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ジャッキング・フォース  作者: まるマル太
第7章 重なる3つの未来
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#第42話 Jacking Force

#第42話 「Jacking Force」






「なぜ・・・なぜだ!!!

 なぜ、ここにいる!?

 伊集院いじゅういん 雷人らいと・・・!!」


北川高校の校庭に突如現れた男を前にして、

オメラス計画の首謀者である岡本おかもと 龍星りゅうせい

動揺を隠せない。


それは、彼と戦っていた陽遊ようゆう はじめも同じだ。




「それは私が聞きたい。

 が、先ほど軽く周囲を調査し、状況はあらかた把握した。

 ここは・・・同時間帯の違う【可能性の世界】のようだ。」


伊集院いじゅういんが左右に視線を移しながら言う。


「私は、5年前のバーバレス攻略戦で

 ”岡本おかもと 龍星りゅうせいが死んだ”【可能性の世界】から来た。」

「可能性の世界・・・何だ、それは?」




岡本おかもとは一時は”特異点”として君臨していた存在ではあるが、

世界の構造には明るくない。




しかし、その一言で【高次の世界】の住人である

はじめは気付いた。



先ほど、萩間はぎま たくが放った”ツイン・ユニバース”という技。


若干ではあるが、次元を歪ませた形跡があった。


彼は”特異点”として他の【可能性の世界】から

人の記憶や任意の事象を一時的に”上書き”する能力を所有していた。


それは、萩間はぎま自身に制御ができないという致命的な欠点があったが、

彼は最後に、無意識に”上書き”を発動させてこの世を去ったのだ。



彼が最後に上書きしたものは、

異なる【可能性の世界】に生きる伊集院いじゅういん 雷人らいとだったという訳だ。







「【もしもの世界】、と言えば伝わりそうなものだが。

 ちなみに、この世界の私は付近にいるのか?」




・・・岡本おかもとは言葉を失い、5秒ほど沈黙した。




伊集院いじゅういん 雷人らいとは死んだ。

 5年前のバーバレス攻略戦でな。」

「ほう、これは面白い。

 互いが互いと別れて5年が経過した、という解釈で問題なさそうだ。」






・・・15年前、

彼らは互いの思想対立シンキング・ウォーズによって、

互いの理想をぶつけ合った。



・・・そして5年前、彼らは再度衝突しながらも

互いの思想を受け入れていった。


超巨大テロ組織バーバレスとの戦いで、

岡本おかもと伊集院いじゅういんは遂に共闘し、

その際に伊集院いじゅういんは死去した。






伊集院いじゅういん・・・俺は・・・!!」


岡本おかもとの声が大きくなる。


「アンタの意思を継いで、世界を変えるためにここまで辿り着いた!!

 あともう一歩で理想郷オメラスは完成する!」


「それならば・・・私はこんな世界を”望んでいない”ぞ。

 岡本おかもと 龍星りゅうせいよ。」




岡本おかもとが目を丸くする。




「私は、お前の死に際に誓った。

 岡本おかもと 龍星りゅうせいが理想とした

 ”顔も知らない人間の幸福を皆が願う世界”を

 他者と協力しながら創り上げていくと。」

伊集院いじゅういんはまっすぐに岡本おかもとを見据える。


「いや、それではダメだったんだ・・・!

 伊集院いじゅういん、俺は自らの甘ったれた思想を捨て去り、

 アンタの思想を受け入れた。

 だからこの5年間があった!!

 伊集院いじゅういん 雷人らいとが理想とした

 ”裁きを以て他者の幸福を願う世界”を実現するために!!」


「違う。私の思想こそ、不十分だった。」





・・・二人の争いはもはや避けられなかった。



この5年間を、

伊集院いじゅういん 雷人らいとの思想を継ぐために

身を捧げてきた岡本おかもと 龍星りゅうせい


対するは、この5年間を

岡本おかもと 龍星りゅうせいの思想を継ぐために

身を捧げてきた伊集院いじゅういん 雷人らいと


二人の思想は、皮肉にも、互いが互いに強烈に影響され、

15年前とは”真逆”に入れ替わってしまっていた。




「15年ぶりの思想対立シンキング・ウォーズという訳だな、岡本おかもと 龍星りゅうせいよ。」

「・・・あんたがそう言うなら仕方がない・・・!!」




「俺は、伊集院いじゅういん 雷人らいとの思想を完成させる!!」

岡本おかもとは電子辞書型の変身機器を構えた。


《Hello world!! Excuse me?

