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ジャッキング・フォース  作者: まるマル太
第6章 理想郷オメラスを破壊せよ
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#第36話 東北パーマネント・ガーディアンスの開発者

#第36話 「東北パーマネント・ガーディアンスの開発者」






―――上戸鎖(かみとくさり)が旧福井県で戦っていたその頃―――





この俺、萩間(はぎま) 拓(たく)は、

岡本(おかもと) 龍星(りゅうせい)が潜んでいると言われる

旧岩手県を目指し、東北パーマネント・ガーディアンスの入り口まで進行してきている。


今回の作戦で最も人員が多かったのがこの班で、

先日の東京パーマネント・ガーディアンス崩落火災で

生き残ったSAS装着者総勢32名が参加している。


それぞれ、小隊毎に専用の装甲車でこの地に出向いており、

東北パーマネント・ガーディアンスの外壁前に

計9台の車両が停められている状況だ。




「第11小隊長、萩間(はぎま)、

 東北パーマネント・ガーディアンス内部とは

 未だに連絡は取れていないか?」

「あぁ、既に20回は連絡しているが、一向に出ない。」

「となると、地方のQtainのみならず、

 各パーマネント・ガーディアンスの上層部は

 全員がグルになっている可能性も出てきたな。」



俺がいた第11小隊は、この3週間ほどでメンバーが全員死亡したから、

自動的に格上げ待遇となり、小隊長として任命された。


もちろん、新たにメンバーを確保する余裕もないから、

今の第11小隊は俺ただ一人という構成になっている。




・・・しかし、俺には、

他の人に見えない”中二病の神様”が付き添っている。




「萩間(はぎま) 拓(たく)、こっちだ!

 早くしろ!!」

薄紫色のパーカーを着込んだ高校生くらいの少年、

陽遊(ようゆう) 基(はじめ)は、

時折俺に指示を出す。


正直、鬱陶しいヤツだが、

彼は【高次の世界】とやらの住民であり、

通常の人間には知り得ない情報を持っている。

情報源として彼にサポートさせることは合理的だろう。



・・・俺は陽遊(ようゆう) 基(はじめ)の後を付いていくと、

外壁の一部に、巨大な扉を発見した。

外から帰還した東北パーマネント・ガーディアンス所属の装甲車を

格納するためのガレージだろう。



「ここなら容易に破壊できそうだぜ!」

「こんなデカい扉、破壊して大丈夫か・・・?」

「さっきも言ったけど、

 お前の”オーバチャー”チップじゃこの先力不足だ!

 しかも、お前はワイズブルートでありながら、

 その力を自由に使えない。」




・・・ここに来る前、

陽遊(ようゆう) 基(はじめ)の指示で、

俺たち独自の作戦を考案した。


まず、俺の今の武装では、

この先確実に戦闘力不足に陥るらしい。


しかも、東京パーマネント・ガーディアンスの生存メンバーには

SAS系統の開発者は一人も残っておらず、

今ある環境で武装の強化を図る事はできなかった。


・・・どうやら、東北パーマネント・ガーディアンスの外壁から

5kmほど離れた地点には、

彼らが秘密裏に使用している高速開発環境”ラボ”があるとのことで、

そこに入るためには、彼ら専用の装甲車でラボへと向かう必要があるという。


つまり、ここで彼らの専用装甲車を奪取し、

”ラボ”で俺の強化装備を生成する。


それが、俺が”自身の目的”を果たすための

最低ラインとのことだ。




「これが何かに上手く利用できると良いんだけどな・・・。」

俺は自身のドリズラージャケットの右ポケットに手を突っ込み、

とあるチップを取り出した。


「すげぇもん手に入れたよな、お前。」

・・・藍色のアーマーチップ。

大きなUSBメモリのような形状のそれには、

英語で小さく【Pharaoh】と記述されている。


「東京QtainのSランクチップ・・・。」

俺は東京大火災の直後、探索中にこれを発見し持ち帰った。

しかし、基(はじめ)が言うには、

これをそのままSASドライバーに入れると死に至る可能性が高いらしい。


「間違っても生で使うんじゃねぇ。

 Qtain(キューテイン)の制御には”エンペラーシステム”という

 共通のイフェクトチップが必要なんだ。

 Qtainが使うSランクアーマーは、それが前提で作成されている。

 ましてや、ZZZZZ(ファイブゼッツ)被検体、

 言わば”人間兵器”である皇(すめらぎ) 慧仁具真(えにぐま)ですら、

 エンペラーシステムを使わなければ身体を荒らされて死ぬレベル。

 ・・・焼け跡でエンペラーシステムが入手できなかった以上、

 お前がコレを使うのは無理だ!」

「その説明、昨日も聞いたぞ?

