↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、CO₂悪者説を信じてたら地球詰んでたんだが?第七部  作者: マスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/62

第52話 減った燃料、消えなかった宿題

第七部第51話では、三店舗の配送をまとめる試運転を行いました。


町へ入る車の回数は減りました。しかし、三店舗目で受け取りを待つ時間が増え、店長は昼休みを削って対応しようとしました。


そこで町は、三店舗を無理にそろえるのではなく、まず二店舗で配送をまとめる方法へ変更しました。


効率化のために、誰かの休憩や仕事の余裕を奪ってはいけない。


その約束を守りながら、試運転は続きました。


第52話では、配送コース全体の結果が届きます。


燃料は本当に減ったのでしょうか。


誰かの負担を、別の場所へ押し出していないでしょうか。


そして、一つの町で得られた小さな結果を、世界の温暖化を抑える取り組みへどうつなげていくのでしょうか。

「結果、来ました」


配送会社の担当者が、集会室の机に資料を置いた。


俺は思わず身を乗り出した。


「減った?」


『何が?』


AIが聞く。


「燃料だよ! 今日はその結果を聞きに来たんだから」


担当者は、一枚目の資料を指さした。


「二店舗をまとめた試験期間では、比較対象の期間よりも、配送コース全体の燃料使用量が少なくなりました」


「おおっ!」


俺は思わず拳を握った。


前回は、三店舗をまとめようとして失敗しかけた。


店長の昼休みを削り、運転手の待ち時間を増やしてまで配送をまとめても、意味がない。


そう考えて、二店舗に変更した。


その結果、燃料が減った。


「やったじゃないか!」


ところが、担当者は二枚目の資料を取り出した。


「ただし、こちらも見てください」


「……喜ぶ時間、短くない?」


『まだ結論ではないからな』


「分かってるけど、もう少し余韻が欲しい!」


### 第1節 燃料が減った。でも、理由は一つじゃない


二枚目の資料には、配送条件が細かく記録されていた。


荷物の量。


走行距離。


渋滞時間。


停車時間。


燃料使用量。


「同じ配送コースでも、日によって条件が違います」


担当者が説明する。


「試験期間には、荷物が少ない日もありました。渋滞が短かった日もあります」


「つまり?」


「燃料が減ったのは事実です。ただ、その減少分すべてが配送時間をまとめた効果とは限りません」


俺は、上げかけていた拳をゆっくり下ろした。


「じゃあ、喜んじゃ駄目なのか?」


「いえ。よい結果です」


担当者は笑った。


「ただし、毎回同じように減るとは、まだ言えません」


AIが白いファイルを開いた。


――よい結果と、原因まで確かめられた結果を分ける。


「また赤い字か?」


『青い字を、大きく書きすぎないための注意だ』


「なるほどな」


俺は資料を見直した。


燃料使用量は確かに少ない。


でも、荷物が少なかったからかもしれない。


渋滞が短かったからかもしれない。


配送をまとめたことが、どれだけ影響したのかは、まだ分からない。


「じゃあ、次はどうする?」


「荷物の量や曜日、走行条件をそろえて比較できるよう、もう少し記録を続けます」


「一回の結果で決めないわけだ」


『そうだ。偶然と改善を、できるだけ分けて考える』


俺は白いファイルに書いた。


――燃料が減った事実は残す。ただし、その理由を一つに決めつけない。


### 第2節 店長の昼休みは、ちゃんと残っていた


「ところで、待ち時間はどうなったんですか?」


学校の先生が聞いた。


配送会社の担当者が、別の表を開く。


「二店舗に変更してからは、納品時の長い待ち時間が減りました」


「おっ!」


俺は顔を上げた。


「店長の昼休みは?」


「ちゃんと取れていますよ」


店長が笑った。


「前回は、協力するために休憩をずらそうと思いましたけど、今回はその必要がありませんでした」


運転手も続けた。


「次の配送先への遅れも、今回は出ませんでした」


