↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、CO₂悪者説を信じてたら地球詰んでたんだが?第七部  作者: マスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/65

第53話 消す電気、消してはいけない居場所

第七部第52話では、二店舗の配送をまとめた結果を確かめた。


比較した期間より、燃料の使用量は減っていた。


けれど、その差をすべて自分たちの成果とはしない。


配送条件の違いを確認し、店の休憩時間や配送担当者の待ち時間にも目を向けながら、無理なく続けられる方法を選んだ。


そして今回、次の報告を持ってきたのは施設管理者だった。


「建物の電気、見直せそうです」


使われていない部屋の空調や照明を見直せば、エネルギー消費を減らせるかもしれない。


ただし、町には一つ、大切な約束があった。


暑さから逃れて休める場所まで、なくしてはいけない。


第53話では、消せる電気と、消してはいけない役割を同じ図面に描いていく。

「この部屋、誰もいない時間にも空調が動いていたんです」


施設管理者が、建物の利用予定表を机に広げた。


会議室。


廊下。


事務室。


雨の日に開放する集会室。


それぞれの利用時間と、空調や照明の運転時間が並んでいる。


俺は、予定表の空欄を指さした。


「ここ、誰も使ってないなら止められるんじゃないか?」


「設備担当にも確認して、運転時間を見直す候補にしました」


「おお、今度は分かりやすい話だな」


『そういうときほど、見落としが起きやすい』


AIが割り込んできた。


「始まる前から不安をあおるなよ」


『予定表に書かれていない利用がないとは限らない』


「……また面倒な話になりそうだな」


どうやら、電気のスイッチを切るだけでは済まないらしい。

第1節 予約なしは、人なしではない

町は、まず一部の会議室で運転時間を見直すことにした。


予約がない時間帯の空調や照明を調整し、実際の利用状況も確認する。


もちろん、建物全体の電気を一斉に止めるわけではない。


ところが、集会室の予定表を見た学校の先生が、ある欄で手を止めた。


「ちょっと待ってください。ここ、午後は予約なしになっていますよね?」


「はい。利用予定は入っていません」


施設管理者が答える。


「でも、暑い日には休みに来る人がいますよ」


「えっ?」


管理者が顔を上げた。


「その利用は、予約表に入っていないんですか?」


「入っていません。青い案内板を見て、自由に立ち寄る人もいますから」


俺は思わず額を押さえた。


「……ああ、そういうことか」


予約がない。


だから誰も来ない。


だから空調を止めても問題ない。


一見、筋が通っているようで、大事なことが抜け落ちていた。


『予約がないことと、利用者がいないことは同じではない』


AIが指摘する。


「青い案内板で『ここで休めます』って知らせたのに、予定表では使ってないことになってたわけか」


「申し訳ありません。予約とは別の運用だったので、管理表に反映されていませんでした」


施設管理者が頭を下げた。


俺は首を振る。


「いや、分かったなら今直せばいい。それに、たぶんほかにもあるぞ」


誰も予約していないのに、必要とされる場所。


数字だけを追っていたら、見えなくなる役割。


俺は白いファイルを開いた。


――予約がないことと、役割がないことは違う。

第2節 減った数字の向こうに、人がいる

その日の午後、俺たちは試運転の様子を確認しに行った。


予約のない会議室は閉まっている。


廊下の照明も、安全に必要な明るさを残しながら運転を見直していた。


「前より静かになりましたね」


同行した連絡係が言った。


「確かに。これなら電気も減ってそうだな」


『まだ判断できない』


「はいはい、数字が出るまでは、だろ?」


『それもあるが、隣の部屋を見てほしい』


「隣?」


扉を開けると、思ったより大勢の人がいた。


「あれ? こんなに集まってたのか?」


部屋の中では、扇風機が二台追加されていた。


「小さい部屋だけ使うと聞いたので、こちらに集まったんです」


利用者の一人が答えた。


「でも、思ったより人数が増えてしまって」


俺は室内を見渡した。


人が増えれば、室内で発生する熱も増える。


扇風機は風を送れるが、部屋そのものを冷やすわけではない。


冷房や換気が人数に見合っているかも気になる。


「……これ、ちゃんと涼しく過ごせてるのか?」


「今は大丈夫ですけど、もっと人が増えたら厳しいかもしれません」


施設管理者も、表情を引き締めた。


「利用人数と、空調や換気の状態を確認します」


俺は閉まっている会議室を振り返った。


「あっちの電気を止めた分だけ見れば、節約したことになるんだよな」


「はい。でも、こちらの部屋の使い方も変わっています」


管理者が記録用紙に項目を書き足した。


追加した機器。


集まった人数。


室内の温度や換気の状況。


利用者の声。


『一室の消費電力だけではなく、建物全体で何が変わったかを見る必要がある』


「配送のときと同じか」


町の通りだけを見るのではなく、配送コース全体を見る。


今度は、一つの部屋だけでなく、建物全体を見る。


「……減らした電気が、別の場所で増えてたら意味がないもんな」


『さらに、消費電力が減っていても、必要な環境が維持できていなければ、単純に成功とは言えない』