 Answer、Answer、Answer、Answer・・・》





「私は・・・15年前の岡本おかもと 龍星りゅうせいの思想を継ぐ者だ!」

伊集院いじゅういんは右手に拳大よりもやや大きい円形デバイスを握り、

左手で面を時計方向にスライドさせた。


《Realize your perfect world!!

 ・・・By way of "Jacking Force"!

 By using "Laws Breakers" technologies!》





「お前のアイデンティティーを確立しろ!」

「お前のアイデンティティーを確立せよ!」


二人は叫ぶと、腰に装着してあった専用ベルトに

各々の変身機器を装填した。

















―――――その頃、旧長野県では―――――






「くそっ!!」

中仙道なかせんどう 武雅むがこと

臨世刑海獣りんせいけいかいじゅうエネルゲイヤ・リヴァイアサンが

背中から地面へと叩き付けられた。



「・・・もっと強いかと思ってたけど、逆に期待外れだね。」

九州Qtain(キューテイン)

鎧方操帝がいほうそうていキュービスティック・エントロピーは

右手に握る巨大な剣をすかさず振るう。



彼女の専用メカである”キューブ・スコルピオ”は、

30cm四方の虹色に輝く立方体を組み合わせて構成される

高さ10m、長さ25m以上の巨大なウェポンであるが、

その”組み合わせ方”を変更することで多彩な武器に変形する。


今、彼女が握る剣は刃渡りが1kmを越えており、

先ほどから周囲の木々を軽くなぎ倒しながら

リヴァイアサンを切り裂いている。



その刃先は鋭利ではなく、攻撃の実態としては

ひたすら巨大な棒を振っている程度に過ぎないが、

リヴァイアサンの”打撃耐性の低さ”という弱点を考慮すれば、

彼にとってその攻撃は驚異となる。




「ナメるんじゃねぇぇ!!!」

リヴァイアサンはやおら立ち上がると右手の拳を固め、

迫り来る巨大な剣先に向けて突き出した。


剣先は反対方向へと弾かれるが、

リヴァイアサンは膝立ちの状態でその場に俯く。


すると、彼の身体は怪人態への変身が解け、

元の中仙道なかせんどう 武雅むがへと戻ってしまった。




「くそ・・・もう限りなく限界が近い・・・!」

彼の拳は既に限界に達していた。

人間態に戻ったところで負傷箇所が回復する訳ではない。



彼の能力上、これまで長期戦に持ち込むことが少なかったため、

今回のような弱点に気付けなかったという問題がある。





「あっけないね。自分の分析が足りてないんじゃない?」

九州Qtain(キューテイン)は右手に握った剣を放すと、

彼女の武器は元のサソリ型メカへと変形した。



「降参する気配はないみたいだし、

 このまま倒しちゃうけど、大丈夫?」

「クッ・・・!!」


中仙道なかせんどうは腰に備えられた専用ケースから

”人体強化液・アトラクト”を取り出し、

再度変身を試みるが、腕の痛みに耐えられず試験管を手放した。




次の瞬間、サソリ型メカの尻尾にあたる部分が高く持ち上がり、

そのまま勢い良く振り下ろされる。





「ここまで・・・か・・・!」

中仙道なかせんどうは俯き、死を覚悟した。









・・・しかし、それから3秒ほどが経過しても

彼は死んでいなかった。


そればかりか、尻尾による攻撃自体が彼まで届いていない。




「何が起きた?」

中仙道なかせんどうは顔を上げると、

思わず息を呑む。


彼のすぐ目の前には、光り輝く体色を持つ

謎の怪人が彼に背を向けて佇んでいた。


そして、中仙道なかせんどう 武雅むがには

その姿から連想される人物が鮮明に浮かび上がったのだった。


聖獣である”ユニコーン”を模したようなフォルム。

戦闘に臨む際、格闘技を繰り出すのに適した構え。




明慶あけよし つかさ・・・!?

