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ジャッキング・フォース  作者: まるマル太
第6章 理想郷オメラスを破壊せよ
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#第35話 支配欲の塊VS頂点コンビ

#第35話 「支配欲の塊VS頂点コンビ」






・・・この私、上戸鎖かみとくさり 祐樹ゆうきこと、

トランセンデンタル・オーガナイザーは、

現在、旧福井県南部の高速道路で戦闘を行っている。


敵は

京都Qtainであるピリオディック・イクスティングイッシャ―、

および、

大阪Qtainである殲滅射帝せんめつしゃていイグザクト・ハンター

である。





イクスティングイッシャ―のアトミック・バリアは

触れた対象を自動で原子まで分解してしまうため、

非常に厄介な武器である。


また、ハンターの狙撃も地味に侮れない威力を誇っており、

そちらにも気を配らないといけない。





「さぁ・・・私に支配されてください!」

「慢心してる余裕なんてあるのか?」


この私、トランセンデンタル・オーガナイザーは、

もう一人の異性体アイソマーを生み出した結果、

本体の1つの脳で、合計2つの身体を同時に操る必要がある。




4つ目怪人ことイクスティングイッシャーが

先ほど同様の素早い挙動で距離を縮める。


私は分身をその場に取り残し、

左側に大きくステップを切った。


「まさか、俺に分身の相手をさせるつもりか?

 ナメられたものだな!!」


・・・私の計算通り、イクスティングイッシャーは

分身目掛けて格闘技を連発している。


避けるだけの単純動作であれば、

分身の面倒も見る事ができる。




私はその隙に連絡橋の上で

対戦車ライフル型武器を構えているハンター目掛けて

まっすぐ走り、距離を詰める。


何度も銃弾が発射されるが、

ハンターに集中する事で完全に弾道は予測できる。




「なるほど・・・僕の動きを読んできてるようだね。」

そう言うと、ハンターは

ライフルのサイド部分をいじると、

自動で銃が変形し、

銃口がまるで”蜂の巣”のように構えられた巨大なパーツに換装された。


すかさず、引き金を引く動作が見えた。


一斉に100発以上の銃弾が空中に射出されるが、

異変があった。


「発射した銃弾を、止める能力ですか。」


発射されたはずの100発を越える銃弾は、

空中で奇麗に静止していた。


「こんなもんじゃないしね。」

ハンターはすかさず100発セットを

追加でもう3連続で射出する。


空中には、不規則に並んだ約400発の大口径弾が溢れる。




私は急きょ進行を止め、

彼と500mほどの距離を空けて立ち止まった。




先ほどのように、一撃だけなら動体視力を利用して掴む事ができる。

しかし、400発の、当たり所が悪ければ瞬殺の銃弾を掴む事は困難だ。


こうなれば・・・もう特攻するのが手っ取り早い!