「そこは、ちゃんと喜べるな」


俺は椅子に深く座った。


燃料が減った理由には、まだ調べることがある。


でも、店長が昼休みを削らずに済んだ。


運転手も、無理に遅れを取り戻す必要がなかった。


その事実は、現場にいた人たちが確認できている。


「前回、三店舗にこだわらなくてよかったな」


『三店舗をまとめることが目的ではなかったからな』


「燃料を減らすこと。そして、無理なく続けること」


『どちらか一方だけでは、長続きしない』


配送会社の担当者がうなずいた。


「この組み方なら、もう少し試験運用を続けられそうです」


「じゃあ、成功?」


俺が聞くと、AIが答えた。


『続けて確かめられる段階に進んだ』


「相変わらず、慎重な言い方だな」


『成功と決めて記録を止めるより、次の結果を見たほうがいい』


「はいはい。分かったよ」


でも、今回はその慎重さが少し頼もしかった。


### 第3節 隣の通りにも広げよう……と思ったら


「では!」


商店会の人が勢いよく立ち上がった。


「この方法を、商店街全体へ広げましょう!」


会議室が少し明るくなる。


「いいですね!」


「ほかの店でも使えそうです!」


俺も、ついうなずきかけた。


そのときだった。


「ちょっと待ってください」


配送会社の担当者が手を挙げた。


「隣の通りには、午前中しか受け取れない店が多いんです」


「え?」


「飲食店もあります。昼の営業が始まる前に納品しないと困るところもあります」


施設管理者も続ける。


「荷物を一時的に置ける場所も違いますね」


「……また条件か」


俺は頭をかいた。


AIが、町の地図を表示する。


『条件が違う場所へ、同じ答えを運ばない』


「それ、前にも聞いたな」


『雨庭を次の町へ渡したときだ』


「ああ、そうか」


前の町では、空き地があった。


次の町には、空き地がなかった。


川がある町もあれば、坂道ばかりの町もあった。


同じ補助輪を置けば、同じ結果になるわけではない。


配送も同じだった。


「二店舗を午後にまとめたからって、隣の通りも午後にすればいいわけじゃない」


『そうだ』


「じゃあ、何を渡す?」


AIが白いファイルのページを開いた。


――受け取り時間は変えられるか。


――荷物を置く場所はあるか。


――誰の待ち時間が増えるか。


――配送コース全体の燃料はどう変わるか。


――休憩や労働時間を削っていないか。


「なるほど。答えじゃなくて、確認する順番を渡す」


配送会社の担当者が手帳を開いた。


「社内の別の配送担当にも、この確認方法を共有します」


「会社の中でも使える?」


「使えると思います。ただ、地域ごとに条件が違うので、同じ配送方法をそのまま採用するわけではありません」


俺は笑った。


「町から町へ渡していた白いファイルが、今度は会社の中を歩き始めたな」


『補助輪は、設備の形ではなく、考え方として広がることもある』


「それなら、少しは世界へ近づいたか?」


『まだ入口だ』


「厳しいなあ」


### 第4節 世界の温暖化は、まだ止まっていない


会議が終わったあと。


俺はAIと二人で、資料を整理していた。


「燃料は減った」


『比較した期間ではな』


「店長の昼休みも守れた」


『そうだ』


「配送会社も、ほかの地域で試そうとしている」


『そうだ』


俺は、少しだけ満足した。


だが、机の上にはもう一枚、別の資料があった。


世界の温室効果ガス排出量を示すグラフだ。


「……で、こっちは?」


AIが画面を切り替える。


『この町の配送改善だけで、世界の排出量が大きく変わるわけではない』


「分かってる」


俺は、しばらくグラフを眺めた。


一つの配送コース。


二つの店。


少し減った燃料。


それだけで、地球の温暖化が止まるわけではない。


「小さすぎるな」


『世界全体と比べればな』


「じゃあ、こんなことを続けても意味がないのか?」


『そうは言っていない』


AIは、町の地図を広げた。


そこから配送コースが伸びる。


配送センター。


取引先。


別の商店街。


さらに、その先の地域へ。


