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ジャッキング・フォース  作者: まるマル太
第3章 迫り来る地球外生命体”ブルート”
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19/53

#第16話 Sランクの脅威

#第16話 「Sランクの脅威」




上戸鎖(かみとくさり)こと漆黒のフォーサー、

トランセンデンタル・オーガナイザーが発射した光線型の銃弾は

一斉に未知の巨大モンスターを捕えた。


「・・・見た目通りの防御力・・・ですね。」

そうこぼしたのはオーガナイザーである。


敵のヴァルゴはその眩いばかりのビームを乱射されてもなお、

その場に留まっていた。

そして、全長30mにもなる黄金のパイプオルガンは

ゆっくりと前進を開始した。


よく見ると敵の足元は

金色のキャタビラのような動力源が備わっており、

それを回転させる事で進行しているようだ。

それでも幸い、速度は相当に遅い。

まだ距離は500m以上ある。




「やっぱ地球外生命体ともなると、

 あんたでも敵の能力は測定不能って訳か?」

マンティスのアーマーを纏うチャラ男、

中久喜(なかくき)が訊く。


「こちらまでの到達時刻、などの計算は普通にできます。

 しかし・・・”物質”が関連する情報が入ってこないのです。

 例えば今の私のビーム砲撃は、

 敵のサイズ、地形の変化を元に予測した重量などから

 どう計算しても無傷で済まされる訳がありません。」

「エネルギー保存則が無視されている、という事か?」

俺はオーガナイザーの背中に問う。


「まぁ、そう片付けるのが無難でしょう。

 地球の物体に対する計算式では

 外の物質までは計算しきれない、という事ですかね。」

オーガナイザーは淡々とそう答えたが、

明らかに口調はさっきまでとは違い、焦りが見られる。


「あのさぁ・・・今の砲撃が直撃した際の

 ビデオ映像をSASの機能で雑に分析したんだけど。」

中久喜(なかくき)が申し訳なさそうに口を挟む。


「どうやら思いの外、単純らしいぞ?」

「・・・中久喜(なかくき)さん、どういう事ですか?」

オーガナイザーが訊く。


「あのデカブツは、パイプオルガンを

 人間の耳に届かない”高周波”で今も鳴らし続けている。

 その時には、当然だけど表面に波、

 ちゃんと言えば”定常波”が生成されてるんだよ。」


・・・要は、中久喜(なかくき)が言うには、

楽器の演奏で発生する波を、

目の前のヴァルゴは聞こえない音で鳴らし続け、

巨大な身体の表面に一定の波動を形成しているとの事だ。




「なるほど。

 それで私のキャノン攻撃を、

 位相が180度ズレた定常波によって

 表面で打ち消し威力を極限まで下げた、

 という訳ですか。

 ・・・しかし、それでは攻撃が命中してから、

 それを打ち消すために最適な波を生成する必要があると思われますが?」


・・・確かに、妙な仕掛けではある。

攻撃が命中した時点で、そのエネルギーはヴァルゴ本体へと届く。

つまり、ダメージが発生するはずなのだ。

“時既に遅し”である。




「これは勝手な俺の予想だけどさぁ・・・。

 それが”地球外物質”なんじゃないのかな?

 エネルギーの移動が行われるよりも早く

 表面に最適な定常波を形成する。

 そういう物質でヤツが覆われていたとしたら?」

「・・・まぁ、有り得なくもないか。」

俺は気付けば腕組みをしながら

中久喜(なかくき)の話を聞いていた。


・・・見た目と裏腹に、実に鋭い考察を成す

コイツの裏の顔はぜひ見てみたいが、

今はそれどころではない。




「仮に、中久喜(なかくき)さんの仮説が合っていたとします。

 そうなると、物理的な攻撃は全て無効。

 逆に”衝撃の大きさ”に依存しない攻撃が有効となりますね。」

「あんた、化学にまつわる技を持った怪人だったよな?

 強酸とか生成できないのかよ?」

中久喜(なかくき)はいち早く、

薬品による攻撃が有効だと気付いたようだ。


「私が持つプロパンブレード等の専用武器は全て

 周囲や自分自身から得た分子を組み合わせて生成しています。

 ですから、できない事もありません。

 しかし、専用武器類以外の生成には時間がかかります。

 それに、一度に化合させる量にも限りがある。」

「へぇ。

 あんたは頭良さそうなイメージあったけど、

 意外とゴリ押しでやってきたんだな。」

中久喜(なかくき)と上戸鎖(かみとくさり)の会話中も、

ヴァルゴはごく僅かずつであるが、前進を続けている。




「撤退するしか無さそうだな。」

今のこの3人の中に、

あの特殊な装甲を突破できる能力を持つヤツはいない。

しかも敵は未知の塊であり、

どんな技を発動させるかも分かっていない。


「・・・あなた方2人は帰ってもらって良いです。

 私はここに残ってヴァルゴを倒します。」

「フザけんなって!