 お前は・・・5年前に死んだはずではなかったのか!?」


中仙道なかせんどう 武雅むがは5年前、

ブラックマイスターという組織を立ち上げ、

日本の法制度を改革するためにテロ活動を行っていた。


その主力メンバーであった、

”聖獣グラスプ・ユニコォン”へと変身する、明慶あけよし つかさ


彼はあまりにも独善的な中仙道なかせんどうの方針決めに納得せず、

途中で彼に見切りを付け、他のブラックマイスター団員を大勢率いて、

中仙道なかせんどうを裏切ったという過去がある。


つまり、中仙道なかせんどうにとっては宿敵とも呼べる存在である。





「・・・中仙道なかせんどう様こそ、何故ここにいるのですか?

 あなたは5年前に死んだはずです。」

「何だと?」




・・・中仙道なかせんどうはそこで2つの仮説を思い浮かべた。



1つは、ユニコォンこと明慶あけよし つかさは、

歴史の異なる別世界から来たのではないか、というもの。


2つ目の仮説は、彼が何者かによって死体の状態から蘇生させられ、

偽の記憶を植え付けられている、というものだ。






「・・・中仙道なかせんどう様、先ほどここに来る前に

 幾多の異形の怪物がウロチョロしていましたが、あれは何でしょうか?」

「知らないのか?

 ブルート、という生物兵器だ。

 岡本おかもと 龍星りゅうせいらは”オメラス計画”という計画を進行させている。

 人間を管理し、平和を維持するなどと聞いたが、俺にとってはハッタリだ。

 ちなみに、今目の前にいるサソリ型メカを使役するアーマー装着者は

 オメラス計画のメンバーだ。」




そこで、ユニコォンは2秒ほど沈黙した。




「・・・どうやら、異世界に迷い込んだのは俺の方らしいですね。

 皮肉なものだ・・・。

 前以上に、この日本は狂ってしまっているじゃないですか。」

「フッ、そうかもな。」


ユニコォンは短い溜息をついた。


「それで、あのサソリを倒さないとその”オメラス計画”とやらが

 順調に進んでしまうのですか?

 ・・・仕方ないですね。」

明慶あけよし、手を出すな!!

 あれは俺の獲物だ!!」

リヴァイアサンこと中仙道なかせんどうが叫ぶ。


「勘違いしないでください。

 別にあなたを助ける訳ではない。

 俺は今自分ができることをやります。

 それに、今のボロボロのあなたには任せておけないですからね。

 まぁ、”共闘”であれば勝手にやってもらって構いませんが。」

「・・・共闘だと・・・?この俺が・・・?」

中仙道なかせんどうはやおら立ち上がると、そのままユニコォンを凝視する。




「正直なところ、あなたは確かに利己的で、

 とても組織のリーダーに向くタイプの人間ではない。

 でも・・・あなたが俺をブラックマイスターへと勧誘してくれた時に言った

 ”狂ったこの世を変革したくはないか?”というフレーズは今も大事にしています。

 志だけを見れば、あなたは立派なリーダーです。

 あなたは人を手駒にして動かす能力には長けている。

 それにも関わらず、

 他人の力を借りる事ジャッキング・フォースに秀でているあなたが

 1人で戦うというのは、戦略としては稚拙過ぎます。」

「・・・ハッハッハッハアアア!!!

 そうか!!