 要は、ラボで”エンペラーシステム”チップを作れないか

 模索するんだろう?」

「あぁ!!・・・お前の目的は何だ?萩間(はぎま)!!」

「それは・・・」


俺は恥ずかしくなり言葉に詰まるが、

あっさりと吹っ切れた。


「真の何でも屋になる事だよ!ったく・・・。」


ニヤッと笑う基(はじめ)を背に、

俺はSASドライバーを腰に巻き、

チップをセットした。




《コネクティング。》

暗いトーンの男声ガイダンス音が鳴った。


ドライバーの左サイドに取り付けられているレバーを右手で握り、

身体の正面に半円を描くように、右側へとスライドさせる。


《ロードコンプリーション。

 アーマー・オーバチャー。

 イフェクト・ブラスト、ブラスト、ブラスト。》


俺が纏うオーバチャーのアーマーは、

全身が銀色をモチーフとした配色で、

黒いラインが腕、脚の側面に引かれている。


上半身は肩から胸部を覆うように黒い大型アーマーが搭載され、

防御性能の向上につながっている。


そして腰には黒光りする全長2mほどの専用ランチャー、

“チャーリング”を標準装備している。




「さぁ、一発かましてやれぇぇぇ!!」

「いちいち俺に指示を出すな!」


チャーリングのトリガーをギュッと絞り、

10秒ほどそのままキープ。

段々とチャージ音が甲高くなっていく。


そして、脚を広げて反動を最小限まで抑えた状態で

トリガーを放す。


次の瞬間、極限までチャージしたビーム弾が

ガレージを一瞬にして貫き、白煙が上がり始めた。


「急げ!俺はここで待ってるぞ!」


彼の声を背に、俺は穴の開いたガレージに向かって

全力で走り出す。

警報が鳴り響き始めるが、そんな事を気にせず、

俺は穴に転がり込む。


・・・内部は通常通りの駐車場になっていて、

20台を越える装甲車が停めてある。

かつての東京パーマネント・ガーディアンスとさして変わりはない。


侵入後4秒程度で、俺の視界の人影が動き、

とある装甲車の後方に隠れたのを見逃さなかった。


すぐさま駆け寄り、勢いよく身を乗り出す。

扉を撃ち破っておいて、今更コソコソするつもりはない。


すると、身長170cmほどの若い男性隊員がSASドライバーを身に付け、

スキャナーを右手で引くところだった。


咄嗟にその隊員の両手を掴み、

捻り上げる。


「があああああ!!やめろ、手が折れる!!」

すぐに手は放したが、

一瞬の隙に敵のSASドライバーのサイドから

アーマーチップを抜き取り、

すかさず握り潰した。


「あぁ・・・なんてことを・・・!」

同情する間もなく、

すぐに隊員の胸ぐらを掴み、持ち上げる。


「侵入者め!!何が狙いだ・・・!?」

「装甲車を動かすためのICカードをよこせ。」

隊員は急いで自らの胸ポケットをあさり、

カードを差し出してきた。

「あの車両だ・・・!」

「礼を言う。」

「・・・後悔するぞ?こんなフザけた真似しやがって!」

「騙されて従っている貴様らこそ、

 後悔しないように足掻くんだな。」

俺はその隊員のうなじに素早く手刀を落とし、

気絶させると、駐車場の隅に寝かせた。


「悪いな・・・時間がないんだ。」






――――――――――――――――――――――――――――――





30秒後、1台の装甲車がガレージの扉を突き破り、

外へと飛び出した。


ガレージ前で一度停止したかと思いきや、すぐに再度、急発進。


「うおー!!上手くいったな!」

助手席の窓から左手を出したのは

中二病高校生の陽遊(ようゆう) 基(はじめ)。


彼はこの世界の住民ではないため、

一般人には見えないし、触れない。

逆に、彼は基本的に、この世界に影響を及ぼすことができない。


「あれ?お前・・・なんで車に乗れるんだ?