 倒せる訳ないだろ・・・あのデカブツ。」

中久喜(なかくき)は止めようと試みる。

ちなみに、俺も同意見だ。


「あまり私をナメないでいただけますか?」

そう言った上戸鎖(かみとくさり)の声は低かった。


・・・たぶん、機嫌を損ねたのだろうか。

彼が相当に強いのは噂でよく聞く。

必然的にプライドも高くなるだろう。




「あ!!」

突然、大声を張り上げたのは中久喜(なかくき)だった。


「どうし」

「いいから早くSASの”防音”機能使えッ!!

 作戦指揮官も耳塞げッ!!」

俺は慌てて腰のバックル部にある

ヘルメットの防音機能を高めるスイッチを押した。


「ぐっ・・・!?

 何だ・・・コレは!?」

俺は思わずその場にしゃがみ込み、

腹部を右手で押さえる。


・・・まるで貧血で倒れる直前の感覚。

下手をすれば意識を失うほどの不調だ。


歯を食いしばりながら周囲を見回すと、

上戸鎖(かみとくさり)ことオーガナイザーは

仰向けの状態でのたうつ様に苦しんでいる。


中久喜(なかくき)ことマンティスのSAS装着者は

かろうじて立ったまま、ヴァルゴを見据えていた。




『聞こえるか?マスク君?』

そんな中、ヘルメット内の無線で中久喜(なかくき)の声が響く。


「聞こえている。

 何が起こった?」

『さっき、ヴァルゴが発し続けていた周波数が変化したんだ。

 たぶん攻撃に転じたと予想はできたけど、

 案の定、このザマだ。

 高周波であるから耳には届かないけど、

 何かしら悪影響を及ぼす音波に違いない。

 現に俺も今、ややめまいに襲われてる。』

「時間差でたぶん俺はもっと重症だ。

 今にも意識が飛んで倒れそうだ・・・。」

『上戸鎖(かみとくさり)は下手したら死ぬな・・・。』

あれほどの自信を見せていた上戸鎖は、

今は仰向けのまま必死に痙攣している。


「上戸鎖(かみとくさり)を連れて逃げる。」

『あぁ、俺もそのつもりだぜ。』

中久喜はそう言ってオーガナイザーを肩にかけるように担いだ。




・・・そこから俺たちは後ろを振り返らずに必死に走った。


俺は何度も草木に躓き、転んだ。

幸い、ヴァルゴの音波による不調はだんだんと回復したが、

それでも疲労が溜まりすぎていた。




20分ほど走っただろうか。


俺たちは無事に第11小隊が活動を開始した地点まで戻ってきた。

装甲車が見えた時点で、

俺と中久喜(なかくき)はSASの防音機能を解除した。


高速道路の中央には2台の装甲車が停めてある。

おそらく、片方は上戸鎖(かみとくさり)が

単独で乗ってきたものだろう。


そちらは鍵が閉まっていたが、

第11小隊が乗ってきた装甲車は施錠されていなかった。

キーも運転席に挿さされたままだった。


・・・もしかしたら、今は亡き

西園寺(さいおんじ)隊長の俺たちに向けた配慮だったのかもしれない。

元々、裏切るつもりで彼がここに降り立ったのだとすれば、

それは皮肉にも、現状は感謝するしかない。




「急ぐぞ!」

中久喜(なかくき)は後部座席に上戸鎖(かみとくさり)こと

オーガナイザーを寝かせると、

SASのチップを引き抜き、変身を解除した。

そして、すかさず運転席へと乗り込んだ。

俺も変身を解除して助手席に飛び乗る。




・・・装甲車は問題なく作動。

俺たちの住む東京パーマネント・ガーディアンスに向けて発進した。




出発して間もなく、運転しながら、

中久喜(なかくき)はスマートフォンを使って

何者かと通話を始めたが、1分ほどで切った。




「・・・パーマネント・ガーディアンスの人間に連絡か?」

「まぁ、そりゃ間違いでもないな!