『今回、町だけでは変えられなかった配送の条件を、会社が見直し始めた』


「うん」


『それは、町の外にある仕組みへ働きかけたということだ』


「でも、まだ配送だけだ」


『そうだ』


「車の燃料も、建物の電気も、工場も、交通もある」


『そして、それらを動かすエネルギーの供給方法もある』


俺は顔を上げた。


「そうか。燃料を少なく使うだけじゃなくて、何のエネルギーを使うかも関係する」


『そのとおりだ』


「でも、配送会社だけでは決められないこともある」


『車両の更新費用、充電設備、電力供給、制度、取引先との契約など、関係する条件は多い』


「また、“うちだけでは無理”か」


『今度は、その言葉の先を考えられる』


俺は、白いファイルの新しいページを開いた。


――配送方法の改善だけでなく、車両とエネルギーの選択も考える。


――一つの会社で変えられない条件は、関係する企業や行政へつなぐ。


――地域の小さな成果と、世界全体の排出削減を混同しない。


「やること、まだ山ほどあるな」


『世界の問題だからな』


「一つずつじゃ、間に合わないかもしれない」


『だから、一つの町だけで抱えない』


俺は、少し考えた。


これまで、町の補助輪を何度も別の場所へ渡してきた。


でも、温暖化を抑えるためには、それだけでは足りない。


町の工夫を広げるだけでなく、エネルギーや社会の仕組みそのものも変えていかなければならない。


「じゃあ、次は?」


『建物の運転状況を調べた担当者から、返事が来る』


「今度は電気か」


『そうだ』


「節電すればいい、で終わらないんだろ?」


『もちろんだ』


「だよなあ……」


AIが、最後に一枚の資料を表示した。


**建物の電力使用量と、利用者の安全。**


「何これ?」


『次の宿題だ』


俺は、思わず笑った。


「燃料が減ったと思ったら、今度は電気かよ」


『温暖化は、一つの悪者を倒して終わる物語ではない』


「分かってるよ」


俺は白いファイルに、最後の一行を書いた。


――小さな削減を、世界を救った証拠にはしない。けれど、その工夫を続ける人が増え、別の場所でも確かめられるなら、町の外へ変化を広げることはできる。


「第七部第52話、これで締める」


『次は、建物の電気だな』


「休める部屋まで止めるなよ?」


『それが、次の問題になる』


「……嫌な予感しかしない」


窓の外では、夕方の商店街を配送車が走っていた。


昨日と同じように見える町。


でも、その車の走り方を、少し変えようとしている人たちがいる。


そして次は、建物の中で電気の使い方を見直そうとしている人たちがいる。


世界の温暖化は、まだ止まっていない。


それでも、町の外へ伸びた矢印は、少しずつ別の仕組みへ届き始めていた。

第七部第52話は、地域の小さな成果を過大評価せず、それでも次の仕組みへつなげていくことの大切さを描く回でした。


燃料が減ったという結果だけで満足するのではなく、なぜ減ったのか、誰かに新たな負担が生じていないか、別の場所でも続けられるのかを確かめる。


そして、町だけでは変えられない条件を、配送会社、取引先、行政など、より広い社会の仕組みへつなげていく。


地球温暖化は、一つの町の努力だけで解決できる問題ではありません。しかし、小さな改善を検証し、その成果と限界を共有することは、より大きな変化を生み出すための一歩になります。


次回、第七部第53話では、配送の燃料から建物の電気へと視点を移します。


人がいない部屋の照明や空調を見直せば、電力使用量を減らせるかもしれません。


けれど、暑さから逃れるための休憩場所や、体調の悪い人が利用する部屋まで止めてしまえば、本末転倒です。


**減らしてよい電気と、人を守るために必要な電気。**


その境界を、誰が、どのように決めるのか。


町は次の白いページを開きます。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成:リアル(Perplexity)

校正・文体調整:G(ChatGPT)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。