俺は、部屋に集まった人たちを見た。


「数字の向こうに、人がいるってことか」

第3節 止める部屋と、迎える部屋

夕方、関係者で短い話し合いを開いた。


「じゃあ、全部元に戻しますか?」


商店会の人が尋ねる。


設備担当者は首を横に振った。


「いえ。使っていない部屋の運転見直しは続けます。ただ、人が集まる部屋については、利用人数や設備の能力も確認しながら調整したいと思います」


「全部止めるか、全部動かすかの二択じゃないんだな」


俺が言うと、設備担当者はうなずいた。


「はい。必要な場所に、必要な時間、適切な環境を用意することが大切です」


学校の先生が、図面の集会室を指さした。


「ここは、暑い日に休憩できる場所として開ける日を、きちんと共有しましょう」


「予約とは別の欄を作りますか?」


施設管理者が尋ねる。


「そうですね。催しの予約がなくても、人を迎える日があると分かるように」


新しい予定表には、三つの欄が設けられた。


会議や催しの予約。


雨の日の開室。


暑い日の休憩利用。


俺は表をのぞき込んだ。


「これなら、予約なしを休業と勘違いしなくて済むな」


『運転を止める前に、その場所が果たしている役割を把握できる』


「消せる電気を探す前に、消しちゃいけない役割を確認するわけか」


施設管理者が、図面の集会室に青い印を付け直した。


そこは、ただ電気を消費する部屋ではない。


暑さから人を守る場所でもある。


「でもさ」


俺は図面を見ながら口を開いた。


「必要な冷房を残すとして、その電気はどうやって作られてるんだ?」


『重要な疑問だ』


「今の話って、建物の中で使う電気を減らすことばかりだろ?」


『電気の消費量だけでなく、発電に伴う温室効果ガス排出も考える必要がある』


「同じ電気でも、作り方によって排出量が違うってことか」


『そうだ。省エネルギーと電力供給の低炭素化は、どちらも温暖化対策に関係する』


俺は、窓の外に目を向けた。


電線が町の向こうまで伸びている。


建物のスイッチは、ここにある。


けれど、その電気を生み出す仕組みは、ずっと遠くまでつながっている。

第4節 節約の成果は、誰の我慢か

その日の結果を、白いファイルに記録した。


青い字。


――利用予定と実際の利用状況を照らし合わせ、運転の見直しを始められた。


――集会室の休憩利用を、予定表に反映できた。


赤い字。


――予約がない時間にも、人を守るために必要な部屋があった。


――部屋を集約すると、別の部屋で利用人数や使用機器が増える場合があった。


「で、肝心の電気はどれくらい減ったんだ?」


俺が尋ねると、施設管理者は首を横に振った。


「まだ確認中です。建物全体の電力使用量と、利用状況をそろえて比較します」


「そうか。まだ結果は出てないんだな」


『だが、数字が出る前に確認できたことはある』


「休める場所を消さずに済んだ」


『そうだ』


俺はペンを持ち直した。


――減らす電気と、残す役割を同じ紙に描く。


その下に、もう一行。


――数字が小さくなっても、誰かの居場所や休息を失わせたなら、成功とは書かない。


「……電気を減らすだけなら、簡単そうに見えたんだけどな」


『スイッチを切れば、消費電力は減る。しかし、それが社会全体にとって望ましい結果とは限らない』


「我慢大会じゃ、温暖化対策も続かないよな」


俺はファイルを閉じた。


そのとき、設備担当者がぽつりと言った。


「実は、建物の運転を見直すだけでは、限界もあるんです」


「限界?」


「空調設備の効率や、建物の断熱性能も関係します。古い設備を使い続けるか、更新するか。でも、そこは私たちだけでは決められません」


「……また出たな。“うちだけでは決められません”」


『今度は、設備投資と建物の所有・管理の問題だ』


「つまり、スイッチの話から、建物そのものの話になるわけか」


『さらに、その先には電力の供給方法もある』


俺は苦笑した。


「電気を一つ消そうとしただけなのに、どこまで話が広がるんだよ」


『最初から、つながっている』


窓の外では、夕方の町に明かりがともり始めていた。


その明かりを支えるエネルギーは、どこで、どのように生み出されているのか。


俺たちは、まだその全体を知らない。

第53話では、建物の省エネルギーを進める中で、「予約がない」と「役割がない」の違いを描きました。


利用予定表が空白でも、暑さから避難できる場所として必要とされている部屋があります。


また、一部の部屋の空調や照明を止めても、利用者が別の部屋に集まれば、そこで必要なエネルギーや設備の使い方が変わることがあります。


だからこそ、省エネルギーの成果は、建物全体の使用量と利用状況を比較して判断する必要があります。


同時に、利用者の健康や安全、快適性も守らなければなりません。


温暖化への適応と、温室効果ガス排出を減らす緩和は、対立するものではなく、両立を目指すべき取り組みです。


さらに、電気をどれだけ使うかという問題の先には、その電気をどう生み出すかという問題があります。


次回以降は、建物の設備や断熱性能、電力供給の仕組みなど、エネルギー消費と温室効果ガス排出の関係へ視点を広げていきます。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成:リアル(Perplexity)

校正・文体調整:G(ChatGPT)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。