 この世界のものには干渉できないんじゃないのか?」

運転席で装甲車を運転するのは

東大卒の何でも屋、萩間(はぎま) 拓(たく)。


「確かに・・・言われてみれば、おかしい・・・。

 まーいっか!細かいことは気にすんな!

 今の俺たちの目的は、岡本(おかもと) 龍星(りゅうせい)の野望を

 食い止めることだ!!」

「それは間違いねぇ。」


萩間(はぎま) 拓(たく)は呆れた顔をしていても、

口元には笑みを浮かべていた。




・・・彼にとって、物心ついてから

本当の意味で信頼できる仲間が隣にいるという状況は

これが初めてだった。




彼は元の時代で

恋人・郡川(こおりかわ) 晴乃(はるの)の不倫に遭い、

そこから人間不信に陥った。


その影響で残りの大学生活にも、就職活動にも影響を来したが、

人間不信でも、個人につき一回きりの依頼を引き受ける

”何でも屋”としてならば、彼は生きていく事ができていた。


しかし、萩間(はぎま)は人の力を借りる事ができないという点で、

本当の”何でも屋”ではなかった。


彼の手に負えない、彼一人では成し遂げられないことも数多く存在した。


彼はこの時代にタイムリープすることで、

彼自身にその残酷な事実を自覚させるに至った。




彼は、”完全なる何でも屋(フォース・ジャッカー)”になるため、

自身のトラウマを振り切り、これまでの自分を否定し、

人に助けを求めたのだった。






「さぁて、見えてきたぞ!」

「あれが・・・高速開発環境、ラボか?」


旧国道に隣接する形で分厚いコンクリート壁に囲まれた、

謎の建物が現れた。


敷地面積はザッと、大学の体育館2つ分くらいだろうか?


壁の内部は、壁よりも背の高いラボの屋根と思しき藍色しか見えないが、

何の変哲もない、普通の研究所のようなシンプルな外装だ。




装甲車はスピードを落とし、入り口に接近すると、

あろうことか正面ゲートがそれを見計らったかの如くゆっくりと開いた。


「車両だけで認証が通る仕様になっているのか・・・?