「デカンファイナルキャノン、ジェネレイト!」

私がそう叫ぶと、

私のすぐ頭上に巨大なキャノン砲が20機生成され、

一斉に射出準備に入った。


「遅いんだよ!!」

止まっていた銃弾の一部がキャノン砲を貫き、

1機が落下した。


続くように大口径の銃弾が動き出し、

キャノン砲を次々と打ち落としていく。


・・・おそらくデカンファイナルキャノンが命中すれば

そこまで苦戦しない相手ではある。


しかし、ハンターの狙撃は正確かつ強力かつ高速。

ジェネレイトした武器が使用前に破壊されてしまう。




残された1機のキャノン砲による砲撃が、

イグザクト・ハンターへ向けて発射された。



先ほど、4つ目怪人に近距離で放ったように、

周囲が瞬時に眩い光に包まれる。


・・・ハンターの気配が消えない。

通常であれば1撃でも食らえば標的が消失する威力を持つが、

装甲が厚い故の防御に長けている。




光が差すとほぼ同時に、

次々と大口径銃弾の大群が私を貫こうと迫ってくる。




「クレイジー・ケミカルバイオレンス!!」


光線放射による光の中、

私は体内に破れたローブを完全に吸収させ、

黒い身体を露出させる。


両脚の膝、左肩、両前腕の計5か所に埋め込まれた

大きな”目”がギョロギョロと動いている。


・・・かつて、私は他のフォーサーを殺害し、

HR細胞を摘出し、自分に移植した。

目が埋め込まれている場所は、HR細胞を移植した場所であり、

埋め込まれた付近の筋力を特に増大させるため、

脚力や腕力なども強化されている。


それに加え、私はローブを体内にしまう事で

防御を犠牲にして分析能力を大幅に向上させる事ができる。


これにより、ローブなしでも

拳と脚による攻撃であれば、対象を”分子レベル”へ分解する事ができるが、

弱点であるHR細胞注入箇所を丸出しにするため、

リスクは大きい。




飛んできた銃弾を、右の拳で殴る。

すると、その場で銃弾は跡形もなく消滅した。


素早く左拳、右での膝蹴りに繋げ、

銃弾の雨を確実に回避していく。


回避、蹴り、回避、左フック。

確実に一撃ずつ見極め、銃弾を無効化していく。

そして、避けながら、

一歩ずつでもハンターへと接近していく。


そして、一瞬の隙を見て、

ハンターのいる連絡橋目掛けて跳躍した。









―――3分前、4つ目怪人ことイクスティングイッシャ―を

             相手していた彼の分身は・・・。―――








「さぁ!そろそろ諦めろ!!」

イクスティングイッシャ―の連続格闘技に対して、

オーガナイザーの分身は、本体と変わらないスピードで

前後左右への滑らかな回避をしている。


「いつまでも逃げてばかりだが、お前に勝機はあるのか?