 でも、正解って訳でもない。」

中久喜は生死の瀬戸際から生還した喜びからか、

テンションは初期状態に戻っている。

だが、明らかにそれは無垢と形容できる表情ではない。


「たぶん、マスク君なら気付いたと思うけど、

 俺には俺自身のミッションってもんがある。」

彼が言う通り、

さっきの戦場で彼の裏の顔は見え隠れしていた。


「お前が何者かは分からないが、

 せいぜい司令部に消されないようにしろよ。

 あのクソ真面目な司令官に目を付けられたら

 いよいよ最後だろうな。」

「明電(めいでん) 峰隆(ほうりゅう)か。」

そう言って、微かに彼は笑った。


・・・笑いの理由は分からない。

しかも、彼はあまりにも滑らかに

司令官を呼び捨てにした。




「あぁ!!間違ったわ!

 明電(めいでん)司令官、の方が自然かー!」


・・・俺は黙っていた。

答える気力が残っていないというのもあるが、

この男の立ち位置を考える事に集中したかった。




「ところで、マスク君さー。

 俺らは今の状況から目を背けたに過ぎない。」

「どういう事だ?」

「ヴァルゴが前進を始めた方角は

 東京パーマネント・ガーディアンスへと直進するコース。

 ・・・つまり?」

「・・・あの巨体がパーマネント・ガーディアンスに

 攻め入って来ると?」

「ビンゴでーす!」

中久喜は笑った。


もし彼の言う事が正しければ、

このまま放っておけば東京パーマネント・ガーディアンスは

崩落の危機にあるという事なのか?




「東京パーマネント・ガーディアンスの外壁は約40m。

 ヴァルゴの身長は見たところ約30m。

 高さでは勝ってるけど、アレに突っ込まれて

 無傷で済まされると思うかー?」

「・・・これは嫌でも司令官に報告しないとな。」


東京パーマネント・ガーディアンスには

アーマー装着者の他に、

その婚約者が住民として住んでいる。

要は、唯一安心できる”家”のようなものだ。


そこの平和が脅かされるのは俺とて気に食わない。




・・・過去の世界に来てまだ1週間も経っていないのに

いきなり面倒な事に巻き込まれた。


でも不思議と、この仕事に対する拒絶は自分の中に無かった。

俺が感じていたのは大きな”やりがい”。

自分でもおかしい自覚はある。

もはや、社畜、というヤツだ。


今の自分を支えているものは

その”やりがい”だと思った。


いや、元々いた世界で恋人だった

郡川(こおりかわ) 晴乃(はるの)を失ってから、

俺はずっと何でも屋の”やりがい”に支えられていたんだ。




















―――――約10分前、東京パーマネント・ガーディアンス付近では―――――




「・・・了解した。

 また連絡を入れる。」

パーマネント・ガーディアンスに続く搬入路となっている広い橋の下で、

物陰に隠れるように筋肉質な男がスマートフォンの通話を切る。


黒いライダースジャケットを着こみ、

ボトムスには黒系統のジーンズを着用。

おまけにサングラスまでかけている。


頭髪は長く、耳が隠れるほどで

前髪は目元まできている。




男は手元のスマートフォンを見ながら

何やら地面をうろうろし始め、

土が盛り上がったところまで辿り着くと

右脚で軽くその土を避けた。


「コイツか。」

拾い上げたアタッシュケースを開けると、

そこにはSASのバックルを含めたベルト一式と、

アーマーチップが1本だけ入っていた。


男はアタッシュケースを再び閉め、

右手に下げると、

パーマネント・ガーディアンスの外壁に向けて歩き始めた。


壁まで歩くと、男はドアノブを握る感覚で

壁の一部を掴む。

すると、人1人分ほどのドアが開き、

壁内部への侵入経路が現れたのだった。




「この感覚・・・久しいな。」

男は何かを呟き、

そのままドアの中に歩み入った。
















#第16話 「Sランクの脅威」 完結




お読みいただきありがとうございます(*'▽')


今回は初のSランクブルート戦を描きました。

ヴァルゴは攻撃を受けた瞬間に

逆位相の定常波を表面に生成するため、

物理ダメージを限りなくゼロに近付ける能力を持ちます。


何とか生存した3人ですが、

東京パーマネント・ガーディアンスの中には

中久喜(なかくき)と通話をしていた不穏な侵入者が。


次回をお楽しみに。

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