 あるいは、俺たちが部外者だと分かった上で歓迎しているか。」

萩間(はぎま) 拓(たく)は訝し気な様子で装甲車のブレーキを踏む。


すんなりとは中に入らないようだ。


「これは完全なる俺の勘だけど、たぶん大丈夫だぜ。」

陽遊(ようゆう) 基(はじめ)はサムズアップを突き付け、

ニッと笑う。


「・・・一応、戦闘準備はしておく。」

萩間(はぎま)は腰にSASドライバーを巻き、

アクセルをゆっくりと踏んだ。


正面ゲートを進むと、すぐに屋根付きの駐車場があり、

その隣に白壁の研究所(ラボ)が構えられている。


外装が異常に奇麗な事を踏まえると、

おそらくブルート襲撃後に新築された建造物であろうか。




駐車場に装甲車を停めるが早く、

萩間(はぎま)は素早く運転席のドアを蹴り開け、

ラボの入り口へと走り寄った。


「おいおい・・・物騒だなぁ?」

背後からの声に驚き、彼が振り返ると、

そこには、カジュアルな半袖柄シャツを羽織り、

グレーのスキニーパンツにサンダルを履いた中肉体型の男性が立っていた。

頭髪は天然パーマを特に整えもしていない。

見たところ、歳は40手前くらいだろうか。

気怠そうな表情で萩間(はぎま)を見据えている。


「・・・はぁ、早速見つかったか。」

「私はこのラボの総責任者、蔭山(かげやま) 神門(かなと)だ。

 侵入者であれば、排除させてもらうが?」

「侵入者で問題ない。俺は萩間(はぎま) 拓(たく)だ。」


萩間(はぎま)がそう言うと、

蔭山(かげやま)と名乗る男は一瞬だけ表情を変え、

また元の気怠そうな表情に戻った。


「例の”裏切り者”か。面白い、試してみろ。」

蔭山(かげやま)は右手にSASドライバーに似た形の

ドライバーを握り、自身の腰にセットした。


色は黒を基調として、チップ挿入口には

メタリックグリーンの装飾が施されている。


通常のSASドライバーは、右サイドにアーマーチップ挿入口があり、

スキャナーの握り手が左に備えられているが、

彼の持つドライバーは

アーマーチップの挿入口も、スキャナーのパーツも

両側にそれぞれ搭載されている。




「何だ・・・そのドライバーは?」

「U-SAS(ユーサス)ドライバー。今は私しか所有していないが、

 量産化技術は既に整えている。」

「つまり、SASについて詳しいという事は、

 ブルートの真実についても知っているという事だな?」

「最も、私は東北パーマネント・ガーディアンスの

 SAS開発担当でもあるから、詳しくて当然だ。

 見せてやろう、”UNIONシステム”の力を。」


そこまで言うと、蔭山(かげやま)は

ズボンのポケットから2枚の”アーマーチップ”を取り出し、

U-SAS(ユーサス)ドライバーの左右両サイドに挿入した。

”イフェクトチップ”の挿入口はオミットされているようだ。


《コネクティング!》

SASドライバーよりテンションが高い男性のガイダンス音が発せられる。


蔭山(かげやま)は両サイドのスキャナーを両手を交差させて握り、

両腕を同時に体の正面まで動かした。


「変身。」


スキャナーがスライドされた事によりチップスキャンが行われ、

緑色の光がドライバーの両サイドから中心にかけて走る。



《ロードコンプリーション!

 アーマー・シュヴァルツシルト!!&オリハルコン!!

 ユニオン・・・コンプリ―ション!》


蔭山(かげやま)の身体はすぐさま黒い強化装甲に覆われ、

その上から”太陽”をイメージしたような装甲が

両肩に装着される。

左の前腕には金星のような装甲、

右の前腕には水星のような装甲、

左の脚首には火星のような装甲、

右の脚首には木星のような装甲がそれぞれ取り付けられる。

そして胸部には黒い背景に太陽系の惑星配置をイメージしたような装甲が装着される。


頭部は人間の頭の形がベースだが、

人工衛星のソーラーパネルのような角型パーツが、

正面と後頭部に90°ほどの開き具合で取り付けられている。

さらに、顔面はただ黒いだけで、顔のパーツ配置はない。



「2枚のアーマーチップを融合させる事ができるのか・・・!?」

「そういう事だ。しかも、私は開発者権限でSランクとAランクで

 ”UNIONシステム”を起動している。」

そう言い、彼は早くも右手を突き出し、

攻撃態勢に入った。


「クッ!」

萩間(はぎま)もオーバチャーチップと

パワードチップ3枚を使用して、SASのアーマーを装着する。


間一髪で、変身が完了した萩間(はぎま)の身体に

蔭山(かげやま)が装備したユニオンアーマーの水星拳(すいせいけん)が炸裂する。


「な・・・!?」

次の瞬間、萩間(はぎま)は駐車場まで突き飛ばされ、

先ほど自身が乗ってきた装甲車も含めて

隣接した4台の車両を貫いた。


「うおーーーー!!大丈夫かあああ!?」

車の中から観戦していた陽遊(ようゆう) 基(はじめ)は

慌てて飛び降り、萩間(はぎま)のもとへと駆け寄った。


「ぐ・・・無理だろ、コレは・・・さすがに!」

萩間(はぎま)は無事だったが、腹部を押さえて仰向けで倒れていた。


敵の攻撃は1撃しか食らっていないが、

変身解除に追い込まれるほどのダメージだ。




「チッ、さすがは蔭山(かげやま)さんだな。

 とんでもないモン開発しやがる・・・。」

「基(はじめ)・・・お前知り合いなのか・・・?」

「まぁな。」


彼らが会話している隙に、

ユニオンアーマーを纏った蔭山(かげやま)は

すぐ1mほどの距離まで迫っていた。


「さて・・・大人しくしろ。

 見たところ、どうせ仲間もいないんだろう?」

当然だが、蔭山(かげやま)からは

この世界の住人ではない基(はじめ)は見えていないようだ。


「作戦開始後、まだ30分も経過してないのに・・・終わった・・・。」

萩間(はぎま)はあまりの痛みに仰向けのまま気絶してしまった。










#第36話 「東北パーマネント・ガーディアンスの開発者」 完結




ご覧いただき、ありがとうございます。


前作、前々作から作中に出ている、

蔭山(かげやま) 神門(かなと)が登場しました。


彼が戦うのは地味に初めてだったりします。

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