 分身の分際で!」

「体は分身だが、コントロールしているのは

 あくまでも本体です。

 しかも、あなたは愚かしくも油断しています。

 あなたは自分のバリアを無敵だと”勘違い”していますね?」

「俺のアトミック・バリアが無敵じゃないとでも言うか?」


オーガナイザーはステップを切り、高速道路脇へと後退していく。


「逃がさないぞ!!ハッタリ野郎が!!」

すぐにイクスティングイッシャ―も追うが、

オーガナイザーは彼に向けて道路脇に置いてあった”黄緑色のタンク”を

放り投げたのだった。


タンクは一辺が1.5mほどの立方体に近い形状をしている。


しかし、イクスティングイッシャ―は防御の構えすら見せず、

そのまま高速で接近していく。


黄緑色のタンクは彼の顔面に直撃したが、

何も無かったかのように見る見るうちに分解され、

1秒と経過しないうちに消滅した。


「ヤケクソになったか。まぁ、俺を前にすればこうなる・・・」

その時だった。


突如、イクスティングイッシャ―は頭を抱え、

ふらつき始めた。


「なんだ・・・一体、何を仕掛けた・・・!?」

「フフフ・・・!」

オーガナイザーの分身はいつの前にか

高速道路に設置してある”干渉水タンク”を両手で抱えており、

すかさず、野球ボールを投げるような姿勢で投げ付けた。


「黄緑色のタンクには、高速道路の”除雪材”である

 塩化カルシウムが入っています。」

「ま、まさか!?お前・・・!?」

「あなたのアトミック・バリアは触れたものを

 ”原子”まで分解してしまうとのことでした。

 塩化カルシウムは常温常圧では無毒な固体ですが、

 塩素とカルシウムに分離される事で毒物になります。

 塩素は常温常圧で猛毒ガスとなり、そして・・・」

「やめろおおおおおおお!!」


干渉水タンクがイクスティングイッシャ―に命中すると同時に、

彼を中心とした大爆発が引き起こされた。


周囲には轟音が鳴り響き、

アスファルトも砕け散り、高速道路に巨大なクレーターが形成された。




「・・・カルシウムは水と反応し、激しい爆発反応を引き起こします。

 水はあなたのバリアで原子に分解されてしまうと思いますが、

 分解の順序によってはあなたが死にます。

 注意してくださいね・・・まぁ、もう遅いですが。」


オーガナイザーの見据える先には、

頭部が丸々弾け飛んだイクスティングイッシャ―が

無残にも転がっていた。


彼の残された身体に触れているはずのアスファルトは分解されない。


最高の防御を誇るはずであったアトミック・バリアは、

化学が得意な上戸鎖かみとくさりを敵に回したことが災いして

彼を死に追いやった。

そして、彼の”死”によって消失したのだった。




「楽しい化学実験でした。」

そう呟くと、オーガナイザーの分身は

まるで透明になるようにその場から姿を消した。










―――その頃、オーガナイザー本人は・・・。―――






800mほど離れた道路上で大爆発が起きた。


・・・正確には、私が操作する分身が引き起こしたものだが。




「さて、京都Qtain(キューテイン)の方は片付きました。

 あとは・・・!」

私は軽やかな動きで連絡橋へと飛び乗り、

そのままイグザクト・ハンター目掛けて直進する。


幾千もの大口径弾が360度方向から迫り来るが、

避けるか、四肢で攻撃を加える事で粉砕できる。


分厚い装甲を備えた、

殲滅射帝せんめつしゃていイグザクト・ハンターは、

諦めることなく、ひたすら銃口をこちらに向けて発砲し続ける。



銃弾を全て見切り、そのまま敵の間合いへと入り込む。

と、同時に、イグザクト・ハンターの装甲に左フックをヒットさせる。


「無駄だよ!」

イグザクト・ハンターのあまりの重量に、

私は反動で背後へと弾き飛ばされた。


「さすが・・・硬いですね。」

私は宙を舞いながら呟く。


その時、太ももに激しい痛みを感じ、

思わず背を丸くする。


「1撃、食らってしまいましたか。」

私は視線の斜め下にいるハンターを見据えると、

右手の平を自分の背後に向け、叫んだ。


「デカンファイナルキャノン・ジェネレイト!発射!」

生成する個数が1機のみであれば、

私が直接生成した武器を握り、

打ち落とされる前に素早く発射できる。


「フン!狂ったのかい?そっちは僕がいる方向と真逆だよ?」

「これが、合っているんですね。」

「!?」


次の瞬間、私は眩い光を背に、

ハンターに向けて体当たりする格好で高速射出された。


「ジェット噴射に使ったのか!?」

 ・・・でも、僕に接近すれば蜂の巣になるだけだ!」

「私は先ほど、あなたの装甲に触れて化学的組成を見抜きました。

 これがどういう事か、お分かりでしょうか?」

「な・・・!!」

「これが・・・フォーサーゼイアー態、

 トランセンデンタル・オーガナイザーなんですよ!!」


次の瞬間、私は右手の拳を前に突き出したまま、

ハンターの身体をすり抜けた。


いや、正しくは、彼の身体を正面から貫いた。


「ぐあああああああああ!!身体が!!

 僕の身体がああああああ!!」

「私のクレイジー・ケミカルバイオレンスは、

 全身の感覚を研ぎ澄まし、対象に対して極限まで化学的分析を行い、

 対象を分解するための物質を攻撃の一瞬に分泌します。

 先ほどの京都Qtainの発言から、私にこの必殺技がある事は知っていたはずです。

 となれば、絶対に私に自らのアーマーを触らせてはいけなかった。」


私は親切にも説明をしてあげたところだが、

どうやらハンターは聞く耳は持たないらしい。


無理もない。

心臓を始めとした臓器の一部も私によって分解されてしまった彼は、

もうじき死に至る。

取り乱して当然か。




上戸鎖かみとくさりィィィィッ!!

 僕らを倒せたとしても、お前にサジタリウスは倒せない!!

 お前ももうじき、死ぬんだあああああああああああ!!」

そう言い残したハンターは、

変身を解き、連絡橋の手すり部分に寄り掛かったかと思うと、

バランスを崩し、そのまま柵を乗り越えた。


「フッ・・・私を誰だと思っているんですか?

 上戸鎖かみとくさり 祐樹ゆうき、いずれ世界を支配する存在です。」

私が変身を解き、高速道路を見下ろすと、

ハンターに変身していた人間の死体が、

赤い鮮血をまき散らして転がっていた。






・・・さて、この者たちは準備体操に過ぎない。


本命は、この付近にいるはずのSランクブルート、サジタリウス。


この世界を支配しているブルートの親玉に位置する存在を消せば、

あらためて、私が今後支配する予定の”土台”が完成する。


私に逆らう愚かさを・・・存分に味わってもらう。









#第35話 「支配欲の塊VS頂点コンビ」 完結




ご覧いただきありがとうございます。


京都Qtainの”アトミック・バリア”は、

触れた対象を原子に分解する能力を持ちます。

一見最強の能力に見えますが、

上戸鎖かみとくさりのように化学に詳しい敵相手だと、

そこら辺にあるものを巧みに利用され倒されてしまいます。


本編では、除雪材に使われている塩化カルシウムに

水を加えるという攻撃法で、容易に消されてしまいました。

塩素は猛毒、アルカリ土類金属であるカルシウムは、

水と爆発的に反応します。


最も、彼の武器はそのバリアと底知れぬ瞬発力なので、

両方に対処できる上戸鎖かみとくさりが相手でなければ、

ほぼ作中の全キャラクターに勝てます。




・・・実はアトミック・バリアは、

今から5年前、作者の浪人中に考えた武装で、

攻略法も決めていました。


最強の守りと思いきや、

道路に設置してある一般のアイテムで対処可能、というギャップが

個人的には大好きです。

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