、集会室にやって来た。


俺は最初に頭を下げた。


「今日は、電気を片っ端から止めたいって相談じゃありません」


所有者が首をかしげる。


「では、どういう相談でしょう?」


「今の使い方に合わせて、必要な時間は動かして、使っていない時間は見直せないかって話です」


施設管理者が、新しい利用予定表を広げた。


「こちらが現在の利用状況です。予約のない時間でも、暑さから避難するために使われる部屋があります」


設備担当者も資料を示した。


「運転時間を調整できる設備はあります。ただ、変更には事前確認が必要です」


所有者は資料を一枚ずつめくった。


「なるほど。ただ、もし空調を止めたことで利用者から苦情が出たら、どう対応しますか?」


「……そこか」


俺は思わずつぶやいた。


管理会社の担当者も続ける。


「変更した時間を誰が管理するのか。急に利用が入ったら誰が元に戻すのか。その連絡方法も決めておく必要があります」


「また責任の話かよ……」


『責任の所在は、仕組みを継続させるために必要だ』


「分かってるけど、何をするにも人が増えるな」


『一人で決められないことを、一人に任せないためだ』


「……それは、確かにそうだな」


俺は椅子に座り直した。


以前、町の雨庭でも似たような話があった。


誰が異常を見つけるのか。


誰に連絡するのか。


誰が修理を判断するのか。


担当者が不在なら、誰が代わるのか。


設備を設置しただけでは、長く使い続けられない。


建物の省エネルギーも、同じだった。


「じゃあ、現場だけに責任を押しつけない方法を考えましょう」


俺が言うと、所有者が静かにうなずいた。

第3節 全部変えずに、期限を決める

「契約全体をすぐに変更するのは難しいですね」


所有者が言った。


会議室が静かになる。


俺は天井を見上げた。


「……また振り出しか?」


『必ずしもそうではない』


AIが答える。


『全体を変更できなくても、限定的な試行なら合意できる可能性がある』


「試してから判断するってことか」


俺は所有者に向き直った。


「それなら、使い方が確認できている部屋だけ、期間を決めて試せませんか?」


施設管理者が顔を上げる。


「一部の会議室なら、利用状況を把握できています」


設備担当者もうなずいた。


「運転時間を限定して調整することは、技術的には可能です」


所有者は少し考え込んだ。


「安全面と連絡体制を確認できるなら、試行として検討できます」


「おおっ!」


思わず声が出た。


『まだ正式な承認ではない』


「分かってるって。お前、毎回喜ぶタイミングを奪うよな」


管理会社の担当者が笑いながら言った。


「では、条件を整理しましょう」


試行の対象は、一部の会議室に限定する。


暑さから避難する集会室など、必要な場所の運転は維持する。


変更する時間帯は、関係者へ事前に知らせる。


予定外の利用や問題が発生した場合には、決められた連絡先へ報告し、必要に応じて元の運転へ戻す。


そして、試行前後の電力使用量と利用状況を比較する。


「費用も確認したいですね」


所有者が言った。


「運転時間を短くして電気代が減っても、現場の作業が大幅に増えたら、続けるのは難しいですから」


俺は思わず笑った。


「それ、こちらも気にしてたところです」


『電力使用量だけでなく、運用に必要な費用や負担も評価する』


「節約したつもりで、別のところに手間を押しつけたら意味ないもんな」


所有者は、試行計画の下書きを見ながら答えた。


「この条件なら、正式に検討を進められます」


少なくとも、最初の一歩は踏み出せそうだった。

第4節 変わったのは、スイッチではなかった

話し合いが終わるころ、分厚い契約書の隣には、一枚の試行計画書が置かれていた。


対象となる部屋。


試行期間。


運転を変更する担当者。


問題が起きた際の連絡先。


結果を確認する日。


俺は、その紙を眺めた。


「……結局、今日は電気が減ったわけじゃないんだよな」


『そうだ』


「書類が一枚増えただけ?」


『それだけではない。変更を判断するための条件が整理された』


施設管理者が、壁の操作盤を見つめていた。


「これまでは、運転を見直したくても、どこまで自分たちで判断してよいのか分からなかったんです」


「今は?」


「誰に確認して、何を決めればよいのかが分かりました」


俺は小さくうなずいた。


設備は、まだ何も変わっていない。


でも、設備を動かすための仕組みは、少しだけ動き始めた。


俺は白いファイルを開いた。


青い字。


――所有者、管理会社、現場担当者が、同じ利用予定表を確認できた。


――人を守るための役割を残しながら、一部の運転を試す計画を検討できた。


赤い字。


――古い運転条件と、現在の利用状況が一致していなかった。


――現場だけでは、運転変更の判断や責任を引き受けられなかった。


最後に、もう一行。


――スイッチを押す人だけに、変える責任を背負わせない。


契約を決める人と、現場で働く人。


そして、その建物を利用する人。


それぞれの立場をつなげて初めて、運転の仕組みを変えられる。


「……よし。ひとまず、ここまでだな」


『実際の成果は、試行後に確認する必要がある』


「はいはい。結果が出るまでは成功扱いしないんだろ?」


『そのとおりだ』


「もう覚えたって」


俺は苦笑しながら、ファイルを閉じた。


そのとき、設備担当者が窓の外を見ながら言った。


「ところで、電気の使用量を減らすことと、温室効果ガスを減らすことは、完全に同じではありませんよね?」


俺は顔を上げた。


「……どういうことだ?」


「発電方法によって、電気を作るときの排出量が違いますから」


『そのとおりだ』


AIが続ける。


『電力を使う側の工夫だけでなく、供給する側の仕組みも考える必要がある』


「つまり、今度は発電所の話か?」


『発電所だけではない。燃料の調達、送電網、電源構成、そして電力需要の変化も関係する』


「……ちょっと待て。話が一気に大きくなったぞ」


『地球温暖化の問題は、最初からその規模だ』


俺は、机に置かれた契約書をもう一度見た。


目の前のスイッチから始まった話。


その先には建物の管理契約があり、さらにその向こうには電気を作り、運ぶ仕組みがある。


そして、その電気を生み出すために使われる資源は、地球のどこかから運ばれてくる。


「……俺たち、まだ入口に立ったばかりなんだな」


『そうだ』


窓の外では、夕暮れの町に明かりがともり始めていた。


俺は、その光を見つめた。


今まで何も考えずに使っていた電気。


その向こう側に何があるのか。


次は、それを確かめる番だ。

第54話では、建物の設備を操作する人と、運転条件を決める人が必ずしも同じではないことを描きました。


現場へ「電気を減らしてほしい」と求めるだけでは、契約、利用時間、安全、責任分担などの問題は解決しません。


町は建物の所有者や管理会社とも話し合い、現在の利用状況に合わせて、一部の運転を見直すための試行計画を検討しました。


今回の前進は、電力使用量や温室効果ガス排出量が減ったことではありません。


改善を試すために必要な条件と、関係者の役割が明確になったことです。


また、省エネルギーを考える際には、設備の使用量だけでなく、建物の断熱性能や設備効率、電力の供給方法にも目を向ける必要があります。


電気をどれだけ使うか。そして、その電気をどのように生み出すか。両方が温暖化対策につながっています。


次回は、建物のスイッチからさらに視点を広げ、発電とエネルギー供給の仕組みへ進みます。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成:リアル(Perplexity)

校正・文体調整:G(ChatGPT)

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