 どうにも馬鹿にされている感覚が否めないが、

 まぁ、この状況なら・・・”共闘”も悪くない!」


中仙道なかせんどうはユニコォンの隣に立つと、

敵である九州Qtainを見据えた。




「2人に増えたぐらいで私は倒せないよ?」

九州Qtainこと鎧方操帝がいほうそうていキュービスティック・エントロピーが操る

サソリ型メカが先ほどのように尻尾の叩き付け攻撃を繰り出す構えに入った。


明慶あけよし、お前の力を見せてみろ!!」

「偉そうに・・・俺はもうあなたの部下ではないんですよ!」


ユニコォンは腰から銀色の液体が揺れる試験管を取り出すと、

それを自身の口へと流し込む。


すると、彼の身体が銀色に眩く輝き、

高速で変形を開始した。


まるで鎌の刃先のような装飾が無数に入った

銀色の強化皮膚が身体の各部に生成され、

細身であったユニコォンの身体が見る見るうちにゴツいデザインへと変化する。

胸部にある球形の物体が赤く光ると同時に、

身体のサイド、肩に赤いラインが張り巡らされる。

そして右脚を覆うように、赤いメタリックレッドの強化皮膚が生成され、

左右非対称な姿をしたユニコォンが出現した。




「なんだ、そのギラギラした姿は?」

隣の中仙道なかせんどうが訊く。


「”アトラクターフルバースト”、

 聖幻獣せいげんじゅうスカーヴァティ・ユニコォンです。

 アトラクターフルバーストというのは、俺の世界でも俺だけが変身できる、

 俺だけの進化形態ですよ。」

「なるほど、そっちの世界でも

 俺が死んだ後にアトラクターの技術は発展していたという訳だ。」

「強化されたユニコォンの能力を少しだけ見せてあげますよ。」


ユニコォンは突如、中仙道なかせんどうの方を見据えると、

彼の両腕を素早く掴んだ。

そのまま3秒ほど握り続け、手を放すと、

あろうことか、中仙道なかせんどうの腕へのダメージは完全回復していた。




「フッ・・・なかなか面白いじゃねぇか!!」


中仙道なかせんどうはすかさず腰の専用ケースから試験管を2本取り出す。

紫色の液体は”アトラクト”、

金色の液体は”アバリシャス”。


そして、2本同時に口に押し込み、

中の液体を飲み込んだ。



中仙道なかせんどうの身体はすぐさま膨張し、

身長は2.5m程の海獣と化す。


青系の色がごちゃ混ぜになっている体色には金色が混合し、

両手の拳から上腕にかけてはダークブルーの分厚い硬質皮膚が、

ナックルの要領で生成される。

そして頭部に構える白い角は金色に変色し輝きを放つ。



臨世刑海獣りんせいけいかいじゅうエネルゲイヤ・リヴァイアサンの再臨である。





「こっちの世界でもアトラクターは強化されている。

 ・・・ちゃんと付いて来いよ、明慶あけよし!」

「それは俺の台詞です。」


2人は九州Qtainを見据えると、同時に地を蹴り放ち、

共通の敵へと接近を開始した。










#第42話 「Jacking Force」 完結

お読みいただきありがとうございます!


主人公である萩間はぎまは前回戦死しましたが、

死ぬ直前に能力を発動したことが判明しました。


他の無数にある【可能性の世界】からランダムで人物を呼び出すという能力ですが、

偶然にも今作に登場するキャラクターに因縁のある人物が召喚されました。


1人目は伊集院いじゅういん 雷人らいと

前々作のラスボスであり、前作で死亡しています。


彼は5年前に岡本おかもと 龍星りゅうせいが死んだ

【可能性の世界】から来ました。


本作での世界の岡本おかもとは、伊集院いじゅういんの影響を受け、

人を犠牲にする平和を実現しようと試みていますが、

違う【可能性の世界】から来た伊集院いじゅういんは、岡本おかもとの影響を受けて

1人でも多くの笑顔を望める世界を実現しようとこの5年間尽力してきました。


岡本おかもと伊集院いじゅういんは前々作で最終決戦という形で戦い、

前作の最後では共闘していますが、

本作では”思想が入れ替わった”状態で再び戦うこととなります。




2人目は明慶あけよし つかさ

前作で謎の組織”ブラックマイスター”の団員として登場し、

首領であった中仙道なかせんどう 武雅むがを裏切っています。


前作では自我を失いかけていたために、

中仙道なかせんどうとの会話もないまま死んでしまいますが、

実は彼の一面を尊敬していたことが明らかになりました。

そして、1人で戦いたがる中仙道なかせんどうに対して、

彼の真価を発揮できるような戦い方を教示します。





※過去に死んだキャラクター達が、

胸に秘めていた感情があらためて明らかになる、

みたいな展開をずっと書きたくて、

この”正義のミカタ”シリーズを書き続けていました。


42話~最終回までの内容は、実は本作を書き始めるにあたって

一番最初に決めた部分です。

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